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Disease Atlas · 運動器 · 疾患

若年性特発性関節炎

Juvenile idiopathic arthritis

別名
JIA若年性関節リウマチ
臓器系
運動器免疫・膠原病
科目
Pediatrics
トピック
小児科 3-32:若年性特発性関節炎
鑑別疾患
リウマチ熱・リウマチ性心疾患化膿性関節炎(敗血症性関節炎)急性リンパ性白血病
続発疾患
血球貪食性リンパ組織球症
関連疾患
乾癬性関節炎関節リウマチ強直性脊椎炎
治療薬
ナプロキセントリアムシノロンメトトレキサートスルファサラジンアダリムマブインフリキシマブトシリズマブプレドニゾロンアバタセプトアナキンラカナキヌマブ
症状
リンパ節腫脹腫脹出血傾向発熱皮疹疼痛跛行急性前部ぶどう膜炎
検査値
抗核抗体C反応性蛋白(CRP)フェリチン血小板数HLA-B27
画像所見
仙腸関節炎
適応薬
アナキンラカナキヌマブセクキヌマブトシリズマブ

🧠 全体像は「16歳未満に発症し6週間以上続く原因不明の関節炎」というの傘であり、単一疾患ではない。発症6か月以内の関節数・全身症状・血清所見での7病型に切り分け、ANA陽性少関節型の無症候性ぶどう膜炎と、全身型のという「見えないまま失明する合併症」「見落とせば致死的な合併症」を先回りして監視する。

定義と名称の変遷

診断要件は、①16歳未満の発症、②1関節以上の関節炎、③6週間以上の持続、④他の原因が除外されること、の4つである。6週間という下限は一過性のウイルス性・をふるい落とすために置かれた閾値であり、16歳という上限は成人リウマチ科との歴史的な線引きで生物学的な境界ではない。「特発性」の語が示すとおり、感染・悪性腫瘍・外傷・他のを除外して初めて成立する。かつては地域ごとに別の名前と別の基準が使われており、北米のACRは「」と呼んで持続期間6週間・3病型のみを認め、欧州のEULARは「」と呼んで持続期間3か月としなども含めていた。国際比較も多施設試験も成立しないこの状況を解消するため、ILARが1990年代の一連の合意会議を経て2001年のEdmonton第2改訂で用語をJIAへ統一し、7病型の分類基準を確定した。

💡 「関節リウマチ」の名を外したのは、成人RAの小児版という誤った枠組みを断つためである。実際にRF陽性を除くほとんどの病型は成人RAとは別の疾患であり、とくに全身型はRAというより(autoinflammatory disease)に近い。なおにも「」が多く出るという弱点があり、PRINTOは2019年に全身型/RF陽性型/・脊椎炎関連型/早期発症ANA陽性型/その他/という新分類を提案したが、2026年時点でも前向きコホートによる検証段階の暫定案であり、標準は依然である。

ILAR分類の7病型

病型 定義(発症6か月以内) 好発年齢・性差 自己抗体・HLA 特徴的な関節外病変
全身型(Still病) 1関節以上の関節炎+2週間以上の発熱(うち3日以上は 全年齢に分布、性差なし ANA・RFとも陰性、 皮疹・・肝脾腫・リンパ節腫脹、⚠️
少関節型・持続型 4関節以下のまま経過 1〜4歳、女児優位 ANA陽性が多い、RF陰性 (無症候性)、患側下肢の過成長
少関節型・ 発症6か月以降に5関節以上へ拡大 同上 同上 同上。関節破壊の予後は持続型より不良
・RF陰性 5関節以上、RF陰性 二峰性(幼児期と思春期)、女児優位 ANA陽性例あり、RF陰性 ぶどう膜炎(ANA陽性例)、炎による
・RF陽性 5関節以上、3か月以上あけた2回のRF陽性 思春期女児 RF・陽性、HLA-DR4 。成人RAと連続する病型
乾癬性 関節炎+乾癬、または関節炎+(の乾癬)のうち2項目 二峰性 ANA陽性のことあり 、爪病変
関節炎+、または一方+(痛・HLA-B27・6歳以上の男児発症・SpAの家族歴等)2項目 6歳以上の男児 HLA-B27陽性が多い、RF・ANA陰性 急性前部ぶどう膜炎(有痛性・片側性)、
どの病型も満たさない、または2病型以上を満たす 表現型に準じる

