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Banff分類

Banff classification

臓器系
腎・泌尿器免疫・膠原病
科目
PathologyInternal MedicineHistopathology
トピック
病理学 A/37:移植拒絶反応(移植片拒絶)内科学 N-04:腎移植と腎代替療法組織病理 H1-062:腎移植後急性拒絶反応

🧠 全体像:Banff分類は、生検の所見を単一の点数へ合算するのではなく、糸球体炎(g)・間質炎(i)・(t)・動脈内膜炎(v)などの急性期病変スコアと、(ci)・(ct)・糸球体症(cg)などの慢性期病変スコアをそれぞれ独立に0〜3点で判定し、その組み合わせパターンから「正常」「抗体関連拒絶(ABMR)」「境界病変」「T細胞関連拒絶(TCMR)」「IF-TA」「その他」という診断カテゴリーへ振り分ける多変量の分類体系である。C4d染色・(DSA)という免疫学的所見と組織所見を統合する点がABMRの診断で特に重要で、数年おきの国際会議(Banff会議)のたびに閾値・カテゴリーが改訂され続けている。

目的と適用場面

内容
目的 生検の所見を国際共通の言語で記述し、の型・重症度を診断する
対象 腎移植後の患者。臨床的にを疑って行う指標生検と、無症候でも一定間隔で行うの双方
使う場面 機能悪化(上昇・蛋白尿)の精査、(DSA)陽性化時の評価、免疫抑制強度を調整する判断
評価しないもの 以外の原因(、薬剤毒性、感染、原疾患再発)はカテゴリー6「その他」でとして扱われ、Banff分類そのものは原因を特定しない

の機序と時間軸(・急性・慢性)は病理 A/37:拒絶)を、移植適応や免疫を含む腎移植全体の文脈は内科学 N-04:腎移植とを参照。急性T細胞関連型拒絶のHE標本所見は H1-062:腎移植後急性で扱う。生検自体の適応・禁忌・検体要件は腎生検を参照。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal allograft'>移植腎</span>生検を施行<br>(症状精査 または <span class='jp-term jp-term-diagram' title='protocol biopsy'>プロトコル生検</span>)"] --> B["光顕・免疫染色(C4d)・臨床情報(DSA)を統合"]
    B --> C["急性期スコアを評価<br>g・i・t・v・ptc・C4d"]
    B --> D["慢性期スコアを評価<br>cg・ci・ct・cv"]
    C --> E["抗体関連拒絶(ABMR)を疑う所見<br>g・ptc・C4d・DSA"]
    C --> F["T細胞関連拒絶(TCMR)を疑う所見<br>i・t・v"]
    D --> G["IF-TA(原因不明の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interstitial fibrosis'>間質線維化</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tubular atrophy'>尿細管萎縮</span>)を評価"]
    E --> H["診断カテゴリーを確定<br>正常/ABMR/境界病変/TCMR/IF-TA/その他"]
    F --> H
    G --> H

構成要素と配点

Banff分類は単一の合計点を出すスコアではなく、複数のを個別に判定し、その組み合わせパターンから診断カテゴリーを確定する分類体系である。病変スコアは急性期の活動性を示す群と、慢性・を示す群に大別される1

急性期病変スコア

g(糸球体炎 glomerulitis)

0点 1点 2点 3点
糸球体炎なし 糸球体の25%未満に炎症細胞の充満・内皮細胞膨化 糸球体の25〜75%に炎症 糸球体の75%超に炎症

i(間質炎 interstitial inflammation)

0点 1点 2点 3点
非瘢痕皮質の10%未満 10〜25% 26〜50% 50%超

t( tubulitis)

0点 1点 2点 3点
尿細管内になし、または単発の巣のみ 1尿細管断面あたり単核球1〜4個 5〜10個 10個超、または他部位にi2/i3の間質炎とt2を伴う破壊が2か所以上

v(動脈内膜炎 intimal arteritis)

0点 1点 2点 3点
動脈炎なし 1本以上の動脈に軽度〜中等度の内膜炎 高度な内膜炎(25%以上) 動脈炎、フィブリノイド変化・平滑筋壊死を伴う

ptc(傍尿細管 peritubular capillaritis)

0点 1点 2点 3点
最重症部位でも白血球が3個未満 皮質傍尿細管毛細血管の10%以上に炎症があり、最重症部で3〜4個 同10%以上かつ最重症部で5〜10個 同10%以上かつ最重症部で10個超

