皮膚科学

皮膚科学 · 3-26

脱毛症の臨床型と治療

Alopecia - Clinical Forms and Treatment

前提:病態
免疫薬理学II(サイトカイン遺伝子発現阻害薬)
前提:正常
皮膚・付属器:付属器
薬剤
デュルキソリチニブバリシチニブミノキシジルリトレシチニブ
疾患
トリコベゾアール前頭部線維化性脱毛症脱毛症中心遠心性瘢痕性脱毛症頭部解離性蜂窩織炎抜毛症毛包炎性脱毛症
検査値
亜鉛
スコア
SALTスコア

🧠 全体像:は、まず毛包が残ると、毛包が破壊されるに分ける。次に局在性かびまん性か、脱毛か切断か、急性か慢性かを整理する。は失われた毛が再生しないため、の紅斑・鱗屑、膿疱、を見つけたら早期に活動性辺縁を生検し、炎症を止める。

診断の枠組み

flowchart TD
    A["脱毛を訴える患者"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicular ostium'>毛包開口部</span>が見えるか"]
    B --> C["開口部あり:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nonscarring'>非瘢痕性</span>"]
    B --> D["開口部消失:瘢痕性"]
    C --> E["局在性"]
    C --> F["びまん性"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alopecia areata'>円形脱毛症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tinea capitis'>頭部白癬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trichotillomania'>抜毛症</span>など"]
    F --> H["男性型女性型脱毛・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='telogen effluvium'>休止期脱毛</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anagen effluvium'>成長期脱毛</span>など"]
    D --> I["活動性辺縁を早期生検"]
    I --> J["リンパ球性または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophilic inflammation'>好中球性炎症</span>を治療"]

問診と診察

  • 発症時期、急性・慢性、抜け毛増加か毛量低下か、疼痛・掻痒
  • 3~4か月前の発熱、手術、出産、急な減量、心理的負荷、薬剤変更
  • 月経、妊娠、栄養、甲状腺症状、自己免疫疾患、家族歴、ヘアケア習慣
  • 分布、、のばらつき、、、黒点、鱗屑、膿疱、瘢痕を確認
  • とを用いる

血算、、甲状腺機能、、ビタミンなどは病歴・診察から疑う場合に選択し、全例へ一律の広範検査を行わない。

非瘢痕性脱毛

円形脱毛症

境界明瞭な円形・楕円形で、は保たれる。活動性辺縁の、黒点、短い再生毛、が手掛かりになる。全頭型、、型へ進むことがあり、、、と関連する。

範囲 主な治療
限局性 局所注射または。自然再生の可能性も説明する
広範・急速進行 、短期全身免疫調節治療などを専門的に選択
重症 阻害薬を適応・年齢・感染・血栓・悪性腫瘍リスクを評価して検討

重症では、米国ではが成人1、が12歳以上に承認されている2。

⚠️ 日本の承認年齢は米国と同じではない。 日本の電子添文では、のの用法が「成人及び12歳以上かつ体重30kg以上の小児にとして4mgを1日1回」3、が「成人及び12歳以上の小児にとして50mgを1日1回」で体重の規定が無い4。米国ではのの適応が成人に限られるので、「12歳以上に使えるのはだけ」という整理は日本では成り立たない。いずれもの承認事項であり、承認年齢・適応は地域で異なる。

どちらの薬も日本では適応が「脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合」に限られ、投与開始時に頭部全体の概ね50%以上の脱毛があり過去6か月程度毛髪の自然再生が認められない患者が対象になる。36週(は48週)までに治療反応が得られなければ投与中止を考慮する34。治療前後の感染症、血算、肝機能、脂質などを監視する。

男性型・女性型脱毛症

男性型・は、によりが不均一になる。男性では前頭・、女性では前頭を比較的保ったのびまん性菲薄化が典型である。

  • :男女で中心となる。、刺激、、継続が必要なことを説明する
  • :主に成人男性。日本の適応は「男性におけるの進行遅延」で、0.2mgを1日1回(1日1mgを上限に増量可)5。性機能関連副作用を説明し、妊娠中または妊娠可能な人は破損錠へ触れない
  • :1型と2型のをともに阻害する。日本では用のアボルブ0.5mgとは別製品のザガーロ0.1mg(必要に応じ0.5mgへ増量)が「男性における」に承認されている。⚠️ など他のには適応が無く、女性・小児等は禁忌、20歳未満での安全性・有効性は確立していない。効果判定に通常6か月を要する6
  • :選択した女性で妊娠回避、K・腎機能、血圧を確認して使用する
  • :である。1,404人を対象とした多施設安全性研究では(15.1%)が最も多い有害事象で、・浮腫・頭痛などの全身性有害事象により投与中止に至った例は1.2%にとどまり、は概ね良好と報告されているが、浮腫、頻脈、、心血管リスクを考慮して専門管理する7

休止期・成長期脱毛

病型 時間関係 所見・対応
誘因から通常2~4か月後 びまん性脱毛。原因疾患・薬剤・栄養を是正し、回復を説明する
性治療などの数日~数週後 急速で高度。治療内容に応じなど予防を検討

