組織学

組織学 · 0.2

組織学的手法・顕微鏡:染色

Techniques & microscopy — Staining

🧠 染色の基本は「酸性の分子はに、塩基性の分子は酸性色素に染まる」という電荷の対応関係。 ()は酸性の・(核)を染め=好塩基性、(酸性色素)は塩基性のタンパク質・細胞質を染める=好酸性。H&E染色を基準に、それ以外の(PAS・・など)は「H&Eでは見えない特定の分子を狙い撃ちする追加ツール」と位置づけて覚える。

H&E染色の原理

・染色は最も基本的な染色法で、組織中の主要な2つの分子群をそれぞれ異なる色素で染め分ける。

染色対象 酸性分子:・・核 塩基性分子:タンパク質・細胞質
色素分子の性質 塩基性 酸性
親和性のある構造 核酸 タンパク質
親和性のある 核 細胞質
呈する現象 好塩基性 好酸性
flowchart TD
  A["色素分子の電荷"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basic dye'>塩基性色素</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hematoxylin'>ヘマトキシリン</span>など)"]
  B --> C["酸性の分子=核酸(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ribonucleic acid'>RNA</span>)を染める=好塩基性"]
  A --> D["酸性色素(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eosin'>エオジン</span>など)"]
  D --> E["塩基性の分子=タンパク質を染める=好酸性"]

⭐ 「好塩基性=核・rER・リボソームが多い=タンパク質合成が盛んな細胞(形質細胞・活発な線維芽細胞など)」「好酸性=ミトコンドリア・が多い細胞質」という対応は、細胞のを染色パターンから読み取る最頻出の推論パターン(03-1-cellsの線維芽細胞の項も参照)。

💡 「が」は一段省略した言い方である。 自体は無色で、酸化(熟成)されてヘマテインになり、さらにアルミニウムなどの媒染金属と化合物(レーキ)を作ってはじめての色素としてはたらく1。この赤い色素-金属がのリン酸に静電的に結合し(ヒストンではない)、染色後にpH5.5以上の水で青出し(bluing)すると水に不溶な青色化合物へ変わる——標本を水洗すると核が青く「出てくる」のはこの段階である2。上の表の「」という記載はこのヘマラムとしての性質を指している。

異染性

一部の(例:, toluidine blue)は、通常なら青く染めるはずの構造を、対象分子の性質によって別の色(赤紫色など)に変えて染めることがある。これをと呼ぶ。

  • 例:肥満細胞の顆粒に含まれるヘパリンは負電荷を多数もつため、で染めると青ではなく赤紫色に染まる(詳細は 03-1-cells)。

特殊染色

H&Eでは染まりにくい、あるいは区別がつきにくい特定の構造を強調するために、目的別のが用いられる。

染色法 検出対象 呈する色 主な用途
PAS反応(periodic acid–Schiff) ・中性糖・基底膜の 濃い赤紫〜マゼンタ 基底膜(02-4-basement-membrane)、の裏付け
(, reticular fiber) 黒色 の可視化(03-2-fibers)
弾性線維 褐色 弾性線維・の検出(03-2-fibers)
・フクシン染色 弾性線維 濃紫色 と同様、・血管壁の弾性線維に使用
・ と筋・細胞質を色分け 線維=青緑、筋・細胞質=赤 線維化の評価、内の線維量の比較

💡 を選ぶときは「何を強調したいか」からするとよい。基底膜やなど糖質を見たければPAS、の構造を見たければ、弾性線維の走行を見たければ、というように染色法=検出対象の分子的性質(糖質か・か・弾性タンパクか)で対応づけて覚えると混同しにくい。

まとめ

  • H&E染色は(→核酸を好塩基性に染色)と(酸性色素→タンパク質を好酸性に染色)の組み合わせが基本。
  • 実体は「ヘマテイン+媒染金属のレーキ」がのリン酸に結合し、青出しで不溶性の青色になるという2段階である。
  • はなどのが、対象分子(例:肥満細胞のヘパリン)の性質によって本来と異なる色に染まる現象。
  • PAS反応(糖質・基底膜)、()、(弾性線維)などのは、H&Eでは強調されない特定分子を狙って可視化する。

出典

  1. 1.Nuclear staining with alum hematoxylin(Biotechnic & Histochemistry・2009)ヘマトキシリンそのものは色素ではなく、酸化されてヘマテインになり、アルミニウムなどの媒染金属と配位化合物(レーキ)を作ってはじめて核に結合する。60を超えるヘマラム処方が色素対媒染剤比で整理されている閲覧 2026-08-24
  2. 2.Does progressive nuclear staining with hemalum (alum hematoxylin) involve DNA, and what is the nature of the dye-chromatin complex?(Biotechnic & Histochemistry・2018)ヘマラムの赤い陽イオン性色素-金属錯体がDNAのリン酸陰イオンに静電的に結合する(ヒストンではない)。染色液中はpH2.0〜3.5で赤色、pH5.5以上での青出し(bluing)で不溶性の青色化合物に変わる閲覧 2026-08-24