内科学

内科学 · S-36

ヘモクロマトーシスとウィルソン病

Hemochromatosis and Wilson Disease

前提:病態
代謝性・遺伝性肝疾患
前提:正常
ヘムの生合成と分解;鉄の恒常性
疾患
ウィルソン病ヘモクロマトーシス
検査値
トランスフェリン飽和度亜鉛血清銅・セルロプラスミン
画像所見
心臓・肝臓のT2*MRI

🧠 全体像:は–系異常による鉄吸収過剰、はATP7B異常による胆汁中排泄障害である。いずれも肝障害だけでなく心、内分泌、関節またはを来すが、単一のだけで診断しない。

比較

項目
主な遺伝 HFE C282Y が代表;HJV、HAMP、TFR2、SLC40A1など ATP7B
蓄積metal 鉄
臓器像 肝硬変/HCC、diabetes、心筋症、hypogonadism、症、色素沈着 肝炎/肝不全、tremor・・、精神症状、Coombs陰性溶血
スクリーニング +1 、24時間尿中、、肝、遺伝子2
第一治療 または;は緊急移植

ヘモクロマトーシス

flowchart TD
    A["肝障害・家族歴・鉄過剰所見"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transferrin saturation'>TSAT</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ferritin'>フェリチン</span><br>空腹時採血は必須ではない"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transferrin saturation'>TSAT</span>高値<br>女性45%超/男性50%超を目安"}
    C -->|"はい"| D["HFE遺伝子型+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secondary iron overload'>二次性鉄過剰</span>除外"]
    C -->|"いいえ"| E["炎症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease'>MASLD</span>・アルコールなど高<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ferritin'>フェリチン</span>原因"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>鉄定量/線維化評価;選択例で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='liver biopsy'>肝生検</span>"]

⚠️ HFE関連はが低い。 C282Yであっても、鉄過剰関連疾患(肝硬変・・・・症候性・第2/第3ののいずれかを鉄過剰の証明とともに満たすもの)が確認されたのは、31,192人を平均12年追跡したコホートで男性28.4%(95%CI 18.8〜40.2)、女性1.2%(95%CI 0.03〜6.5)にすぎなかった3。「遺伝子型が陽性=発症する」ではない。 の結果だけでを始めず、鉄過剰と臓器障害の実測を伴わせる。

💡 診断にが要るかどうかは遺伝子型で決まる。 HFE p.Cys282Tyrなら、血清鉄指標だけ(女性で>45%かつ>200 μg/L、男性・閉経後女性で>50%かつ>300 μg/L)で診断してよい。閉経後の女性は男性の閾値を使う点に注意する。一方、・が高くても他の遺伝子型であれば、またはで過剰を証明する必要がある1。による定量が普及した結果、生検は「全例に必要な検査」ではなくなったが、非HFE型では依然として鉄過剰の証明が要る。

は炎症・肝障害でも上がる。は朝の採血が望ましいが、空腹にしても診断能が改善する根拠は乏しく、空腹時採血を必須としない。、、によるを区別する。は通常500 mLを週1回程度からに合わせ、 50〜100 ng/mLを目標に導入後、再蓄積に応じ維持する。 2022はこの範囲を段階で分け、は<50 μg/L、は<100 μg/Lを目標としている1。診断時には線維化の進行度と他臓器障害を評価し、進行線維化例はスクリーニングの対象に入れる。Hbを毎回監視する。鉄・高用量ビタミン C を避けるが、一般食品の過度な鉄制限は不要である。不能の輸血性鉄過剰などではを用いる。

ウィルソン病

低値、24時間尿中高値、Kayser–Fleischer輪、肝定量、ATP7B解析を組み合わせなどで判断する。は炎症、妊娠、他の肝不全で変動し、正常でもを除外できない。家族内スクリーニングが必要である。

