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外科学 · B/14

原発性・転移性肝腫瘍(症状・診断・治療)

Primary and secondary liver tumors (symptoms, diagnosis, treatment)

前提:病態
肝腫瘍・腫瘍様病変肝硬変

ポッドキャスト

🧠 は多くが・肝硬変を背景に発生する。 そのため治療は腫瘍だけで決まらず、腫瘍病期・肝機能・全身状態の3つを同時に見て縦断的に組み替える1。一方、では転帰が主にの部位と組織型で決まり2、切除の可否は「全病変を取り切れて十分なを残せるか」で判断する3。は潜在的根治を目指せる代表例である。とは経過観察 vs 積極的介入という発想が対照的。

原発性肝腫瘍

1. 肝細胞癌

疫学

  • 成人における原発性肝悪性腫瘍として最多
  • 好発年齢: 先進国では40〜60歳、開発途上国ではより若く20〜40歳

病因

  • 肝硬変は最大の危険因子であり、を背景に生じることが多い(原資料は全体の90%とし、だから肝硬変患者の追跡が不可欠だとする)
  • HBV(B型肝炎ウイルス)、HCV()感染
  • 、
  • (Aspergillus flavus が産生する)に汚染された食品の慢性摂取
  • 原資料はこれに加えて(・)を挙げるが、今回照合したAASLD 2023の本文には・・寄生虫のいずれの語も現れない4。危険因子として覚える優先順位は低い

💡 「肝硬変の原因になるものは、そのままの原因にもなる」——・・はいずれも慢性肝障害→肝硬変→という同じ経路を辿る。

⚠️ ただし「肝硬変がなければではない」とは言えない。 欧米では肝硬変を伴わないが歴史的に全体の約10%を占め、を背景とするでは最大30%が肝硬変のない肝に発生する4。非硬変肝の症例はが保たれているぶん切除の対象になりやすい一方、の網には掛かりにくい。

臨床像

  • 基礎疾患(多くは肝硬変や肝炎)自体の症状以外は通常無症候性
  • 進行例で起こりうる症状: 体重減少、、、(右上腹部)の圧痛、黄疸

合併症:

  • : 閉塞により・腹水・をきたす
  • : 稀で、進行例のみ

診断

  • 血液検査ではα-フェトプロテイン()の上昇を認めることがあるが、診断は特徴的な造影CT/所見に基づくことが多い。やアルブミンも変動する
  • 生検は画像で確定できない場合に考慮する(確定診断は得られるが、出血とのリスクを伴う)
  • : 肝硬変などの高リスク患者では超音波とを半年ごと(およそ6か月間隔)に行う(根拠の水準2・強い推奨)。異常があれば多相造影CTまたはで精査する4
    • ⚠️ 以外のや、・によるはには推奨されない4。「念のため毎回を撮る」は現在の推奨と逆方向である

治療

は腫瘍病期・肝機能・全身状態を統合して決め、で縦断的に見直す1。国際的に最も広く使われている枠組みがBarcelona Clinic Liver Cancer(BCLC)分類で、2022年改訂版の病期区分と期待される生存期間の中央値は次のとおりである5。

病期 定義 生存期間中央値の目安
BCLC 0(超早期) 2cm以下の単発、血管侵襲・なし、肝機能良好、癌による症状なし 5年超
BCLC A(早期) 大きさを問わない単発、または3個以下(いずれも3cm以下)。肉眼的血管侵襲・・症状なし 5年超
BCLC B(中) Aを超える多発。血管侵襲・なし、 2.5年
BCLC C() 血管侵襲またはあり、全身状態2以下、肝機能は保たれる 2年
BCLC D(末期) 全身状態が2を超える、または肝機能が悪化し移植の選択肢がない 3か月

⚠️ は「最初に提示される選択肢」であってな割り当てではない。 個々の患者の事情により、より進行した病期に割り当てられた治療を優先することがある(治療段階移行)5。したがって「BCLC Bだから必ず塞栓療法」とは読まない。

