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Disease Atlas · 免疫・膠原病 · 症候群

サイトカイン放出症候群

Cytokine release syndrome

臓器系
免疫・膠原病腫瘍全身
科目
Pharmacology
トピック
薬理学 B30:免疫薬理学III(抗体・融合タンパク質)薬理学 B36:抗がん薬VI(高分子シグナル伝達阻害薬・免疫賦活抗がん薬)
鑑別疾患
アナフィラキシー免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群
治療薬
トシリズマブメチルプレドニゾロン
原因薬剤
ティサゲンレクルセル(CAR-T)ブリナツモマブ
症状
発熱低血圧
検査値
CRPフェリチン
適応薬
トシリズマブ

🧠 全体像は、(BiTE)のように大量のT細胞を強制的に活性化させる治療で起こるで、IL-6を中心とするサイトカインカスケードがその実体である。の「サイトカイン放出型」がとして増幅・遷延した状態と位置づけられるが、CRSでは重症度をASTCTコンセンサスによる標準化されたで評価し、を中心に管理する体系が確立している点が異なる。もう一つの核心は、同じ治療で起こる(ICANS)とは病態も治療薬の使い分けも異なることで、「が効くのはCRSであってICANSではない」という非対称性が臨床上最も狙われやすい。

病態

CAR-T細胞やのようなによってT細胞が大量かつ急速に活性化されると、活性化T細胞・マクロファージ・からIL-6を中心とするサイトカインが放出される。IL-6はを介してを亢進させ、補体・の活性化を促すことが、CRSに特徴的な・低血圧・低酸素血症の基盤になる1

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CAR T-cell therapy'>CAR-T細胞療法</span>または<br>T細胞<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inducibility'>誘導性</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='bispecific antibody'>二重特異性抗体</span>の投与"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='target cell'>標的細胞</span>とT細胞の急速な相互作用"]
    B --> C["T細胞・マクロファージ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular endothelial cell'>血管内皮細胞</span>から<br>IL-6中心のサイトカイン大量放出"]
    C --> D["発熱(多くの場合、最初の徴候)"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='increased vascular permeability'>血管透過性亢進</span>・補体/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coagulation cascade'>凝固カスケード</span>活性化"]
    E --> F["低血圧"]
    E --> G["低酸素血症"]
    C --> H["血液脳関門の透過性亢進"]
    H --> I["ICANS<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune effector cell-associated neurotoxicity syndrome, ICANS'>免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群</span>)"]

では発熱がCRS発症に平均して約3日先行し、CD19標的試験では頻度が最大100%に達するとされる1が多いほど強く出る点はのサイトカイン放出型と共通する。

重症度分類(ASTCTコンセンサス)

ASTCT 2019コンセンサスは、発熱低血圧・低酸素の3軸でグレード1〜4に分類する2

グレード 発熱 低血圧 低酸素
1 38℃以上 なし なし
2 あり を要さない 低流量鼻以下
3 あり 1剤(併用可) ・マスク以上
4 あり 複数の除く) を要する

グレードは低血圧と低酸素のうちより重い方で決定する(他に原因がない場合)2。⚠️ 一度抗サイトカイン療法(・ステロイド)を投与した後は、その後のグレード判定は発熱の有無ではなく低血圧・低酸素の程度で行う。

臨床像

初発症状は発熱であることが多く、発熱に続いて低血圧・頻脈、低酸素血症へ進行しうる。CRPの上昇が炎症の指標として用いられるが、いずれもCRSに特異的ではなく重症度判定には(発熱・血圧・酸素化)を用いる。

初期の発熱・低血圧という所見だけでは、アナフィラキシーと臨床的に区別しにくい。ただしCRSは真のI型過敏反応と異なり反復曝露を必要とせず、初回投与でも重症化しうる点が鑑別の手掛かりになる1

治療

グレード2〜4のCRSにはを投与し、反応不良の場合にステロイドを追加する3。グレード1でも3日以上遷延する場合は導入を検討する。

添付文書レベルの具体的な運用では、投与例(小児・若年成人B細胞ALL)でCRSは77%に発現しグレード3以上(Penn分類)が48%を占め、は体重30 kg以上で8 mg/kg・30 kg未満で12 mg/kgをし、初回投与後24時間以内に改善しなければ2 mg/kg/日の追加投与へ進む運用が示されている4

