組織学

組織学 · 2.3

上皮組織・腺:細胞間結合

Epithelial tissue — Cell junctions

応用トピック
自己免疫性水疱症
疾患
表皮水疱症

🧠 頂端側からへ「→接着→接着→通信」の順に並ぶ、と縦の並び順で覚える。 頂端に近い側から(漏れを塞ぐ)・(ベルト状の接着)・(点状の強力な接着)・(隣同士の通信)が並び、さらにには・という「上皮を土台(基底膜)に固定する」結合がある。位置と機能が対応しているため、並び順を覚えるだけで機能も芋づる式に引き出せる。

密着結合

は隣り合う細胞同士を封じ、水溶性分子が細胞間隙を自由に通り抜けられないようにする。

  • 上皮の頂端側・を分離する
  • 上皮を横切る物質の移動を「細胞間隙を通る経路」ではなく「細胞を通る経路」に限定させる=関門(バリア)機能
  • (凍結割断)では、封じている実体は2細胞の膜が融合したように見えるストランド(紐)のである

⭐ ストランドの本体は「クローディン」で、オクルディンは脇役。 をもたないマウスL線維芽細胞にクローディン1または2の遺伝子を1つ入れるだけで、とそっくりのストランドが再構成される。一方オクルディンを単独で入れても短いストランドが少しできるだけで、クローディンと一緒にしたときに初めてストランドへ組み込まれる1。クローディンは4回タンパク質の多重遺伝子族で、発現する種類の組み合わせが組織ごとに大きく異なり2、どのクローディンを並べるかでその上皮が何をどれだけ通すか(イオン選択性・漏れやすさ)が決まる——「=一律に固く塞ぐ」ではなく、組織ごとに漏れ具合を作り分ける可変の関門である、という枠組みで覚える。

💡 3細胞が寄り合う角には別の分子が要る。 クローディンが説明するのは2細胞間(bicellular)ので、3細胞の頂点が寄り合う三細胞間接触部はバリアの弱点として残る。ここに集積し垂直方向のストランドを作る質がトリセルリンで、これを抑えるとが破綻し、三細胞間接触部だけでなく2細胞間のまで乱れる3。「クローディン=辺、トリセルリン=角」と対応づけると忘れない。

接着帯

隣接する2細胞の細胞膜が、非晶質物質で満たされた細胞間隙を挟んで対向する構造。

  • (上皮ではE)というが、Ca²⁺存在下で細胞間を接着する
  • 分子は細胞内で複数の連結タンパク質を介してに係留される。この連結タンパク質がで、の細胞質側尾部に(およびp120)が結合し、そこにαが結合する
  • 頂端寄り、のすぐ下に連続したベルト状のを形成する

⚠️ 「——α—アクチン」というの4者複合体は、実は実証されていない。 でもを含む膜上でも、αはE・複合体とアクチン線維に同時には結合できない(ビンキュリンやαを加えても同じ)。した細胞内での動き方を見ても、E・・αの3者は似た挙動を示す一方、アクチンとアクチン結合タンパク質はもっと速く動く4。を介してアクチンにつながる、という試験に出る図式そのものは今も使ってよいが、それは静的な“ねじ止め”ではなく、張力に応じて結び直される動的な連結である、という位置づけを添えておく。実際αは、張力がかかると構造を変えてもう一つのアクチン結合タンパク質ビンキュリンを呼び込む「張力トランスデューサー」であり、機械的刺激を化学的応答に翻訳してを成熟させる5。

接着斑

1つの細胞表面の構造が、隣接する細胞表面の同一構造と対になった「点状の溶接」。

  • がフィラメント(, 01-3-non-membranous-organelles-cytoskeleton)に接続
  • フィラメントは細胞質を縦横に走り、を介して隣の細胞のと“スポット溶接”のように連結される
  • (08-1-epidermis)など機械的なストレスを受ける組織で発達

⭐ ()のは、のEとは別物である。 ここで働くのはとデスモコリンという2種類の型で、Ca²⁺依存性に互いに(ヘテロに)結合して細胞間を留める。細胞質側のプラークはプラコグロビン・プラ・デスモプラキンが層を作り、デスモプラキンがを掴む。側の「E++アクチン」と、側の「/デスモコリン+プラコグロビン・プラ・デスモプラキン+」を、分子名まで2列に並べて覚えるのが確実。