⭐ 分類は必ず発症6か月以内の所見で行うため、後から関節が増えても分類は原則変わらない(少関節型のみ「」として区別する)。表を縦に読むと、ANAはぶどう膜炎リスクの指標、RFは成人RAへのの指標、HLA-B27はへのの指標という3本の軸が見える。いずれも単独では診断も除外もできない。

病態

JIAは病態的に二極化している。少関節型・・乾癬性は、HLA関連・・T細胞主導という獲得免疫(自己免疫)型で、滑膜へのを経て軟骨・骨を破壊する。一方で全身型は自己抗体を欠き、単球・マクロファージと好中球によるIL-1β・IL-6・IL-18の過剰産生が主役となる自然免疫(自己炎症)型で、などのに近い位置にある。この差が、後述するの分岐をそのまま説明する。

flowchart TD
    A["全身型JIA:自然免疫の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperactivation'>過剰活性化</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammasome activation'>インフラマソーム活性化</span><br>IL-1β・IL-18の過剰産生"]
    B --> C["IL-6上昇"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='remittent fever'>弛張熱</span>・皮疹・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serositis'>漿膜炎</span>・肝脾腫・リンパ節腫脹<br>CRP/ESR<span class='jp-term jp-term-diagram' title='markedly elevated'>著明高値</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leukocytosis'>白血球増多</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Thrombocytosis'>血小板増多</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anemia of chronic inflammation'>慢性炎症性貧血</span>"]
    B --> F["NK細胞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytotoxic T cell'>細胞傷害性T細胞</span>の機能低下<br>活性化マクロファージを止められない"]
    F --> G["⚠️ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='macrophage activation syndrome (MAS)'>マクロファージ活性化症候群</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ferritin'>フェリチン</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='surge'>急上昇</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancytopenia'>汎血球減少</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coagulopathy'>凝固障害</span>"]

臨床像

小児の関節炎は「痛い」と訴えないことが多い。腫脹、または可動域制限に疼痛・熱感を伴うことが関節炎の定義であり、幼児では朝の・這うようになる・使わない側のといった間接的な所見が唯一の手がかりになる。は活動で軽快する(機械的な痛みとの区別点)。全身型JIA(Still病)だけは臨床像が根本的に異なり、関節炎に先行して数週間の全身症状だけが続くことがある。

  • :1日1〜2回、39℃以上へ跳ね上がり平熱以下まで落ちる特徴的な。発熱時に不機嫌になりするとけろりとしている。
  • サーモンの皮疹:体幹・四肢近位の淡紅色斑で、発熱に一致して出現しとともに消える一過性の皮疹。掻いた部位に誘発されるを示す。
  • )、肝脾腫全身性リンパ節腫脹。検査ではCRP・ESRのを伴い、ANA・RFは陰性。

ぶどう膜炎

項目
主な病型 少関節型、RF陰性、乾癬性
危険因子 ANA陽性、7歳未満の発症、4年以内、女児 HLA-B27陽性、男児
経過 ・両側性になりやすい 急性・片側性・反復性
症状 ほぼ無症候性(充血も疼痛もない) 眼痛・・充血が強い
発見契機 定期スクリーニングのみ 患者自身の訴え
合併症 による瞳孔不整、、緑内障、、失明 適切に治療すれば視力予後は比較的良好

⭐ JIAで最も試験に出る合併症であり、症状がないまま失明しうる点が本質である。炎症は肉眼で見えず、内の細胞・フレアを見て初めて分かる。したがって「無症状だから大丈夫」は成立せず、リスクに応じた定期スクリーニングが必須である。2019年および2026年のACR/Arthritis Foundationガイドラインは、高リスク群への3か月ごとの眼科スクリーニングを強い推奨としている。

