病理学

病理学 · C/6

真性多血症/本態性血小板血症

Polycythemia vera, essential thrombocythemia

タグ
High-yield / ポイント
応用トピック
血小板増多症フィラデルフィア染色体陰性骨髄増殖性腫瘍骨髄増殖性疾患
疾患
肢端紅痛症真性多血症・本態性血小板血症・原発性骨髄線維症
症状
出血傾向

🧠 全体像:とはどちらも経路の持続的な活性化が駆動する(MPN)である。両者を分けるのは増える系統の数——PVはを中心に3系統、ETはが主体——と、それを確かめるの形態である。年齢層はどちらも中高年が中心で重なるので、年齢では区別できない。

真性多血症(PV)

定義と要点

PVは、過剰な3系統の — 、、 — を特徴とするMPNだが、症状の多くはの増加が駆動する。

  • 低値(非依存性のクローン。ではに当たる)
  • 変異が駆動( V617Fが95%超、残る3〜5%はエクソン12〜15の非典型変異)1
  • 典型的には中高年の疾患(診断時年齢の中央値60歳)1

診断基準(ICC 2022とWHO分類第5版)

(ICC)の基準は次のとおりで、3つすべて、または①②+で診断する2。

区分 項目
① Hb上昇(男性16.5 g/dL超・女性16.0 g/dL超)、またはHt上昇(男性49%超・女性48%超)、または増加(予測正常平均の25%超)
② V617Fまたはエクソン12変異
③ :年齢に比して過形成で、・・の3系統が増殖(汎骨髄症)。はで成熟し、異型を欠く
血清低値

⚠️ 分類第5版はを基準から外している。 をHb・Htの上昇、3系統の過形成と成熟、変異とし、51Cr標識赤血球による測定は日常診療で行われなくなったとして削除した3。「・ICCともを含む」とまとめた二次資料もあるが、を残しているのはICCの側である。

💡 鉄欠乏を合併するとHbが見かけ上正常にとどまり、診断が遅れることがある1。数値だけで除外しない理由がここにある。

形態

  • (3系統:3系すべてが増殖)
  • 肝脾腫 →
  • +血管うっ滞 → 血栓と梗塞(心、脾、腎)

臨床像

  • >60%、 >600万/µL(進行例で見られる値。の閾値はこれより低い——上表)
  • >400,000/µL
  • 機能的に不活性な血小板 →
  • 掻痒(腫瘍性由来のヒスタミン)、ヒスタミン過剰 → 消化性潰瘍
  • 生存期間中央値は約15年(40歳以下では35年超)。20年間で血栓症は約26%、PV後は約16%、への転化は約4%に起こる4(講義資料は生存約10年、10〜15年後のという古い数字を挙げる)

治療

本態性血小板血症(ET)

定義

ETはが主体の単一系統の増殖を示すMPNで、は・・のいずれかをにもつ(約8割)——残りはいずれも陰性の「」である5。

診断基準(ICC 2022)

4つすべて、または①〜③+で診断する2。分類第5版もETの基準は前版から変えていない3。

区分 項目
① 45万/µL以上
② :主にが増殖し、過分葉()の核をもつ大型の成熟が増える。・の有意な増加や、有意な線維化は無い
③ (BCR::ABL1陽性)・PV・など他のの基準を満たさない
④ ・・のいずれかの変異
他のクローン性マーカーの存在、または反応性の否定

主な特徴

  • 骨髄での大型で成熟したの増殖——緩いをなす5。の密なや異型が目立つときは前のを疑う(ただしETでも小さなはまれに見られる)2
  • 骨髄はそれ以外は
  • (45万/µL以上)
  • 発生は女性に多く、年齢とともに増え、多くは50〜60歳で受診する6。講義資料は「若年女性(約30歳)の疾患」とするが、若年女性にも生じうるという意味にとどめ、ETを若年者の病気と覚えない
  • ・()・のいずれかが駆動——変異例は変異例よりが低い(変異のETはと同程度で、変異例の約2倍)。への転化は変異例にだけみられた(15年で29%)7
  • への転化については、2014年のイタリアのコホートでは変異例と変異例に有意差がなかった7一方、2024年の総説は変異と 1型変異をへの転化リスクの上昇と関連づけている5。比べている変異の区分が違う(変異全体か1型か、を含むか)点に注意

