組織学

組織学 · 2.5

上皮組織・腺:腺

Epithelial tissue — Glands

🧠 腺は「導管があるか(外分泌)ないか(内分泌)」「分泌時に細胞がどれだけ壊れるか(・・)」という2つの分類軸の掛け合わせで整理する。 さらには分泌物の性質(漿液性かか)で染色性が変わる——この3段構えの分類フレームを押さえれば、どんな腺の名前が出てきても機械的に位置づけられる。

内分泌腺と外分泌腺

flowchart TD
  A["腺"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endocrine glands'>内分泌腺</span>:導管なし、分泌物は血流に乗る"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exocrine glands'>外分泌腺</span>:導管あり、上皮表面へ分泌"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unicellular'>単細胞腺</span>:例)<span class='jp-term jp-term-diagram' title='goblet cell'>杯細胞</span>"]
  C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multicellular'>多細胞腺</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secretory portion'>分泌部</span>+導管からなる"]
なし あり(単純または分枝)
分泌物の行き先 に放出→血流に取り込まれへ 上皮表面へ直接、または導管を介して放出
代表例 甲状腺・副腎(13-3-adrenal-suprarenal) 唾液腺(10-1-salivary-glands)、汗腺

一部の臓器(膵臓など)は内分泌機能と外分泌機能の両方をもつ(10-2-pancreas)。

外分泌腺の構造:分泌部と導管

は(腺房)との2部分からなる。

分類軸 選択肢
導管の分枝 /
の形態 /・胞状
・導管の走行 直走//

分泌様式による分類

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mode of secretion'>分泌様式</span>"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='merocrine'>漏出分泌</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exocytosis'>開口分泌</span>、細胞質は失わない"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apocrine'>離出分泌</span>:頂端部の細胞質ごと分泌物が離脱"]
  A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='holocrine'>全分泌</span>:細胞全体が変性・崩壊して分泌物になる"]
仕組み 代表例
によりを放出、細胞膜・細胞質は失わない。最も一般的 、漿液性腺細胞、多くの
分泌物を含んだ頂端部の細胞質が、膜に包まれたまま細胞から離脱 、乳腺(15-4-mammary-gland-placenta)。ただし同じ細胞がも併用する
細胞全体が分泌物として変性・崩壊し脱落する=細胞死を伴う (08-3-appendages)

💡 3様式は「その腺はこの1つだけを使う」という排他的な分類ではない。 ヒト外耳道の()をで追うと、ゴルジ由来のが頂端へ移動して()でへ内容を出す経路と、細胞質の小突起がちぎれるの経路が同じ細胞で併存している1。名前は「その腺で目立つ・特徴的な様式」を指すラベルだと理解しておくと、「なのに像がある」といった観察に戸惑わない。

漿液性腺と粘液性腺:染色性の違い

を行うは、分泌物の性質によって漿液性とに分けられ、これはそのまま染色性の違いに反映される。

主な分泌産物 主に非タンパク質(など) 高度にしたタンパク質=
発達する が発達 が発達
染色性 強い好塩基性 淡染性(標本作製中にが流出しやすい)
狭い 広い
代表例 膵臓の

⭐ 一部の唾液腺は漿液性・が混在する混合(漿)腺で、標本作製中の変形によりの腺房の上にがに付着して見える——これを(demilune, )と呼ぶ。混合腺を見たらの存在を確認する、という頻出パターン。

⚠️ が「作製上の」だという点は、130年以上信じられてきた実在説を覆したなので、由来まで押さえておく。 を急速凍結・凍結置換で固定し、からの元と併せて見ると、漿液細胞は終末部の全体に分布してと横並びに共通のを囲んでおり、は存在しない。ところが従来の浸漬固定では、して膨れたが漿液細胞を腺房のへ押しやり、も圧されて漿液細胞から切り離されたように見える——これがの正体である2。つまり「混合腺にはがある」は標本の見え方の話であって、の細胞配置ではない。

筋上皮細胞

汗腺・唾液腺・乳腺などのの上皮には、基底膜の内側で・の基底端を取り囲むが存在する。をもち、分泌物をへ押し出す補助をする。

まとめ

  • 腺は導管の有無で(導管なし・血流へ)と(導管あり・表面へ)に分かれる。
  • は(、最も一般的)・(頂端細胞質ごと離脱)・(細胞全体が崩壊)の3種。
  • 漿液性腺細胞は好塩基性でrER発達、腺細胞は淡染性で発達という染色性の違いがある。
  • 混合腺では標本作製時のとしてが見られる(急速凍結・凍結置換では漿液細胞とが横並びに共通のを囲み、は現れない)。
  • は収縮により分泌物をへ押し出す。

出典

  1. 1.Transmission and scanning electron microscopy of the human ceruminous apocrine gland. I. Secretory glandular cells(Archivum Histologicum Japonicum・1976)ヒト外耳道のアポクリン汗腺(耳垢腺)の分泌細胞では、ゴルジ由来の空胞が頂端へ移動して開口分泌で腺腔へ内容を出す経路と、細胞質の小突起がちぎれて放出される離出分泌の経路が併存する。走査電顕でも各種の大きさの離出分泌像が腺腔面に観察された閲覧 2026-08-24
  2. 2.The serous demilune of rat sublingual gland is an artificial structure produced by conventional fixation(Archives of Histology and Cytology・1999)ラット舌下腺を急速凍結・凍結置換で固定して連続切片の三次元再構築と併せて観察すると、漿液細胞は終末部の全体に分布し粘液細胞と並んで共通の腺腔を囲んでおり、半月体は存在しない。従来の浸漬固定では水和して膨張した粘液細胞が漿液細胞を腺房の基底側へ押しやることで半月体が生じる。130年以上実在の構造と信じられてきた漿液半月は作製上のアーチファクトである閲覧 2026-08-24