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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 疾患

原発性副甲状腺機能亢進症

Primary hyperparathyroidism

別名
PHPT
臓器系
内分泌・代謝
科目
Internal MedicineSurgery
トピック
内科学 E-04:カルシウム代謝異常内科学 S-12:副甲状腺機能亢進症・低下症外科学 S-04:副甲状腺手術
合併症
線維性骨炎
続発疾患
大腿骨頸部・転子部骨折
関連疾患
副甲状腺機能低下症
治療薬
アレンドロネートデノスマブ
症状
悪心筋力低下倦怠感骨痛骨変形食欲不振多尿便秘
検査値
アルブミン
原因となる疾患
多発性内分泌腫瘍症

🧠 全体像は、副甲状腺自体が自律的にを出し続けてしまう病気である。血清Caが高いのにPTHが抑制されていない(高値または「不適切に正常」)という組み合わせが診断の核心で、これは腎不全やビタミンD欠乏で二次的にPTHが上がるとは正反対の力学である。現在は健診の血液検査で無症候のうちに見つかる例が大半を占め、治療の中心はだが、「誰に手術を勧めるか」を決める生化学・骨・腎・年齢の基準を押さえることが実地で最も重要になる。

病態

何が起きているか

副甲状腺は通常、血清Caが低下したときにPTHを分泌して回復させるの一部である。PHPTでは、この回路のセンサーとはに副甲状腺細胞(多くは単一腺の腺腫)が自律的に増殖・分泌を続けてしまう。

病理 頻度 特徴
単一腺腺腫 約80〜85% 最も多い原因
多腺性過形成 約10〜15% 家族性・/MEN2Aなど遺伝性症候群を疑う契機になる
1%未満 著明な高Ca血症、を伴うことがある

PTHはを促進し、腎でのCa再吸収とリン排泄を増やし、産生を介して腸管Ca吸収も高める。PHPTではこの3経路すべてが「Caを下げる必要がない」のに働き続けるため、高Ca血症と(多くは)低〜正常低値のリンが特徴になる。

flowchart TD
    A["副甲状腺の自律的な腺腫・過形成"] --> B["PTHが血清Caと<span class='jp-term jp-term-diagram' title='indifference'>無関係</span>に分泌され続ける"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone resorption'>骨吸収</span>が促進される"]
    B --> D["腎でCa再吸収・リン排泄が増加する"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active vitamin D'>活性型ビタミンD</span>産生を介し腸管Ca吸収が増加する"]
    C --> F["血清Caが上昇するが、PTHは抑制されない"]
    D --> F
    E --> F
    F --> G["骨密度低下・腎結石・高Ca血症症状"]

💡 「高Caなのに、正常範囲内であってもPTHが下がっていない」という点が診断の核心である。健常者なら高Ca血症に対してPTHは検出感度以下まで抑制されるはずであり、正常範囲内に留まっていること自体が「不適切」である。

二次性・三次性副甲状腺機能亢進症との対比

項目 原発性 二次性
血清Ca 高値 低値〜正常 高値
PTH 高値/不適切に正常 高値
主な背景 単腺腺腫、多腺過形成、まれに癌 、ビタミンD欠乏、吸収不良 長期二次性亢進症後の自律化(腎移植後など)
治療の軸 手術適応の評価 原疾患治療、リン管理、ビタミンD製剤 手術適応の評価(自律化した腺を標的)

臨床像

かつては腎結石・・消化器症状・精神症状(stones, bones, groans, psychic overtones)が代表的とされたが、現在は健診での偶発的な高Ca血症として見つかる無症候〜軽症例が大半である。

  • 腎:腎結石、、多尿、口渇
  • 骨:骨密度低下、。健診による早期発見が広まる前は(嚢胞性)まで進行する例もみられたが、現在は先進国ではまれになった
  • 消化器:、便秘、悪心、まれに膵炎
  • 神経・精神:感、集中力低下、抑うつ、
  • 心血管:高血圧との関連が指摘されるが、独立した心血管リスクとしての意義は議論が続く