C4d(傍尿細管毛細血管のC4d沈着)

0点 1点 2点 3点
陰性(0%) 0%超10%未満 10〜50%( 50%超(びまん性)

ではC4dスコア2以上、法ではスコア1以上を陽性として扱う1

慢性期病変スコア

cg(糸球体症 transplant glomerulopathy)

0点 1a点 1b点 2点 3点
基底膜二重化なし 光顕では確認できずでのみ3係蹄以上に二重化 最も傷害の強い糸球体で係蹄の1〜25%に二重化 26〜50% 50%超

ci( interstitial fibrosis)

0点 1点 2点 3点
皮質の5%以下 6〜25% 26〜50% 50%超

ct( tubular atrophy)

0点 1点 2点 3点
萎縮なし 皮質尿細管領域の25%以下 26〜50% 50%超

cv(血管内膜線維性肥厚 vascular fibrous intimal thickening)

0点 1点 2点 3点
慢性血管病変なし 内腔の25%以下が狭窄 26〜50%が狭窄 50%超が狭窄

いずれも1の閾値に基づく。

解釈とカットオフ

病変スコアの組み合わせは、次の6診断カテゴリーへ集約される。

カテゴリー 内容
1 正常または非特異的所見
2 :活動性・慢性活動性・慢性()・C4d染色陽性のみ(拒絶所見なし)に細分される
3 :TCMRの診断閾値には届かないがT細胞関連拒絶を疑う所見
4 T細胞関連拒絶(TCMR):急性および慢性活動性
5 IF-TA:原因不明の
6 その他:拒絶以外の原因(、薬剤毒性、感染、原疾患再発など)

TCMRのグレードは、i・tスコアが軽症側(IA/IB)を、v陽性がを規定する。

病型 (主要スコア)
境界病変 間質炎i1以上にを伴うが、下記TCMRの閾値には届かない2
急性TCMR IA i2以上+t2
急性TCMR IB i2以上+t3
急性TCMR IIA v1(i・tの程度によらない)
急性TCMR IIB v2(i・tの程度によらない)
急性TCMR III v3(動脈炎・
慢性活動性TCMR IA/IB 瘢痕部を含めた総間質炎(ti)・瘢痕部のが中等度以上に加え、t2(IA)またはt3(IB)
慢性活動性TCMR II 動脈内膜の線維性肥厚にと新生内を伴う

ABMRは、免疫学的所見(C4d・DSA)と微小血管炎症(g・ptc)、慢性変化(cg)の組み合わせで4区分される。

ABMR分類
活動性ABMR ①急性の所見(g>0かつ/またはptc>0の微小血管炎症、動脈内膜炎、急性など)、②抗体と内皮の相互作用の証拠(傍尿細管毛細血管のC4d線状陽性、g+ptc≧2の中等度以上の微小血管炎症、を示す遺伝子発現のいずれか1つ以上)、③DSAの血清学的証拠——の3つをすべて満たす3
慢性活動性ABMR 慢性の所見(cg1a以上、傍尿細管毛細血管基底膜の多層化、新規発症の動脈など)に、活動性ABMRと同じ②抗体と内皮の相互作用の証拠と③DSA陽性を伴う
慢性()ABMR 既往のABMR診断またはDSA陽性歴があり、cg1a以上・傍尿細管毛細血管基底膜の多層化などの慢性変化を伴うが、現在の所見(g+ptcの上昇、C4d陽性)を欠く2
C4d染色陽性のみ C4d陽性(でスコア2以上、でスコア1以上)だが、g・ptc・cg・vなど拒絶を示す組織所見を欠く

IF-TAはci・ctスコアからグレードI〜IIIへ対応する。

IF-TAグレード ci・ctスコア
I(軽度) ci1かつ/またはct1
II(中等度) ci2かつ/またはct2
III(高度) ci3かつ/またはct3

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 病変スコアの評価者間は項目によって差があり、特に境界病変・ptc・cg1a(のみで確認できる病変)は判定がばらつきやすい。

⚠️ v・cvスコアの判定には十分な数の動脈が採取されている必要があり、動脈を含まない検体ではTCMR grade II/IIIやcvスコアを判定できない。腎生検の項で述べた糸球体数不足によると同様、血管の不足もにつながる。

