組織学

組織学 · 3.1

結合組織:細胞

Connective tissue — Cells

応用トピック
軟部腫瘍の放射線・外科・薬物療法

🧠 結合組織の細胞は「」と「」の2グループに分けて覚える。 (線維芽細胞・・)はその場でを作り続ける常駐スタッフ、(マクロファージ・肥満細胞・形質細胞など)は血液由来で必要に応じて動員される免疫の実働部隊——このがこの分野全体の地図になる。

線維芽細胞と線維細胞

線維芽細胞は結合組織で最も数の多い細胞で、コラーゲン(03-2-fibers)とを合成・分泌する。

(不活動型)
核の形態 大きく卵円形、優位(淡明)、核小体明瞭(01-4-nucleus) より暗い、優位()
細胞の大きさ・形 — 小型、、突起が少ない
細胞質 に富み、も発達 rERは著しく少ない
染色性 タンパク質合成が盛ん→リボソーム量が多い→好塩基性 目立たない

⭐ 「核が大きく淡明で核小体明瞭=の線維芽細胞(産生中)」「核が小さく=(休止中)」という対応は、01-4-nucleusで扱ったクロマチンの原則(=活発、=不活発)をそのまま線維芽細胞に当てはめた具体例。

細網細胞

線維芽細胞()の特殊な一型で、に存在し、と基質を産生する。の分枝点に位置することが多く、リンパ性器官(07-1-cells-general)・骨髄(03-8-hemopoiesis)・肝臓のを構成する。

マクロファージ

貪食に特化した遊走性の細胞。円形で表面は迷路状に入り組み、の核、貪食した物質を含む顆粒・液胞をもつ。

  • 骨髄由来の前駆細胞→血中を循環する単球→組織に定着して成熟したマクロファージになる(単球とマクロファージは成熟段階の異なる同一系統の細胞)。炎症・の場に動員されてくるマクロファージについてはこの経路がそのまま当てはまる。
  • 全身の組織に分布し、部位ごとに異なる名前で呼ばれる。

⚠️ 「組織のマクロファージ=骨髄由来の単球が定着したもの」という単一の図式は、2010年代ので書き換えられた。組織の多くは骨髄由来ではなく胚性由来である。 ①は、生後のがほとんど寄与せず、胎生8日より前に生じる原始(卵黄嚢由来)に由来する1。②転写因子Mybは造血幹細胞とCD11b高発現の単球・マクロファージすべてに必要だがマクロファージのうち卵黄嚢由来のものには不要で、・・は成体でも造血幹細胞とは独立に存続する2。③パイオーシス(2個体の血流をつないだ実験)でも、定常状態では循環単球が組織マクロファージにほとんど置き換わらず、肺では枯渇後の再充填さえその場での自己増殖で行われる3。つまり「組織(胚性・自己増殖で維持)」と「炎症時に動員される」は別ルートであり、上の「単球→マクロファージ」は後者の説明として位置づけ直す。

分布部位 呼称
肝臓 (10-3-liver)
皮膚 (08-1-epidermis)
破骨細胞(03-6-bone、単球・の)
中枢神経系 (05-3-neuroglia)

機能:細菌・異物への非特異的防御、貪食・細胞内消化、死細胞の除去による組織の清掃、の修復。

💡 破骨細胞は例外的に「両方」で維持される、と押さえると起源の話がきれいに閉じる。 胎児のに最初に住みつく破骨細胞は胚性の赤血球・共通前駆細胞(erythro-myeloid progenitor)に由来し、これが正常な骨発生と歯のに必要である。一方で生後は、循環血中のが長寿命の破骨細胞合胞体へ次々と融合することで破骨細胞・骨量・が維持される4。がで部分的に治るのは、この生後の融合ルートが残っているためである。

肥満細胞

卵円形〜の細胞で、細胞質は好塩基性ので満たされる。血中を成熟した肥満細胞が流れているわけではなく、未熟な前駆細胞が組織に入ってからその場で成熟する点が他の顆粒球と違う。顆粒にはヘパリン(多数の負電荷をもつ)・タンパク質・ヒスタミンが含まれる。

⚠️ 肥満細胞は(など)で染めると、ヘパリンの強い負電荷のために本来の青色ではなく赤紫色(, metachromasia)に染まる(00-2-staining参照)。適切な刺激を受けると顆粒内容物を放出(, degranulation)し、ヒスタミンはアレルギー反応の主要なメディエーターとして働く。

