病理学

病理学 · C/14

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)/バーキットリンパ腫

Diffuse large B cell lymphoma, Burkitt lymphoma

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High-yield / ポイント
応用トピック
非ホジキンリンパ腫びまん性大細胞型B細胞リンパ腫非ホジキンリンパ腫小児腫瘍救急小児リンパ腫
疾患
バーキットリンパ腫びまん性大細胞型B細胞リンパ腫硝子体網膜リンパ腫非ホジキンリンパ腫

🧠 全体像:DLBCLとはいずれも進行性・急速増殖のB細胞リンパ腫だが、DLBCLは成人最多で濾胞パターンなしの大型細胞びまん性増殖、バーキットはMYCによる極めて高い増殖率と「」像が特徴という形態・機序の違いで区別する。

A)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

概要

  • 成人で最も多いリンパ腫
  • 進行性()で急速に増殖するB細胞リンパ腫

発生機序

  • 頻度の高い遺伝子変異:
    • BCL6
    • t(14;18) → BCL2
  • 💡 MYCとBCL2(BCL6の有無を問わない)の両方の再構成を併せ持つ症例(いわゆるdouble-hit)は、通常のDLBCLとは区別される独立したカテゴリーに分類される1。名称と範囲は2つの分類で異なる:
    • 分類第5版:「MYCとBCL2の再構成を伴う/B細胞リンパ腫(DLBCL/HGBL-MYC/BCL2)」。細胞が大型でも中型・芽球様でも、二重再構成があればこの病型とする2
    • ICC 2022:「MYCとBCL2の再構成を伴うB細胞リンパ腫」とし、MYCとBCL6だけの二重再構成例はこれから除いて暫定病型「MYCとBCL6の再構成を伴うB細胞リンパ腫」に分ける3。第5版ではMYC/BCL6例に独立の病型を置かず、形態に応じて振り分ける1
  • 起源細胞による2亜型:
    • GCB型(由来)
    • ABC型(活性化B細胞由来)— 予後不良
  • 💡 起源細胞分類は本来遺伝子発現プロファイリングで判定するが、日常診療ではCD10・BCL6・MUM1の3抗体による免疫染色(Hansアルゴリズム)で「GCB型/非GCB型」に分けて代用することが多い。Hans法の原著(152例)ではがGCB群76%、非GCB群34%だった4
  • ⚠️ ただし(リツキシマブ併用)で治療した157例の検証(遺伝子発現の情報があったのはそのうち62例)では、遺伝子発現によるGCB型とABC型には明確な予後差(80% vs 45%)が出た一方、Hans法を含む5つの免疫染色アルゴリズムはどれもこの予後差を再現できず、GCB群の誤分類率はHans法で48%だった5

形態

  • 濾胞パターンなし — 大型細胞のびまん性増殖
  • 2つの主要な細胞型:
    • :反応性濾胞にみられる大型細胞
    • :抗原活性化リンパ球、通常はに
  • 時に大型の
  • 高い

臨床像

  • あらゆる年齢、ピークは60歳
  • 急速なリンパ節腫大
  • 頻繁な節外病変:消化管、縦隔、中枢神経
  • 無治療では進行性で致死的
  • 講義では「抗CD20(リツキシマブ/MabThera)で約50%が治癒可能」とされる
  • 60〜80歳の未治療399例の無作為化試験で、CHOPにリツキシマブを加えるとが63%から76%に上がり、・とも改善した。これがR-CHOPを標準治療とした根拠である6
  • 💡 R-CHOPを改良する試みとして、を に置き換えたPola-R-CHPがある。未治療の中〜高リスク例(18〜80歳)879例の第3相試験で2年はR-CHOPの70.2%に対し76.7%と高かったが、2年全生存率には差がなかった(88.7% vs 88.6%)。同論文は背景として「R-CHOPで治癒するのは約60%」と記している7

B)バーキットリンパ腫

概要

  • は進行性()で急速に増殖するB細胞リンパ腫
  • 亜型:
    • 地方流行型(アフリカ):小児を侵す、顎腫瘍
    • 型(欧州・北米):小児と若年成人、腹部腫瘍
    • 移植後・免疫不全型:実質的にHIV患者
  • 💡 分類第5版は、これら3つの疫学的亜型よりも「陽性か陰性か」のほうが分子的特徴で生物学的に分かれるとして、陽性/陰性の区別を推奨している2