⚠️ 版によって閾値・カテゴリーが変わる。 2019年改訂で境界病変の閾値が「間質炎i1以上」へ戻され(2007年版のi0からの巻き戻し)、慢性活動性TCMRの判定にt-IFTAスコアが導入され、慢性()ABMRという新しいカテゴリーが追加された2。2022年改訂ではABMRの判定基準がさらに見直され、がしきい値を超えてもC4d・DSAがともに陰性ならABMRとせず、MVIがしきい値未満でもDSA陽性なら「probable AMR」に分類するなど、単独の病変スコアだけで機械的に判定しない設計へ変化した3。評価に使った版を確認せずに閾値を引用しない。

⚠️ Banff分類は組織の診断体系であり、単独では以外の病態——毒性、原疾患の再発、原因不明の——を除外できない。特にTCMRに類似した組織像を示すBK腎症は、免疫染色・核酸検査での鑑別が必要である。

まとめ

  • Banff分類は生検の所見を病変スコア(急性期:g・i・t・v・ptc・C4d、慢性期:cg・ci・ct・cv)に分解し、その組み合わせで診断カテゴリーを確定する体系であり、単一の合計点は出さない。
  • 診断カテゴリーは正常/抗体関連拒絶(ABMR)/境界病変/T細胞関連拒絶(TCMR)/IF-TA/その他の6区分に整理される。
  • TCMRはi・tスコアがグレードIA・IBを、v陽性がi・tによらずグレードII・IIIを規定する。
  • ABMRはC4d・DSA・微小血管炎症(g・ptc)・慢性変化(cg)の組み合わせで、活動性・慢性活動性・慢性()・C4d染色陽性のみに分かれる。
  • 数年おきの国際会議で版が改訂され、境界病変の閾値やABMRの判定基準が変わってきたため、評価時は使用した版を確認する。

出典

  1. 1.A 2018 Reference Guide to the Banff Classification of Renal Allograft Pathology(Transplantation (Roufosse C, et al.)・2018)Banff分類の主要病変スコア——糸球体炎(g)、間質炎(i)、尿細管炎(t)、動脈内膜炎(v)、傍尿細管毛細血管炎(ptc)、C4d染色、移植腎糸球体症(cg)、間質線維化(ci)、尿細管萎縮(ct)、血管内膜線維性肥厚(cv)——それぞれの0〜3点(cgのみ0/1a/1b/2/3)の判定基準(浸潤細胞数・罹患割合などの閾値)と、正常/抗体関連拒絶/境界病変/急性T細胞関連拒絶/慢性活動性T細胞関連拒絶/IF-TA(原因不明の間質線維化・尿細管萎縮)/その他という診断カテゴリー構成を確認した。閲覧 2026-08-10
  2. 2.Key Points of the Banff 2019 Classification of Renal Allograft Pathology(Nephron (Tsuji T)・2023)2019年のBanff改訂で境界病変(borderline)の判定基準が「間質炎i1以上+尿細管炎」へ戻されたこと(2007年版のi0からの巻き戻し)、慢性活動性T細胞関連拒絶の判定にt-IFTAスコアが組み込まれたこと、慢性(非活動性)抗体関連拒絶(chronic inactive ABMR)が新設され、既往のABMR診断またはドナー特異的抗体陽性歴があり、cg>0や傍尿細管毛細血管基底膜の多層化などの慢性変化を伴うが現在の内皮活性化所見を欠く病態と定義されたことを確認した。閲覧 2026-08-10
  3. 3.Mini review Banff 2022 updated classification of renal allograft pathology(Nephron (Shimizu T, et al.)・2025)活動性ABMRの「抗体と内皮の相互作用の証拠」は、傍尿細管毛細血管のC4d線状陽性・中等度以上の微小血管炎症(g+ptc≧2)・内皮傷害を示す遺伝子発現の増加という3条件のうち少なくとも1つを満たすこととされること、2022年のBanff改訂で抗体関連拒絶(ABMR)の判定基準が見直され、微小血管炎症(MVI)がしきい値を超えてもC4d陰性・DSA陰性であればABMRとせず「MVI, DSA-negative, and C4d-negative」に分類すること、MVIがしきい値未満でもDSA陽性であれば「probable AMR(疑いABMR)」に分類すること、原因不明の急性尿細管障害(ATI)単独および新規の動脈内膜線維化(AIFNO)単独はABMR判定基準から除外されたことを確認した。閲覧 2026-08-10