内科学

内科学 · L-60

骨髄増殖性疾患

Myeloproliferative Diseases

前提:病態
慢性骨髄性白血病・慢性骨髄線維症真性多血症・本態性血小板血症
薬剤
ルキソリチニブ
疾患
好酸球増多症候群肢端紅痛症真性多血症・本態性血小板血症・原発性骨髄線維症白血病慢性骨髄性白血病慢性骨髄単球性白血病
検査値
血小板増多症

🧠 全体像:は成熟系細胞がクローン性に増えるで、とPhiladelphia染色体陰性のPV・ET・PMFが中心である。とは別分類であり、末梢血増多だけで同一群にまとめない。

分類とドライバー変異

疾患 主な増加・所見 代表的分子異常
好中球系+、、脾腫 BCR::ABL1(Philadelphia染色体)
(PV) 増加、しばしば白血球・血小板も増加 JAK2
(ET) 持続性 JAK2、CALR、MPL
(PMF) 、、、進行性血球減少 JAK2、CALR、MPLなど

二次性(低酸素、産生、テストステロン)、(感染、鉄欠乏、炎症、)、を除外する。

⚠️ の分類は -HAEM5(2022年)と ICC(2022年)が並立しており、どちらか一方に決めつけない。 古典的MPNに関しては両者の重なりが大きい。ののHb・Htの閾値は両者とも Hb 16.5 g/dL超(男性)・16.0 g/dL超(女性)、または Ht 49%超(男性)・48%超(女性) で食い違わない1。ただし増加の扱いは異なり、ICCはの選択肢として残す(予測平均値の25%超)一方、-HAEM5は⁵¹Cr標識赤血球による測定が日常診療でまれになったとしてから外した23。前PMFも、両者とも3つすべて+1つ以上を要求し、白血球 > 11 × 10^9/L をに含める点で一致する4。では差が出て、-HAEM5は慢性期との二相にしたのに対し、ICCはを残した23。

💡 本当に難しいのは分類体系の差ではなく、ETと前PMFの線引きである。 形態に基づく鑑別は・再現性が問われており、ET患者の48%が前PMFのを1つ以上満たすという報告がある。10年の白血病移行率は前PMFで2.3%、ETで1.9%と差は小さいが、線維化・脾腫・生存の見通しが違うためが要る4。

では V617F が95%超を占め、残る3〜5%は exon 12〜15 の非典型変異である。鉄欠乏がHbを見かけ上正常に保って診断を遅らせることがあるので、Hbが正常でも陽性・血栓・掻痒があれば疑う1。

診断アプローチ

flowchart TD
    A["持続する血球増多/脾腫"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complete blood count'>CBC</span>+塗抹、鉄、炎症、酸素化、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythropoietin'>EPO</span>など"]
    B --> C{"顆粒球増多+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basophil'>好塩基球</span>"}
    C -->|"はい"| D["BCR::ABL1検査→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic myeloid leukemia'>CML</span>"]
    C -->|"いいえ"| E{"赤血球/血小板優位"}
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Janus kinase 2 gene'>JAK2</span>→陰性なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='calreticulin gene'>CALR</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='MPL gene'>MPL</span>など"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow biopsy'>骨髄生検</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='World Health Organization'>WHO</span>/ICC形態"]
    G --> H["PV/ET/pre-PMF/PMFを分類"]
    H --> I["血栓・出血・進展リスクで治療"]

PVでは掻痒(入浴後)、、頭痛・視覚症状、異所性血栓、脾腫が手掛かり。ETは血栓と出血の両方、PMFは貧血、体重減少・、、を来す。極端なでは後天性von Willebrand症候群による出血を評価する。

治療の要点

PV

で <45%を維持し、禁忌がなければを用いる。この45%という目標値はCYTO-PV試験に由来する——より緩い目標と比べ、45%未満を厳格に維持した群で重大血栓イベントと心血管死が有意に少なかった5。同試験のサブ解析では、白血球が 11 × 10^9/L を超えるとが有意に高くなるため、赤血球だけでなく白血球も見る1。

リスク層別は単純で、60歳未満かつ血栓(大出血)既往なし=低リスク、それ以外=高リスクである67。低リスクは+で足り、腫瘍細胞減量は高リスクか、不耐・症状・血球制御不良のときに加える。年齢、血栓歴、症状・血球制御で腫瘍細胞減量を決め、またはペグを中心に選ぶ。は抵抗・不耐例などに用いる。