⚠️ BCLCは2026年に再改訂された6。解説論文によれば、5段階の病期構造と「各病期を根拠に基づく一次治療に対応づける」骨格は維持され、主な変更点は次のとおりである——中(B)の多発の定義を「4個以上、または3個以下でも1個以上が3 cmを超える」と明確化した。の補助指標としてALBIスコアを、予後因子・移植適応の判断材料としてを位置づけた(1,000 ng/mL以上はによらず通常は移植の適応外)。(C)の一次治療は+、+、+、カムレリズマブ+リボセラニブなどの免疫療法併用をより優先し、直接比較が無いため順位は付けない。中ではTACEが引き続き標準である。意思決定には・不確実性・主観性・感情を明示するCUSEの枠組みを組み込んだ7。期待される生存期間中央値は、2026年版では0/Aで5年超、Bで2.5年超、Cで約2年、Dで1年未満と示されている7。原典(2026年版)の全文は取得できていないため、2022年版に基づく記述を2026年版で逐語確認したものではない。

1) 肝切除——最も良好な転帰が得られるが、肝予備能が制約になる

  • 肝硬変のない限局性では切除が第一選択である(根拠の水準2・強い推奨)4
  • 肝硬変例では、⭐ ①が限られる ②代償されていてがない ③が十分、の3条件がそろう例で切除が第一選択になる(水準2・強い推奨)4
    • の目安は肝硬変のない肝で30%超、肝硬変例で40%超。この条件を満たす切除では5年生存70%超、術後死亡3%未満と報告されている4
    • は10 mmHg超と定義され、術後合併症の増加と長期生存の低下を予測する5
  • ⚠️ 腫瘍が大きいこと自体は切除の除外理由にならない。 腫瘍径は再発リスクと関連するが、が十分であれば径によって切除適応が制限されるわけではない4。肉眼的な血管侵襲や遠隔転移があれば切除の対象から外れる

2) 局所焼灼療法

小型のでは根治を目指せる。BCLC 0で移植ができない場合の第一の選択肢であり、3cm以下では切除と競合しうる成績が示されている5。

3) 肝移植——腫瘍と背景肝疾患を同時に治す

  • 移植適応がある早期で、またはを伴う場合は移植が第一選択になる(水準2・強い推奨)4。が足りず切除できないのが、移植を選ぶ典型的な理由である
  • 腫瘍側の選択基準として標準になっているのがMilan基準()で、原著の逐語は「単発なら直径5cm以下、多発なら3個以下でいずれも直径3cm以下」である。この基準を満たした35例の4年85%・92%に対し、超えていた13例は50%・59%と有意に低かった8
  • Milan基準を超えるへ適応を広げるは複数あり、(5年生存81%)、合計115cm³未満(4年生存75%)、up-to-seven基準(最大径cmと個数の和が7以下。5年生存71%)、拡大Toronto基準(68%)、Kyoto基準(65%)などが提案されている4
  • ⚠️ どの基準を採るかは施設・移植制度の判断である。 の生存はMilan基準内の症例と競合しうるが、再発は増え長期生存は下がるため、採否は他の移植適応への配分に与える影響で決まるとされる5。「Milan基準」と言わずに数字だけを覚えると、の数字と混ざる

4) 切除も移植も適応にならない場合

病期に応じて塞栓療法や放射線などの局所治療、またはを用いる。進行例ではを基盤とするが標準治療として確立している1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatocellular carcinoma, HCC'>肝細胞癌</span>と診断"] --> B["腫瘍病期・肝機能・全身状態を統合して評価"]
    B --> C["肝硬変なし、または代償性で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='portal hypertension'>門脈圧亢進症</span>なし・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='remnant liver'>残肝</span>十分"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatectomy (liver resection)'>肝切除</span>を第一選択"]
    B --> E["早期だが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='portal hypertension'>門脈圧亢進症</span>あり<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decompensated cirrhosis'>非代償性肝硬変</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='liver transplantation'>肝移植</span>を評価<br>(腫瘍側はMilan基準などで判断)"]
    B --> G["小型早期で切除・移植が選べない"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ablation'>局所焼灼療法</span>"]
    B --> I["多発だが血管侵襲・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extrahepatic extension'>肝外進展</span>なし"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transarterial chemoembolization (TACE)'>肝動脈化学塞栓療法</span>など"]
    B --> K["血管侵襲または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extrahepatic extension'>肝外進展</span>あり"]
    K --> L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune checkpoint inhibitor (ICI)'>免疫チェックポイント阻害薬</span>を含む<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic therapy'>全身療法</span>"]