⭐ 無症候性であっても、腎結石・骨密度低下・腎機能低下は「症状がない」だけで進行していることがあるため、後述の手術適応基準に沿って系統的に評価する。

診断

診断は生化学的に行う。局在画像(超音波、、4D-CTなど)は「病変があるかどうか」を判定する検査ではなく、手術を決めた後に「どこを探すか」を決めるための術前計画の検査である。

flowchart TD
    A["高Ca血症を確認(アルブミン補正または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ionization'>イオン化</span>Ca)"] --> B["PTHを測定"]
    B --> C{"PTHが高値または不適切に正常か"}
    C -->|"いいえ(PTH抑制)"| D["悪性腫瘍・ビタミンD過剰・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granulomatous disease'>肉芽腫性疾患</span>などPTH非依存性の原因を検索"]
    C -->|"はい"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary hyperparathyroidism, PHPT'>原発性副甲状腺機能亢進症</span>を考える"]
    E --> F["24時間尿Ca・Cr、家族歴で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='familial hypocalciuric hypercalcemia (FHH)'>家族性低Ca尿性高Ca血症</span>を除外"]
    F --> G["腎機能・25(OH)D・DXA・腎画像で臓器障害を評価"]
    G --> H["手術適応基準を確認"]
    H --> I["局在画像(超音波・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sestamibi (MIBI)'>セスタミビ</span>・4D-CT)は手術決定後の術前計画に用いる"]

家族性低Ca尿性高Ca血症(FHH)の除外

FHHは(calcium-sensing receptor:CaSR)の不活化変異により起こり、軽度の高Ca血症・相対的な低Ca尿・家族歴を特徴とする。尿Ca/比が参考になるが、ビタミンD欠乏や腎機能低下でも変動するため、境界例では遺伝学的検査を検討する。

⚠️ FHHはPHPTと生化学的に類似するが、通常のは無効かつ不要である。誤って手術しないよう、若年発症・軽度高Ca血症・家族歴がある例では必ず鑑別に挙げる。

治療

手術適応

症候性PHPT(腎結石・・明らかな高Ca血症症状)はの適応である。無症候性でも、次のいずれか1つを満たせば手術を推奨する(2022年 Fifth International Workshop on Asymptomatic Primary Hyperparathyroidism による改訂基準)。

領域 基準
血清Ca 施設より1.0 mg/dL(0.25 mmol/L)超高い
DXAでTスコア-2.5以下(・橈骨遠位1/3のいずれか)、または
eGFRまたは60 mL/min未満、腎結石・(画像所見)
尿Ca 女性240〜250 mg/日超、男性300 mg/日超の
年齢 50歳未満(それ単独で手術推奨の十分条件)

閉経前女性・50歳未満の男性では骨密度をTスコアではなくで評価する。いずれの基準も満たさない場合でも、患者と外科医が合意し禁忌がなければ根治目的の手術は選択肢になる。

術式と術後合併症

術式 主な適応
選択的副甲状腺摘除(±術中PTH測定) 局在画像が一致する単腺腺腫
検索 局在陰性・不一致、多腺病変疑い、遺伝性症候群、
亜全摘(約3.5腺摘除) 多腺過形成

術後は低Ca血症(特に重症例での)と障害(嗄声、)を監視する。ではCa・PTH・Mg・リンをフォローし、経口または静注Caとを補充する。

非手術管理

手術適応を満たさない、または手術できない患者は、Ca・腎機能・骨密度・腎結石を定期的に評価する。骨密度低下にはなどのを、高Ca血症のコントロールにはなど)を目的別に使い分ける。十分量の水分摂取と、極端なCa制限を避けることも基本方針である。

flowchart TD
    A["生化学的にPHPTと診断・FHHを除外"] --> B{"手術適応基準(Ca・骨・腎・尿Ca・年齢)を満たすか"}
    B -->|"はい、または症候性"| C["局在画像で術前計画し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parathyroidectomy'>副甲状腺摘出術</span>"]
    C --> D["術後は低Ca血症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hungry bone syndrome'>骨飢餓症候群</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='recurrent laryngeal nerve (RLN)'>反回神経</span>障害を監視"]
    B -->|"いいえ"| E["Ca・腎機能・DXA・腎結石を定期評価"]
    E --> F["骨密度低下には<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bisphosphonates'>ビスホスホネート</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='denosumab'>デノスマブ</span>、高Ca血症には<span class='jp-term jp-term-diagram' title='calcimimetics'>カルシミメティクス</span>を個別に検討"]

まとめ

  • PHPTは副甲状腺の自律的な腫瘍・過形成によるPTH過剰分泌で、高Ca血症にもかかわらずPTHが抑制されない点が診断の核心。
  • 現在は無症候性の偶発的高Ca血症として見つかる例が大半で、局在画像は診断ではなく術前計画に用いる。
  • は生化学的に類似するが手術適応ではなく、必ず鑑別する。
  • 無症候性でも血清Ca、骨密度、腎機能、尿Ca、年齢のいずれかの基準を満たせばを推奨する。
  • 手術しない・できない例は定期評価に加え、骨密度には、高Ca血症にはで個別に対応する。