臨床像

  • 長い無症状期間、しばしば偶発的に発見
  • 血栓の高リスク
  • :手足のズキズキ・灼熱感(血小板が小細動脈を閉塞)
  • への転化は稀(ET後は10年で0.8〜4.5%)2。10年での白血病転化は1%未満5
  • 生存期間中央値は約18年(若年者では35年超)5(講義資料の値は10〜15年)

治療

  • は超低・低・中間・高の4群(年齢60歳超・血栓症の既往・変異の組み合わせ)で分ける5
  • を全例に1日1回(低リスクでは1日2回)勧める。は高リスクで推奨、では任意で、第一選択はとペグ5
  • 生命を脅かす血栓・出血や緊急手術前など:でを急速に減少させる。効果は一過性で速やかにリバウンドするため、などの細胞減量薬を同時に開始する

💡 ポイント: PV = 3系統MPN+低+JAK2+・血栓+掻痒。ET = 主体+//++。いずれも経路が駆動。治療の目的はどちらも血栓の予防で、PVは全例に(Ht 45%未満)とアスピリン。はではなく血小板を選択的に除去する処置である点に注意。

⚠️ PV・ETの分類は2022年に分類第5版とICCが同じ年に別々に公表され併存している。 古典的MPNでは両者の重なりが大きいが、PVののように基準の中身が違う点もある。どちらか一方だけを「正しい分類」として覚えない32。

まとめ

  • PVは・・の3系統が増殖するMPNで、低値と変異が駆動し、による血栓・梗塞リスクと掻痒を特徴とする。
  • PVのはHb/Htの上昇・変異・3系統過形成の骨髄で、増加を基準に残すのはICC、削除したのは分類第5版である。
  • ETは主体のMPNで、・・のいずれかの変異が約8割にみられ、女性に多く50〜60歳代で見つかることが多い。を来す。
  • への転化はPVで多く(20年で約16%)、ETでは稀である。生存期間中央値はPV約15年・ET約18年。
  • PVは全例でHt 45%未満を目標とすると、高リスク例にを行う。ETはアスピリンを基本に、高リスク例でを行う。
  • は生命を脅かす血栓・出血や緊急手術前などにを急速に減らす処置で、効果は一過性のためなどの細胞減量薬を併用する。