2. 肝内胆管癌

  • 浸潤性・で予後不良
  • 例でははが標準治療である。ただし手術の対象になるのは少数にとどまり、完全切除には大量が必要になることが多い——があったり容量が小さい症例では、そのことが禁忌になるかを押し上げる9
  • ⭐ 顕微鏡的リンパ節転移は40%超に認められるため、リンパ節郭清は最低6個の採取が適切とされる。後のは25〜40%9
  • は一般適応ではないが、2cm以下のごく早期でな例ではに匹敵する成績が報告され、肝に限局する進行例でもに持続的な反応が得られればの枠内で検討されうる9

⭐ の分類・診断・術式の詳細は 胆道腫瘍(・) を参照。ここでは「原発性肝腫瘍の一つとして、根治の中心はあくまで」という対比を押さえる。⚠️ 「成績が悪く再発が多いのでの適応にならない」という古い整理のまま覚えないこと——ごく早期例やに反応した厳選例では条件付きで検討される段階に来ている9。

転移性肝腫瘍

  • 肝のとして最も頻度が高い
  • 代表的な: 消化管(結腸、胃、膵臓)、肺、乳腺

臨床像:

  • 当初は無症候性、その後実質破壊により・体重減少
  • 黄疸は末期にしか出現しない

治療:

  • の切除適応はごとに異なり、とくにでは潜在的根治を目指せる
  • の切除は有益なことがある(大腸癌など)
  • は治癒不能な(乳癌・肺癌など)のであることもある
  • 初回のでは、で化を図ることがある10

大腸癌肝転移

  • 大腸癌ではをしばしば合併し(原資料は大腸癌患者の50%とする)、例ではが潜在的となる。切除例の5年生存率は40〜58%と報告されている3
  • ⭐ 「」の定義は資料によって違う。 古い枠組みでは、転移個数(3〜4個まで)・腫瘍径・1cmのといった「取るもの」の条件でが決められていた。現在は「すべての病変を断端陰性で取り切れ、十分な肝容量・を残せるか」——つまり「何が残るか」——で判断する3
    • この枠組みでは、門脈塞栓術・によるの増量、切除との併用、による腫瘍縮小によって、切除できる患者を増やせる
    • ⚠️ 病変があっても禁忌ではない。 厳密な選択基準のもとで切除の対象となりうる3
  • による化の古典的報告では、の701例のうち再評価でとなったのは95例(13.5%)で、切除時点からの5年生存率は35%だった。この報告はの理由を大きさ・部位の不良・多発・病変の4区分で定義しており、区分別の5年生存率は大きさ60%、部位不良49%、多発34%、病変18%と差が大きい10

大腸癌以外の肝転移

切除の適応になりにくい: 食道、+胃、肺、頭頸部

⚠️ 「このなら切除しても無意味」と一律には決まらない。 41施設・1,452例の非大腸非内分泌のでは、全体の5年生存は36%、83%、60日死亡2.3%で、転帰は主にの部位と組織型で決まる2。上の「適応になりにくい」区分に当たるのは、12%、頭頸部・肺(大半が扁平上皮癌)15%未満という実測値であり、「効果がない」ではなく「成績が悪い群」である。同じ解析で乳癌は41%、婦人科全体48%(卵巣50%・子宮35%)だった。

⭐ 個々の患者は名ではなく予後因子で層別する。 同じ解析ので予後を悪くしたのは、60歳超・乳癌以外の原発・悪性黒色腫または扁平上皮の組織型・無病期間12か月未満・・R2切除・大量である。これらを点数化すると、低リスク(0〜3点)の5年生存46%、(4〜6点)33%、高リスク(6点超)10%未満と分かれる2。⚠️ 上の表の数値と本解析の数値は別の症例集団のものなので、そのまま横に並べて比較しない。

