病理学

病理学 · C/13

濾胞性リンパ腫/マントル細胞リンパ腫/節外辺縁帯(MALT)リンパ腫

Follicular lymphoma, mantle cell lymphoma, extranodal marginal zone lymphoma

タグ
High-yield / ポイント
応用トピック
非ホジキンリンパ腫濾胞性リンパ腫非ホジキンリンパ腫
薬剤
ベンダムスチン
疾患
MALTリンパ腫(節外性辺縁帯リンパ腫)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫マントル細胞リンパ腫非ホジキンリンパ腫濾胞性リンパ腫脾辺縁帯リンパ腫

🧠 全体像:リンパ腫・はいずれも特徴的な(BCL2・1)による細胞周期/アポトーシス制御の破綻が核心で、進行速度(緩徐 vs 進行性)で対比できる。MALTリンパ腫だけは遺伝子異常が主因ではなく、H. pyloriなど慢性炎症性刺激への反応としてリンパ組織がする点で他の2つと機序が根本的に異なる。

A)濾胞性リンパ腫

概要

発生機序

  • t(14;18) → BCL2をIgHに融合 → BCL2 → アポトーシスを阻害
  • 追加の・変異
  • CLL/SLLと同じ機序(抗アポトーシス)
  • 💡 健常者の末梢血にも低頻度でt(14;18)陽性細胞が検出されるが、その多くは由来の異型B細胞集団であり、転座単独の保有だけではの発症に至らない1

形態

  • リンパ節は結節状の外観
  • 腫瘍細胞は正常なに類似:
    • :捻れた・切れ込んだ核をもつ小型細胞
    • :と1〜3個の核小体をもつ大型細胞
  • 大型が多いほど → より進行性
  • 💡 グレードの扱いは2つの分類で異なる。
    • 分類第5版(2022年):t(14;18)をもつ典型例を「classic FL」とし、グレード判定を任意にした(の再現性が低く、Grade 1・2・3Aの臨床転帰に有意差がないとみられるため)。旧Grade 3Bは「」へ改称した(旧3Bにおおむね相当)2
    • (ICC 2022):グレード(1〜2、3A、3B)を残す。Grade 3Bは臨床的に明らかに異なり、通常はDLBCLと同様に治療されるので3Aとの区別が重要とする3
  • マーカー:CD19・CD20・CD10・(細胞表面)と BCL2 蛋白(細胞質)がほぼ全例で陽性で、大多数が t(14;18) をもつ4。講義はこれに BCL6(の形成に関わる転写因子)を加えている
  • 💡 BCL2蛋白は正常なでは陰性なので、濾胞の中の細胞がBCL2陽性であることがとの鑑別の手がかりになる

臨床像

  • 無痛性リンパ節腫脹
  • 80%の症例で
  • 緩徐だが治癒不能な疾患
  • 講義では「40%がDLBCLへ転化」とされる。カナダの研究(600例、追跡中央値109か月)では28%がへ形質転換し、年間リスクは3%で15年を超えても頭打ちにならなかった。診断時の臨床因子のうちで予測因子となったのは進行病期だけで、形質転換後の生存期間中央値は1.7年だった5
  • 生存期間中央値:講義では約10年。スタンフォード大学の未治療grade 1〜2例1,334例の解析では、中央値は1960〜1986年の11年から1987〜1996年に18.4年へ延び、リツキシマブ時代(1997〜2003年)は未到達だった6
  • (リツキシマブ)によく反応する
  • ⚠️ 講義は「にもよく反応」とするが、単剤の効果は限られる。110例に単剤を用いたでは20.9%で、の基準に届かなかった7

B)マントル細胞リンパ腫

概要

発生機序

  • t(11;14) → 1(11番染色体)をIgH(14番染色体)に融合 → 1増加(細胞周期調節因子)→ 制御不能な
  • 腫瘍細胞:表面IgM/IgD、CD19、CD20、CD5
  • 💡 SOX11陽性のは進行性・予後不良である一方、SOX11陰性は非リンパ節性・白血病様の緩徐な亜型で、112例の検討ではが有意に良好(78% vs 36%)だった8。分類第5版はこの型を「白血病性非節性」として、通常の・in situ マントル細胞腫瘍と並べて挙げている2

形態

  • びまん性または結節状のリンパ節浸潤
  • 腫瘍細胞は正常リンパ球より大きい、不整な核、核小体なし、乏しい細胞質
  • 骨髄はしばしば侵される、20%で末梢血
  • 節外:消化管 → ポリープ様の多巣性結節

臨床像

  • 、リンパ節腫脹
  • 全身性疾患:骨髄、脾、肝、消化管
  • 進行性で治癒不能

C)MALTリンパ腫(節外辺縁帯リンパ腫)

