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Disease Atlas · 血液 · 腫瘍

慢性骨髄性白血病

Chronic myeloid leukemia

別名
CML
臓器系
血液腫瘍
科目
PathologyInternal Medicine
トピック
病理学 C/5:慢性骨髄性白血病(CML)/慢性骨髄線維症内科学 H-31:慢性骨髄性白血病内科学 L-60:骨髄増殖性疾患
上位概念
白血病
鑑別疾患
急性リンパ性白血病真性多血症・本態性血小板血症・原発性骨髄線維症慢性骨髄単球性白血病
続発疾患
急性骨髄性白血病
関連疾患
骨髄異形成症候群
治療薬
イマチニブダサチニブアシミニブヒドロキシ尿素ブスルファン
症状
倦怠感寝汗体重減少発熱早期満腹感
検査値
血算白血球アルカリホスファターゼ
組織像
慢性骨髄性白血病・移行期
適応薬
アシミニブダサチニブビンデシンラニムスチン

🧠 全体像:()は、9番染色体と22番染色体の t(9;22) によって生じるBCR::ABL1融合遺伝子()を有するである。融合タンパクの型チロシンキナーゼがを無秩序に増殖させるが、()の登場により、多くの慢性期患者で一般人口に近い長期予後が得られる「慢性腫瘍性疾患」へと姿を変えた。学習の幹は「著明な+脾腫でを疑う→BCR::ABL1を確定する→適切なを選びでモニタリングする→マイルストーン未達なら服薬・相互作用・変異を評価する」。

病態

flowchart TD
    A["9番染色体と22番染色体の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reciprocal translocation'>相互転座</span> t(9;22)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Philadelphia chromosome'>フィラデルフィア染色体</span>の形成"]
    B --> C["BCR::ABL1融合遺伝子"]
    C --> D["ABL1チロシンキナーゼの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='constitutive activation'>恒常的活性化</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='growth factor'>増殖因子</span>非依存性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granulocytic lineage cells'>顆粒球系細胞</span>の増殖・生存"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leukocytosis'>白血球増多</span>・脾腫(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extramedullary hematopoiesis'>髄外造血</span>)"]
    E --> G["追加の遺伝学的異常の獲得"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='accelerated phase'>加速期</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blast phase'>急性転化期</span>へ進行"]

BCR::ABL1融合タンパクは正常なABL1キナーゼの自己抑制機構を欠き、刺激なしに下流のを活性化し続ける。これにより成熟能を保ったが骨髄・末梢血で著しく増加し、の場として脾腫を来す。は理論上複数の列に存在しうるが、臨床像は優位である。

臨床像

  • 健診で発見される著明な(典型的には10万/μLを超えることもある)
  • 倦怠感、体重減少、、発熱などの全身症状
  • 脾腫による不快感、
  • 、痛風
  • まれに(著明な時)

末梢血では好中球系の各成熟段階(骨髄球・など)が連続的に増加する「」がみられ、、、を伴うことが多い。

💡 慢性期のでは未熟〜成熟の全分化段階が連続してみられるのに対し、では未熟な芽球とが両方存在し、その間の分化段階がほとんど欠落する「」を示す点が対照的である。

診断

検査 所見・目的
血算・ の、、芽球比率
・生検 、病期評価、付加的な染色体異常の有無
t(9;22)と付加的な核型異常の検出
BCR::ABL1融合の検出
BCR::ABL1転写産物量を(IS)で測定し、診断後は治療反応のモニタリングに用いる

白血病様反応()は感染などの明確な原因を有し、やBCR::ABL1を認めない点で鑑別できる。低値はの古典的知識として知られるが、現在の確定診断はBCR::ABL1の検出で行う。

flowchart TD
    A["著明な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leukocytosis'>白血球増多</span>・脾腫を認める"] --> B["血算・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral smear'>末梢血塗抹</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='left shift'>左方移動</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basophilia'>好塩基球増加</span>を確認"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow examination'>骨髄検査</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='karyotype'>染色体核型</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescence in situ hybridization'>FISH</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='quantitative RT-PCR'>定量RT-PCR</span>"]
    C --> D["BCR::ABL1陽性を確認"]
    D --> E["病期(慢性期/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blast phase'>急性転化期</span>)を判定"]
    E --> F["初回<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tyrosine kinase inhibitor'>TKI</span>を選択し治療開始"]

