内科学

内科学 · S-40

慢性リンパ性白血病

Chronic Lymphocytic Leukemia

前提:病態
慢性リンパ性白血病(CLL)/有毛細胞白血病
疾患
慢性リンパ性白血病

🧠 全体像:とは同じで、末梢血中のが≥5 × 10⁹/L(5,000/µL)の状態が3か月以上続けばCLL、主にリンパ節・脾に存在し末梢血基準を満たさない場合はSLLと呼ぶ。診断しても症候性・活動性になるまで治療しない。

💡 iwCLL 2018 基準の三点セットを覚える。 ①末梢血の単クローン性Bリンパ球が5×10⁹/L以上、②それが3か月以上持続、③でクローン性(軽鎖制限)を確認、の3つでCLLと診断する1。3か月の持続という条件は2018年改訂でも削除されておらず、2025年の総説でも同じ書き方が維持されている2。リンパ節腫脹・・血球減少がないまま5×10⁹/L未満にとどまるものは(MBL)で、CLLではない1。

病態と臨床像

アポトーシスを回避するが血液、骨髄、リンパ節、脾に徐々に蓄積する。高齢者に多く、無症候性として発見されることが多い。

  • 無痛性全身リンパ節腫大、肝脾腫、B症状
  • による貧血・血小板減少
  • 低γ-globulin血症と免疫異常による
  • 、
  • Richter変換(Richter transformation):急速な節腫大、上昇、B症状を伴うへの形質転換

診断

末梢血で、軽鎖制限を示すB細胞がCD19、弱いCD20、CD5、CD23をする。では小型成熟リンパ球とがみられるが、だけでは診断できない。

flowchart TD
    A["持続性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphocytosis'>リンパ球増多</span>症"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complete blood count'>CBC</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='smear preparation'>塗抹標本</span>+末梢血<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flow cytometry'>フローサイトメトリー</span>"]
    B --> C{"クローン性 B細胞 ≥5×10⁹/L"}
    C -->|"はい"| D["CLL"]
    C -->|"いいえ+組織病変あり"| E["SLL/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue biopsy'>組織生検</span>"]
    D --> F["Rai/Binet病期+症状・血球減少"]
    E --> F
    F --> G{"治療開始基準あり"}
    G -->|"なし"| H["経過観察"]
    G -->|"あり"| I["TP53/del17p・IGHV・併存症で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='therapeutic options'>治療選択</span>"]

はCLL確定に必須ではなく、原因不明の血球減少や治療評価で用いる。治療前にはdel(17p)/TP53変異を必ず評価し、など感染リスクも確認する。TP53は治療開始前だけでなく再発のたびに評価し直す(治療中に新たなクローンが出現するため)3。

💡 を決めるのは病期ではなく TP53 異常とIGHV変異状態である。 del(17p)/TP53変異があるとが効かず、を選ぶ3。IGHV変異状態は予後と治療反応の指標で、IGHV非は予後が悪く、FCR(++リツキシマブ)でが期待できるのはIGHVかつTP53正常の若年・良好併存症例に限られる4。

Rai病期

Rai 所見 リスク概念
0 のみ 低
I +リンパ節腫大 中間
II +または脾腫 中間
III +貧血(Hb <11 g/dL) 高
IV +血小板減少(<100 × 10⁹/L) 高

病期はを表すが、治療開始は病期だけで決めない。

治療

経過観察

無症候性早期CLLに早期治療の利益はなく、診察、、症状を定期評価する。治療開始の主な契機は、進行性、巨大・進行性リンパ節/脾腫、急速な、、症候性節外病変、疾患関連B症状である1。

活動性CLL

  • 初回治療は、第2世代の共有結合型(アカラブルチニブ、ザヌブルチニブ)の継続投与か、+の固定期間治療のどちらかを、TP53、腎機能、出血・心房細動リスク、併用薬、患者希望で選ぶ43。
  • TP53異常例ではの効果が乏しく、を優先する35。
  • リツキシマブ+のみを病期別に一律投与する、という治療ではない。
  • 感染予防、ワクチン、の適応、予防を個別に評価する。

⚠️ 「非共有結合型」は初回治療の薬ではない。 初回・再発いずれでも標準に置かれるのは共有結合型(、アカラブルチニブ、ザヌブルチニブ)で、非共有結合型のpirtobrutinibは共有結合型で治療した後に用いる薬である64。名前が似ているので取り違えない。