ET

年齢、血栓歴、、心血管リスクでを層別化する。この4要素をまとめたのが IPSET-thrombosis で、年齢と血栓既往に加えてを組み込んだ唯一のスコアである。はさらに JAK2 V617F を加える——ETでは変異が血栓イベントと強く結びつくためである7。アスピリンは状・リスクに用いるが、極端な+後天性では出血を悪化させ得る。高リスクはまたはなど腫瘍細胞減量を行う。

PMF

症状と予後スコア、分子・でリスクを評価する。スコアは目的別に使い分ける7。

スコア 使いどころ 含む因子
IPSS 診断時のみ 年齢>65、全身症状、Hb<10 g/dL、白血球>25×10^9/L、末梢血芽球≥1%
DIPSS 経過中いつでも 同じ5項目だが貧血の重みが2点と大きい
DIPSS-Plus 上に予後因子を追加 +不良核型、血小板<100×10^9/L、輸血依存
MIPSS70/MIPSS70+ v2.0 70歳以下の例 +高分子リスク変異(ASXL1・EZH2・SRSF2・IDH1/2、v2ではU2AF1 Q157)、type 1 変異の有無、核型

⚠️ MIPSS70系は TP53 を含んでいない。 移植の場で予後を大きく左右する変異が抜けているため、スコアの点数だけで移植可否を決めない7。阻害薬は脾腫・全身症状を改善し、貧血には原因と輸血依存度に応じ治療する。HCTが唯一の根治療法で、適格な中〜高リスク例で検討する。

CML

診断時に骨髄形態・染色体とBCR::ABL1 転写産物型を確認し、を開始する。薬剤は併存症・毒性・妊娠希望・で選び、のを3、6、12か月などでする。マイルストーン未達では、相互作用、変異を評価してを変更する。芽球期は+型治療でを目指し、HCTへつなぐ。

💡 は「一生飲み続ける病気」ではなくなった——ただし中止できる条件は厳しい。 ELN 2025年推奨では、を試せるのは、初回慢性期、定量可能な典型的転写産物、通常5年以上(第二世代では4年以上)の治療、2年以上持続したMR4以上の深い、高品質へ確実にアクセスできること、をすべて満たす選択例である。中止後は6か月まで6〜8週ごと、6〜12か月は2か月ごと、以後3〜6か月ごとに監視し、MMRを失ったら速やかにを再開する8。

AML・MDSとの区別

は芽球増殖による急速なで、感染・出血、、腫瘍崩壊、を来す別疾患である。特に疑いはを伴う救急で、遺伝学的確定を待たずを開始する。

では貧血、血小板減少、機能的好中球減少に加え、頭痛・・呼吸困難を伴う、、紫〜灰青色結節を呈する白血病皮膚浸潤、肝脾腫・CNS浸潤が手掛かりとなる。これらは「成熟血球が増える」慢性期MPNとは異なり、同日中の、凝固、腫瘍崩壊検査、血液科連絡を要する。

は・異形成による血球減少を主体とし、骨髄が過形成でも末梢血は減少する。MPNからへ進展すること、/MPN 重複があるため、骨髄形態・・分子検査で分類する。

末梢血・骨髄の軸 代表的臨床像
慢性期MPN 1系統以上の成熟細胞増加 血栓・出血、、脾腫、全身症状
芽球増加+正常 急速な感染・出血・貧血、、
末梢血球減少+骨髄異形成/ 貧血、感染、点状出血・紫斑、進展リスク

まとめ

  • 古典的MPNは、PV、ET、PMFで、・は別分類である。
  • CMLはBCR::ABL1、PV・ET・PMFはJAK2/CALR/MPLと骨髄形態で診断する。分類は-HAEM5とICCが並立するが、古典的MPNでは重なりが大きく、のの扱い(ICCは残し、-HAEM5は二相)が主な差である。
  • PVは45%未満(CYTO-PV)、ETはIPSET-thrombosis、PMFはDIPSS/MIPSS70+ v2.0、は深いが2年以上続けば治療中止を検討する。
  • PV・ETは、PMFは症状・移植リスク、はと分子モニタリングを治療軸とする。

