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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

マントル細胞リンパ腫

Mantle cell lymphoma

別名
MCL套細胞リンパ腫
臓器系
腫瘍血液
科目
PathologyInternal MedicinePediatrics
トピック
病理学 C/13:濾胞性リンパ腫/マントル細胞リンパ腫/節外辺縁帯(MALT)リンパ腫内科学 S-39:非ホジキンリンパ腫内科学 H-21:非ホジキンリンパ腫小児科 3-02:小児リンパ腫
上位概念
非ホジキンリンパ腫
鑑別疾患
MALTリンパ腫びまん性大細胞型B細胞リンパ腫慢性リンパ性白血病
合併症
血液・腫瘍救急(発熱性好中球減少症・腫瘍崩壊症候群・上大静脈症候群)
治療薬
リツキシマブシタラビンボルテゾミブイブルチニブベンダムスチン
症状
リンパ節腫脹発熱寝汗体重減少腹痛
検査値
血算乳酸脱水素酵素
スコア
Ann Arbor分類
適応薬
ベンダムスチン

🧠 全体像は、に由来するB細胞腫瘍で、t(11;14)(q13;q32)による1の恒常的が病態の核心にある。学習の幹は「進行が速いのに治癒しにくいという二面性」である。のように緩徐に見えて実は進行性であり、DLBCLのように進行性に見えて実は(多くの場合)治癒を目指しにくい——この中間的な性格ゆえに、診断時にはすでに・節外病変が広がっていることが多く、若年者には移植を含む強力な治療を、高齢者にはを重視した治療を、と患者背景で戦略を大きく分ける。

概要

の一亜型で、正常においてを取り囲むに由来する腫瘍である。高齢男性に多く、診断時の年齢中央値は60歳代後半である。全NHLの5%程度を占め、頻度はやDLBCLより低いが、診断時に(Ann Arbor III〜IV期)であることが大半を占める点がと大きく異なる。

発生機序

中心的な異常はt(11;14)(q13;q32)によるCCND1::IGH融合である。11番染色体のCCND1遺伝子(1をコードする)が、14番染色体のIGH(領域に転座することで、本来B細胞では発現しない1が恒常的にする。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mantle zone'>マントル帯</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='naive B cell'>ナイーブB細胞</span>"] --> B["t(11;14)(q13;q32)"]
    B --> C["CCND1::IGH融合"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclin D'>サイクリンD</span>1の恒常的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='overexpression'>過剰発現</span>"]
    D --> E["細胞周期のG1/S移行が制御不能に"]
    E --> F["制御不能な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor growth'>腫瘍増殖</span>"]

💡 1はCDK4/6と複合体を形成してRb蛋白をリン酸化し、細胞周期をからS期へ進める調節因子である。正常なB細胞はこれを発現しないため、免疫染色で1が陽性になること自体が腫瘍細胞の存在を強く示唆する。ごく一部(5%未満)の1陰性例は、代わりに2やD3の、あるいはSOX11の発現で診断を補強する。SOX11は正常B細胞には発現しない転写因子で、1陰性MCLの診断に有用なだけでなく、後述する予後良好な非結節性の亜型ではしばしば陰性化するため、亜型の識別にも使われる。

病理形態・免疫表現型

腫瘍細胞は正常リンパ球よりやや大きく、核形不整・核小体不明瞭・乏しい細胞質を特徴とする小〜中型細胞で、びまん性または結節状にリンパ節構築を置換する。

免疫マーカー 典型的所見 意味
CD20・PAX5 陽性 成熟B細胞由来
CD5 陽性 小型B細胞リンパ腫の中でCD5陽性群に分類する根拠
CD23 陰性 CD5陽性かつCD23陽性なら(CLL/SLL)を疑う
cyclin D1 陽性 t(11;14)の産物。診断の中心的マーカー
SOX11 陽性(多くの型) 1陰性例の診断補助、亜型の識別に有用
CD10・BCL6 陰性 陽性ならを疑う

CD5陽性・CD23陰性・cyclin D1陽性という組み合わせが診断の要点である。CD5とCD23がともに陽性ならCLL/SLLを、CD5が陰性ならMALTリンパ腫やを疑う。同じCD5陽性小型B細胞リンパ腫でもCD23の有無でCLL/SLLとMCLを鑑別できる点が臨床上の要点になる。

形態学的にはのほかに、より侵襲性の高い様の・高い数)と(核のが目立つ大型細胞)という2つの亜型があり、いずれもを反映するが高く予後不良である。一方で、末梢血にごく緩徐にしリンパ節腫脹に乏しい非結節性・白血病性の亜型も認識されており、SOX11陰性かつIGHV体細胞超変異を伴うことが多く、TP53異常を伴わなければ長期にわたりが可能なことがある。同じ「」という診断名の中に、進行の速いと、きわめて緩徐な非結節性亜型という両極端が共存する点が本疾患の理解を難しくしている。

