疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 血液 · 腫瘍

慢性リンパ性白血病

Chronic lymphocytic leukemia

別名
CLLSmall lymphocytic lymphomaSLL
臓器系
血液腫瘍
科目
PathologyInternal Medicine
トピック
病理学 C/11:CLL/有毛細胞白血病内科学 H-24:慢性リンパ性白血病・小リンパ球性リンパ腫内科学 S-40:慢性リンパ性白血病
上位概念
白血病
鑑別疾患
マントル細胞リンパ腫有毛細胞白血病濾胞性リンパ腫脾辺縁帯リンパ腫
合併症
免疫性血小板減少症
続発疾患
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫非ホジキンリンパ腫
治療薬
イブルチニブベネトクラクスリツキシマブシクロホスファミドフルダラビンベンダムスチン
症状
リンパ節腫脹寝汗体重減少発熱
検査値
血算
組織像
慢性リンパ性白血病(MGG染色、末梢血)
適応薬
アレムツズマブベンダムスチン

🧠 全体像は、CD5・CD23をする成熟B細胞が緩徐に蓄積する同一腫瘍で、末梢血中のクローン性B細胞数が病変部位より優位ならCLL、リンパ節などの組織病変が主体ならSLLと呼ぶ。学習の幹は「持続性リンパ球増加やで疑う→でCD5/CD23陽性の成熟B細胞クローンを確認する→Rai病期だけでなく活動性疾患の有無で治療開始を判断する→治療前に必ずTP53/del(17p)とIGHV変異状態を評価し、現在は化学免疫療法ではなくやBCL2阻害薬を中心としたを選ぶ」。稀に急速増大・LDH上昇を来す(多くはDLBCLへ)を見逃さないことも重要である。

病態

CLL/SLLはアポトーシスを回避する能力を獲得したクローン性B細胞が、血液・骨髄・リンパ節・脾へ徐々に蓄積する腫瘍である。多くの症例でBCL2のによりアポトーシスが阻害され、緩徐だが持続的なの増加が起こる。

flowchart TD
    A["成熟B細胞に生じた遺伝子異常"] --> B["BCL2<span class='jp-term jp-term-diagram' title='overexpression'>過剰発現</span>などによる<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Evading apoptosis'>アポトーシス回避</span>"]
    B --> C["血液・骨髄・リンパ節・脾へのクローン性B細胞蓄積"]
    C --> D["正常造血・免疫グロブリン産生の抑制"]
    D --> E["貧血・血小板減少・易感染性"]
    C --> F["自己免疫機構の異常"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autoimmune hemolytic anemia (AIHA)'>自己免疫性溶血性貧血</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune thrombocytopenia, ITP'>免疫性血小板減少症</span>"]
    C --> H["追加の遺伝学的異常(TP53異常など)の獲得"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Richter transformation'>Richter形質転換</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-grade (aggressive)'>高悪性度</span>リンパ腫(主にDLBCL)へ"]

正常B細胞機能の抑制によりを来し、の素因となる。一部(約15%)では正常なが破綻し、自己の赤血球・血小板に対する自己抗体が産生される。骨髄が腫瘍細胞で占拠されると、正常造血が圧迫され貧血・好中球減少・血小板減少が進む。

病期・予後との関係

遺伝学的所見 予後への影響
トリソミー12、del(13q) 予後良好
del(11q) 予後不良
del(17p)/TP53変異 予後不良、化学免疫療法に抵抗性
IGHV変異あり 予後良好
IGHV変異なし 予後不良

臨床像

  • 健診で見つかる持続性リンパ球増加(多くは無症状)
  • 無痛性の全身性リンパ節腫脹、脾腫、
  • による貧血・血小板減少
  • による
  • の合併
  • B症状(発熱・・体重減少)、での
  • :CLLの一亜型とされる稀な緩徐性B細胞腫瘍で、高齢男性の・脾腫として発症し、化学療法への感受性が高く予後良好