病期分類

病期 特徴
慢性期 分化能が保たれ、芽球比率が低い。診断時の大部分がこの病期
末梢血または骨髄の芽球比率20%以上、またはでの芽球増殖。に類似した臨床像を示す

第5版分類は慢性期との分類を採用し、を独立した病期から外した。一方、(ICC)は、芽球10〜19%、末梢血の増加、Ph陽性細胞での付加的染色体異常のいずれかで定義するを独立病期として残している。ICCはこの際に基準を簡素化しており、 2017版にあった治療にな血小板減少・治療不応のや脾腫、への抵抗性、治療中のBCR::ABL1変異の多重出現はの定義から外した1。European LeukemiaNet 2025はこのについて、どちらの分類も全面的には支持できないとしている2。したがって、古典的な「慢性期→→」というの理解は、使用する分類体系を明記した上で解釈する。

治療

flowchart TD
    A["慢性期<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic myeloid leukemia'>CML</span>と診断"] --> B["併存症・薬剤相互作用・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Goals'>治療目標</span>を評価"]
    B --> C["初回<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tyrosine kinase inhibitor'>TKI</span>を選択"]
    C --> D["BCR::ABL1 ISを原則3か月ごとに測定"]
    D --> E{"分子学的マイルストーンを達成したか"}
    E -->|"はい"| F["同一<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tyrosine kinase inhibitor'>TKI</span>を継続し長期毒性を監視"]
    E -->|"いいえ"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medication adherence'>服薬遵守</span>・薬物相互作用・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ABL1 kinase domain mutation'>ABL1キナーゼドメイン変異</span>を評価"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tyrosine kinase inhibitor'>TKI</span>を変更、または移植を検討"]

初回には第一世代の、第二世代の・・に加え、承認・利用可能な地域ではも含まれる。世代だけで優劣を決めるのではなく、心血管疾患、肺疾患、糖尿病、薬物相互作用、妊娠希望、より深い分子学的寛解を目指すかなどを踏まえて選択する。

代表的な分子学的モニタリング目標

時点 BCR::ABL1 IS の目標
3か月 10%以下
6か月 1%以下
12か月 0.1%以下

0.1%以下は(MMR)に相当する。マイルストーン未達では、まずや吸収・薬物相互作用を確認し、次にや病期進行の有無を評価したうえで、変異プロファイルと併存症に応じて次のを選択する。

特別な状況

状況 対応の要点
への初期対応 診断確定前や著明な時、による短期的な細胞減量を行うことがある。開始後は通常不要となる
に型の治療を組み合わせ、可能ならを得たうえでを目指す
移植 複数不応、、高リスクなどで検討する
治療中止() 初回慢性期で十分な治療期間と2年以上の安定した深いを満たし、高品質を頻回に行える選択例で試みる。中止後最初の6か月は特に密に監視し、を失えば速やかにを再開する
妊娠 にはがあるため、妊娠前にと計画を立て、妊娠中の治療は個別化する

⚠️ は芽球期がリンパ系(Ph陽性様)を呈することがあり、この場合はで用いるに準じた対応を要する。芽球期の系列はに直結するため、で必ず確認する。

まとめ

  • はBCR::ABL1陽性ので、確定診断と治療モニタリングの中心は分子検査()である。
  • 現在の分類は慢性期・のだが、他の分類体系ではを残しており、使用する分類を明記して解釈する。
  • 初回は・第二世代・から、併存症・毒性・相互作用・に合わせて選ぶ。
  • BCR::ABL1 ISを定期的に測定し、マイルストーン未達時は、薬物相互作用、変異、病期進行を再評価する。
  • は+型治療でを目指し、可能な例ではにつなぐ。

出典

  1. 1.International Consensus Classification of myeloid and lymphoid neoplasms: myeloproliferative neoplasms(Virchows Archiv・2023)全文(PMC9852206)で、ICCが加速期を芽球10〜19%・末梢血好塩基球20%超・付加的クローン性染色体異常のいずれかで定義し、WHO 2017の基準にあった治療に無関係な血小板減少・治療不応の血小板増多や脾腫を捨て、完全血液学的奏効の未達成・逐次TKIへの抵抗性・治療中のBCR::ABL1変異2つ超の出現も加速期の定義から外したこと、急性転化期を骨髄系芽球20%以上または髄外の骨髄肉腫としたことを確認した閲覧 2026-09-24
  2. 2.2025 European LeukemiaNet recommendations for the management of chronic myeloid leukemia(European LeukemiaNet・2025)全文(PMC12310532)で、WHOによる二相性への再分類とICCによる加速期の維持の対立について、パネルの意見が分かれ「we cannot fully endorse either classification」と述べ、どちらの分類も進行した病像の患者がより強力な薬剤と綿密なモニタリングの恩恵を受けうることを認めていることを確認した閲覧 2026-09-24