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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

ロア糸状虫症

Loiasis

臓器系
感染症眼科
科目
Internal MedicineMedical Microbiology
トピック
内科学 S-60:主な蠕虫感染症微生物学 4/37:フィラリア症を起こす線虫
鑑別疾患
オンコセルカ症
関連疾患
リンパ系フィラリア症
治療薬
ジエチルカルバマジンアルベンダゾール
原因微生物
Loa loa
症状
腫脹掻痒
検査値
好酸球増多
適応薬
ジエチルカルバマジン

🧠 全体像:はLoa loaが引き起こす、(Chrysops属、deer fly)媒介性のである。他のと一線を画すのは、成虫が結合組織・眼を移動し、患者自身がそれを視認できるという特異な臨床像である。そしてもう一つの核心は、⚠️ 治療そのものが最大のリスクになることである——患者に()やを投与すると、虫体の急速な死滅を介して致死的脳症を誘発しうる。だからこそ治療前の定量が診療の要になる。

病原体・媒介・生活環

Loa loaは(Chrysops属)が媒介する線虫で、中央・西アフリカの熱帯雨林地帯に分布する(“African eye worm”)。は感染後6〜12か月というやや遅れた時期に血中へ出現し、昼行性のに対応してを示す——のと正反対のパターンである1。微生物学的な詳細はLoa loaを参照。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deerfly'>アブ</span>(Chrysops属)の刺咬"] --> B["皮下組織で成虫へ発育<br>(約1年を要する)"]
    B --> C["結合組織・眼<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subconjunctival'>結膜下</span>を<br>成虫が移動しながら生存"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adult female worm'>雌成虫</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microfilaria'>ミクロフィラリア</span>を産生"]
    D --> E["血中循環へ(昼間にピーク)"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deerfly'>アブ</span>が日中の吸血時に取り込み"]
    F --> A

臨床像

  • :虫体移動に伴う一過性の局所過敏反応。顔面・四肢に好発する非紅斑性の皮下腫脹で、掻痒・疼痛が先行することがあり、多くは2〜4日で自然消退する1。
  • を移動する虫体の視認:眼球を横切る虫体を患者自身が見ることができる、他の寄生虫症にはあまりない所見。移動そのものは10〜20分程度で終わり、虫体が眼から出れば(浮腫・充血)は消退する1。
  • 多くの感染者は無症候性で、好酸球増多のみが手がかりになることもある。
  • ⚠️ 例では腎症・心筋症・脳症のリスクが高まる。脳症は疾患そのものよりも、後述する治療の合併症として問題になることが多い。

診断

  • 標本の:日中(正午前後)採血で検出率が最大になる(と逆の日内周期)。
  • を移動する虫体の視認は特異度の高い臨床診断となる。
  • 好酸球増多を伴うことが多いが必発ではない。
  • ⭐ 治療前には必ず定量検査で数を確認する。 この数値が(薬剤選択・の要否)を決める2。

治療

flowchart TD
    A["症候性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='loiasis'>ロア糸状虫症</span>"] --> B["定量<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood smear'>血液塗抹</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microfilaria'>ミクロフィラリア</span>数を測定"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microfilaria'>ミクロフィラリア</span>数"}
    C -->|"8,000/mL未満"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diethylcarbamazine (DEC)'>ジエチルカルバマジン</span><br>8〜10 mg/kg/日を分3、21日間"]
    C -->|"8,000/mL以上"| E["専門施設で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apheresis'>アフェレーシス</span>により減量"]
    E --> D

⚠️ ・はいずれも患者で致死的脳症を起こしうる。 米国の指針では、は数8,000/mL未満でのみ開始でき、この閾値未満では脳症リスクがほぼゼロに近づく。8,000/mL以上の患者では、専門施設でのにより閾値未満まで減量してからを開始する(によってはより保守的な2,500/mLを閾値とすることもある)2。用量は8〜10 mg/kg/日を3分割で21日間投与する2。

米国ではは未承認で、確定診断後にから入手する2。日本ではスパトニン錠として承認・販売されてきたが2026年7月に製造販売中止が公表されている(参照)。

⚠️ との同時流行地では薬剤選択がさらに複雑になる。 はでもを誘発するため用いない3。もの例では脳症を誘発しうるため、のプログラムではの同時流行地に限り単剤(・のいずれも含まない)を用いる方針をが示しており、事前のスクリーニングも併用される4。

鑑別・関連疾患

疾患 鑑別・関連の要点
同じくブユ/媒介のだが、・治療薬が異なる。同時流行地ではが相互にし合う
蚊媒介。の日内周期がと正反対(夜間 vs 昼間)

まとめ

  • Loa loaは媒介で、成虫が結合組織・眼を移動する。と虫体の眼球横断が特異的所見。
  • はを示し、採血は日中に行う。
  • 治療前の定量が必須で、⚠️ 8,000/mL以上の例では・いずれも致死的脳症のリスクがある——による減量を要する。
  • との同時流行地では薬剤選択がさらに複雑になり、前のスクリーニングが重要である。

出典

  1. 1.Filariasis(StatPearls Publishing・2025)ロア糸状虫症のカラバール腫脹が顔面・四肢に好発する一過性の非紅斑性皮下腫脹で2〜4日で自然消退すること、結膜下遊走は10〜20分程度で終わり虫体が眼から出れば眼症状が消退すること、ミクロフィラリアが感染後6〜12か月で血中に出現し昼間定期出現性を示すこと、DEC・イベルメクチンいずれも高ミクロフィラリア血症患者で致死的脳症を起こしうることを確認した。閲覧 2026-09-06
  2. 2.Clinical Treatment of Loiasis(Centers for Disease Control and Prevention・2024)症候性ロア糸状虫症の治療前に定量血液塗抹検査でミクロフィラリア数を確認する必要があること、ジエチルカルバマジン(DEC)は血中ミクロフィラリア数8,000/mL未満でのみ開始し(この閾値未満では致死的脳症のリスクがほぼゼロに近づく)、8,000/mL以上では専門施設でのアフェレーシスにより閾値未満まで減量してからDECを開始すること(専門家によってはより保守的な2,500/mLを閾値とすること)、DEC投与量が8〜10 mg/kg/日を3分割で21日間であることを確認した。閲覧 2026-09-06
  3. 3.Current perspectives in the epidemiology and control of lymphatic filariasis(Clinical Microbiology Reviews・2025)ジエチルカルバマジン(DEC)・イベルメクチンがオンコセルカ症・ロア糸状虫症の同時流行地では急速なミクロフィラリア死滅を介した重篤な有害反応(ロア糸状虫症では高ミクロフィラリア血症患者での脳症)のため使用が制限されることを確認した。閲覧 2026-09-06
  4. 4.Lymphatic filariasis(World Health Organization・2026)リンパ系フィラリア症の集団投薬プログラムの薬剤選択が流行地の組み合わせで決まり、ロア糸状虫症の同時流行地ではアルベンダゾール単剤を年2回用いること、オンコセルカ症の流行地(ロア糸状虫非流行)ではイベルメクチン+アルベンダゾールを用いること、オンコセルカ症非流行地ではDEC+アルベンダゾール、条件が整えばイベルメクチン+DEC+アルベンダゾールの3剤併用を用いることを確認した。閲覧 2026-09-07