発生機序

  • t(8;14) → MYC遺伝子をIgHに融合 → MYC → 大量の細胞増殖。t(8;14)が70〜80%を占め、残りはMYCがの遺伝子座と組む t(2;8)(約15%)と t(8;22) である8
  • EBV感染が発症に関与 → B細胞プールを拡大 → リスクを増加
  • 💡 陽性率は亜型で異なり、地方流行型は約95%と高率だが、型は10〜30%(陽性例は50歳を超える患者に多い)、免疫不全関連型は20〜40%(報告により71%まで)にとどまる8
flowchart TD
    A["t(8;14)転座"] --> B["MYC遺伝子をIgHに融合"]
    C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Epstein-Barr virus'>EBV</span>感染"] --> D["B細胞プールの拡大"]
    B --> E["MYC<span class='jp-term jp-term-diagram' title='overexpression'>過剰発現</span>"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='malignant transformation'>悪性転化</span>リスクの増加"]
    E --> G["大量の細胞増殖"]
    F --> G
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Burkitt lymphoma'>バーキットリンパ腫</span>"]

形態

  • 腫瘍細胞が互いに押し合って形作られる
  • 複数の核小体をもつ円形・卵円形の核、脂質を含む質
  • 非常に高い増殖率 → 多数のと、増殖指数はほぼ100%に達する8
  • がアポトーシスdebrisを貪食 → 明るい空隙に囲まれる → 「」像

臨床像

  • 急速に増殖する進行性腫瘍
  • 多くは小児または若年成人
  • 節外病変:
    • 上顎・下顎 → 地方流行型
    • 腹部 → 型
  • 白血病性の病態を来しうる
  • 強力な化学療法 → 治癒しうる
  • 💡 きわめて高い増殖率のため、治療開始後にのリスクが高い9

💡 ポイント: DLBCL = 成人最多のリンパ腫、進行性、BCL6/BCL2、R-CHOP(リツキシマブ併用)で多くが治癒を目指せる(講義では約50%)。バーキット = t(8;14)/MYC、関連、パターン、細胞質の脂質、地方流行型 → 顎、型 → 腹部。

まとめ

  • DLBCLは成人で最多のリンパ腫で、濾胞パターンのないびまん性の大型細胞増殖と高いが特徴。
  • DLBCLは・t(14;18)によるBCL2などが起点で、起源細胞によりGCB型(予後良好)とABC型(予後不良)に分かれる。ただし免疫染色による代用分類(Hans法など)は遺伝子発現分類と食い違うことが多い。
  • MYCとBCL2の二重再構成例は、第5版ではDLBCL/HGBL-MYC/BCL2、ICCではB細胞リンパ腫として通常のDLBCLから区別する(MYC/BCL6例はICCだけが暫定病型を置く)。
  • はt(8;14)によるMYCが中核機序で、感染がリスクを高める補助因子として働く。
  • バーキットの組織像は非常に高い増殖率とアポトーシスを反映し、が取り込む「」像が特徴的。
  • バーキットには地方流行型(アフリカ小児、顎腫瘍)、型(欧米小児・若年成人、腹部腫瘍)、移植後・免疫不全型(患者)の3亜型があり、第5版はこれに加えて陽性/陰性の区別を推奨する。
  • DLBCLはR-CHOPで多くが治癒を目指せ(講義では約50%)、バーキットは強力な化学療法で治癒しうる点で、いずれも治療反応性が良い進行性リンパ腫。

