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Disease Atlas · 眼科 · 疾患

蒸発亢進型ドライアイ

Evaporative dry eye

臓器系
眼科
科目
Histology
トピック
組織学 8.3:皮膚・付属器:付属器
鑑別疾患
乾燥性角結膜炎
症状
慢性眼瞼炎・マイボーム腺機能不全

🧠 全体像という1つの言葉の裏にはの「量」が足りない減少型と、は十分あるのに「質」が悪くてしてしまう亢進型という、機序がまったく違う2つの病態がある。学習の核心は、⭐ 亢進型が減少型より多く、その主因はであるという非対称性を押さえることである12。だからの分かれ方も対照的になる——の短縮が主体で、の「量」を測るは正常のことが多い。⚠️ もう一つの注意点は、日本の(アジア・学会 2016年基準)は国際的なTFOS DEWS IIとは枠組みが違うため、どちらの基準で話しているかを常に明示する必要があることである。

定義と用語の整理:涙液減少型との対比

亢進型は、からの分泌量そのものは保たれているのに、層の(油層)の異常によりが亢進し、・眼表面障害を来す病態である。減少型という分泌の「量」の問題であるのに対し、亢進型は油層を作るの機能不全という「質」の問題であり、分泌そのものは低下しない。原因も対処もまったく異なる。

項目 亢進型 減少型
分泌量 保たれる 低下
主な機序 によるの異常 の分泌低下(症候群など)
短縮(診断の主体) 短縮することもある
正常のことが多い 低下
代表的な治療 によるの改善 の補充、段階的抗炎症治療

全体の中で亢進型の占める割合が減少型より大きいと理解されており、その主因はである——臨床・疫学研究の双方でMGDがの最も多い原因と位置づけられている1。TFOS DEWS IIはこの2型を独立した病態ではなく連続体(スペクトラム)として捉えており、多くの患者は両方の要素を併せ持つ。

病態生理

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Meibomian gland'>マイボーム腺</span>開口部の角化・閉塞"] --> B["腺内に脂質が停滞"]
    B --> C["常在菌のリパーゼが<br>トリグリセリドを分解"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free fatty acids'>遊離脂肪酸</span>が生成"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear fluid (lacrimal fluid)'>涙液</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lipid layer'>脂質層</span>が不安定化"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear fluid (lacrimal fluid)'>涙液</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='evaporation'>蒸発</span>が亢進"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='BUT'>涙液層破壊時間</span>が短縮"]
    G --> H["眼表面の浸透圧上昇・炎症"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='photophobia'>羞明</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='foreign body sensation'>異物感</span>などの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sicca symptoms'>乾燥症状</span>"]

層は油層(由来)・由来)・由来)の3層からなる。亢進型が主に扱うのは油層の異常で、により開口部が角化・閉塞すると、腺内に停滞した脂質が常在菌のリパーゼでトリグリセリドからへ分解され、このを不安定化させる。油層が薄く不安定になるとからのを防げなくなり、分泌量そのものは正常でも眼表面が乾燥する。

診断:日本の基準とTFOS DEWS IIの違い

⚠️ 」という診断名だけでは、どちらの基準で診断されたかが分からない。 国際的なTFOS DEWS IIと日本(アジア・学会)の基準は、必要な検査項目そのものが異なる。

日本の基準(アジア・学会 2016年) TFOS DEWS II(2017年)
必須項目 症状+5秒以下の2項目のみ3 症状浸透圧・など複数の所見から1つ以上
基準から除外(低い再現性・感度を理由に、旧2006年基準では必須だった)3 の必須項目ではない(病型分類の参考所見)
病型分類 診断そのものには型分類を要さない 減少型・亢進型をスペクトラムとして評価

亢進型の診断では、BUTの短縮が中心的な所見になり、は正常のことが多い。これはの「量」ではなく「質(しやすさ)」の異常だからである。

治療

治療の考え方も減少型とは軸が異なり、を「補充する」発想ではなくの質を「改善する」発想が中心になる。

  • が基盤。 開口部の閉塞を解除し脂質の排出を促す。中止すればするため継続が前提になる。
  • は補助的に用いるが、減少型のように分泌量を補うことが主目的ではなく、脂質を含む製剤が選ばれることが多い。
  • ジクアホソル:P2Y2受容体作動薬としてからの水分・分泌を促進し、層の安定化に働く。日本・韓国で治療薬として承認されている4
  • レバミピド分泌を促進し眼表面を保護する目的で用いられる。
  • 難治例では減少型と同様に治療が検討されることがあるが、第一選択はによるの改善である。

⚠️ 亢進型に、減少型と同じ「を頻回に点眼して量を補う」発想をそのまま当てはめない。 原因がの質的異常である以上、で腺の機能そのものを改善する介入が主体になる。

まとめ

  • 亢進型分泌量が保たれたままの異常でが亢進する病態で、の中で減少型より多くを占め、主因はである。
  • 減少型との違いはに表れる——の短縮が主体で、は正常のことが多い。
  • 日本の2016年(症状+BUT 5秒以下の2項目)は、複数の所見を組み合わせるTFOS DEWS IIと枠組みが異なり、を基準から除外している点が特徴である。
  • 治療はによるの改善が基盤で、ジクアホソル・レバミピドなどの点眼を補助的に用いる。減少型と同じ「量を補う」発想をそのまま当てはめない。

出典

  1. 1.TFOS DEWS II Definition and Classification Report(Tear Film & Ocular Surface Society (TFOS)・2017)蒸発亢進型ドライアイ(EDE)の成分が涙液減少型(ADDE)の成分より一般的であるという理解のもと分類図でEDEに大きな面積が割り当てられていること、マイボーム腺機能不全(MGD)が臨床・疫学研究の双方でドライアイの最も多い原因と考えられていることを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.The International Workshop on Meibomian Gland Dysfunction: Executive Summary(Tear Film & Ocular Surface Society (TFOS) / Investigative Ophthalmology & Visual Science・2011)マイボーム腺機能不全が世界的にみてドライアイの最多原因である可能性が高く、その重要性が過小評価されているごくありふれた病態であることを確認した閲覧 2026-08-03
  3. 3.Changes in Distribution of Dry Eye Disease by the New 2016 Diagnostic Criteria from the Asia Dry Eye Society(Scientific Reports・2018)日本を含むアジア・ドライアイ学会の2016年診断基準が自覚症状陽性と涙液層破壊時間(TBUT)5秒以下の2項目のみで診断でき、2006年基準にあったシルマー試験I法・生体染色を低い再現性・感度を理由に基準から除外したことを確認した閲覧 2026-08-11
  4. 4.Diquafosol Ophthalmic Solution 3 %: A Review of Its Use in Dry Eye(Drugs・2015)ジクアホソル点眼液3%がP2Y2受容体作動薬として涙液・ムチン分泌を促進する薬剤であり、日本と韓国でドライアイの治療薬として承認されていることを確認した閲覧 2026-08-11