ICANSとの違い

が効くのはCRSであって、ICANSには無効かむしろ悪化させうる。 ICANSはサイトカインによる血液脳関門の透過性亢進を病態基盤とし、治療の主体はステロイドであってではない3

項目 CRS ICANS
主座 全身の血管系 中枢神経系
主症状 発熱・低血圧・低酸素 振戦・・意識障害・けいれん
ステロイド
の位置づけ 中心的治療薬 無効・悪化させうるため推奨されない

インフュージョンリアクションとの違い

CRSとは同じ「サイトカイン放出」という機序を共有するが、想定する治療の重さとが異なる。は単クローン抗体の中〜直後に起こる反応全般を指す総称で、多くはグレード1〜2の軽症にとどまりの調整で管理できる。これに対しCRSは、のように体内で細胞が増殖し続ける治療で起こり、発熱が投与から数日遅れて出現し、重症例ではを要する点で臨床的な重みが異なる。

まとめ

  • CRSはで大量のT細胞が活性化されることで起こる、IL-6を中心とするサイトカインカスケードである。
  • ASTCTコンセンサスは発熱・低血圧・低酸素の3軸でグレード1〜4に分類し、グレード2以上はを中心に管理する。
  • ⚠️ はCRSの中心的治療薬だが、ICANSには無効・悪化させうるため使わない。 ICANSの治療の主体はステロイドである。
  • と機序を共有するが、CRSは投与後に体内で増殖し続ける細胞由来のより重いである点で異なる。

出典

  1. 1.Cytokine release syndrome(Journal for ImmunoTherapy of Cancer・2018)サイトカイン放出症候群はIL-6が中心的な役割を持つ全身性炎症反応であり、活性化マクロファージと血管内皮細胞がIL-6を主体とするサイトカインを産生し血管透過性亢進や補体・凝固カスケードの活性化を来すこと、CAR-T細胞療法ではCD19標的試験で頻度が最大100%に達すること、CAR-T細胞療法における発熱はサイトカイン放出症候群の発症に平均して約3日先行すること、真のI型過敏反応と異なり反復曝露を必要としないこと閲覧 2026-08-11
  2. 2.ASBMT Consensus Grading for Cytokine Release Syndrome and Neurological Toxicity Associated with Immune Effector Cells(American Society for Transplantation and Cellular Therapy (ASTCT) / Biology of Blood and Marrow Transplantation・2019)ASTCTコンセンサスのCRSグレード分類は発熱(38℃以上)を前提に、グレード1は低血圧・低酸素いずれもなし、グレード2は昇圧薬を要さない低血圧または低流量鼻カニュラ(6 L/分以下)以下の酸素投与、グレード3は昇圧薬1剤(バソプレシン併用可)または高流量鼻カニュラ・フェイスマスク・非再呼吸マスク・ベンチュリーマスク以上の酸素投与、グレード4は複数の昇圧薬(バソプレシン除く)または陽圧換気(CPAP・BiPAP・挿管人工呼吸)を要すること、CRSグレードは他に原因がない限り**低血圧と低酸素のうちより重い方**で決定されること閲覧 2026-08-11
  3. 3.Anticytokine Therapy and Corticosteroids for Cytokine Release Syndrome and for Neurotoxicity Following T-Cell Engager or CAR T-Cell Therapy(Canadian Agency for Drugs and Technologies in Health (CADTH) Rapid Review・2024)グレード2〜4にはトシリズマブを投与し反応不良ならステロイドを追加する方針が推奨されること、グレード1のCRSでも遷延(3日超)・症状が強い・併存疾患がある・高齢などの場合はトシリズマブ8 mg/kg(上限800 mg)を1回投与することがすべての採用ガイドラインで推奨されていること、トシリズマブはICANSの治療には無効でむしろ悪化させうるためICANSの治療の主体はステロイドであること閲覧 2026-08-11
  4. 4.KYMRIAH (tisagenlecleucel) suspension for intravenous infusion — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / Novartis・2026)小児・若年成人B細胞ALLへのティサゲンレクルセル投与でサイトカイン放出症候群が77%に発現しGrade3以上(Penn分類)が48%を占めたこと、トシリズマブは体重30 kg以上で8 mg/kg・30 kg未満で12 mg/kgを点滴静注し初回投与後24時間以内に改善しなければメチルプレドニゾロン2 mg/kg/日の追加投与へ進むこと閲覧 2026-08-11