内科学

内科学 · S-41

骨髄異形成症候群

Myelodysplastic Syndromes

前提:病態
骨髄異形成症候群(MDS)
前提:正常
造血。血液の組成。
疾患
骨髄異形成症候群慢性骨髄単球性白血病
症状
二次原発悪性腫瘍

🧠 全体像:は、、、1系統以上の末梢血血球減少、形態異形成を特徴とし、()へ進展し得る。骨髄が過形成でも末梢血は減少する点が、成熟血球増加を主体とするMPNとの基本的な違いである。

💡 「症候群」から「腫瘍」へ名前が変わった。 分類第5版(2022年)は myelodysplastic syndromes を myelodysplastic neoplasms()へ改称した。クローン性の腫瘍であることを名称に反映させたもので、略称 はそのまま残る1。一方、同じ2022〜2023年に出た ICC(International Consensus Classification)は「myelodysplastic syndromes」という呼称を維持しており、両体系は並立したまま食い違う2。旧称でも新称でも同じ疾患を指すので、試験ではどちらの語で問われてもよいように両方を覚える。

原因と病態

  • 原発性(de novo ):多くは高齢者に発症する。
  • :性抗がん薬や放射線治療後に発症し、一般に高リスク遺伝学的異常を伴いやすい。
  • などの曝露もリスクとなる。

後天的変異を持つ造血幹細胞クローンが優勢となり、分化異常と細胞死を起こす。その結果、骨髄は正形成〜過形成でも末梢血にが供給されず、貧血、感染、出血が生じる。

症状と形態

系統 症状 末梢血・骨髄の手掛かり
倦怠感、、 、核赤血球、、
、原因 好中球減少、・
点状出血、紫斑、粘膜出血 血小板減少、巨大・血小板、異常

著明なリンパ節腫大・肝脾腫は典型的ではなく、他疾患や/MPNオーバーラップも考える。

💡 を見たら SF3B1 を思い出す。 はミトコンドリアに鉄が輪状に沈着した赤芽球で、スプライシング因子 SF3B1 の変異と強く結びつく。第5版・ICCのいずれも、SF3B1 変異を伴う低芽球性を形態だけでなく遺伝子で定義される病型として独立させた12。この病型は貧血が主体で予後が比較的良い。

診断

flowchart TD
    A["持続する原因不明の血球減少"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nutritional deficiency'>栄養欠乏</span>・薬剤・アルコール・感染・肝腎疾患を除外"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complete blood count'>CBC</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='smear preparation'>塗抹標本</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reticulocyte'>網赤血球</span>・溶血検査"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow aspiration'>骨髄穿刺</span>/生検"]
    D --> E["形態+芽球率+鉄染色"]
    E --> F["染色体・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescence in situ hybridization'>FISH</span>・分子検査"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='World Health Organization'>WHO</span>/ICC分類+IPSS-R/IPSS-Mリスク"]
    G --> H["低リスク/高リスクの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Goals'>治療目標</span>を設定"]

ビタミンB12・葉酸・、薬剤、アルコール、感染、、PNHなどの可逆的原因を除外する。診断は血球減少だけでなく、骨髄形態、芽球率、を定義する遺伝学的異常を統合する。

⚠️ 予後層別は IPSS-R から IPSS-M へ移りつつある。 IPSS-R(血球減少・芽球・)に対し、2022年の IPSS-M はここへ31遺伝子の変異情報を加えて6リスク群に分ける。IPSS-Rで層別された患者の46%が別のリスク群へ移動し、その多くはより高いリスクへ再分類された3。移植の適否など治療の分岐が変わるため、が使える施設ではIPSS-Mを用いる。IPSS-Rが誤りになったわけではなく、遺伝子情報が得られない場面では引き続き使われる。

治療

低リスクMDS

目標は血球減少症状・輸血依存の軽減と生活の質の維持である。

  • と必要時の鉄過剰管理
  • 血清、輸血量、病型に応じて(erythropoiesis-stimulating agent)、など4
  • del(5q)を伴う貧血では。輸血依存の低・中間1リスクdel(5q) を対象としたで非依存の達成率を改善した5
  • 選択例で低用量のや免疫抑制療法
  • 、、抗菌薬はに応じて用いる

