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Drug Atlas · A20 Antidepressants / 抗うつ薬 · 必修

エスケタミン

esketamine

分類
Antidepressants / 抗うつ薬
商品名(EU)
Spravato
科目
Pharmacology
トピック
A20: Non-reuptake-inhibitor antidepressants. Agents used for treatment of manic phase of bipolar disorders
禁忌疾患
脳内出血(非外傷性)
副作用
めまい幻覚悪心
対象疾患
気分障害(うつ病・双極性障害)

🧠 全体像:は非型抗うつ薬の中で唯一、系ではなく(NMDA受容体)を標的にする薬で、からだけを取り出した鼻腔用製剤として実用化された。/が効果発現に数週間を要するのに対し、は投与後数時間以内に抗うつ効果・の軽減が現れるという点が最大の差別化要因であり、このゆえにと急性を伴ううつ病という、のない2つの適応に絞って承認されている。同じ理由で単独では使えず、必ず既存の経口抗うつ薬にする形で、医療機関内での投与後モニタリングを条件に用いられる。

薬効群の中での位置づけ

系統 代表薬 機序の核 際立つ強み・注意点
・ →NA/5-HT遊離増加 鎮静・食欲増加を積極利用
MT1/MT2作動+5-HT2C拮抗 改善・/体重増加が少ない
NMDA拮抗 NMDA拮抗(の) ・治療抵抗性/
・ 5-HT受容体複合調節 低用量不眠/
RIMA 、が少ない
その他・ ・ グルタミン酸調節/ 軽症例・限定的な位置づけ

⭐ の中で唯一「分単位〜時間単位」で効くのがである。 他の5系統がいずれも系のどこかをに調整して数週間かけて効果を出すのに対し、NMDA受容体拮抗はグルタミン酸伝達を急性に変化させ、関連分子(BDNF・mTORC1経路)を介したの急速な変化を引き起こすと考えられている。のからNMDA受容体への親和性がより高いをした理由は、同じ抗うつ効果をより低用量・少ない解離性副作用で得るためである。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='esketamine'>エスケタミン</span>がNMDA受容体を拮抗<br>(抑制性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gamma-aminobutyric acid'>GABA</span>作動性介在ニューロン優位に)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thalamocortical'>視床皮質</span>・辺縁系の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disinhibition'>脱抑制</span>的な<br>グルタミン酸<span class='jp-term jp-term-diagram' title='burst'>バースト</span>が起こる"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='AMPA receptor'>AMPA受容体</span>を介した<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='synaptic transmission'>シナプス伝達</span>の急性増強"]
    C --> D["BDNF遊離・mTORC1経路の活性化"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synaptogenesis'>シナプス新生</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasticity'>可塑性</span>の急速な回復"]
    E --> F["数時間以内に抗うつ効果・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='suicidal ideation'>自殺念慮</span>の軽減"]
    A --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='frontal cortex'>前頭皮質</span>・辺縁系の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electrophysiology'>電気生理</span>学的な<br>結合が一時的に断たれる"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dissociative symptoms'>解離症状</span>(投与後1〜2時間で消退)"]

💡 「NMDA受容体を阻害するのに、なぜ最終的にはグルタミン酸伝達が増えるのか」という一見矛盾した機序が鍵。は抑制性作動性介在ニューロン上のNMDA受容体を優先的に阻害するため、興奮性のへの抑制が外れ、結果としてグルタミン酸の放出が起こる。 この急性の変化がの週単位のとは全く異なる速さで抗うつ効果を生む。

薬物動態

項目 値・特徴
スプレー(唯一の抗うつ薬の経鼻製剤)
約48%(からの吸収)
分布 高い脂溶性、血液脳関門を速やかに通過
代謝 肝CYP2B6・でノル(活性は弱い)へ代謝
半減期 約7〜12時間
効果発現 投与後数時間以内(の軽減も同様)

⭐ という剤型そのものが薬理学的に理にかなっている。 ではでが著しく低下するため、から直接吸収させることで速いとな血中濃度を両立させている。ただし裏を返せば自己判断でのや乱用のリスクも生みやすく、これが医療機関内投与・使用制限プログラムの根拠になっている。

適応

領域 使いどころ
精神科 (米国添付文書ではまたは経口抗うつ薬との併用)、急性の・自殺行動を伴うの状(こちらは経口抗うつ薬との併用に限る)1

用法・用量

⚠️ 併用が要るかどうかは適応で違う。 米国の現行添付文書では、はでも経口抗うつ薬との併用でもよいが、急性の・自殺行動を伴うの状は経口抗うつ薬との併用に限る1。「常に併用」と一括りにしない。

医療機関内で投与し、各回の投与後、医療者が少なくとも2時間モニタリングし、そのうえで臨床的に安定して帰宅できるかを評価する(自己判断での帰宅・運転は不可)1。は週2回、はをしていく。日本では未承認であり、実際のレジメンは各国の承認情報・施設のプロトコルで確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:の既往(一過性のがを増悪させうる)
  • ⚠️ 投与直後に一過性のが起こりうるため、コントロール不良の高血圧・・心血管疾患では慎重投与
  • ⚠️ 米国ではが5項目——鎮静・解離・呼吸抑制・乱用および誤用・および自殺行動——設定されている1
  • ⚠️ 乱用・依存のリスクがあり、米国では SPRAVATO REMS という使用制限プログラムのもとでのみ供給され、医療機関内投与に限定される1
  • 妊娠・授乳中の安全性データは限られる

副作用

頻度 内容
高頻度 めまい、(様知覚変容)、悪心
注意 投与直後の一過性、鎮静、
重篤・まれ 乱用・依存、重度の解離反応、まれに重度の鎮静・呼吸抑制

まとめ

  • の。NMDA受容体拮抗によりを阻害し、グルタミン酸を介して急速な抗うつ効果を生む。
  • 数時間以内というが最大の特徴で、他の(数週間かかる)と一線を画す。
  • 適応は・急性を伴うに限定される。
  • 必ず経口抗うつ薬にし、単独では使わない。医療機関内投与+投与後モニタリングが必須。
  • 投与直後の一過性があり、の既往では禁忌。
  • で約48%、半減期約7〜12時間。
  • 乱用・依存リスクから厳格な使用制限プログラムのもとで管理される。
  • 日本では未承認(2026年現在)。

出典

  1. 1.SPRAVATO (esketamine) nasal spray, for intranasal use — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed(Janssen Pharmaceuticals)・2026)2026年3月改訂の米国添付文書。治療抵抗性うつ病には単剤療法または経口抗うつ薬との併用で、急性の自殺念慮・自殺行動を伴う大うつ病性障害の抑うつ症状には経口抗うつ薬との併用に限り適応がある。枠組み警告は鎮静・解離・呼吸抑制・乱用および誤用・自殺念慮および自殺行動の5項目。各回の投与後、医療者が少なくとも2時間モニタリングし、そのうえで臨床的に安定して帰宅できるかを評価する。SPRAVATO REMS という使用制限プログラムのもとでのみ供給される閲覧 2026-09-05