⚠️ には「これ1つで決まる検査」が無い。 は、標準的なと表現型分類が無いために遺伝子型・表現型研究が進まないという問題意識から、2001年4月にライプツィヒで開かれた第8回国際・会議のワーキングパーティで合意されたものである。その前提として、を100%の確実さで確定または除外できる単独の検査は存在しないと明記されている。神経症状を伴う例の診断は容易だが、非神経型(肝型)では難しい。ATP7Bには200を超える病因変異があり大半は単一家系限りで、白人ではH1069Q・3400delC・2299insC、日本・中国・韓国ではR778Lが比較的多い2。低値を「陽性所見の1つ」として点数化するであって、単独の診断根拠ではない。

状況 治療
症候性肝・ またはなど;神経症状の一過性悪化に注意4
無症候・維持療法 または低用量を個別化
/溶血、内科治療不応の 緊急評価;としてなど

-ERNの2025年ガイドラインは、有意な肝障害があるでは単独ではなくを推奨している4。の多い食品は治療初期に控えるが、薬物療法の代替ではない。生涯治療を中断せず、24時間尿中、非、、尿、肝機能などで過少・過剰治療を監視する。

まとめ

  • 鉄過剰は+後に遺伝子型/画像で確認し、高単独で診断しない。
  • はで 50〜100 ng/mLを目標とする。
  • は複数検査を統合し、では待ちにせず緊急移植評価を行う。

出典

  1. 1.EASL Clinical Practice Guidelines on haemochromatosis(European Association for the Study of the Liver・2022)ヘモクロマトーシスはトランスフェリン飽和度上昇と進行性の鉄蓄積を特徴とし、主に肝が侵される。HFE p.Cys282Tyrホモ接合体では血清鉄指標(女性でTSAT>45%かつフェリチン>200 μg/L、男性・閉経後女性でTSAT>50%かつフェリチン>300 μg/L)のみで診断できるが、他の遺伝子型ではMRIまたは肝生検による肝鉄過剰の証明を要する。診断時に線維化の進行度と他臓器障害を評価し、進行線維化例は肝細胞癌スクリーニングの対象とする。瀉血の治療目標は導入期がフェリチン50 μg/L未満、維持期が100 μg/L未満である。閲覧 2026-08-25
  2. 2.Diagnosis and phenotypic classification of Wilson disease(Liver International・2003)神経症状を伴うウィルソン病の診断は容易だが、非神経型では難しい。現時点で、ウィルソン病を100%の確実さで確定または除外できる単独の検査は存在しない。`ATP7B`には200を超える病因変異が報告され、その大半は単一家系にしか見られない(白人ではH1069Q・3400delC・2299insC、日本・中国・韓国の患者ではR778Lが比較的多い)。標準的な診断基準と表現型分類が無いことが遺伝子型・表現型の研究を妨げていたため、2001年4月16〜18日にライプツィヒで開かれた第8回国際ウィルソン病・メンケス病会議のワーキングパーティで診断スコアが合意された(ライプツィヒスコア)閲覧 2026-08-25
  3. 3.Iron-overload-related disease in HFE hereditary hemochromatosis(The New England Journal of Medicine・2008)北欧系の40〜69歳31,192人を平均12年追跡したMelbourne Collaborative Cohort Studyで、HFE遺伝子型別に層化した1,438人(C282Yホモ接合体203人=女性108人・男性95人を全数含む)を臨床・生化学的に評価した。鉄過剰関連疾患(鉄過剰の証明に加え、肝硬変・肝線維化・肝細胞癌・トランスアミナーゼ上昇・医師が診断した症候性ヘモクロマトーシス・第2/第3中手指節関節の関節症のいずれか)が確認されたC282Yホモ接合体の割合は、男性28.4%(95%CI 18.8〜40.2)、女性1.2%(95%CI 0.03〜6.5)にとどまった。C282Yホモ接合体以外で鉄過剰関連疾患が確認されたのは複合ヘテロ接合体1例のみだった閲覧 2026-08-25
  4. 4.EASL-ERN Clinical Practice Guidelines on Wilson's disease(European Association for the Study of the Liver / European Reference Network・2025)Wilson病の有意な肝障害では亜鉛単独ではなくキレート薬を推奨した。閲覧 2026-08-25