内科学

内科学 · S-42

血友病

Hemophilias

前提:病態
凝固系の機能低下に関連する病態
前提:正常
血液凝固。線溶。生理的抗凝固機構。
疾患
血友病A・B
症状
関節内出血頭蓋内出血

🧠 全体像:血友病は凝固第VIII因子欠乏の血友病Aと欠乏の血友病Bが中心で、いずれもX連鎖性に遺伝し、関節・筋肉など深部出血を起こす。は保たれるため、通常はとが正常でが延長する。

分類と重症度

疾患 欠乏因子 遺伝 備考
血友病A VIII X連鎖 約80〜85%。との鑑別が必要
血友病B IX X連鎖 とも呼ばれる
欠乏症 XI 多くは常染色体 「血友病 C」と呼ばれることもあるが、出血パターンはA/Bと異なる
因子活性 重症度 典型的出血
<1% 重症 、
1–5% moderate 軽微な外傷後出血、時に
>5–<40% mild 手術・・大きな外傷で出血

この重症度区分はWFHガイドライン第3版(2020年)の定義に一致する1。

臨床像

  • 、膝、肘などの
  • 筋肉・軟部組織血腫、
  • 遷延する後・
  • 、頸部出血は生命を脅かす緊急事態

点状出血や表在性粘膜出血だけが主体なら、やをより疑う。欠乏は因子活性と出血重症度の相関が弱く、自然は通常みられない。

💡 鑑別に挙がるは6つの病型に分かれ、病型で治療が変わる。 ISTHの分類は1型(部分的量的欠乏)・2型(質的異常)・3型(ほぼ完全欠損)を大枠とし、2型を2A(の選択的欠乏でが低下)・2B(血小板への親和性が亢進)・2M(分布はほぼ正常なのにが著明低下)・2N(第VIII因子への親和性が著明低下)に分ける2。2N型は第VIII因子が低くが延長するので血友病Aと紛らわしいが、X連鎖ではなくで女性にも発症する。診断は出血歴と抗原・活性・活性/抗原比を統合し、確定と病型判定は安定時に行う3。

⚠️ 2B型にを用いない。 2B型では変異の血小板親和性が亢進しており、で異常がさらに放出されると血小板が消費されて血小板減少が悪化する2。3型も内因性貯蔵がないため無効である。は、事前の反応試験で有効性を確認できた病型に限って使う4。

診断

flowchart TD
    A["深部出血/家族歴"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complete blood count'>CBC</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prothrombin time'>PT</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='activated partial thromboplastin time'>aPTT</span>・フィブリノゲン"]
    B --> C{"孤立性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='activated partial thromboplastin time'>aPTT</span>延長"}
    C -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mixing test'>混合試験</span>"]
    D --> E{"補正する"}
    E -->|"はい"| F["VIII・IX・XI因子活性+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='von Willebrand factor'>vWF</span>評価"]
    E -->|"いいえ"| G["阻害薬/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lupus anticoagulant'>ループス抗凝固物質</span>を評価"]
    F --> H["遺伝学的検査・家族相談"]

すでに因子製剤を投与した後では検査が変化するため、重篤出血の治療を遅らせない範囲で投与前検体を確保する。治療反応低下では凝固因子インヒビターを測定する。

治療

  • :出血部位と重症度に応じてVIIIまたはIX因子製剤を速やかに補充する。頭蓋内・頸部・消化管など生命を脅かす出血は画像確定を待たず治療を開始する。
  • :重症表現型では関節障害とを防ぐ標準戦略で、標準/型因子製剤を個別化する。重症血友病および出血表現型の重い中等症血友病では、必要時投与ではなく療法を行う5。目標はWFH第3版で従来の1 IU/dL(1%)以上から3〜5 IU/dL程度へ引き上げられた1。
  • :第VIIIa因子の機能を模倣してとを架橋するバイスペシ抗体で、により血友病Aの予防に用いる。血友病Bには用いない。インヒビター保有例6・非保有例7のいずれでもを下げ、ISTH 2024ガイドラインでも血友病Aの予防の選択肢に置かれている5。静注の因子製剤と違い週1回〜4週1回の皮下注で済み、を短縮させるためベースの一段法第VIII因子活性測定が使えなくなる点に注意する。
  • :反応を事前確認した軽症血友病Aの小出血・小手術で使用できる。と低Na血症に注意する。
  • などの:口腔・に有用だが、では閉塞リスクのため避ける。
  • インヒビター保有例:インヒビター力価はBethesda単位(BU)で表し、5 BU以上を高として扱う。(活性化=aPCC、遺伝子組換え活性型)やを専門施設で選択する。投与中のaPCC大量併用は血栓性・血栓症のリスクがある6。
  • 遺伝子治療:肝で因子遺伝子を導入する一回投与の治療がすでに実用化しており、血友病Aに対するvaloctocogene roxaparvovec、血友病Bに対するetranacogene dezaparvovecが米国ほか複数国で承認されている8。既存のAAV、上昇、効果の持続期間が実地上のになる。

