組織学

組織学 · 8.3

皮膚・付属器:付属器

Integumentary system — Appendages

応用トピック
伝染性膿痂疹・毛包炎・せつ・よう爪真菌症(爪白癬)皮膚の構造脱毛症の臨床型と治療
疾患
リンパ浮腫-睫毛重生症候群蒸発亢進型ドライアイ
症状
睫毛重生

🧠 (毛・爪・腺)はすべて「表皮の落とし子」、と覚える。 毛包・爪・汗腺・はいずれも表皮が真皮側へ落ち込んでできた構造で、起源は同じ角化——毛では角化が「毛という一方向の線維」に、爪では「平たい板」に、腺では「分泌という機能」に特化しただけ、という共通の出発点をもつ。

毛(Hair)の構造

毛包は表皮の陥入によって作られる構造で、毛そのものは中心から周辺へ向かっての層構造をもつ。

flowchart TD
  A["髄質:中心、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratin'>ケラチン</span>が少なく大きな<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vacuole'>空胞</span>を含む"]
  A --> B["皮質:硬<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratin'>ケラチン</span>を合成する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='concentric'>同心円状</span>の細胞層"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hair cuticle'>毛小皮</span>:強く角化した最<span class='jp-term jp-term-diagram' title='outer layer'>外層</span>"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inner root sheath'>内毛根鞘</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Henle layer'>ヘンレ層</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Huxley layer'>ハクスリー層</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cuticle'>小皮</span>からなる"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='outer root sheath'>外毛根鞘</span>:グリコーゲンに富む"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perifollicular CT'>毛包周囲結合組織</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='type III collagen'>III型コラーゲン</span>・弾性線維・血管・神経"]
の構成層 特徴
扁平な
2〜3層、強い好酸性
角化する扁平細胞1層

⭐ は部で1層、表層に向かうにつれ複数層になる——(hair papilla、真皮由来の結合組織で毛の成長を支える)に近い部分ほど未分化で薄く、表層に近づくほど層が厚くなるという勾配を押さえておく。

毛包の区分と立毛筋

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infundibulum'>漏斗部</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sebaceous gland'>脂腺</span>の開口部から皮膚表面まで"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Isthmus'>峡部</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arrector pili muscle'>立毛筋</span>付着部から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sebaceous gland'>脂腺</span>開口部まで"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='suprabulbar'>毛球上部</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Isthmus'>峡部</span>より深部、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hair bulb'>毛球</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dermal papilla'>毛乳頭</span>を含む"]

は平滑筋(04-3-smooth-muscle)で、毛包に斜めに付着し収縮すると毛を直立させる()と同時に(下記)を圧迫しての排出を助ける。

⭐ の付着部=バルジ=の。 の付着点はの下端にあたり、ここでがわずかに膨らむ部分をバルジという。マウスで標識を長く保持し続ける細胞(=ゆっくり分裂する幹細胞)は、の毛母ではなくこのバルジにのみ存在した1。バルジはで退縮しない永久部の下端を示す目印でもある。ヒト後頭部の頭皮では、毛包の平均長 4.16 mm のうち 0.76 mm・ 0.89 mm・下部 2.5 mm で、の付着は深さ約1.65 mm、バルジのマーカー CK15 の陽性域は深さ1.0〜1.8 mm に分布する2。は「を立てる筋」であると同時に、幹細胞の位置を教えてくれる解剖学的な標識である。

⚠️ 「(の近く)が未分化で、そこに幹細胞がある」という古い理解は改訂されている。 のはさかんに分裂するが、これは幹細胞ではなく一過性増幅細胞であり、の退行期にはその区画ごと失われる。バルジ細胞を選択的に除去したマウスでは毛包が完全に失われる一方、表皮は生き残った。運命追跡でも、バルジ幹細胞は定常状態では表皮へ細胞を供給しておらず、表皮を傷つけたときにだけ動員されて創の中心へ放射状に移動する(ただしその多くは数週間で表皮から消える)3——毛包の幹細胞と表皮の幹細胞は別区画で、平時は互いに独立して回っている。

爪

爪は硬いでできた扁平で弾力のある構造で、を保護する。

構造 特徴
爪の新生の場、爪体・爪根の下に位置
白色部分、下床の結合組織に強固に付着していない領域
爪体の下、血管に富み赤みを帯びる
表皮と連続する組織

爪はでの新生と、(free edge、最も古い爪細胞が存在)への押し出しによって長さを増す。

汗腺

型 分布 (02-5-glands)
ほぼ全身(口唇・・亀頭・乳頭などを除く)
腋窩・乳頭・・外耳・眼瞼(モル腺)などに限局 (名前の通り)

脂腺

  • ほとんどが毛包に付随する(口唇()・肛門・乳頭・亀頭・包皮・大/・眼瞼()などの例外を除く)
  • 常にの直上(浅い側)に位置する
  • 短い腺房が集まってに共通に開口する
  • は(02-5-glands)——細胞自体が崩壊して脂質(, sebum)となる
  • は皮膚・毛の表面に性の被膜を形成する

💡 が「常にの直上に位置する」という解剖学的な決まりごとは、の収縮が同時にを圧迫してを排出させる、という機能的な連携があるため——毛を立たせる動きとを分泌させる動きが同じ1つの平滑筋の収縮で同時に起こる、という設計上の効率性として理解できる。

まとめ

  • 毛は髄質・皮質・からなり、(・・)とに包まれる。
  • は平滑筋で毛を直立させると同時にを圧迫して排出を助ける。その付着部(の下端)がバルジで、のにあたる。
  • 爪はで新生されへ押し出されて伸長する。
  • は全身に分布し、はに限局しを行う。
  • はほぼ毛包に付随し、常にの直上に位置しによりを産生する。

出典

  1. 1.Label-retaining cells reside in the bulge area of pilosebaceous unit: implications for follicular stem cells, hair cycle, and skin carcinogenesis(Cell・1990)標識保持細胞はマウス毛包のバルジ領域にのみ存在した。バルジは毛包の中央部、立毛筋の付着部にある外毛根鞘細胞の亜集団で、超微形態的に未分化で通常はゆっくり分裂し、毛包の永久部の下端を示す。毛包幹細胞は毛球の毛母ではなくバルジにあるという見方への転換を示した閲覧 2026-08-24
  2. 2.Morphometric analysis of the human scalp hair follicle: practical implications for the hair transplant surgeon and hair regeneration studies(Dermatologic Surgery・2011)ヒト後頭部頭皮の毛包29例の計測で、毛包の平均長は4.16 mm、漏斗部0.76 mm、峡部0.89 mm、下部2.5 mm。立毛筋の付着部は深さ1.65 mmにあり、バルジ幹細胞マーカーCK15の陽性域は深さ1 mmから1.8 mmに及ぶ閲覧 2026-08-24
  3. 3.Stem cells in the hair follicle bulge contribute to wound repair but not to homeostasis of the epidermis(Nature Medicine・2005)Krt1-15プロモーターで自殺遺伝子を発現させてバルジ細胞を除去すると毛包は完全に失われるが表皮は生き残った。運命追跡ではバルジ幹細胞は定常状態で表皮へ細胞を供給していない。表皮損傷後にはバルジ由来細胞が表皮へ動員されて創の中心へ放射状に移動するが、その多くは数週間で表皮から消える閲覧 2026-08-24