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Disease Atlas · 血液 · 病態

脾静脈血栓症

Splenic vein thrombosis

別名
Splenic vein occlusion脾静脈閉塞左側門脈圧亢進症Sinistral portal hypertension
臓器系
血液消化器肝胆膵
科目
SurgeryPathology
トピック
外科学 S-31:脾臓外科と後腹膜疾患の外科治療外科学 S-14:急性・慢性膵炎病理学 C/46:肝の循環障害
続発疾患
門脈圧亢進症無脾症・脾機能低下症

🧠 全体像:は「膵臓のすぐ後ろを走る脾静脈が、膵臓の炎症・腫瘍に巻き込まれて詰まる」という、単純だが見逃されやすい病態である。肝臓そのものは正常なのに、脾静脈という局所の一本の血管が閉塞するだけで、そのだけに血液がうっ滞し圧が上がる——これが左側で、全身の(肝硬変など)とは原因も血行動態も別ものである。は短胃静脈を経由してへ集中するため、を伴わない孤立性という特徴的な所見を作る。多くは無症候のまま経過するが、出血すればまたは術がになる。

病態:局所だけの門脈圧亢進

脾静脈はの背側を走行するため、の炎症・線維化や膵腫瘍・に巻き込まれて閉塞しやすい1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic pancreatitis, CP'>慢性膵炎</span>・膵腫瘍・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancreatic pseudocyst'>膵仮性嚢胞</span>などが<br>脾静脈を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mass effect'>圧排</span>・炎症で巻き込む"] --> B["脾静脈が閉塞する"]
    B --> C["脾からの還流血が門脈本幹へ直接戻れない"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='splenic hilum'>脾門</span>脈系の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='collateral pathway'>側副路</span>が発達"]
    D --> E["短胃静脈を経由し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastric fundus'>胃底部</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='submucosal vein'>粘膜下静脈</span>へ集中"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastric fundus'>胃底部</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='submucosal vein'>粘膜下静脈</span>の圧上昇"]
    F --> G["孤立性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastric varices'>胃静脈瘤</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='esophageal varices'>食道静脈瘤</span>を伴わない)"]
    B --> H["脾のうっ血・脾腫"]

💡 「肝臓は正常なのに門脈圧亢進の所見が出る」のがこの病態の本質である。 孤立性は肝硬変に伴うとは別個のものとされ、肝硬変が無く(HVPG)が正常であっても生じうる1。原因不明の消化管出血で肝機能が正常なら、この左側を鑑別に挙げる。

原因

  • :最も代表的な原因。の炎症・線維化が脾静脈を巻き込む。
  • ・などの膵腫瘍性病変:による・で脾静脈が閉塞する1。
  • そのほか、やも原因になりうる。

臨床像

⭐ 多くは無症候のまま経過する。 患者394例のコホートでは、孤立性のを含む内臓を7.6%に認めたが、対象となった血栓症はすべて無症候性で、がすでに発達した慢性期のものが大半を占めた2。

一方で、孤立性からので顕在化することがある。同コホートではのうちを来したのは10.0%で、出血例は記録されなかった2が、出血すれば大量出血になりうる。脾腫を伴うこともある。

診断

、造影CT/、でのが、の開存を評価し血栓を確認・除外する画像検査として用いられる1。では、を伴わずにだけに静脈瘤を認める所見が特徴的で、この組み合わせを見たらによる左側を積極的に疑う。

治療

⭐ 無症候性であれば、多くは無治療での経過観察が主流である。 に伴う無症候性の内臓の管理としては、無治療での経過観察が最も多く選択され、が行われるのは一部にとどまる(あるコホートでは無治療63.3%、36.6%)2。

⚠️ 孤立性からの例では、または術がとされる。 は路そのものを除去することで、将来の出血を防止する1。の(注入・BRTOなど)は一時的な止血手段として併用されうるが、が原因である以上、根治には・術によるの遮断を要する。

まとめ

  • は・膵腫瘍性病変が脾静脈を巻き込むことで生じ、脈系のが短胃静脈へ集中することでを伴わない孤立性を来す。
  • 肝臓は正常でも正常なことが多く、通常の(肝硬変性の)とは原因・血行動態が異なる左側を来す。
  • 多くは無症候性で慢性期にが発達した状態で見つかるが、孤立性からので顕在化することがある。
  • 診断は・造影CT/・での、内視鏡での孤立性の確認による。
  • 無症候例は無治療での経過観察が主流で、出血例にはまたは術による遮断がになる。

出典

  1. 1.Gastric Varices(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)脾静脈血栓症の主な原因が慢性膵炎・膵仮性嚢胞・膵腫瘍であること、脾静脈の閉塞により脾門脈系の側副路(splenoportal collaterals)が発達し胃底部粘膜下静脈の圧が上昇して孤立性胃静脈瘤を来すこと、この孤立性胃静脈瘤は肝硬変に伴う胃静脈瘤とは別個のものとされ肝硬変が無く肝静脈圧較差が正常でも生じうること、ドプラ超音波・造影CT/MRI・門脈相での腹腔動脈造影が門脈系の開存を評価し血栓を除外する画像検査であること、脾静脈血栓症による左側(sinistral)門脈圧亢進を背景とする急性胃静脈瘤出血例では脾摘または脾動脈塞栓術が根治的治療とみなされ脾摘は側副静脈路を除去し将来の胃静脈瘤出血を防止することを確認した閲覧 2026-09-06
  2. 2.Vascular Complications in Patients with Chronic Pancreatitis(Journal of Clinical Medicine・2021)慢性膵炎患者394例のコホートで孤立性の脾静脈血栓症を含む内臓静脈血栓症を30例(7.6%)に認めたこと、そのうち胃静脈瘤を来したのは3例(10.0%)で出血例は記録されなかったこと、対象となった内臓静脈血栓症はすべて無症候性で側副路がすでに発達した慢性期のものが大半を占めたこと、無症候性の内臓静脈血栓症の管理は無治療での経過観察が主流で本コホートでは63.3%が無治療、36.6%が抗凝固療法を受けたことを確認した閲覧 2026-09-06