⚠️ は「のが自己抗体で無力化される病気」。 の自己抗体が結合する表面の130 kDaは、の結果ファミリーの新しい上皮だと判明した——が「細胞接着の病気」であることを分子で示した仕事である6。抗原の内訳は=、=。で口腔粘膜がやられにくいのは、粘膜ではの発現がよりはるかに低く、抗抗体が効いても残ったで接着が保たれるためである(表皮では逆にが優位)7。水疱ができる高さ(尋常性=基底層直上、落葉状=付近)が抗原の分布で説明できる、という筋道で押さえる。

flowchart TD
  A["頂端側"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tight junction'>密着結合</span>:クローディン(+オクルディン)<br>三細胞間の角はトリセルリン"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='zonula adherens / belt desmosome'>接着帯</span>:E<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cadherin'>カドヘリン</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catenin'>カテニン</span>+アクチン、ベルト状"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macula adherens / desmosome'>接着斑</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Desmoglein'>デスモグレイン</span>/デスモコリン<br>+デスモプラキン+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratin'>ケラチン</span>、点状"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gap junction'>ギャップ結合</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='connexin'>コネキシン</span>6分子=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='connexons'>コネクソン</span><br>2つ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synapsis'>対合</span>して細胞間チャネル"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemidesmosomes'>ヘミデスモソーム</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='integrin alpha-6 beta-4'>インテグリンα6β4</span>・BP180<br>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plectin'>プレクチン</span>/BP230+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratin'>ケラチン</span>、基底膜へ固定"]
  F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basolateral side'>基底側</span>(基底膜)"]

⭐ 「=、=アクチン」という連結先の違いは頻出。両方ともを介した接着だが、は運動系のアクチンに、()は構造保持系のにつながる、という細胞骨格側の違いで区別する。

ギャップ結合

2細胞間にというタンパク質複合体でできたチャネルが存在し、無機イオンや水溶性の小分子が細胞質同士を直接行き来できる。

  • の構成単位はという4回質で、6分子が輪になって1個の(=ヘミチャネル)を作り、隣接する2細胞のが端どうしでして1本の細胞間チャネルになる
  • 骨細胞(03-6-bone)、(04-2-cardiac-muscle)、(04-3-smooth-muscle)間に存在
  • 心筋・平滑筋では電気的な興奮の伝播(としての協調収縮)にも寄与する

⭐ 「」と「」を取り違えない——6:1:2 の数字で覚える。 6分子=1個、2個=細胞間チャネル1本。ヒト26の3.5 Å分解能のでこのが実際に確かめられており、各は4本の膜貫通ヘリックスをもち、6本のN末端ヘリックスが作るが「どの大きさの分子まで通すか」を決めている8。は遺伝子族で、26(GJB2)の変異はの代表的な原因、43は心筋・骨・多くの上皮の主力である。

基底陥入とヘミデスモソーム/フォーカルアドヒージョン

  • :細胞膜の陥入に(, 01-1-plasma-membrane)が並び、近接するミトコンドリアからATP供給を受ける。腎尿細管(近位・)、唾液腺導管に分布。
  • :という質を介して、上皮細胞を下層の基底膜(02-4-basement-membrane)に係留する結合。細胞骨格とを連結する。構成は少なくとも5成分で、膜貫通側がとBP180()、細胞質プラーク側が(HD1)とBP230、そこにが繋がる9。
  • :を含む構造で、細胞内のアクチン束との間に力学的な連結を作る。細胞を基底膜に接着させる。

💡 ・が「細胞と細胞」を結ぶのに対し、・は「細胞と(基底膜)」を結ぶ——接頭辞“hemi-”(半分)は、の片側だけ(細胞—基底膜間)に相当する構造だからという語源を知っておくと、上皮を土台に固定する仕組みとして自然に位置づけられる。

⚠️ ただし「半分の」という名前はでの見た目に由来するだけで、分子的にはの半分ではない。 が/デスモコリンというを使い、プラークをデスモプラキンが作るのに対し、はとBP180()という全く別系統の受容体を使い、プラークはとBP230が作る9。とくにBP180はがコラーゲン様という珍しい接着受容体で、と基底膜をつなぐ係留フィラメントの主要成分である。「に繋がる」という一点だけが共通で、分子は総取り替え、と覚える。

⭐ 接着装置の分子名は、そのまま水疱症の分類になる。 表皮内で細胞どうしが離れるが()の病気であるのに対し、は表皮と基底膜の間で剥がれる病気で、自己抗体の標的はのBP180とBP230である。さらに先天性のでは、β4(ITGB4)やBP180、の遺伝子変異が接合部型・の原因になる。剥離が起きる高さ=壊れた接着装置の高さという対応で整理する。

まとめ

  • は頂端・基底を分離し、物質移動を細胞内経路に限定するバリアとして働く。
  • (+アクチン)と/(+)はだが連結する細胞骨格が異なる。
  • は6分子からなる(ヘミチャネル)2個ので作られ、細胞間で小分子・イオンを直接やり取りし、心筋・平滑筋の協調収縮にも関与する。
  • とはを介して上皮細胞を基底膜に固定する。は・BP180と、・BP230のプラークからなり、とは分子系統が別である。
  • ストランドの本体はクローディン(オクルディンは副次的)、三細胞間接触部はトリセルリンが担う。
  • はE+、は/デスモコリン+デスモプラキンで、後者を自己抗体が壊すのが(尋常性=、落葉状=)である。