切除可能性の要件

  1. 腫瘍の種類(、、大腸癌転移など)——同じ大きさ・個数でも腫瘍の生物学的性質で意味が変わる
  2. が十分な機能・血流・胆汁ドレナージを保てること

💡 この2要件は「何を取るか」ではなく「何が残るか」を問う考え方そのもので、のの定義が移り変わった方向と一致する3。原資料が「肝組織は最大70%まで悪影響なく切除できる」と述べているのも、同じ量を切除側から見た言い方である。で示されている目安は残す側で、肝硬変のない肝で30%超・肝硬変例で40%超である4(「70%」という数値がこの出典に書かれているわけではなく、30%超を切除側から言い換えると7割になる、という対応)。⚠️ したがって「7割まで切れる」は肝硬変のない肝の話で、肝硬変例では残すべき割合が上がるぶん切除できる量は減る。

まとめ

  • は・肝硬変を背景に生じることが多く、高リスク患者は超音波とで半年ごとにする(強い推奨)。以外のマーカーや・のなは推奨されない。4
  • 治療は腫瘍病期・肝機能・全身状態の3つで決まる。国際的な枠組みはBCLC分類で、病期は最初に提示される選択肢であってな割り当てではない。5
  • 切除の可否を決めるのはの有無と(肝硬変なしで30%超、肝硬変例で40%超)で、が十分なら腫瘍径そのものは制限にならない。4
  • は「が足りず切除できない早期例」の選択肢で、腫瘍側の標準はMilan基準(単発5cm以下、または3個以下で各3cm以下)。は複数あり、どれを採るかは施設・移植制度の判断である。85
  • はならが標準で、リンパ節郭清は最低6個、は25〜40%。移植はな選択肢ではないが、2cm以下のごく早期例などで検討されうる。9
  • の「」の定義は時代とともに変わり、現在は「全病変を断端陰性で取り切り、十分なを残せるか」で判断する。病変も禁忌ではない。3
  • 大腸癌以外のはで成績が大きく違うが、「非推奨」は効果がないという意味ではなく成績が悪い群という意味で、実際にはの部位・組織型と予後因子で個別に層別する。2