リスク区分 該当する条件 の間隔
高リスク 少関節型・RF陰性・乾癬性・未分化型で、ANA陽性かつ7歳未満発症かつ罹病4年以内 3か月ごと
中〜低リスク 上記の危険因子の一部のみを満たす 6〜12か月ごと
低リスク 全身型、RF陽性 12か月ごと(全身型では通常合併しない)
治療変更時 点眼ステロイド変更後は1か月以内、全身治療変更後は2か月以内に再評価

マクロファージ活性化症候群

⚠️ 全身型JIAの5〜10%に発症し、致死率の高い二次性である。感染・薬剤変更・原病の増悪が引き金になる。診断は2016年のEULAR/ACR/PRINTO分類基準を用い、発熱を伴う全身型JIA(既知または疑い)で、>684 ng/mLに加え、①血小板≤181×10⁹/L、②AST>48 U/L、③トリグリセリド>156 mg/dL、④フィブリノゲン≤360 mg/dL のうち2項目以上を満たす場合に分類する。

⚠️ 最大の罠は、炎症疾患であるのに炎症指標が「下がる」ことである点である。持続する発熱にもかかわらずESR・血小板・フィブリノゲン・白血球が低下へ転じ、だけがするパターンを見たら、原病の改善と取り違えずMASを疑う。意識変容・・肝障害・を伴えばの適応である。治療は高用量ステロイド(パルス)を軸に、IL-1阻害薬を併用し、難治例・再発例には抗IFN-γ抗体を用いる(2025年6月にStill病に伴うMASへのFDA承認を取得した初の薬剤)。

診断

JIAに確定検査は存在せず、あくまでである。ANA・RF・HLA-B27は病型分類との層別化に使うのであって、診断の可否を決める検査ではない。基本検査はCBC・・CRP/ESR・肝腎機能・LDH・尿酸・で、超音波・MRIは診察で分かりにくい炎・の評価に用いる。

鑑別疾患 決め手となる所見
・骨髄炎 単関節の急性発症、、高熱、CRPで確定しを要する
関節所見に不釣り合いな激しい疼痛、、血球減少、LDH・尿酸高値
先行するA群感染、移動性の
腸管・尿路感染の1〜4週後に発症し、多くは数週〜数か月で自然軽快
流行地での曝露歴、、単関節(とくに膝)の反復する腫脹、血清抗体
外傷・非炎症性 単一部位、外傷歴、炎症所見やを欠く

⚠️ 白血病の初発症状が関節痛・関節炎でありうることは最も重要な落とし穴で、ステロイドを先行投与すると診断が遅れ予後を悪化させる。関節所見の程度を超える強い疼痛、夜間に増悪する痛み、2系統以上の血球減少(とくに好中球減少と血小板減少の組み合わせ)、LDH・尿酸高値、ESR高値なのに血小板が低いという不一致を見たら、免疫の前にを行う。

治療

は疼痛緩和ではなく寛解の達成と関節破壊・・失明の予防である。2026年改訂のACR/Arthritis Foundationガイドラインは、従来の「NSAIDs→DMARD→生物学的製剤」という段階的増強(step-up)の原則を撤廃し、非全身型の多くの病型でDMARD(生物学的製剤を含む)を初期治療として強く推奨した。DMARDの「失敗」を待たずに生物学的製剤を導入してよく、最初の生物学的製剤としてはTNF阻害薬が条件付きで推奨される。メトトレキサートのは同等の有効性と少ない副作用から経口が皮下注より条件付きで優先され(2019年版からの逆転)、NSAIDs・全身ステロイドへの依存は全体として減らす方向にある。

