病理学

病理学 · A/38

自己免疫疾患の病態機序

Pathomechanism of autoimmune diseases

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Mechanism / 機序High-yield / ポイント

🧠 全体像:自己免疫はの喪失で起こり、(胸腺・骨髄での)と(・Treg・Fasアポトーシス)の両方が破られて初めて臨床的疾患に至る——や活性化はその「破る」きっかけを説明する。

定義

自己免疫 はに対する免疫反応。は健常者にも存在し、細胞のや傷害(虚血・壊死)で生じる。中核となる病態機序はの。疾患は:

  • — 1つの臓器・細胞型に対する反応 → 限局した傷害。
  • 全身性 — 多くの抗原に対する多数の自己抗体を伴う。

免疫寛容

= に対する免疫応答の欠如。2つの機構で維持される:

  • — 胸腺・骨髄での成熟過程における自己反応性T/Bリンパ球の除去。胸腺のが自己MHC上にを提示 → 自己反応性の未熟T細胞はアポトーシス(・negative selection)。B細胞でも同様の編集。
  • — 逃れた自己反応性細胞を排除:
    • — (例:B7)がないときの不活化。
    • による抑制 — サイトカイン(IL-10、)が自己反応性応答を抑制。
    • — 反復刺激 → Fas/FasLによるアポトーシス。

⭐ 中枢性・それぞれの破綻は、ヒトのという「自然実験」で裏づけられている。 でののを担う転写因子AIREが変異すると、ヒトでも多臓器の自己免疫疾患(APECED/APS-1)が起こり、の破綻を直接示す1。の発生を決める転写因子FOXP3が変異すると、ヒトで・多症・腸症(IPEX症候群)が起こり、の破綻を示す2。旧来の「中枢性=、末梢性=・Treg・AICD」という骨格は変わらず、これらのはその骨格が壊れたときに何が起こるかを示す実例として位置づく。

寛容を破る機序

  • — 微生物エピトープが自己と(例:の)。
  • T細胞の破綻 — 感染・壊死がのを上昇 → T細胞活性化の増加。
  • 活性化(例:EBV)。
  • 自己分子の修飾(薬物・、部分消化)→ 。

エフェクター機構と病原因子

は自己抗体(II型/III型過敏)とT細胞(IV型)が介在し、免疫複合体の沈着がよくみられる。Th1/Th17のサイトカイン(IFN-γ、IL-17)が慢性炎症を駆動し、Tregのが自己免疫を許す。

: 遺伝(、関連、 — CTLA-4、PTPN22)、感染(抗原放出)、紫外線、喫煙(分子修飾)、性別( — 女性優位)。

💡 関連の強さは疾患によって桁が違う。 患者のHLA-B27陽性率はので78.0%(95%信頼区間73.9〜81.9%)に達する3。セリアック病では-DQ2・-DQ8が既知の関連の中でも特に強く、小児220例対対照270例の解析では-DQ2ホモ接合がセリアック病リスクを16.49倍、-DQ8ホモ接合が4.39倍に高めた4——ただしいずれも「保有=発症」ではなくの増加である。

⭐ 「女性優位」の機序はホルモンだけにとどまらない。 思春期以降の女性の胸腺ではエストロゲンがAIREプロモーターのメチル化を介してAIRE発現を下げる(の低下)ことがヒト・マウスで示されている5。これに加え、女性でのみ発現しX染色体不活性化を担う長鎖非コードXistが、多数の性タンパクを含むリボ核タンパク複合体のになる——雄マウスに非サイレンシング型Xistを誘導発現させるだけで自己抗体が生じ、プリスタン誘発ループスモデルでは野生型の雄より重いを示し、ヒトの自己免疫疾患患者もXIST RNP構成成分への自己抗体を有意に持つ6。

全身性
、、、重症筋無力症、Graves病、Goodpasture、1型糖尿病、、、 SLE、関節リウマチ、、、、

💡 ポイント: 自己免疫 = の喪失。 = 胸腺・骨髄での、末梢性 = 、Treg抑制、Fasアポトーシス。寛容は、の破綻、活性化、分子修飾で破られる。リスク:HLA+女性+感染/紫外線/喫煙。エフェクター:自己抗体(II/III型)+T細胞(IV型)。

