薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · B29 Immunosuppressants / 免疫抑制薬 · 必修

リトレシチニブ

ritlecitinib

分類
Immunosuppressants / 免疫抑制薬
商品名(日本)
リットフーロ
商品名(EU)
Litfulo
科目
PharmacologyDermatology
トピック
B29: Immunopharmacology II (Inhibitors of cytokine gene expression, 5-ASA derivatives)3-26: Alopecia - Clinical Forms and Treatment
承認適応
円形脱毛症
副作用
頭痛発疹

🧠 全体像:は重症に使う経口阻害薬という点でと同じ土俵にいるが、軸が2つ違う。1つは標的キナーゼで、が/を阻害するのに対し、はとを不可逆的に共有結合で阻害し、//にはほとんど作用しない選択性を持つ。もう1つは承認年齢だが、ここは国によって話が違う。米国ではが成人限定で、12歳以上に承認された治療薬はだけである。一方日本では、も「成人及び12歳以上かつ体重30kg以上の小児」に用法が定められているため、「12歳以上に使えるのはだけ」という整理は日本では成り立たない。同じ「重症への阻害薬」という文脈でも、標的キナーゼの軸と、地域ごとの承認年齢の軸で使い分けが生まれる。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 標的キナーゼ の承認年齢(日本) の承認年齢(米国) 特徴
+TECファミリー(Cys-909への不可逆的共有結合) 成人および12歳以上の小児(体重規定なし)1 12歳以上2 //への親和性が低く選択性が高い
/ 成人および12歳以上かつ体重30kg以上の小児3 成人のみ(小児では有効性・安全性未確立)4 重症で先に承認された薬。脂質・血算のモニタリングが重要
/ (の適応なし) (の適応なし) 実地では適応外で使用例があるが正式な適応は取得していない

⭐ 青年期の患者に正式な適応を持つ経口治療薬であることが、の臨床的な意味の中心にある。 重症は思春期に発症することも多く、日本の電子添文も「成人及び12歳以上の小児」に50mg 1日1回の用法を定めている1。米国でも12歳以上の重症に承認されている2。

⚠️ 「12歳以上に承認された唯一の阻害薬」と覚えない。 それは米国の話であり、日本ではも12歳以上かつ体重30kg以上の小児に投与できる3。米国の添付文書はの適応を成人に限り、小児では有効性・安全性が確立していないと記載しており4、同じ薬でも承認年齢が地域で異なる。年齢の話をするときは必ず国を添える。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ritlecitinib'>リトレシチニブ</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral'>経口投与</span>(50mg 1日1回)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Janus kinase 3'>JAK3</span>のCys-909に不可逆的に共有結合"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Janus kinase 3'>JAK3</span>依存性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='common gamma chain cytokines'>γ鎖サイトカイン</span>受容体シグナルを遮断<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interleukin-2'>IL-2</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interleukin-4'>IL-4</span>・IL-7・IL-9・IL-15・IL-21など)"]
    A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='TEC family kinases'>TECファミリーキナーゼ</span>(ITKなど)も阻害"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytotoxic T cell'>細胞傷害性T細胞</span>の活性化シグナルを抑制"]
    C --> F["自己反応性CD8+T細胞による毛包への攻撃が減弱"]
    E --> F
    F --> G["毛包の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune privilege'>免疫特権</span>が回復し再増毛につながる"]

💡 「不可逆的」という一語が選択性の理由になっている。 はのに共有結合するため、他の阻害薬のようにを可逆的に競合するのではなく、という特定の標的に長時間結合し続ける。この結合様式の違いが、・・への親和性を低く保ちながら・TECファミリーを強力に阻害するという選択性プロファイルを生んでいる5。

適応

領域 使いどころ
重症。日本の電子添文は効能を「脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合」に限り、投与対象を投与開始時に頭部全体の概ね50%以上に脱毛があり、過去6ヵ月程度毛髪の自然再生が認められない患者と定め、以外のに適応は無いとしている。対象は成人および12歳以上の小児1。米国も12歳以上の重症で承認されている2

同じ「」でも、自己免疫性のとの男性型・では治療の系統がまったく異なる。後者の中心である外用やは・アンドロゲン代謝に働きかける薬であり、毛包へのそのものを止めるとは適応もも別である。

用法・用量

成人および12歳以上の小児に50mg を1日1回、する。他の阻害薬でみられるようなは不要で、承認用量は一貫して50mgである5。と違い体重による下限は設けられていない1。

開始前に結核を含む感染症のスクリーニング、悪性腫瘍・心血管リスクの評価を行う。効果判定には時間がかかり、日本の電子添文は「通常投与開始から48週までには治療反応が得られる。48週までに治療反応が得られない場合は、投与中止を考慮する」と定めている1。免疫調整・他の経口阻害薬・等の強力なとの併用は行わない。

禁忌・注意

  • ⚠️ (他の阻害薬と共通のクラス表示):重篤感染症(結核を含む)・死亡・悪性腫瘍・(MACE)・血栓症2
  • ⚠️ 日本の電子添文は禁忌を9項目挙げている:本剤の成分に対する過敏症の既往、重篤な感染症(敗血症等)、、重度の(分類C)、好中球数1,000/mm3未満、500/mm3未満、ヘモグロビン8.0g/dL未満、100,000/mm3未満、妊婦または妊娠している可能性のある女性1。「妊娠中は避ける」ではなく禁忌である点、血算の下限が数値で決められている点に注意する
  • 投与に先立ち、・胸部X線検査に加えまたはでの有無を確認する。B型肝炎ウイルス感染の有無も投与前に確認する1
  • 投与開始直前および投与中の生ワクチン接種は行わない1
  • 長期投与例では発疹などの状に加え帯状疱疹の報告がある6。ヘルペスウイルスの再活性化(帯状疱疹・等)の徴候が出た場合は投与を中断して対応する1

