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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

リンパ系フィラリア症

Lymphatic filariasis

別名
リンパ性フィラリア症Bancroftian filariasisElephantiasis
臓器系
感染症
科目
Medical Microbiology
トピック
微生物学 4/37:フィラリア症を起こす線虫微生物学 5/18:節足動物媒介性寄生虫感染の起因体(一覧)とその診断
鑑別疾患
オンコセルカ症
合併症
陰嚢水腫
続発疾患
熱帯性肺好酸球増多症
関連疾患
ロア糸状虫症
治療薬
アルベンダゾールイベルメクチンドキシサイクリンジエチルカルバマジン
原因微生物
Wuchereria bancroftiBrugia malayi
症状
リンパ浮腫象皮病
適応薬
ジエチルカルバマジン

🧠 全体像:は「成虫がリンパ管・リンパ節に住みつき、虫体そのものより繰り返す炎症・線維化の蓄積がを壊していく」病気として理解する。急性期は成虫の炎症に伴う逆行性の、慢性期はその蓄積の果てにある・——両者は同じ病態の異なる時間断面にすぎない。診断の急所はので、昼間に採血すれば見逃す。この弱点を回避するのが、採血時間を問わないである。

病態

原因微生物の生活環・分類の詳細はWuchereria bancroftiのノートに譲る。本稿は疾患としての臨床経過に絞る。

  • 蚊に刺されて侵入した幼虫はリンパ系(四肢・)へ移行し、数か月かけて成虫に発育してリンパ管・リンパ節に長期間(数年〜十数年)住みつく。
  • 病態の主体は虫体の存在そのものより、虫体(特に死滅時)に対する宿主の炎症・線維化反応である。反復する炎症エピソードがのうっ滞を少しずつ不可逆化し、最終的にへつながる。
  • 近縁種Brugia malayi(、東南アジアに分布)も同じ機序で同じ臨床像を起こす。
flowchart TD
    A["蚊の刺咬で幼虫が侵入し<br>リンパ系へ移行"] --> B["成虫に発育し<br>リンパ管・リンパ節に定着"]
    B --> C["成虫の生存・死滅に伴う<br>反復性の炎症"]
    C --> D["急性期:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retrograde lymphangitis'>逆行性リンパ管炎</span><br>(発熱・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serpentine'>索状</span>の疼痛)"]
    C --> E["炎症・線維化の蓄積"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymph flow'>リンパ流</span>のうっ滞が<br>不可逆化"]
    F --> G["慢性期:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elephantiasis'>象皮病</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydrocele'>陰嚢水腫</span>"]

臨床像

病型 特徴
血中にを認めるが無症状
() 発熱・悪寒とともに、リンパ管に沿って逆行性に広がるの疼痛・発赤。初感染から9〜12か月後に出現しうる
慢性 (特に下肢)、——反復する炎症・線維化が蓄積し、のうっ滞が不可逆化した状態
(TPE) に対する強い過敏反応。発作性の夜間咳嗽・呼吸困難、著明な好酸球増多を来すが、免疫複合体で速やかに処理されるため末梢血にが検出されない特殊な病型1

⭐ 急性期()は感染そのものではなく、成虫の炎症に対する反応である。 発熱・の疼痛が反復するたびにリンパ管の線維化が進み、これが慢性期のへ地続きになっている。

⚠️ 慢性のやの患者では成虫がすでに死滅していることが多く、が陰性化しうる——この場合は臨床像と抗体・抗原検査を中心に診断する。

診断

  • ⚠️ はを示す。 の夜行性の吸血パターンにして末梢血中の密度が夜間にピークとなるため、による検出は夜間(多くは22時〜深夜2時頃)の採血が必須である2。
  • ⭐ (、ICT)は採血時間を問わず判定でき、感度も高い。 の検出に依存しないため、現在の診断・制圧プログラムでの主力となっている。ただしWuchereria bancroftiに特異的で、Brugia属には使えない限界がある2。
  • 好酸球増多を伴うことが多い。

治療と予防

  • 第一選択は(DEC)で、と併用することが多い。
  • 一部の糸状虫(本種を含む)は細胞内細菌を保有しており、ドキシサイクリンによる除菌が虫体の低下・死滅を介した補助治療になりうる。
  • ⚠️ ・の同時流行地ではを第一選択にできない。 は急速なの死滅を介して重篤な(では失明を悪化させる、では患者での脳症)を誘発しうるため、これらと同時流行する地域では+(IA)の組み合わせを用い、+(DA)は非流行地に限って用いる2。
  • TPEの治療はを中心に行う(1日量6mg/kg・分2〜3、21日間投与——1回量ではない点に注意)。が使えない場合は・・ドキシサイクリンとステロイドの併用が代替になる1。
  • 予防はの世界的制圧計画(GPELF)による()——流行地全体で年1回、地域の流行状況に応じた・または・の組み合わせを投与する。蚊対策(防虫剤・寝具ネット)も併用する。

まとめ

  • は成虫がリンパ管・リンパ節に住みつき、反復する炎症・線維化の蓄積がを破壊していく疾患である。
  • 急性期は()、慢性期は・として現れ、両者は同じ病態の時間的延長である。
  • はを示すため採血は夜間に行う必要があるが、は採血時間を問わないため現行の診断・制圧の主力になっている。
  • は免疫複合体でが除去されるため血中に検出されない特殊な病型。
  • 治療は()が中心だが、・の同時流行地では+に切り替える。予防はのプログラム(GPELF)が中心。

出典

  1. 1.Tropical Pulmonary Eosinophilia(StatPearls Publishing・2025)熱帯性肺好酸球増多症(TPE)の診断基準(流行地曝露歴、発作性の夜間咳嗽・呼吸困難、末梢血好酸球>3,000/µL、高IgE血症、抗フィラリア抗体高値、胸部画像での浸潤影、ジエチルカルバマジンへの反応)と、治療がジエチルカルバマジン21日間投与を中心とすることを確認した。閲覧 2026-08-19
  2. 2.Current perspectives in the epidemiology and control of lymphatic filariasis(Clinical Microbiology Reviews・2025)ミクロフィラリアの夜間定期出現性と蚊の吸血活動時間との同調、循環抗原検査(ICT)が採血時間を問わず判定できる利点と*Brugia*属には非特異的な限界、ジエチルカルバマジン(DEC)がオンコセルカ症・ロア糸状虫症の同時流行地では重篤な有害反応のため使用が制限されることを確認した。閲覧 2026-08-19