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Disease Atlas · 血液 · 腫瘍

急性リンパ性白血病

Acute lymphoblastic leukemia

別名
ALLPrecursor lymphoblastic leukemia/lymphoma
臓器系
血液腫瘍
科目
PathologyInternal MedicinePediatrics
トピック
病理学 C/10:前駆T・Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫内科学 H-29:急性リンパ性白血病内科学 S-37:急性白血病小児科 3-01:白血病
上位概念
白血病
鑑別疾患
バーキットリンパ腫急性骨髄性白血病若年性特発性関節炎慢性骨髄性白血病
合併症
血液・腫瘍救急(発熱性好中球減少症・腫瘍崩壊症候群・上大静脈症候群)
続発疾患
敗血症
関連疾患
神経芽腫・ウィルムス腫瘍播種性血管内凝固非ホジキンリンパ腫
治療薬
ビンクリスチンデキサメタゾンプレドニゾロンメトトレキサートシタラビンドキソルビシンシクロホスファミドイマチニブブリナツモマブリツキシマブアロプリノールラスブリケースフィルグラスチム6-メルカプトプリンティサゲンレクルセル(CAR-T)
症状
リンパ節腫脹圧痛倦怠感呼吸困難骨痛出血点状出血頭痛発熱嘔吐
検査値
尿酸
スコア
FAB分類
原因となる疾患
ダウン症候群(21トリソミー)
適応薬
アスパラギナーゼヴィンデシンビンクリスチン

🧠 全体像は、B細胞またはT細胞系列の未熟なが骨髄・末梢血・リンパ組織・節外臓器で増殖する腫瘍で、小児で最も多い白血病である。骨髄・末梢血優位ならALL、腫瘤優位ならと呼ぶが生物学的には連続した疾患である。学習の幹は「血球減少+芽球での三徴(貧血・感染・出血)を疑う→と遺伝学でB/T系列・病型を確定する→全例に中枢神経予防を組み込みつつ、Ph陽性・CD19/CD20陽性などの余地を評価する→で治療強度を調整する」。

病態

前駆リンパ系細胞に生じた遺伝子異常が特定の分化段階での)と増殖亢進を引き起こし、が骨髄を占拠して正常造血を圧迫する。AMLの成立機序と類似するが、障害される分化系統がリンパ系である点が異なる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphoid progenitor'>リンパ系前駆細胞</span>への遺伝子異常の蓄積"] --> B["特定分化段階での<span class='jp-term jp-term-diagram' title='differentiation block'>分化ブロック</span>と増殖亢進"]
    B --> C["骨髄で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphoblast'>リンパ芽球</span>が増加"]
    C --> D["正常造血細胞を物理的に圧迫"]
    D --> E["貧血・好中球減少・血小板減少"]
    C --> F["中枢神経・精巣・リンパ節・縦隔などへ浸潤"]
    C --> G["高い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor burden'>腫瘍量</span>に伴う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor lysis syndrome, TLS'>腫瘍崩壊症候群</span>のリスク"]
系列 主な特徴
B細胞性ALL(B-ALL) 小児・成人ともに最多。CD19、CD22、CD79a、PAX5、TdTなどを発現し、主に骨髄・末梢血に病変が及ぶ
T細胞性ALL(T-ALL) 思春期男性に比較的多く、胸腺・を伴いやすい。細胞質内/表面CD3が系列特異的マーカーとなる

重要な遺伝学的病型にはBCR::ABL1陽性、BCR::ABL1様(Ph-like)、KMT2A再構成、ETV6::RUNX1、などがあり、これらは治療反応・予後と直結する。

臨床像

  • 貧血による感・
  • 好中球減少による発熱・感染
  • 血小板減少による点状出血・紫斑・粘膜出血
  • (骨髄拡大による)、リンパ節腫脹、肝脾腫
  • T-ALLのによる咳、呼吸困難、
  • 中枢神経浸潤による頭痛、嘔吐、脳神経症状
  • に伴う(高K血症、高P血症、低Ca血症、