出典

  1. 1.A single gene product, claudin-1 or -2, reconstitutes tight junction strands and recruits occludin in fibroblasts(The Journal of Cell Biology・1998)密着結合をもたないマウスL線維芽細胞にクローディン1または2のcDNAを単独で導入するだけで、生体内と同様の密着結合ストランドの網目が再構成される。一方オクルディンを単独で導入しても短いストランドがわずかにできるだけで、クローディンと共発現させて初めてストランドへ組み込まれる。すなわちストランド形成の本体はクローディンであり、オクルディンは副次的(accessory)な構成要素である閲覧 2026-08-24
  2. 2.Claudin multigene family encoding four-transmembrane domain protein components of tight junction strands(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America・1999)クローディンは4回膜貫通ドメインをもつ多重遺伝子族で、クローディン3〜8の同定によりファミリーの存在が示された。ノーザンブロットで組織分布のパターンはクローディンの種類ごとに大きく異なり、複数のファミリーメンバーが組織ごとに密着結合ストランドの形成に関与する閲覧 2026-08-24
  3. 3.Tricellulin constitutes a novel barrier at tricellular contacts of epithelial cells(The Journal of Cell Biology・2005)2細胞間の密着結合はクローディンで説明されるが、3細胞が寄り合う三細胞間接触部はバリアの弱点として残っていた。この部位の垂直に走る密着結合ストランドに集積する最初の膜貫通タンパク質としてトリセルリンが同定され、RNA干渉で発現を抑えると上皮バリアが破綻し三細胞間接触部と2細胞間密着結合の両方が乱れる閲覧 2026-08-24
  4. 4.Deconstructing the cadherin-catenin-actin complex(Cell・2005)カドヘリンがβカテニン・αカテニンを介してアクチン細胞骨格に連結するという定説の4者複合体は実証されたことがなく、αカテニンはEカドヘリン・βカテニン複合体とアクチン線維に同時には結合できない(ビンキュリン・αアクチニン共存下でも、溶液中でもカドヘリン含有膜上でも)。連結は従来考えられていたより動的である閲覧 2026-08-24
  5. 5.alpha-Catenin as a tension transducer that induces adherens junction development(Nature Cell Biology・2010)αカテニンは張力に依存した構造変化によってもう一つのアクチン結合タンパク質ビンキュリンを呼び込む張力トランスデューサーであり、機械的刺激を化学的応答へ変換して接着帯の成熟を促す閲覧 2026-08-24
  6. 6.Autoantibodies against a novel epithelial cadherin in pemphigus vulgaris, a disease of cell adhesion(Cell・1991)尋常性天疱瘡の自己抗体が標的とする角化細胞表面の130 kDa糖タンパク質(尋常性天疱瘡抗原)は、Ca²⁺依存性接着分子カドヘリンファミリーに属し、デスモグレインIと最も強い相同性を示す新規の上皮カドヘリンである。天疱瘡は細胞接着の病気である閲覧 2026-08-24
  7. 7.Lack of mucosal involvement in pemphigus foliaceus may be due to low expression of desmoglein 1(The Journal of Investigative Dermatology・1998)デスモグレイン3が尋常性天疱瘡抗原、デスモグレイン1が落葉状天疱瘡抗原である。口腔粘膜・食道ではデスモグレイン1の発現量がデスモグレイン3よりはるかに低く、表皮では逆にデスモグレイン1が優位であるため、落葉状天疱瘡では抗デスモグレイン1抗体があっても残るデスモグレイン3で接着が保たれ粘膜病変が出にくい閲覧 2026-08-24
  8. 8.Structure of the connexin 26 gap junction channel at 3.5 A resolution(Nature・2009)ヒトコネキシン26(GJB2)のギャップ結合チャネル結晶構造(3.5 Å)により、膜貫通ヘミチャネル(コネクソン)1個がコネキシン6分子(プロトマー)からなり、各プロトマーが4本の膜貫通ヘリックスをもつこと、隣接2細胞のヘミチャネルが対合して1本の細胞間チャネルを作ることが示された。6本のN末端ヘリックスが作る漏斗部が通過分子の大きさを決める閲覧 2026-08-24
  9. 9.Hemidesmosomes and their unique transmembrane protein BP180(Microscopy Research and Technique・1998)ヘミデスモソームは重層・複合上皮のケラチン中間径フィラメントを細胞外基質へ連結する接着複合体で、少なくとも5種の構成タンパク質からなる。細胞質プラーク側がHD1/プレクチンとBP230、膜貫通側がインテグリンα6β4とBP180である。BP180は細胞外ドメインがコラーゲン様である点で特異な接着受容体で、ヘミデスモソームと基底膜をつなぐ係留フィラメントの主要成分である閲覧 2026-08-24