まとめ

  • 自己免疫の中核病態はの喪失であり、疾患と全身性疾患に大別される。
  • は胸腺・骨髄でのの、は・Treg抑制・で維持される。
  • 寛容は、T細胞の破綻、活性化、自己分子の修飾で破られる。
  • は関連の、感染、紫外線、喫煙、女性であることが挙げられる。
  • は自己抗体(II型/)とT細胞(IV型)が担い、Th1/Th17サイトカインが慢性炎症を駆動する。

出典

  1. 1.Projection of an immunological self shadow within the thymus by the aire protein(Science・2002)転写因子AIREは胸腺髄質上皮細胞で末梢組織限局抗原を異所性に発現させること、AIRE欠損マウスは髄質上皮細胞での末梢抗原の異所性転写が特異的に低下し多臓器の自己免疫疾患を発症すること、ヒトでもAIREの機能欠損型変異が多臓器自己免疫(APECED/APS-1)を起こすことを確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.Control of regulatory T cell development by the transcription factor Foxp3(Science・2003)Foxp3は自然発生するCD4陽性制御性T細胞に特異的に発現し制御性T細胞の発生を決める鍵遺伝子であること、ヒト・マウスでこの遺伝子が欠損すると自己免疫・炎症性症候群(ヒトではIPEX症候群)を起こすことを確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.Prevalence of peripheral and extra-articular disease in ankylosing spondylitis versus non-radiographic axial spondyloarthritis: a meta-analysis(Arthritis Research & Therapy・2016)強直性脊椎炎患者におけるHLA-B27陽性率のメタアナリシスによる統合有病率は78.0%(95%信頼区間73.9〜81.9%)であることを確認した閲覧 2026-08-27
  4. 4.Evaluation of HLA-DQ Genetic Risk Classes in Pediatric Cases for Celiac Disease: Role of HLA-DQ2 and DQ8 Haplotypes(Indian Pediatrics・2026)トルコの単一施設で2014〜2024年にセリアック病を疑われHLA-DQタイピングを受けた2〜18歳490例(うちセリアック病220例・対照270例)の後方視的検討で、HLA-DQ2ホモ接合はセリアック病のリスクを16.49倍、HLA-DQ8ホモ接合は4.39倍に高めた。セリアック病例の内訳はHLA-DQ2のみ陽性63.6%・HLA-DQ8のみ陽性11.3%・両者陽性15.9%で、9%はいずれも陰性だった。HLA対立遺伝子の頻度は集団によって異なるため、この倍率はトルコの小児集団での推定値である閲覧 2026-08-27
  5. 5.Estrogen-mediated downregulation of AIRE influences sexual dimorphism in autoimmune diseases(Journal of Clinical Investigation・2016)抄録で、ヒトとマウスの胸腺では思春期以降に女性のAIRE発現(mRNA・タンパク)が男性より低いこと、エストロゲン処理が培養ヒト胸腺上皮細胞・免疫不全マウスに移植したヒト胸腺組織・マウス胎仔胸腺器官培養でAIRE発現を低下させAIREプロモーターのCpGメチル化を増やしたこと、エストロゲン受容体α欠損マウスではAIRE発現の性差が消えたことを確認した閲覧 2026-09-23
  6. 6.Xist ribonucleoproteins promote female sex-biased autoimmunity(Cell・2024)女性でのみ発現する長鎖非コードRNA Xistが多数の自己抗原性成分を含むリボ核タンパク複合体を形成すること、雄マウスに非サイレンシング型Xistを誘導発現させるだけで自己抗体が生じプリスタン誘発ループスモデルで野生型雄より重い多臓器病変を示したこと、ヒトの自己免疫疾患患者もXIST RNP構成成分への自己抗体を有意に持つことを確認した閲覧 2026-08-27