出典

  1. 1.Modern and multidisciplinary care in polycythemia vera(Annals of Hematology・2026)Europe PMC の全文(PMC13091898)で確認した。Table 1 は「Updated WHO/ICC 2022」として真性多血症の大基準を Hb 16.5/16.0 g/dL超(男性/女性)・Ht 49%/48%超・赤血球量増加の3通りで示すが、これはWHO分類第5版とICCをひとまとめにした要約表であり、赤血球量を残しているのはICCの側である(WHO第5版の概要論文は赤血球量測定を基準から削除したと明記する)。あわせて JAK2 V617F が95%超・JAK2 エクソン12〜15の非典型変異が3〜5%を占めること、診断時年齢の中央値が60歳であること、鉄欠乏が Hb を見かけ上正常に保ち診断を遅らせうること、全例に低用量アスピリンと瀉血を行い細胞減量療法は高リスク例に残すこと、ヘマトクリット45%未満の維持が重要な治療目標であることを確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.International Consensus Classification of Myeloid Neoplasms and Acute Leukemias: integrating morphologic, clinical, and genomic data(Blood・2022)PMC9479031 の全文(Table 3・Table 4)で確認した。ICCの真性多血症の大基準は①Hb上昇またはHt上昇または赤血球量増加(閾値は Hb 男性16.5 g/dL超・女性16.0 g/dL超、Ht 男性49%超・女性48%超、赤血球量は予測正常平均の25%超)②JAK2 V617F またはエクソン12変異③年齢に比して過形成で3系統が増殖し異型のない多形性成熟巨核球が増える骨髄生検、小基準は血清エリスロポエチン低値で、大基準3つすべてまたは最初の2つ+小基準で診断する。本態性血小板血症の大基準は①血小板45万/μL以上②主に巨核球系が増殖し過分葉(鹿角状)核をもつ大型成熟巨核球が増え、顆粒球系・赤芽球系の増加や左方移動と有意な線維化を欠く骨髄生検③CML・真性多血症・原発性骨髄線維症など他の骨髄系腫瘍の基準を満たさない④JAK2・CALR・MPL変異、小基準はクローン性マーカーまたは反応性血小板増加の否定で、大基準すべてまたは最初の3つ+小基準で診断する。巨核球の密な集簇は原発性骨髄線維症の形態学的特徴だが本態性血小板血症でも小さな集簇がまれにみられ、本態性血小板血症後骨髄線維症への進行は10年で0.8〜4.5%であることも確認した——ICCはWHO分類第5版と同じ年に別個に公表されており、両分類は並立している閲覧 2026-09-24
  3. 3.The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Myeloid and Histiocytic/Dendritic Neoplasms(Leukemia・2022)Europe PMC の全文(PMC9252913)で確認した。WHO分類第5版(2022年)は骨髄増殖性腫瘍の主要病型として真性多血症・本態性血小板血症・原発性骨髄線維症を置き、末梢血所見・分子所見・骨髄形態の統合で鑑別し単独のパラメータでは十分な診断特異度が得られないとする。真性多血症の大基準はヘモグロビン濃度またはヘマトクリットの上昇、骨髄の3系統過形成(汎骨髄症)と多形性の成熟巨核球、JAK2 V617F またはエクソン12変異であり、51Cr標識赤血球による赤血球量測定は日常診療で稀になったため診断基準から削除された。本態性血小板血症の診断基準は確立しており変更されていない(本文に Hb・Ht の数値閾値そのものの記載は無い)閲覧 2026-09-24
  4. 4.Polycythemia vera: 2024 update on diagnosis, risk-stratification, and management(American Journal of Hematology・2023)PubMed の抄録で確認した。真性多血症の生存期間中央値は約15年で40歳以下では35年を超えること、20年間の血栓症・真性多血症後骨髄線維症・AMLのリスクがそれぞれ約26%・16%・4%であること、血栓リスクは60歳超または血栓症の既往で高リスク・いずれもなしで低リスクの2群に分けること、リスク群を問わず全例でヘマトクリット45%未満を目標とする瀉血と禁忌がなければアスピリン(81 mg)を1日1〜2回用いるのが治療の骨格であり、細胞減量療法は高リスク例に限り第一選択はヒドロキシウレアとペグインターフェロンαであることを確認した閲覧 2026-09-24
  5. 5.Essential thrombocythemia: 2024 update on diagnosis, risk stratification, and management(American Journal of Hematology・2024)PubMed の抄録で確認した。本態性血小板血症の診断には血小板45万/μL以上に加え前線維化期骨髄線維症・真性多血症・CML・環状鉄芽球と血小板増加を伴うMDSなど他の骨髄系腫瘍の除外が必要で、骨髄では成熟した外観の巨核球が緩い集簇をなして増えること、約80%がJAK2・CALR・MPLのいずれかの駆動変異を相互排他的にもつこと、MPL変異とCALR 1型変異が骨髄線維症への転化リスクの上昇と関連づけられていること、生存期間中央値は約18年で若年者では35年を超えること、10年での白血病転化率は1%未満であること、血栓リスクは超低・低・中間・高の4群に分けること、低用量アスピリンは全例に1日1回(低リスクでは1日2回)が勧められ、細胞減量療法は高リスクで勧められ中間リスクでは任意であり、第一選択はヒドロキシウレアとペグインターフェロンαであることを確認した閲覧 2026-09-24
  6. 6.Essential Thrombocytosis(StatPearls Publishing(Kaur A, Gohari P)・2025)StatPearls の本章(Last Update: August 9, 2025。Wayback の保存版で本文を取得)の Epidemiology の節で、本態性血小板血症の発生率は年間10万人あたり1.0〜2.5例、女性に多く、年齢とともに発生率が上がり多くの患者が50〜60歳で受診することを確認した閲覧 2026-09-24
  7. 7.JAK2 or CALR mutation status defines subtypes of essential thrombocythemia with substantially different clinical course and outcomes(Blood・2014)本態性血小板血症患者の解析で、JAK2変異例は真性多血症と同程度の血栓リスクを持ち、これはCALR変異例の血栓リスクの2倍であったこと、多血症への転化はCALR変異例では観察されなかった一方JAK2変異例では15年累積29%にみられたこと、両群間で骨髄線維症への転化率には有意差がなかったことを確認した閲覧 2026-08-27