アスピリン、、は可能な限り避け、手術・はと計画する。

まとめ

  • 血友病A/BはVIII/IX因子欠乏によるX連鎖性で、深部出血とが特徴である。
  • 通常は・血小板正常、延長で、因子活性により確定・する。
  • 治療はまたは非因子予防療法()を軸とし、重篤出血は確定画像を待たず治療する。予防のは従来の1%より高く、多くの臨床医が3〜5%超を目指すようになったが個別化する(WFH第3版の付記)1。遺伝子治療も選択肢に入った8。

出典

  1. 1.WFH Guidelines for the Management of Hemophilia, 3rd edition(World Federation of Hemophilia・2020)血友病の重症度を因子活性で重症(1 IU/dL=1%未満)・中等症(1〜5 IU/dL)・軽症(5〜40 IU/dL未満)に分けること、推奨の付記(REMARK)で、従来はトラフ値1 IU/dL(1%)が十分な目標とされたが1%では出血リスクが残るため、多くの臨床医はより高いトラフ値(3〜5%超、またはそれ以上)を目標とするのを好むようになったと述べ、個々の活動・生活・薬物動態に合わせて個別化するとしていること(推奨本文が目標値を改訂したのではない)を、Wayback保存のWFH公式PDF(www1.wfh.org、184頁)で確認した閲覧 2026-09-24
  2. 2.Update on the pathophysiology and classification of von Willebrand disease: a report of the Subcommittee on von Willebrand Factor(International Society on Thrombosis and Haemostasis Subcommittee on von Willebrand Factor・2006)von Willebrand病を1型(部分的量的欠乏)・2型(質的異常)・3型(ほぼ完全欠損)の3大分類に分け、2型をさらに2A(高分子量多量体の選択的欠乏による血小板粘着低下)・2B(血小板GPIbへの親和性亢進)・2M(多量体分布はほぼ正常だが血小板粘着が著明に低下)・2N(第VIII因子への親和性が著明に低下)の4病型に分ける、計6カテゴリーの体系を定めたことを確認した閲覧 2026-08-25
  3. 3.ASH ISTH NHF WFH 2021 guidelines on the diagnosis of von Willebrand disease(Blood Advances・2021)VWD診断の初期検査、1型のVWF閾値、VWF活性/抗原比、安定時評価と病型確定の原則を確認した閲覧 2026-08-25
  4. 4.ASH ISTH NHF WFH 2021 guidelines on the management of von Willebrand disease(ASH/ISTH/NHF/WFH・2021)von Willebrand病では病型、処置の種類、出血部位に応じてデスモプレシン、抗線溶薬、VWF含有製剤を選択すること、デスモプレシンは事前の反応試験で有効性を確認してから治療に用いることを確認した閲覧 2026-08-25
  5. 5.International Society on Thrombosis and Haemostasis clinical practice guideline for treatment of congenital hemophilia A and B based on the Grading of Recommendations Assessment, Development, and Evaluation methodology(International Society on Thrombosis and Haemostasis・2024)重症血友病および出血表現型の重い中等症血友病では必要時投与ではなく定期予防療法を行うこと、血友病Aではエミシズマブが予防の選択肢に位置づけられることを確認した閲覧 2026-08-25
  6. 6.Emicizumab Prophylaxis in Hemophilia A with Inhibitors(New England Journal of Medicine・2017)インヒビター保有血友病Aでエミシズマブの皮下週1回予防投与が出血を有意に減らしたこと、および活性化プロトロンビン複合体製剤(aPCC)を高用量併用した例で血栓性微小血管障害・血栓症が生じたことを確認した閲覧 2026-08-25
  7. 7.Emicizumab Prophylaxis in Patients Who Have Hemophilia A without Inhibitors(New England Journal of Medicine・2018)インヒビターを持たない血友病Aでもエミシズマブの皮下予防投与が出血を減らし、第VIII因子製剤による従来の予防投与と比べても年間出血率を低下させたことを確認した閲覧 2026-08-25
  8. 8.Deconstructing gene therapy in hemophilia for the clinician(Hematology, American Society of Hematology Education Program・2025)血友病の遺伝子治療は研究段階を出て市販されており、血友病Aに対するvaloctocogene roxaparvovecと血友病Bに対するetranacogene dezaparvovecの2製品が米国ほか複数国で承認・製品化されていることを確認した閲覧 2026-08-25