組織学

組織学 · 2.4

上皮組織・腺:基底膜

Epithelial tissue — Basement membrane

🧠 基底膜は「上皮と結合組織をつなぐ接着シート」であると同時に「」でもある、と2つの役割を一緒に覚える。 構造的には上皮側のと結合組織側のの2層からなり、のネットワークが選択的な物質透過(濾過)と接着の両方を支える。

基底膜の構造:2層構成

基底膜は上皮とその下の結合組織との境界に存在するの構造で、光顕レベルでは1枚の膜に見えるが、レベルでは異なる由来の2層からなる。

flowchart TD
  A["基底膜"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal lamina / basal plate'>基底板</span>:上皮細胞が産生<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='stratum lucidum / lamina lucida'>透明層</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='compact layer'>緻密層</span>"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reticular lamina'>細網線維板</span>:結合組織側の線維芽細胞が産生<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='type III collagen'>III型コラーゲン</span>線維(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reticular fiber'>細網線維</span>)"]
層 産生する細胞 主な構成成分
: 上皮細胞 、の結合部位
: 上皮細胞 の構造、
結合組織の線維芽細胞 =(03-2-fibers)

⭐ は基底膜にのみ特異的に存在する——通常のコラーゲン(I型:腱・骨、II型:)とは異なり状()に重合する点が構造的特徴で、これが基底膜の機能の物理的基盤になる(03-2-fibersの分類と対比して覚える)。

⭐ 分子で見ると基底膜は「2枚の網+橋渡し2種」でできている、と数で覚える。 ①が自己重合して作る網、②が自己重合して作る網——この2つは互いに独立に重合し、③ニドゲン(エンタクチン)と④パールカン()が両者を橋渡しして1枚のシートにする1。細胞側へはなどの接着受容体とを介して繋がる。上の表の「=、=、」という層ごとの覚え方は、この4分子の役割分担を層の見え方に割り振ったものだと理解しておくと混乱しない(=パールカンが担う)。この4分子はすべての基底膜に共通する骨格で、そこにフィブリン・アグリン・SPARC・XVなどが組織ごとに加わって性質の違いを作る。

⚠️ 「+の2層」という像は、少なくともの部分がである可能性が高い。 固定後にで急速脱水する従来法では(lamina lucida/rara)との2層が見えるが、凍結固定+凍結置換で処理した組織では、氷結晶のない領域ではが細胞のに直接接していてが存在しない。固定した組織でも緩徐に脱水すればは現れず、パラ固定でも同様であることから、は固定ではなく急速脱水で生じるだとされた2。試験・教科書では今も「+」の2層構成で問われるので、その枠組みは捨てずに使うが、「実際の生体では上皮の細胞膜にがじかに接している」という位置づけを添えておく。が細胞膜とを直接つないでいるように描かれるのも、これで筋が通る。

基底膜の機能

  • 物理的な接着:上皮を下層の結合組織に固定する(, 02-3-cell-junctionsを介して上皮細胞の細胞骨格と連結)
  • 上皮の増殖・分化の制御:基底膜からのシグナルが上皮幹細胞の挙動を調節する
  • 選択的な物質透過(濾過):栄養・などの分子が基底膜を通って上皮に到達する経路を制限する

💡 基底膜の濾過機能が最も臨床的に重要になるのは(12-1-kidney)——のの異常(など)は血尿・を引き起こす。基底膜は「ただの接着剤」ではなく、としての機能をもつことを押さえておく。

まとめ

  • 基底膜は上皮由来の(+)と結合組織由来のの2層からなる。ただしは急速脱水による作製で、生体ではが細胞膜に直接接していると考えられている。
  • のは基底膜に特異的な構造をもち、他の型のコラーゲンとは重合様式が異なる。
  • 分子構成は網と網の2つの独立した網を、ニドゲンとパールカンが橋渡しする形が基本骨格である。
  • 基底膜は上皮の接着・増殖分化の制御・選択的な物質透過(濾過)という複数の機能を担う。
  • 基底膜の異常は血尿・など臨床的に重要な病態につながる。

出典

  1. 1.Basement membranes(Current Biology・2017)基底膜のシート状構造は、ラミニンの重合網とIV型コラーゲンの重合網という2つの独立した網が、ニドゲンとパールカンを含む複数の細胞外基質タンパク質によって橋渡しされることで成り立つ。細胞表面へは接着受容体と硫酸化糖脂質を介して繋がる。フィブリン・ヘミセンチン・SPARC・アグリン・XVIII型コラーゲンなど組み合わせの違いが組織ごとの多様性を生む閲覧 2026-08-24
  2. 2.The basement membranes of cryofixed or aldehyde-fixed, freeze-substituted tissues are composed of a lamina densa and do not contain a lamina lucida(Cell and Tissue Research・1993)従来法(グルタルアルデヒド固定+アセトンによる急速脱水)で見える透明層(lamina lucida/rara)は、氷結晶のない領域を凍結固定・凍結置換で観察すると存在せず、緻密層が細胞の形質膜に直接接している。パラホルムアルデヒド固定+緩徐脱水でも透明層は現れないことから、透明層は固定ではなく急速脱水によって生じるアーチファクトであると結論された閲覧 2026-08-24