💡 はESAと横並びではなく、ESAより優れた成績が出ている。 ESA未治療で輸血依存の低リスク 356例を対象とした第III相COMMANDS試験ので、24週の非依存+ヘモグロビン上昇の達成率は59%対エポエチンα 31%(26.6%、95%CI 15.8〜37.4)だった6。はスーパーファミリーのリガンドを捕捉して後期赤芽球の成熟を促す薬で、受容体を刺激するESAとはが違う。

高リスクMDS

目標は進展を遅らせ生存を延長し、適格例を移植へつなぐことである。などを中心に、やを検討する。は高リスクで従来治療(支持療法・低用量・強力化学療法)よりを延長した唯一の薬物療法である7。が唯一ので、年齢だけでなく併存症、、遺伝学的リスク、ドナーを総合して適応を決める8。

まとめ

  • (第5版では、ICCでは)はクローン性による血球減少と異形成を特徴とする12。
  • 可逆的血球減少を除外し、骨髄形態・芽球・染色体・分子異常を統合して診断する。
  • 低リスクでは血球減少の改善、高リスクでは疾患修飾とを治療軸とする。

出典

  1. 1.The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Myeloid and Histiocytic/Dendritic Neoplasms(Leukemia・2022)WHO分類第5版(2022年)でmyelodysplastic syndromesがmyelodysplastic neoplasms(骨髄異形成腫瘍)へ改称され、略称MDSは維持されたこと、SF3B1変異を伴う低芽球性MDSとbiallelic TP53不活化を伴うMDSが遺伝学的に定義される病型として置かれたことを確認した閲覧 2026-08-25
  2. 2.The International Consensus Classification of myelodysplastic syndromes and related entities(International Consensus Classification・2023)ICCがmyelodysplastic syndromesという呼称を維持したままCCUS、SF3B1変異病型、多重ヒットTP53病型を定義し、芽球10〜19%をMDS/AMLという独立カテゴリーに置いたことを確認した(WHO-HAEM5と並立して食い違う点)閲覧 2026-08-25
  3. 3.Molecular International Prognostic Scoring System for Myelodysplastic Syndromes(NEJM Evidence・2022)IPSS-Mが血球減少・芽球・細胞遺伝学に31遺伝子の変異情報を統合して6リスク群に分類し、IPSS-Rで層別された患者の46%をより高いまたはより低いリスク群へ再分類したことを確認した閲覧 2026-08-25
  4. 4.Myelodysplastic syndromes: ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up(European Society for Medical Oncology・2021)リスク別のESA、輸血・鉄キレート、低メチル化薬、支持療法の臨床的位置づけを確認した閲覧 2026-08-25
  5. 5.A randomized phase 3 study of lenalidomide versus placebo in RBC transfusion-dependent patients with Low-/Intermediate-1-risk myelodysplastic syndromes with del5q(Blood・2011)輸血依存性の低・中間1リスクdel(5q) MDSでレナリドミドが赤血球輸血非依存を改善したことを確認した閲覧 2026-08-25
  6. 6.Efficacy and safety of luspatercept versus epoetin alfa in erythropoiesis-stimulating agent-naive, transfusion-dependent, lower-risk myelodysplastic syndromes (COMMANDS): interim analysis of a phase 3, open-label, randomised controlled trial(Lancet・2023)ESA未治療で輸血依存の低リスクMDS(IPSS-Rの very low/low/intermediate)356例の第III相COMMANDS試験の中間解析で、24週の赤血球輸血非依存+ヘモグロビン上昇の達成率はルスパテルセプト59%(86/147)対エポエチンα 31%(48/154)で、リスク差26.6%(95%CI 15.8〜37.4)だった閲覧 2026-08-25
  7. 7.Efficacy of azacitidine compared with that of conventional care regimens in the treatment of higher-risk myelodysplastic syndromes(Lancet Oncology・2009)高リスクMDSでアザシチジンが従来治療より全生存期間を延長したことを確認した閲覧 2026-08-25
  8. 8.Allogeneic hematopoietic stem cell transplantation for MDS and CMML: recommendations from an international expert panel(European Society for Blood and Marrow Transplantation / European LeukemiaNet・2017)高リスクおよび選択された低リスクMDSの移植適応と、移植前の腫瘍量低減を検討する条件を確認した閲覧 2026-08-25