出典

  1. 1.Modern and multidisciplinary care in polycythemia vera(Annals of Hematology・2026)本総説の表1(WHO/ICC 2022として一括した診断手順)は真性多血症の大基準をHb 16.5 g/dL超(男性)・16.0 g/dL超(女性)、またはHt 49%超(男性)・48%超(女性)、または赤血球量増加とする(ただし赤血球量の項目はICCにだけ残り、WHO第5版の原典は削除している)。JAK2 V617Fが95%超、JAK2 exon12〜15の非典型変異が3〜5%を占める。鉄欠乏がHbを見かけ上正常に保ち診断を遅らせることがある。CYTO-PV試験のサブ解析では白血球11×10^9/Lを超えると血栓リスクが統計学的に有意に高くなる閲覧 2026-08-25
  2. 2.The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Myeloid and Histiocytic/Dendritic Neoplasms(Leukemia・2022)WHO分類第5版(2022年)が骨髄系腫瘍の分類体系であり、CMLを慢性期と急性転化期の二相で分類する。骨髄増殖性腫瘍の主要病型としてPV・ET・前線維化期PMF・PMFを置く閲覧 2026-08-25
  3. 3.International Consensus Classification of Myeloid Neoplasms and Acute Leukemias: integrating morphologic, clinical, and genomic data(Blood・2022)ICC 2022はWHO分類第5版と並立する骨髄系腫瘍の分類体系で、PV・ET・前線維化期PMF・PMFの診断基準を骨髄形態とドライバー変異を統合して定義し、CMLでは加速期を保持する閲覧 2026-08-25
  4. 4.Prefibrotic myelofibrosis: recent updates in diagnosis, prognostication, and management 2026(Therapeutic Advances in Hematology・2026)前線維化期PMFの診断にはICC 2022とWHO第5版の2つの基準が現に併用されており、両者は大きく重複して、いずれも大基準3つすべてと小基準1つ以上を要求する。両者とも白血球11×10^9/L超を小基準に含む。ただし形態に基づくET/前線維化期PMFの鑑別は信頼性・再現性が問われており、ET患者の48%が前線維化期PMFの小基準を1つ以上満たすという報告がある。10年累積白血病移行率は前線維化期PMFで2.3%、ETで1.9%閲覧 2026-08-25
  5. 5.Cardiovascular events and intensity of treatment in polycythemia vera(New England Journal of Medicine・2013)真性多血症でヘマトクリットを45%未満に厳格に維持する管理が、より高い目標値と比べて重大血栓イベントと心血管死を有意に減らすことを示した無作為化比較試験(CYTO-PV)閲覧 2026-08-25
  6. 6.Philadelphia chromosome-negative classical myeloproliferative neoplasms: revised management recommendations from European LeukemiaNet(European LeukemiaNet / Leukemia・2018)真性多血症では60歳未満かつ血栓既往なしを低リスク、それ以外を高リスクとして層別化し、低用量アスピリン・瀉血・高リスクでの腫瘍細胞減量という管理原則を示す閲覧 2026-08-25
  7. 7.Prognostic Scores and Risk Stratification of Myeloproliferative Neoplasms: 2026 Updates(Cancers・2026)真性多血症の古典的血栓リスク層別は年齢60歳以上または血栓・大出血の既往を高リスクとする。本態性血小板血症のIPSET-thrombosisは年齢・血栓既往に加えて心血管危険因子を組み込む唯一の計算式で、改訂版(revised IPSET-thrombosis)はJAK2 V617Fを加える。骨髄線維症ではIPSSが診断時、DIPSSは経過中いつでも使え、DIPSSでは貧血の重みが大きい。DIPSS-Plusは核型・血小板10万/µL未満・輸血依存を加える。MIPSS70とMIPSS70+ version 2.0は70歳以下の移植適格例向けで、ASXL1・EZH2・SRSF2・IDH1/2・U2AF1 Q157といった高分子リスク変異を組み込むが、TP53は含まれない閲覧 2026-08-25
  8. 8.2025 European LeukemiaNet recommendations for the management of chronic myeloid leukemia(European LeukemiaNet・2025)CMLの分子診断、国際スケールのBCR::ABL1マイルストーン、TKI選択と変更、無治療寛解(治療中止)の条件、進行期治療と移植の推奨を示す閲覧 2026-08-25