⭐ 急速なリンパ節腫大、B症状の新規出現、LDHを疑う所見であり、PET/CTで高集積部位を選んでする。

診断

flowchart TD
    A["持続性リンパ球増加・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='painless lymphadenopathy'>無痛性リンパ節腫脹</span>"] --> B["血算・塗抹+末梢血<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flow cytometry'>フローサイトメトリー</span>"]
    B --> C{"クローン性B細胞が5×10^9/L以上か"}
    C -->|"はい"| D["CLL"]
    C -->|"いいえ・組織病変あり"| E["生検でSLLを確認"]
    C -->|"いいえ・組織病変なし"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monoclonal B-cell lymphocytosis'>単クローン性B細胞リンパ球増加症</span>(MBL)"]
    D --> G["治療開始前にTP53/del(17p)・IGHV変異状態を評価"]
    E --> G

でCD19、CD5、CD23をし、CD20との発現が弱い軽鎖制限クローンを確認する。では小型成熟リンパ球と、標本作製時に壊れやすい細胞に由来する)を認めるが、これのみでは診断できない。は診断に必須ではなく、原因不明の血球減少の精査や治療効果判定に用いる。

Rai病期分類

Rai病期 所見 リスク
0 リンパ球増加のみ
I +リンパ節腫脹 中間
II または脾腫 中間
III +貧血(Hb 11 g/dL未満)
IV +血小板減少(10万/μL未満)

⚠️ Rai病期は予後評価に有用だが、病期の高さだけを理由に無症候例へ治療を開始してはならない

治療

flowchart TD
    A["CLL/SLLを診断"] --> B{"活動性疾患があるか"}
    B -->|"いいえ"| C["定期的な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='watchful waiting'>無治療経過観察</span>"]
    B -->|"はい"| D["TP53/del17p・IGHV・併存症・薬剤相互作用を評価"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='BTK inhibitor'>BTK阻害薬</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venetoclax'>ベネトクラクス</span>基盤の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='targeted therapy'>標的治療</span>"]
    E --> F["反応・副作用をモニタリングしながら継続または期間限定治療を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='completion (of a treatment course)'>完遂</span>"]

活動性疾患には、進行性、巨大または進行性のリンパ節腫脹・脾腫、急速なリンパ球増加、治療抵抗性の自己免疫性血球減少、症候性節外病変、疾患関連B症状が含まれ、リンパ球数の高さだけでは治療しない。

治療群 特徴
共有結合型など) 継続投与型。心房細動、出血、高血圧、薬物相互作用に注意する
+抗CD20抗体 期間限定治療が可能。開始時にリスクを層別化し、慎重な漸増を行う
非共有結合型など 共有結合型耐性・例、で検討する

del(17p)/TP53異常例では化学免疫療法への反応が乏しく、を優先する。化学免疫療法(リツキシマブなどの併用)は現在の初回治療の一般的な標準ではない。

支持療法

  • 接種、感染症の早期治療、選択例での免疫グロブリン補充
  • 抗CD20抗体や免疫抑制治療の前にリスクを評価する
  • には各病態に応じた免疫抑制治療を行う
  • 皮膚がんなど二次がんの予防・検診

Richter形質転換

急速なリンパ節増大、B症状、LDH上昇を認めたらを行い、リンパ腫(主に)として、通常のCLL治療とは異なる強力な治療を検討する。

まとめ

  • CLLとSLLはCD5・CD23陽性の成熟B細胞腫瘍で、末梢血クローン性B細胞数5×10^9/Lが呼称を分ける同一疾患である。
  • 診断はによる確認が中心で、は必須ではない。
  • Rai病期は予後評価に有用だが、治療開始は病期でなく活動性疾患の有無で判断する。
  • 治療前にTP53/del(17p)とIGHV変異状態を必ず評価し、現在は基盤のが中心である。
  • 急速な増悪やLDH上昇ではを疑いする。