💡 固定期間治療と継続治療の違いを分けて覚える。 +は12コースで終了する固定期間治療で、併存症を持つ未治療CLL 432例(年齢中央値72歳)の第III相CLL14試験でクロラムブシル+より無増悪生存を延長した(0.35、95%CI 0.23〜0.53)。この効果はTP53欠失/変異例やIGHV非変異例でも認められた7。一方は増悪・不耐まで飲み続ける継続治療で、心房細動・高血圧・出血が長期の問題になる。再発時は前治療と別のクラスへ切り替えるのが原則である4。

まとめ

  • CLL/SLLは同じCD5・CD23陽性で、末梢血クローン性 B細胞数で呼称を分ける。
  • 診断時病期が高くなくても、治療開始基準がなければ経過観察する。
  • 治療前と各再発時のTP53/del17p評価が重要で、治療の中心はから共有結合型とBCL2阻害薬によるへ完全に移った34。

出典

  1. 1.iwCLL guidelines for diagnosis, indications for treatment, response assessment, and supportive management of CLL(International Workshop on Chronic Lymphocytic Leukemia・2018)CLLの診断は末梢血の単クローン性Bリンパ球5×10^9/L(5,000/μL)以上を要し、リンパ節腫脹・臓器腫大・血球減少を伴わずこの閾値未満なら単クローン性B細胞リンパ球増加症(MBL)であること、リンパ節・臓器病変が主体で末梢血基準を満たさない場合をSLLと呼ぶこと、治療は活動性・症候性病変(進行性骨髄不全、巨大/進行性リンパ節腫大・脾腫、リンパ球倍加時間の短縮、ステロイド抵抗性自己免疫性血球減少、疾患関連の全身症状)に限って開始することを確認した閲覧 2026-08-25
  2. 2.Chronic Lymphocytic Leukemia: 2025 Update on the Epidemiology, Pathogenesis, Diagnosis, and Therapy(American Journal of Hematology・2025)2025年時点でもiwCLL基準に従い「CLLの診断には末梢血のBリンパ球5,000/μL以上が少なくとも3か月間存在すること」を要すると記載されており、3か月の持続という条件は削除されていないこと、クローン性はフローサイトメトリーで確認すること、WHO第5版がCLLをMBLとCLL/SLLからなるファミリーに置くことを確認した閲覧 2026-08-25
  3. 3.Guidelines for the diagnosis and treatment of chronic lymphocytic leukemia and small lymphocytic lymphoma from Chronic Lymphocytic Leukemia Spanish Group (GELLC)(Chronic Lymphocytic Leukemia Spanish Group・2025)5×10^9/Lの診断境界、治療開始前および再発時ごとのTP53変異・del(17p)評価、化学免疫療法に代わる標的治療の優先、TP53異常例での第2世代共有結合型BTK阻害薬の位置づけを確認した閲覧 2026-08-25
  4. 4.Consensus recommendations from the 2024 Lymphoma Research Foundation workshop on treatment selection and sequencing in CLL or SLL(Lymphoma Research Foundation・2025)初回治療では第2世代共有結合型BTK阻害薬(継続投与)またはベネトクラクス+オビヌツズマブ(固定期間)を選び、再発時は前治療クラスに応じて他方へ切り替え、両クラス治療後に非共有結合型BTK阻害薬pirtobrutinibやliso-celを検討するという順序を確認した閲覧 2026-08-25
  5. 5.Chronic Lymphocytic Leukemia/Small Lymphocytic Lymphoma, Version 2.2024, NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology(National Comprehensive Cancer Network・2024)CLL/SLLを同一疾患として扱い、分子・細胞遺伝学的所見と併存症に応じて標的治療を選択することを確認した閲覧 2026-08-25
  6. 6.Pirtobrutinib after a Covalent BTK Inhibitor in Chronic Lymphocytic Leukemia(New England Journal of Medicine・2023)非共有結合型BTK阻害薬pirtobrutinibは、共有結合型BTK阻害薬による治療を受けた後のCLL/SLLで臨床活性を示すことを確認した(初回治療の位置づけではない)閲覧 2026-08-25
  7. 7.Venetoclax and Obinutuzumab in Patients with CLL and Coexisting Conditions(New England Journal of Medicine・2019)併存症を持つ未治療CLL 432例(年齢中央値72歳)の第III相CLL14試験で、固定期間のベネトクラクス+オビヌツズマブはクロラムブシル+オビヌツズマブより無増悪生存を延長した(追跡中央値28.1か月でハザード比0.35、95%CI 0.23〜0.53)。効果はTP53欠失/変異例およびIGHV非変異例でも認められた閲覧 2026-08-25