flowchart TD
    A["JIAと診断(他疾患を除外)"] --> B{"全身型か"}
    B -->|"はい"| C["IL-1阻害薬(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anakinra'>アナキンラ</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='canakinumab'>カナキヌマブ</span>)<br>またはIL-6阻害薬(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tocilizumab'>トシリズマブ</span>)を初期治療"]
    C --> D{"MASの徴候があるか"}
    D -->|"はい"| E["高用量ステロイド+IL-1/IL-6阻害<br>難治例は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='emapalumab'>エマパルマブ</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intensive care'>集中治療</span>"]
    D -->|"いいえ"| F["全身ステロイドを最小限にして<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>"]
    B -->|"いいえ"| G{"少数の末梢関節が主体か"}
    G -->|"はい"| H["関節内ステロイド注射<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='triamcinolone hexacetonide'>トリアムシノロンヘキサセトニド</span>を優先)"]
    G -->|"いいえ"| I["DMARDを初期治療として開始<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='conventional'>従来型</span>DMARDの失敗を待たず生物学的製剤も可"]
    H --> J{"活動性が残るか"}
    J -->|"はい"| I
    I --> K["メトトレキサート/TNF阻害薬<br>効果不十分なら他機序の生物学的製剤へ変更"]
    K --> L["関節・眼・成長・機能を反復評価"]
    E --> L
    F --> L
    J -->|"いいえ"| L
病型・病態 現行の治療の軸 実践上の要点
少関節型 関節内ステロイド注射()+必要に応じDMARD ヘキサセトニドはアセトニドより効果が持続するため優先される
は慎重に、DMARDを主体に のリスクがあり骨成熟後が望ましい
メトトレキサート/TNF阻害薬(等)を初期から DMARDの失敗を待つ必要はない。効果不十分ならIL-6阻害薬・T細胞阻害薬・JAK阻害薬へ
関連 NSAIDs、末梢関節にはにはTNF阻害薬 と同じ枠組みで扱う
全身型 ⭐IL-1阻害薬()またはIL-6阻害薬()を初期治療 NSAIDs単剤・DMARD単剤は推奨されない
ぶどう膜炎 局所ステロイド点眼(1%)→メトトレキサート→モノクローナル抗体TNF阻害薬 1日1〜2滴を超えて必要なら全身治療へ。重症例は初めからメトトレキサート+TNF阻害薬併用

⚠️ 全身型では他の病型の常識が通用しない。メトトレキサートとTNF阻害薬は状にはある程度効くものの全身症状への効果が乏しく、自然免疫主導という病態に合致するIL-1/IL-6阻害を先に用いる。逆に⚠️ぶどう膜炎ではTNF阻害薬の中でも薬剤を選ぶ必要があり、可溶性受容体製剤のは眼炎症に無効あるいは悪化させうるため、モノクローナル抗体である(第一選択)・を用いる。

成長・発達への影響

  • 局所の成長異常:関節周囲の慢性炎症はの血流を増やし、若年例では患側下肢の過成長によるを生む。長期化すると逆にの早期閉鎖を来し短縮へ転じる。
  • 炎はしばしば無症候性に進行し、下顎枝のから小さくした下顎(いわゆる)とを残す。定期的な開口量測定とMRIによる評価が要る。
  • :全身型・の持続炎症と長期の全身ステロイドがを抑制する。ステロイドを早期に減らすことが成長の保護そのものになる。
  • 骨密度低下:炎症・不動・ステロイド・日光曝露減少が重なる。カルシウム・ビタミンDと荷重運動を並行する。

まとめ

  • JIAは16歳未満発症・6週間以上持続する原因不明の関節炎の総称で、感染・悪性腫瘍・他のを除外して初めて成立する。JRA・JCAという地域ごとの旧称はでJIAへ統一され、PRINTOの新分類は2026年時点でも検証段階の提案にとどまる。
  • 分類は発症6か月以内の関節数・全身症状・乾癬・で7病型に分け、ANAはぶどう膜炎リスク、RFは成人RAとの、HLA-B27はとのという3本の軸で読む。
  • ⭐ANA陽性・7歳未満発症の少関節型ではが無症候性に進行して失明しうるため、高リスク群には3か月ごとのを欠かさない。
  • 全身型は自己抗体を欠くで、・一過性の・肝脾腫・を示し、⚠️炎症指標が下がりだけが上がるMASを常に警戒する。
  • ⚠️白血病は関節痛で初発しうるため、・血球減少・LDH高値では免疫の前にを行う。
  • 治療は段階的増強の原則を離れ、非全身型ではDMARDを初期から、全身型ではIL-1/IL-6阻害を初期から用い、ぶどう膜炎にはモノクローナル抗体TNF阻害薬を選ぶという病型別の使い分けが要点となる。