出典

  1. 1.Hepatocellular carcinoma(The Lancet・2022)全文は取得できず、抄録のみを閲覧した。抄録が述べているのは、ウイルス性肝炎とアルコールが引き続き重要な危険因子である一方で非アルコール性脂肪性肝疾患が急速に主要因となりつつあること、肝移植・外科的切除・経皮的焼灼・放射線・経動脈的治療・全身療法まで治療選択肢が広いこと、したがって臨床判断には多職種チームが必要で、治療戦略は患者の腫瘍病期・肝機能・全身状態に応じて縦断的に調整されること、免疫チェックポイント阻害薬を基盤とする治療が標準治療として確立し進行肝細胞癌の治療環境が多様化したことである。サーベイランスの間隔・手法についての記載は抄録には無い。閲覧 2026-09-21
  2. 2.Hepatic resection for noncolorectal nonendocrine liver metastases: analysis of 1,452 patients and development of a prognostic model(Annals of Surgery・2006)PMC1856551の全文で照合した。41施設の非大腸・非内分泌肝転移1,452例の肝切除の解析で、R0切除は83%、60日死亡2.3%、重大合併症21.5%、5年全生存36%・無病生存21%、10年で23%・15%である。多変量解析で予後を悪くしたのは60歳超、乳癌以外の原発、悪性黒色腫または扁平上皮の組織型、無病期間12か月未満、肝外転移、R2切除、大量肝切除であった(いずれもP≤0.02)。これらを点数化すると低リスク(0〜3点)46%、中リスク(4〜6点)33%、高リスク(6点超)10%未満と5年生存が層別される。原発巣別の5年生存は乳癌41%(460例、生存期間中央値45か月)、消化器全体31%のうち小腸49%・食道胃接合部12%、泌尿器全体48%(副腎66%・精巣51%・腎38%)、婦人科全体48%(卵巣50%・子宮35%)、膵胆道全体27%(乳頭部46%・膵25%)、悪性黒色腫は脈絡膜21%・皮膚22%、頭頸部と肺(大半が扁平上皮癌)は15%未満である。結論は、非大腸・非内分泌肝転移に対する肝切除は安全で有効であり、転帰は主に原発巣の部位と組織型に依存する、というものである。なお本論文のDOI(10.1097/01.sla.0000239036.46827.5f)はCrossrefではAmerican Surgical Association Transactions側の書誌に解決してovid.comで404になるため、URLにはPMC版を用いた。閲覧 2026-09-21
  3. 3.Expanding criteria for resectability of colorectal liver metastases(The Oncologist・2008)抄録の逐語で照合した。大腸癌肝転移の切除可能性の基準は、かつての転移個数(3〜4個)・腫瘍径・1 cmの切除断端から、「すべての病変を断端陰性で取り切れ、十分な肝容量・肝予備能を残せるか」へ広がった。つまり切除可能性は「何を取るか」ではなく「何が残るか」で決まるようになった。この枠組みでは、門脈塞栓術・二期的肝切除による残肝の増量、切除と焼灼の併用、術前化学療法による腫瘍縮小で切除可能な患者を増やせる。肝外病変も手術の絶対的禁忌ではなく、厳密な選択基準のもとで切除の対象となりうる。切除例の5年生存率は40〜58%と報告されている。閲覧 2026-09-21
  4. 4.AASLD Practice Guidance on prevention, diagnosis, and treatment of hepatocellular carcinoma(American Association for the Study of Liver Diseases (AASLD)・2023)PMC10663390の全文で照合した。推奨10は肝細胞癌サーベイランスを超音波とAFPで半年ごと(およそ6か月間隔)に行うとし、根拠の水準2・強い推奨である。推奨11はAFP以外の腫瘍マーカーやCT・MRIを用いたサーベイランスを高リスク患者に定型的に行うことを推奨しない。推奨28は肝硬変のない限局性肝細胞癌で外科的切除を第一選択とし(水準2・強い推奨)、推奨29は肝硬変例では腫瘍量が限られ、代償されていて臨床的に有意な門脈圧亢進症がなく、将来残肝が十分であることを条件に切除を第一選択とする(水準2・強い推奨)。本文は将来残肝の目安を肝硬変のない肝で30%超、肝硬変例で40%超とし、この条件を満たす例の5年生存は70%超、術後死亡は3%未満で、将来残肝が十分なら腫瘍径で切除適応が制限されるわけではないと述べる。推奨33は移植適応がある早期肝細胞癌で臨床的に有意な門脈圧亢進症または非代償性肝硬変を伴う場合に肝移植を第一選択とする(水準2・強い推奨)。Milan基準を超える腫瘍量に対する拡大基準としてUCSF基準(5年生存81%)、腫瘍体積合計115立方センチメートル未満(4年生存75%)、up-to-seven基準(5年生存71%)、拡大Toronto基準(68%)、Kyoto基準(65%)を表3に列挙している。閲覧 2026-09-21
