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Drug Atlas · B36 Targeted cancer therapy / 分子標的薬

ティサゲンレクルセル(CAR-T)

tisagenlecleucel (CAR-T)

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤Gene & nucleic acid therapies / 遺伝子治療・核酸医薬
商品名(日本)
キムリア
商品名(EU)
Kymriah
科目
Pharmacology
トピック
B36: Drugs used in cancer treatment VI (Large molecule signal transduction inhibitors. Immunostimulant anticancer drugs)
副作用
発熱低血圧錯乱
影響検査値
C反応性蛋白(CRP)フェリチン
対象疾患
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫急性リンパ性白血病非ホジキンリンパ腫
原因となる疾患
サイトカイン放出症候群免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群

🧠 全体像は患者自身のT細胞を体外に採取し、CD19を認識するしてから体内へ戻す。「薬」というより「生きた細胞そのものを治療薬として投与する」という発想の転換がこのクラスの本質で、効果が出るまでの過程で体内でT細胞が増殖するという、他のどのにもない性質を持つ。それゆえ副作用も「」というより「暴走した免疫反応」に近い形(CRS・ICANS)を取る。

薬効群の中での位置づけ

標的 代表薬 発想 主な適応
CD19(BiTE) 既製品の抗体でT細胞をその場で橋渡し B細胞ALL
CD19(CAR-T) 患者T細胞を遺伝子改変してから投与 再発/難治B-ALL・

CAR-Tの「CAR」は抗体と CARのは抗CD19抗体の、細胞内ドメインはの活性化シグナル(CD3ζ)と(4-1BBなど)をつなげた人工受容体で、MHC提示を介さずにCD19抗原を直接認識してT細胞を活性化できる。「抗体の的の絞り方」と「T細胞の殺傷力」を1つの受容体に融合させた設計と理解する。

機序

flowchart TD
    A["患者からT細胞を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apheresis'>アフェレーシス</span>で採取"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='viral vectors'>ウイルスベクター</span>で<br>抗CD19 CARを<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gene transfer'>遺伝子導入</span>"]
    B --> C["体外でCAR-T細胞を増殖・培養"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphodepleting chemotherapy'>リンパ球除去化学療法</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fludarabine'>フルダラビン</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclophosphamide'>シクロホスファミド</span>など)"]
    D --> E["CAR-T細胞を患者へ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravenous drip infusion (IV infusion)'>点滴</span>投与"]
    E --> F["CAR-T細胞がCD19陽性B細胞を認識<br>(MHC非依存的)"]
    F --> G["T細胞活性化・大量増殖<br>(体内でクローン増幅する"]
    G --> H["腫瘍細胞の直接傷害+正常B細胞も含めた枯渇"]
    G --> I["大量のサイトカイン放出(IL-6など)"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CRS'>サイトカイン放出症候群</span>"]
    I --> K["血液脳関門の透過性亢進"]
    K --> L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ICANS'>免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群</span>"]

💡 なぜ投与前に「」をするのか。 などで患者自身のリンパ球をあらかじめ減らしておくことで、体内の「増殖スペース」と、CAR-T細胞の増殖を促すサイトカイン(IL-7・IL-15など)の競合相手を減らし、輸注したCAR-T細胞が体内で効率よくクローン増幅できるようにする。この自体が骨髄抑制の原因にもなる。

適応

CD19陽性の再発・難治性(小児・若年成人)、および再発・難治性のの一型)の成人。いずれも複数の標準治療に抵抗性となった後の選択肢という位置づけ。

用法・用量

1回限りのという点が他の抗癌薬と根本的に異なる。から製造・投与まで数週間を要し、その間の(つなぎの化学療法)が必要になることが多い。投与後はCRS・ICANSの出現に備え、専用の管理がある施設で少なくとも数日〜数週間は入院・近接モニタリングを行う。実際の投与・モニタリング期間は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ :投与後数日以内に発熱で始まり、重症例では低血圧・低酸素血症に進む。でGrade 1〜4に層別化し、Grade 2以上や遷延する場合は(抗抗体)+支持療法、不応例にはステロイドを追加する
  • ⚠️ :振戦・・意識障害・けいれんなど。ICE score(immune effector cell-associated encephalopathy score)で重症度を評価する。はICANSには効果が乏しく(むしろ悪化させうるとされる)、ICANSの治療の主体はステロイドと支持療法——CRSとICANSで治療薬の使い分けが異なる点が重要
  • 長期の):正常B細胞もCD19陽性のため一緒に枯渇し、易感染性が持続する。免疫グロブリン補充を要することがある
  • 血球減少(・CRSの両方が関与)

副作用

頻度 内容
高頻度 発熱CRP上昇(CRSのマーカー)、血球減少
注意 低血圧・低酸素血症)、
重篤・まれ 重症CRS、ICANS(けいれん・脳症)、(まれに報告)

まとめ

  • 患者自身のT細胞にCD19認識CARをする。MHC非依存的にCD19陽性細胞を攻撃する。
  • 投与前にを行い、体内でのCAR-T細胞増殖を促す。
  • 適応は再発・難治性のB-ALL、1回限りの投与という他の抗癌薬にない特徴。
  • CRSとICANSが代表的な重大合併症で、(ASTCTコンセンサス・ICE score)に基づき管理する。
  • ⚠️ CRSの治療にはが有効だが、ICANSにはステロイドが主体はICANSに効きにくい)という使い分けが試験で狙われやすい。
  • 長期のリツキシマブによるより持続しやすく、易感染性への配慮が長期にわたって必要。