臨床像

多くは無痛性の全身性リンパ節腫脹で発見され、診断時にはすでにAnn Arbor III〜IV期のであることが大半を占める。発熱体重減少などのB症状を伴うこともある。節外病変の頻度が高いことも特徴で、消化管では内視鏡で多数のポリープ様病変がに分布するを来し、腹痛や便通異常の原因になる。骨髄・末梢血への浸潤も高頻度で、・舌根扁桃からなるリンパ組織の輪)への浸潤もみられる。脾腫を伴うことも多い。

診断・病期評価

生検でCD5陽性・CD23陰性・cyclin D1陽性の小型B細胞リンパ腫を確認し、FISHでt(11;14)を確認して診断を確定する。病期はで評価するが、での診断が大半を占めるため、病期そのものより・患者の全身状態がを左右する。にはM(Mantle Cell Lymphoma International Prognostic Index:年齢・全身状態・LDH・を組み合わせたスコア)を用い、によるの評価やTP53異常の有無を組み合わせて個別化する。LDH上昇はの指標となり、血算は骨髄・末梢血浸潤による血球減少やの評価に用いる。

治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mantle cell lymphoma'>マントル細胞リンパ腫</span>と確定診断"] --> B{"若年・移植適応あり"}
    B -->|"該当"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytarabine'>シタラビン</span>併用の強力な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='remission induction therapy'>寛解導入療法</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autologous hematopoietic stem cell transplantation (ASCT)'>自家造血幹細胞移植</span>による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='consolidation (therapy)'>地固め</span>"]
    D --> E["リツキシマブ維持療法"]
    B -->|"非該当(高齢・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tolerability'>忍容性</span>低下)"| F["抗CD20抗体+化学療法"]
    F --> G["リツキシマブ維持療法"]
    E --> H["再発・難治"]
    G --> H
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='BTK inhibitor'>BTK阻害薬</span>"]
    I --> J["さらなる再発なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CAR T-cell therapy'>CAR-T細胞療法</span>など"]

若年で移植適応のある患者には、を組み込んだ強力なを行い、リツキシマブ併用下にたうえで、リツキシマブ維持療法を継続する方針が標準的である。高齢者や移植非適応の患者には、リツキシマブなど抗CD20抗体に化学療法を併用する(を組み込むVR-CAPレジメンなどが選択肢になる)治療を行い、を重視して強度を調整したうえで、反応が得られればリツキシマブ維持療法へ移行する。

⚠️ 「診断時に」という事実だけで一律に予後不良と判断しない。前述の非結節性・白血病性の亜型やTP53正常例は緩徐な経過をとりうる一方、・TP53異常例は化学免疫療法にも抵抗性を示しやすく、より新しい治療戦略やを積極的に検討する対象になる。

にはをはじめとするが中心的な選択肢となる。にも抵抗性を示す例や、さらに再発した例では、などの新規治療が選択肢に加わる。

鑑別

疾患 ・起源 免疫形質の特徴 主な遺伝子異常 経過の要点
B細胞 CD5陽性・CD23陰性・cyclin D1陽性 t(11;14) CCND1::IGH 進行が速いのに治癒しにくい二面性。診断時に・節外病変が多い
/SLL 成熟B細胞 CD5陽性・CD23陽性・cyclin D1陰性 主にBCL2 。末梢血優位ならCLL、リンパ節優位ならSLL
MALTリンパ腫 下の CD5陰性・CD23陰性・cyclin D1陰性 t(11;18) API2::MALT1など 胃例はH. pylori除菌で退縮しうる
CD10陽性・BCL6陽性・cyclin D1陰性 t(14;18) IGH::BCL2 緩徐だが治癒不能。約40%がDLBCLへ形質転換
/活性化B細胞 CD20陽性、cyclin D1陰性 BCL6・BCL2・など だが病期にかかわらず治癒を目指せる。芽球様MCLは形態が類似し紛れうる

まとめ

  • に由来し、t(11;14)(q13;q32)によるCCND1::IGH融合で1が恒常的にすることが病態の核心である。
  • 免疫形質はCD20陽性・CD5陽性・CD23陰性・cyclin D1陽性が典型で、CD5陽性かつCD23陽性のCLL/SLL、CD5陰性のMALTリンパ腫・と対比して鑑別する。SOX11はcyclin D1陰性例の診断補助になる。
  • 高齢男性に多く、診断時にはAnn Arbor・節外病変(消化管の、末梢血・浸潤など)を伴うことが多い。
  • が高く予後不良な亜型、非結節性・白血病性の亜型はSOX11陰性・IGHV変異を伴い緩徐に経過しうる亜型で、「進行が速いのに治癒しにくい」という中間的な二面性の中にさらに幅がある。
  • 治療は若年・移植適応例に併用の寛解導入と+リツキシマブ維持、高齢・非適応例に抗CD20抗体+化学療法+維持療法を行い、再発にはを中心に選択する。