  5. 5.BCLC strategy for prognosis prediction and treatment recommendation: The 2022 update(Journal of Hepatology・2022)PMC8866082の全文で照合した。BCLC 0は血管侵襲も肝外進展もない2 cm以下の単発肝細胞癌で肝機能が保たれ癌による症状がない段階、BCLC Aは大きさを問わない単発または3個以下(いずれも3 cm以下)で肉眼的血管侵襲・肝外進展・癌による症状がない段階、BCLC BはAの基準を超える多発例で全身状態は良好、BCLC Cは血管侵襲または肝外進展があり全身状態が2以下で肝機能が保たれる段階、BCLC Dは全身状態が2を超えるか肝機能が悪化し移植の選択肢がない段階である。期待される生存期間の中央値はBCLC 0とAで5年超、Bで2.5年、Cで2年、Dで3か月とされる。臨床的に有意な門脈圧亢進症は肝静脈圧較差10 mmHg超と定義され、術後合併症の増加と長期生存の低下を予測する。Milan基準を超える拡大基準の採否は、他の移植適応への配分に与える影響で決まるとし、生存は基準内例と競合しうるが再発が増え長期生存は下がると述べている。病期分類は最初に提示される選択肢にすぎず、個々の患者では治療段階移行の考え方により、より進行した段階の治療が優先されうる。閲覧 2026-09-21
  6. 6.BCLC strategy for prognosis prediction and treatment recommendations: The 2026 update(Journal of Hepatology・2026)抄録のみ確認した(全文は取得できず)。2026年改訂版は近年の治療の進歩を推奨に取り込み、各病期を根拠に基づく一次治療の選択肢に直接対応づける構成を維持したこと、臨床判断の章にCUSE(Complexity, Uncertainty, Subjectivity, Emotion)の枠組みを組み込んだこと閲覧 2026-09-24
  7. 7.From algorithm to dialogue: interpreting the 2026 BCLC-CUSE strategy for HCC care(Hepatoma Research・2026)全文で確認した解説(原典ではない)。2026年版は5段階の病期構造を維持し、中間期の多発の定義を4個以上または3個以下で1個以上が3 cm超と明確化したこと、ALBIをChild-Pughを補う肝予備能の指標とし、AFPを予後因子・移植基準とし1,000 ng/mL以上は通常移植の適応外としたこと、進行期の一次治療としてアテゾリズマブ+ベバシズマブ、トレメリムマブ+デュルバルマブ、イピリムマブ+ニボルマブ、カムレリズマブ+リボセラニブなどの免疫療法併用をソラフェニブより優先し順位を付けないこと、中間期ではTACEが標準であり続けること、期待生存期間中央値を0/Aで5年超・Bで2.5年超・Cで約2年・Dで1年未満としたこと閲覧 2026-09-24
  8. 8.Liver transplantation for the treatment of small hepatocellular carcinomas in patients with cirrhosis(The New England Journal of Medicine・1996)抄録の逐語で照合した。肝硬変を伴う切除不能の小肝細胞癌48例の前向き研究で、移植の適格基準は「単発なら直径5 cm以下、多発なら3個以下でいずれも直径3 cm以下」であった(のちのMilan基準)。4年全生存率75%・無再発生存率83%、再発は4例(8%)。摘出肝の病理で基準内と確認された35例(73%)の4年全生存率85%・無再発生存率92%に対し、基準を超えていた13例(27%)は50%・59%と有意に低かった。閲覧 2026-09-21
  9. 9.Liver resection and transplantation for intrahepatic cholangiocarcinoma(Journal of Hepatology・2020)全文は取得できず、抄録のみを閲覧した。抄録は、肝切除が治療の柱だが手術の対象になるのは少数にとどまること、完全切除には大量肝切除が必要になることが多く慢性肝疾患や残肝容量が小さい症例では禁忌になるか手術侵襲が増すこと、顕微鏡的リンパ節転移が40%超に認められるためリンパ節郭清は最低6個の採取が適切とされること、肝切除後の5年全生存は25〜40%であること、上流切除ができない局所進行例では術前の局所療法で切除可能化や移植への転換を図りうること、2 cm以下のごく早期で切除不能な肝内胆管癌では肝移植の成績が肝細胞癌に匹敵すると報告されたこと、肝に限局する切除不能進行例で術前治療に持続的な反応が得られた場合は前向き試験の枠内で移植を検討しうることを述べている。閲覧 2026-09-21
  10. 10.Five-year survival following hepatic resection after neoadjuvant therapy for nonresectable colorectal liver metastases(Annals of Surgical Oncology・2001)抄録の逐語で照合した。1988年2月から1996年9月に切除不能の大腸癌肝転移701例へ術前化学療法を行った単施設の報告で、切除不能の理由を大きさ・部位の不良・多発・肝外病変の4区分で定義している。再評価で切除可能となったのは95例(13.5%)で、周術期死亡はなく合併症率は23%。切除時点からの5年生存率は35%、化学療法開始時点からは39%であった。区分別の5年生存率は大きさ60%、部位不良49%、多発34%、肝外病変18%である。残肝容量・血流・胆汁ドレナージという切除可能性の要件はこの論文には述べられていない。閲覧 2026-09-21