⭐ 血算だけではが高値・正常・低値のいずれもあり得るため、での芽球確認や原因不明の血球減少があれば、だけでALLを除外してはならない。

診断

flowchart TD
    A["血球減少・芽球・腫瘤を認める"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral smear'>末梢血塗抹</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow aspiration'>骨髄穿刺</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flow cytometry'>フローサイトメトリー</span>"]
    B --> C["B系列またはT系列を確定"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='karyotype'>染色体核型</span>・FISH・分子遺伝学的検査"]
    D --> E["BCR::ABL1などの遺伝学的病型を確定"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CSF analysis'>髄液検査</span>で中枢神経病変を評価"]
    F --> G["治療中のMRDを反復評価"]

診断は骨髄または末梢血の芽球比率20%以上を原則とし、で系列(B系:CD19・CD22・CD79a・PAX5・TdT陽性、T系:細胞質内/表面CD3陽性)を確定する。成人B-ALLではBCR::ABL1を迅速に検査し、陽性なら早期にを治療へ組み込む。評価のためLDH、尿酸、電解質、腎機能も同時に測定する。

歴史的FAB分類

FABのL1〜L3分類は芽球形態に基づく歴史的分類であり、現在はと遺伝学的分類を用いる。旧L3の形態は成熟B細胞性バーキット白血病/リンパ腫に対応し、とは治療が異なるため注意する。

治療

治療は寛解導入、・強化、中枢神経予防、維持からなる多段階のプロトコルで構成され、全例で中枢神経予防を組み込む点がとの大きな違いである。

段階 目的・内容
寛解導入 などのステロイド、など)をし形態学的寛解を得る。思春期・若年成人ではを含む小児型プロトコルを基本とする
・強化 メトトレキサートなどを用いて残存クローンを減らし再発を防ぐ。MRDと遺伝学的リスクで強度を調整する
中枢神経予防 全例で(メトトレキサートなど)と、高用量メトトレキサート・などのあるを組み合わせる
維持 多くのプロトコルで総治療期間が2〜2.5年程度となるよう継続する

高齢者や脆弱な患者では小児型レジメンをそのまま適用せず、臓器機能、併存症、遺伝学的病型、MRDを踏まえて低強度化学療法、抗体薬、標的薬を組み合わせる。形態学的寛解後もMRD陽性であれば再発リスクが高く、免疫療法、治療強化、を再検討する。

病型別・再発時の治療

病型・状況 主な治療
Philadelphia染色体陽性ALL などのTKIを治療の早期から組み込み、化学療法またはなどと併用する
B-ALL(CD19/CD20/CD22陽性) CD20陽性例では化学療法にリツキシマブを併用する。CD19/CD22を標的とする、イノツズマブ オゾガマイシン、をMRD陽性や再発・難治の状況に応じて用いる
T-ALL を基本とし、ではネララビンなどを検討する
再発・難治・高リスク遺伝学的病型 を検討する

⚠️ APL・非APL AMLとALLは治療プロトコルが根本的に異なるため、で系列を確定してから治療を開始する。がリンパ系(Ph陽性ALL様)を呈することもあり、この場合はTKIを化学療法に併用する。

中枢神経予防の位置づけ

ALLでは診断時に髄液が陰性でも中枢神経再発リスクがあるため、全例に予防が必要である。は認知・内分泌・二次がんなどの晩期毒性があるため、現在は例外的な高リスク状況に限定され、ルーチンには行わない

支持療法

  • のリスク評価、十分な輸液、または高リスク例でによる尿酸低下療法(⚠️ で溶血・のリスクがあるため、リスクのある患者背景では投与前に確認する)
  • 好中球減少期の感染予防と発熱時の迅速な治療(敗血症に準じた対応)。必要に応じなどのを用いる
  • 輸血、、栄養管理、
  • ステロイドやによる高血糖、血栓、膵炎、肝障害の監視
  • 妊孕性温存と晩期合併症についての説明

まとめ

  • ALLはB・Tの腫瘍で、形態だけでなくと遺伝学で系列・病型を分類する。
  • 血球減少+芽球を見たら貧血・感染・出血の三徴と、によるを同時に評価する。
  • 成人B-ALLではBCR::ABL1を迅速に調べ、陽性なら早期にTKIを組み込む。CD20陽性例ではリツキシマブを併用する。
  • 治療は寛解導入・・強化・中枢神経予防・維持からなり、MRDが治療強度調整の中心となる。
  • 中枢神経予防は全例に必要だが、はルーチンには行わない。