は鱗屑、、黒点、炎症性腫瘤を示し、真菌検査と全身抗真菌薬が必要である。では不揃いな、アクセスしやすい分布を手掛かりに、非難せず心理行動的支援へつなぐ。

瘢痕性脱毛

疾患 主な所見
性 紅斑・鱗屑、頭皮症状、白い
前頭・側頭が帯状にし、を伴う
紅斑、性鱗屑・、、萎縮
中心から遠心性に拡大。アフリカ系女性で多い8
膿疱、痂皮、。細菌培養を含め評価
深い結節、膿瘍、瘻孔、瘢痕

生検は完全にした中央ではなく、紅斑・鱗屑・陽性など活動性のある辺縁から採取する。はより停止であり、病型に応じ外用・ステロイド、、免疫調節薬、抗菌薬などを用いる。

💡 には確立した標準治療がない。 毛髪・頭皮疾患を専門とする医27名による2023年のでは、70項目中20項目(28.6%)でしか強いコンセンサスに至らず、外用・副腎皮質ステロイドとドキシサイクリンを軸としつつも、単一の標準治療は確立していないことが確認された8。

まとめ

  • の有無でと瘢痕性を最初に分ける
  • では、では鱗屑・を探す
  • は誘因から2~4か月遅れて始まる
  • 男性型・ではの不均一と特徴的分布をみる
  • は活動性辺縁を早期生検し、不可逆的毛包破壊を止める

出典

  1. 1.OLUMIANT (baricitinib) Prescribing Information — severe alopecia areata approval(U.S. Food and Drug Administration・2022)バリシチニブが重症円形脱毛症(頭部の概ね50%以上の脱毛が6か月以上自然再生なく持続)の成人患者に承認されたこと閲覧 2026-08-26
  2. 2.LITFULO (ritlecitinib) Prescribing Information — severe alopecia areata approval(U.S. Food and Drug Administration・2023)リトレシチニブが重症円形脱毛症の12歳以上の患者に承認されたこと閲覧 2026-08-26
  3. 3.オルミエント錠2mg/4mg、オルミエント内用懸濁液2mg/mL 添付文書(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)/日本イーライリリー株式会社・2026)2026年7月改訂(第13版)。円形脱毛症の効能又は効果が「脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る」ものであり、5.6で投与開始時に頭部全体の概ね50%以上の脱毛が認められ過去6ヵ月程度毛髪に自然再生が認められない患者に投与すること、5.7で円形脱毛症以外の脱毛症に適応が無いことを定めていること。用法及び用量が「通常、成人及び12歳以上かつ体重30kg以上の小児にはバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。患者の状態に応じて2mgに減量すること」であること。上限年齢の規定は無く、9.8高齢者は「用量に留意して、患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること」との記載にとどまること。36週までに治療反応が得られない場合は投与中止を考慮すること閲覧 2026-09-05
  4. 4.リットフーロカプセル50mg 電子添文(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)/ファイザー株式会社・2023)2023年6月作成(第1版)。効能又は効果は「円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)」で、円形脱毛症以外の脱毛症には適応が無いこと。用法及び用量は「通常、成人及び12歳以上の小児には、リトレシチニブとして50mgを1日1回経口投与する」で体重の規定が無いこと。7.2で「48週までに治療反応が得られない場合は、投与中止を考慮すること」と定めていること閲覧 2026-09-05
  5. 5.プロペシア錠0.2mg/プロペシア錠1mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2023)2023年8月改訂(第4版)。日本の規格は0.2 mg錠と1 mg錠で、効能又は効果は「男性における男性型脱毛症の進行遅延」。用法は男性成人に0.2 mgを1日1回、必要に応じて増量できるが1日1 mgを上限とすること閲覧 2026-09-05
  6. 6.ザガーロカプセル0.1mg/ザガーロカプセル0.5mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2025)2025年8月改訂(第2版)。効能又は効果は「男性における男性型脱毛症」のみで、他の脱毛症に対する適応は無く、20歳未満での安全性・有効性は確立していないこと。用法は男性成人に0.1 mgを1日1回、必要に応じて0.5 mgを1日1回。効果判定には通常6か月を要すること。禁忌は過敏症の既往、女性、小児等、重度の肝機能障害の4項目であること閲覧 2026-09-05
  7. 7.Safety of low-dose oral minoxidil for hair loss: A multicenter study of 1404 patients(Journal of the American Academy of Dermatology・2021)低用量経口ミノキシジルで治療された1,404人の多施設後ろ向き研究で、最も頻度の高い有害事象は多毛(15.1%)であり、動悸・浮腫・頭痛などの全身性有害事象による投与中止は1.2%にとどまり、生命を脅かす有害事象は認められなかったこと閲覧 2026-08-26
  8. 8.Treatment for central centrifugal cicatricial alopecia—Delphi consensus recommendations(Journal of the American Academy of Dermatology・2024)中心遠心性瘢痕性脱毛症には確立した標準治療がなく、毛髪・頭皮疾患を専門とする皮膚科医27名による2023年の修正デルファイ法で70項目中20項目(28.6%)でのみ強いコンセンサスに達したこと閲覧 2026-08-26