副作用

頻度 内容
高頻度 頭痛(21% vs 19%)、(20% vs 17%)、(13% vs 10%)5
頻度1%以上(添付文書) 下痢、発疹、蕁麻疹、、発熱、、帯状疱疹2
長期投与(ALLEGRO-LT、447例) 86.1%(大部分は軽度〜中等度)、重篤な有害事象4.9%、帯状疱疹1.3%6
重篤・まれ 重篤感染症、悪性腫瘍、MACE、血栓症(阻害薬クラス共通の)

まとめ

  • 重症に使う経口阻害薬で、と同じ文脈に登場する。標的キナーゼ(+TECファミリー vs /)が第一の違いで、承認年齢の違いは国によって変わる——米国ではが成人限定だが、日本では成人および12歳以上かつ体重30kg以上の小児に投与できる。
  • のCys-909への不可逆的な共有結合により//への影響を抑えた選択性を持ち、の阻害を通じてによる毛包攻撃を減弱させる。
  • 承認用量は50mg 1日1回で、他の阻害薬にみられるは不要。日本の電子添文では体重規定が無く、48週までに治療反応が得られなければ中止を考慮する。
  • 重篤感染症・悪性腫瘍・MACE・血栓症のは他の阻害薬と共通のクラス表示であり、開始前の感染症・が必須。日本では妊婦、、分類Cの、好中球・リンパ球・ヘモグロビン・血小板の低値が禁忌である。
  • 長期投与での安全性データ(ALLEGRO-LT)でも新たな安全性シグナルは報告されていないが、帯状疱疹の発生には留意する。

出典

  1. 1.リットフーロカプセル50mg 電子添文(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)/ファイザー株式会社・2023)日本の電子添文(2023年6月作成・第1版)で、効能又は効果が「円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)」であり、5.1で投与対象を「投与開始時に頭部全体の概ね50%以上に脱毛が認められ、過去6ヵ月程度毛髪に自然再生が認められない患者」、5.2で円形脱毛症以外の脱毛症に適応は無いと定めていること、6.の用法及び用量が「通常、成人及び12歳以上の小児には、リトレシチニブとして50mgを1日1回経口投与する」で体重規定は無いこと、7.2で48週までに治療反応が得られない場合は投与中止を考慮すること、禁忌が2.1〜2.9の9項目で、重篤な感染症・活動性結核・重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)・好中球数1,000/mm3未満・リンパ球数500/mm3未満・ヘモグロビン8.0g/dL未満・血小板数100,000/mm3未満・妊婦または妊娠している可能性のある女性を含むこと、1.の警告に重篤な感染症と悪性腫瘍の発現、および投与前の結核スクリーニング(問診・胸部X線検査に加えインターフェロンγ遊離試験またはツベルクリン反応検査)が置かれていることを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.LITFULO (ritlecitinib) Prescribing Information — severe alopecia areata approval(U.S. Food and Drug Administration・2023)リトレシチニブが12歳以上の重症円形脱毛症患者に承認され、枠組み警告として重篤感染症(結核含む)・死亡・悪性腫瘍・主要心血管有害事象(MACE)・血栓症が記載され、主な副作用(頻度1%以上)に頭痛・下痢・にきび・発疹・蕁麻疹・毛包炎・発熱・アトピー性皮膚炎・帯状疱疹などが挙げられていることを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.オルミエント錠2mg/4mg、オルミエント内用懸濁液2mg/mL 添付文書(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)/日本イーライリリー株式会社・2026)日本の電子添文(2026年7月改訂・第13版)で、円形脱毛症に対するバリシチニブの用法及び用量が「通常、成人及び12歳以上かつ体重30kg以上の小児にはバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する」であり、日本ではバリシチニブも12歳以上の小児に投与できることを確認した閲覧 2026-09-05
  4. 4.OLUMIANT (baricitinib) tablet, film coated — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration・2026)2026年6月改訂の現行米国添付文書でも円形脱毛症の適応は1.3「重症円形脱毛症の成人患者」に限られ、8.4に小児患者での安全性・有効性は確立していないと記載されている閲覧 2026-09-05
  5. 5.Ritlecitinib: First Approval(Drugs(Adis)・2023)リトレシチニブがJAK3のCys-909に不可逆的に共有結合して高い選択性を示し、TECファミリーキナーゼも阻害する一方でJAK1・JAK2・TYK2への親和性は極めて低いこと、承認用量が50mg 1日1回であること、プラセボ対照試験での主な有害事象(頭痛21% vs プラセボ19%、上気道感染20% vs 17%、にきび13% vs 10%)を確認した閲覧 2026-08-10
  6. 6.Long-term safety and efficacy of ritlecitinib in adults and adolescents with alopecia areata and at least 25% scalp hair loss: Results from the ALLEGRO-LT phase 3, open-label study(Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology・2025)長期投与を評価したALLEGRO-LT試験のde novoコホート(投与例447例)で、385例(86.1%)に1件以上の治療下発現有害事象がみられ大部分は軽度〜中等度、重篤な有害事象は22例(4.9%)、帯状疱疹は6例(1.3%)にみられ、24か月時点でSALTスコア≤20の達成率は336例中247例(73.5%、観察データ)だったことを確認した閲覧 2026-08-10