⚠️ 肥満細胞も「血液由来の」で片づけられなくなっている。 血管内皮の系統追跡(Cdh5-CreERT2)により、肥満細胞にはマクロファージと同じく卵黄嚢由来の一群があることが示された。卵黄嚢由来の肥満細胞は組織ごとに異なる速度でdefinitive造血由来のものへ置き換わるが、成体ではその後者も骨髄とは独立に自己維持される5。上の「/」のは結合組織の細胞を初めて整理するときの地図としては有効だが、マクロファージと肥満細胞については「血液から来て居着いたきり、その場で殖えて維持される(あるいはそもそも胚性由来)」という第三の型を頭に置いておく。

flowchart TD
  A["結合組織の細胞"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resident cells'>定住細胞</span>"]
  B --> B1["線維芽細胞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrocyte'>線維細胞</span>"]
  B --> B2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adipocyte'>脂肪細胞</span>"]
  B --> B3["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Reticulum cell'>細網細胞</span>"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transient/wandering cells'>移住細胞</span>:血液由来"]
  C --> C1["マクロファージ(炎症時に動員される分は単球由来)"]
  C --> C2["肥満細胞"]
  C --> C3["形質細胞(B細胞由来)・リンパ球・好酸球など"]
  A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resident macrophage'>常在マクロファージ</span>・結合組織の肥満細胞は<br>胚性(卵黄嚢/胎児肝)由来で局所自己維持"]

まとめ

  • 結合組織の細胞は場に留まる(線維芽細胞・・)と血液由来の(マクロファージ・肥満細胞など)に大別される。
  • 線維芽細胞は淡明核・核小体明瞭・質、は核で不活発という対比がある。
  • マクロファージは全身に分布し、部位ごとに・・破骨細胞・と呼び名を変える。
  • ただし「マクロファージ=単球由来」は炎症時に動員される分の話で、組織(・・など)の多くは胚性(卵黄嚢)由来で、成体では骨髄と独立に局所で自己増殖して維持される。破骨細胞は胚性前駆細胞に始まり、生後は循環単球の融合で維持される二段構えである。
  • 肥満細胞も卵黄嚢由来と definitive 由来の二重起源をもち、成体では骨髄と独立に自己維持される。
  • 肥満細胞の顆粒はヘパリンによるを示し、ヒスタミンを介してアレルギー反応に関与する。

出典

  1. 1.Fate mapping analysis reveals that adult microglia derive from primitive macrophages(Science・2010)生後の造血前駆細胞は成体脳のミクログリア恒常性にほとんど寄与せず、in vivo系統追跡により成体ミクログリアは胎生8日より前に生じる原始(primitive)骨髄系前駆細胞に由来することが示された。ミクログリアは単核食細胞系の中で個体発生的に別個の集団である閲覧 2026-08-24
  2. 2.A lineage of myeloid cells independent of Myb and hematopoietic stem cells(Science・2012)転写因子Mybは造血幹細胞とCD11b高発現の単球・マクロファージすべての発生に必要だが、卵黄嚢マクロファージには不要である。肝クッパー細胞・表皮ランゲルハンス細胞・ミクログリアといった卵黄嚢由来のF4/80高発現マクロファージは、成体でも造血幹細胞とは独立に存続する別系統である閲覧 2026-08-24
  3. 3.Tissue-resident macrophages self-maintain locally throughout adult life with minimal contribution from circulating monocytes(Immunity・2013)パラバイオーシスと系統追跡により、定常状態で循環単球が組織マクロファージへ有意に寄与しないことが確認された。肺のマクロファージを枯渇させた後の再充填も大部分がM-CSF・GM-CSF依存性の局所での確率的な自己増殖による。組織常在マクロファージと循環単球は、定常状態では独立に維持される別々の単核食細胞系統として扱うべきである閲覧 2026-08-24
  4. 4.Developmental origin, functional maintenance and genetic rescue of osteoclasts(Nature・2019)胎児の骨化中心に定着する破骨細胞は胚性の赤血球・骨髄系共通前駆細胞(erythro-myeloid progenitor)に由来し、正常な骨発生と歯の萌出に必要である。生後は循環血中の単球系細胞が長寿命の破骨細胞合胞体へ反復的に融合することで破骨細胞・骨量・骨髄腔が維持される閲覧 2026-08-24
  5. 5.Hemogenic Endothelial Fate Mapping Reveals Dual Developmental Origin of Mast Cells(Immunity・2018)Cdh5-CreERT2による系統追跡で肥満細胞に卵黄嚢由来の一群があることが示された。卵黄嚢由来肥満細胞は組織ごとに異なる速度でdefinitive由来の肥満細胞に置き換わるが、成体ではその後者も骨髄とは独立に自己維持される。胎生期の皮膚では卵黄嚢由来が大半を占め、成体の肥満細胞とは表現型・トランスクリプトームが異なる。マクロファージと同様、肥満細胞も二重の造血起源をもつ閲覧 2026-08-24