概要

  • MALTリンパ腫はを侵すリンパ腫
  • MALTの辺縁帯のB細胞から生じる
  • 好発部位:唾液腺、胃、
  • 形態:小型の・の濾胞周囲性増殖

発生機序

  • 慢性炎症性疾患(感染または自己免疫)を背景に発生
  • :H. pylori 感染と高い関連
    • H. pylori → → → B・T細胞の活性化 → リンパ球増殖 → 変異 → MALTリンパ腫
  • 眼・皮膚MALT → Chlamydia psittaci
  • ・ → 唾液腺・甲状腺のMALTリンパ腫
  • 💡 t(11;18)(q21;q21)(API2-MALT1融合)陽性のはに反応しにくい9
flowchart TD
    A["H. pylori感染"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic gastritis'>慢性胃炎</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastric atrophy'>胃萎縮</span>"]
    C --> D["B・T細胞の活性化"]
    D --> E["リンパ球増殖"]
    E --> F["変異の蓄積"]
    F --> G["MALTリンパ腫"]

臨床像

  • 緩徐、進行がゆっくり
  • 胃型:H. pylori除菌(抗菌薬) → リンパ腫の退縮。ただしt(11;18)陽性例は除菌に反応しにくい(上記)
  • 他部位:切除や放射線療法で治癒
  • 10%未満の症例でDLBCLへ転化

💡 ポイント: = t(14;18)/BCL2、結節状パターン、CD10+/BCL2+、緩徐だが治癒不能、形質転換は年約3%(講義では40%)→ DLBCLなど。マントル細胞 = t(11;14)/1+CD5+、進行性・治癒不能、消化管ポリープ様病変。MALT = 胃のH. pylori関連、除菌で退縮しうる(t(11;18)陽性は反応しにくい)、緩徐。

まとめ

  • はt(14;18)によるBCL2でアポトーシスが阻害され、結節状パターン・CD10+/BCL2+を示す緩徐だが治癒不能な疾患で、への形質転換は年約3%で続く(講義では40%がDLBCLへ転化とされる)。
  • グレード判定は第5版では任意(旧3Bはへ改称)、ICCでは1〜2・3A・3Bを残す。
  • はt(11;14)による1増加が機序で、CD5陽性・進行性・治癒不能という点でと対照的。
  • MALTリンパ腫は遺伝子異常ではなく慢性炎症性刺激(胃はH. pylori、眼・皮膚はChlamydia psittaci、唾液腺・甲状腺は・)が発生の背景。
  • はH. pylori除菌だけでリンパ腫が退縮しうる点が他の2疾患と大きく異なる(t(11;18)陽性例は除菌に反応しにくい)。
  • 3疾患とも中高年に好発するが、とMALTリンパ腫が緩徐なのに対し、は進行性である。消化管ポリープ様病変はの手がかりになる。

出典

  1. 1.Follicular lymphoma-like B cells in healthy individuals: a novel intermediate step in early lymphomagenesis(The Journal of Experimental Medicine・2006)濾胞性リンパ腫の遺伝学的な目印であるt(14;18)転座は健常者の末梢血にも低頻度で検出されること、これを保有する細胞は従来考えられていた休止期のナイーブB細胞ではなく胚中心由来で濾胞性リンパ腫と同じ遺伝子型・表現型を示す拡大するB細胞集団であり前腫瘍性のニッチを形成しうること、すなわち転座単独の保有だけでは濾胞性リンパ腫の発症に至らないことを確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Lymphoid Neoplasms(World Health Organization Classification of Tumours Editorial Board・2022)PMC9214472 のHTML全文で確認した。WHO分類第5版(2022年)は t(14;18)(IGH::BCL2)をもつ典型的な濾胞性リンパ腫を classic FL(cFL)と呼び、濾胞性大細胞型B細胞リンパ腫(FLBL)・まれな特徴をもつFL(uFL)と区別すること。グレード判定は cFL にだけ関わり、もはや必須ではない(任意)とし、その理由として再現性の低さ(生検法の違い〔リンパ節全摘対針生検〕、中心芽細胞の定義と認識のばらつき、40倍対物レンズの高倍率視野の大きさが年代で変わってきたこと)と、Grade 1・2・3Aの臨床転帰に有意差がないとみられることを挙げていること。FLBL は旧分類(WHO-HAEM4R)のFL grade 3Bに「おおむね相当」し、分類全体の用語をそろえるために改称したと述べていること(WHO-HAEM5本文はFLBLの治療をDLBCLに準じるとは書いていない)。あわせて、マントル細胞リンパ腫の項に in situ マントル細胞腫瘍・マントル細胞リンパ腫・白血病性非節性マントル細胞リンパ腫(leukaemic non-nodal mantle cell lymphoma)の3病型が並んでいること閲覧 2026-09-24
  3. 3.The International Consensus Classification of Mature Lymphoid Neoplasms: a report from the Clinical Advisory Committee(Blood / Clinical Advisory Committee・2022)PMC9479027 のHTML全文で確認した。ICC 2022 は濾胞性リンパ腫の形態学的グレード(1〜2、3A、3B)を従来の基準のまま残すことで合意したこと。Grade 3Bは臨床的な振る舞いが明らかに異なり、通常はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と同様に治療されるため3Aとの区別が重要で、BCL2再構成とCD10陽性はいずれも3Aを支持すると述べていること閲覧 2026-09-24
  4. 4.Follicular lymphoma: 2023 update on diagnosis and management(American Journal of Hematology・2022)抄録で確認した。濾胞性リンパ腫の免疫染色では細胞表面のCD19・CD20・CD10・単クローン性免疫グロブリンと、細胞質のbcl-2蛋白の発現がほぼ全例で陽性であり、大多数がt(14;18)(IgH/bcl-2)をもつこと、Gradeの判定と形質転換の評価に十分な組織量を得るため針生検より切開生検が望ましいことを確認した(BCL6は抄録に挙がっていない)閲覧 2026-08-24
  5. 5.Population-Based Analysis of Incidence and Outcome of Transformed Non-Hodgkin's Lymphoma(Journal of Clinical Oncology・2008)抄録で確認した。カナダ・ブリティッシュコロンビア州で1986〜2001年に新規診断された濾胞性リンパ腫600例(追跡期間中央値109か月)の集団ベース解析で、170例(28%)が形質転換をきたし(生検で確認したのはその63%)、年間の形質転換リスクは3%で15年を超えて頭打ちなく持続したこと、診断時の臨床因子の多変量解析では進行病期だけが将来の形質転換の予測因子であったこと、形質転換後の生存期間中央値は1.7年であったことを確認した閲覧 2026-08-27
  6. 6.Improvements in observed and relative survival in follicular grade 1-2 lymphoma during 4 decades: the Stanford University experience(Blood・2013)抄録で確認した。スタンフォード大学で1960〜2003年に治療した未治療のgrade 1〜2濾胞性リンパ腫(1,334例)を4つの時代に分けた単施設の後ろ向き解析で、全体の全生存期間中央値は13.6年、時代別には1960〜1986年の11年から1987〜1996年の18.4年へ延び、リツキシマブ時代(1997〜2003年)は未到達であったこと。改善には支持療法や再発時の有効な治療などが寄与したと考えられると述べていること閲覧 2026-09-24
  7. 7.Ibrutinib as Treatment for Patients With Relapsed/Refractory Follicular Lymphoma: Results From the Open-Label, Multicenter, Phase II DAWN Study(Journal of Clinical Oncology・2018)抄録で確認した。前治療2ライン以上の化学免疫療法後再発・難治濾胞性リンパ腫110例にイブルチニブ単剤を投与した単群第II相DAWN試験で、奏効率は20.9%(95%CI 13.7〜29.7%)と主要評価項目の基準(下限18%)を満たさず、完全奏効11%、無増悪生存期間中央値4.6か月であったこと。奏効例の奏効は持続的(奏効期間中央値19.4か月)であったこと閲覧 2026-09-24
  8. 8.Genomic and Gene Expression Profiling Defines Indolent Forms of Mantle Cell Lymphoma(Cancer Research・2010)マントル細胞リンパ腫112例の検討で、SOX11陰性15例は非リンパ節性の白血病様病態・高頻度の高変異型IGVH・非複雑核型を示し5年全生存率78%であったのに対し、SOX11陽性97例は5年全生存率36%にとどまったこと(P=0.001)、SOX11陰性・非リンパ節性・高変異型IGVH・非複雑核型という特徴を持つ緩徐型マントル細胞リンパ腫の亜型が定義されたことを確認した閲覧 2026-08-27
  9. 9.Resistance of t(11;18) positive gastric mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma to Helicobacter pylori eradication therapy(The Lancet・2001)ヘリコバクター・ピロリ関連胃MALTリンパ腫の20〜30%が抗菌薬治療で退縮しないこと、RT-PCRでAPI2-MLT(t(11;18)(q21;q21))融合転写産物を調べると除菌無効12例中9例(75%)で検出された一方、除菌有効10例では1例も検出されなかったことを確認した閲覧 2026-08-24