出典

  1. 1.High-grade B-cell lymphomas: Double hit and non-double hit(Human Pathology・2025)高悪性度B細胞リンパ腫(HGBL)は非ホジキンリンパ腫全体の約2%を占め、WHO-HAEM5がMYCとBCL2の再構成(BCL6再構成の有無を問わない)を伴う症例を「DLBCL/HGBL, MYCおよびBCL2再構成」という独立したカテゴリーとして通常のDLBCLと区別する一方、MYCとBCL6の二重再構成例はこのカテゴリーから除外され形態に応じDLBCLまたはHGBL, NOSへ振り分けられること、ICC 2022は同じ2型に加えMYCとBCL6の二重再構成を暫定病型として残していることを確認した閲覧 2026-08-24
  2. 2.The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Lymphoid Neoplasms(World Health Organization Classification of Tumours Editorial Board・2022)PMC9214472 のHTML全文で確認した。WHO分類第5版は旧分類の「MYCとBCL2および/またはBCL6の二重再構成を伴う高悪性度B細胞リンパ腫」を組み替え、「MYCとBCL2の再構成を伴うびまん性大細胞型B細胞リンパ腫/高悪性度B細胞リンパ腫(DLBCL/HGBL-MYC/BCL2)」と改称して、大型・中型・芽球様のいずれの細胞からなってもMYCとBCL2の二重再構成で定義する病型としたこと。バーキットリンパ腫は胚中心B細胞の表現型(CD10+、BCL6+、BCL2陰性/弱陽性)・Ki67指数95%超・IG::MYC転座をもつ中型細胞の腫瘍と定義し、歴史的な3亜型(地方流行型・散発型・免疫不全関連型)に対して、EBV陽性とEBV陰性のバーキットリンパ腫は疫学的背景や地域によらず分子的特徴で別の生物学的群をなすので疫学的亜型に代わるものであり、この2亜型の区別を推奨すると述べていること閲覧 2026-09-24
  3. 3.The International Consensus Classification of Mature Lymphoid Neoplasms: a report from the Clinical Advisory Committee(Blood / Clinical Advisory Committee・2022)PMC9479027 のHTML全文で確認した。ICC 2022 は「MYCとBCL2の再構成を伴う高悪性度B細胞リンパ腫」を、MYCとBCL6の再構成だけをもつ例を除く形に定義し直し、定義の変更に伴って「MYCとBCL6の再構成を伴う高悪性度B細胞リンパ腫」を暫定病型として加えたこと。DLBCL, NOS の起源細胞(cell-of-origin)の表記は維持すべきだが、それだけでは生物学的な複雑さを捉えきれないとしていること閲覧 2026-09-24
  4. 4.Confirmation of the molecular classification of diffuse large B-cell lymphoma by immunohistochemistry using a tissue microarray(Blood・2004)抄録で確認した。CD10・BCL6・MUM1の3抗体による免疫染色アルゴリズム(Hans法)でDLBCL152例中64例(42%)をGCB型、88例(58%)を非GCB型に分類し、5年全生存率がGCB群76%に対し非GCB群34%と有意差を示した(P<.001)ことを確認した。比較に用いた遺伝子発現分類はGCB 75例・ABC 41例・type 3 26例の3群で、免疫染色は「GCB型/非GCB型」の2群に分けるものである閲覧 2026-08-24
  5. 5.Gene-expression profiling and not immunophenotypic algorithms predicts prognosis in patients with diffuse large B-cell lymphoma treated with immunochemotherapy(Blood・2011)抄録で確認した。免疫化学療法で治療されたDLBCL157例(遺伝子発現プロファイルの情報は62例)の検証で、遺伝子発現プロファイルではGCB対活性化B細胞型で5年無増悪生存率76%対31%・全生存率80%対45%と有意な予後差が出た一方、Hans法を含む5つの免疫染色アルゴリズムはいずれもこの予後差を再現できず、GCB群を定める際の誤分類率はアルゴリズムにより30〜60%(Hans法48%)であったことを確認した閲覧 2026-08-24
  6. 6.CHOP Chemotherapy plus Rituximab Compared with CHOP Alone in Elderly Patients with Diffuse Large-B-Cell Lymphoma(The New England Journal of Medicine・2002)抄録で確認した。60〜80歳の未治療DLBCL患者399例をCHOP単独群(197例)とCHOP+リツキシマブ群(202例)に無作為割付した試験で、完全奏効率がCHOP+リツキシマブ群76%に対しCHOP単独群63%と有意に高く(P=0.005)、追跡期間中央値2年で無イベント生存・全生存いずれもリツキシマブ併用群が有意に優れた(治療失敗リスク比0.58、死亡リスク比0.64)こと。抄録は治癒率を数値で示していない閲覧 2026-08-27
  7. 7.Polatuzumab Vedotin in Previously Untreated Diffuse Large B-Cell Lymphoma(New England Journal of Medicine・2022)抄録で確認した。背景として「R-CHOPで治癒するのは約60%にとどまる」と記したうえで、未治療の中〜高リスクDLBCL(18〜80歳)879例をポラツズマブ ベドチン併用R-CHP群とR-CHOP群に無作為割付した二重盲検第3相試験で、2年無増悪生存率は76.7%対70.2%(層別ハザード比0.73、P=0.02)とPola-R-CHP群で高かったが、2年全生存率は88.7%対88.6%で有意差がなかったこと閲覧 2026-09-24
  8. 8.Burkitt Lymphoma—A Guide to Biological Features, Diagnosis and Differential Diagnosis(Cancers・2026)PMC12938643 のHTML全文で確認した。バーキットリンパ腫の分子的特徴はMYC遺伝子座の転座で、8番染色体からIgH重鎖領域(14番染色体)へのt(8;14)(q24;q32)が70〜80%、IgK軽鎖(2番染色体)へのt(2;8)が15%、IgL軽鎖(22番染色体)へのt(8;22)が残りを占めること、Ki-67増殖指数は95%を超えほぼ100%に近い一様に強い染色を示すこと、「星空」像はアポトーシス小体を貪食した貪食体マクロファージが腫瘍細胞間に明るい空隙として散在することで生じること、EBV陽性率は地方流行型(サブサハラアフリカ)で約95%と高率だが、散発型では10〜30%でEBV陽性例は50歳を超える患者に多いこと(散発型自体の年齢中央値は10歳で、40歳と75歳にも山がある)、免疫不全関連型では20〜40%(ブラジルの一シリーズでは71%)と亜型間で大きく異なることを確認した閲覧 2026-08-27
  9. 9.Tumour lysis syndrome: new therapeutic strategies and classification(British Journal of Haematology・2004)腫瘍崩壊症候群(TLS)は細胞傷害性治療開始後の腫瘍崩壊に伴う代謝異常(高尿酸血症・高カリウム血症・高リン酸血症・低カルシウム血症・尿毒症)で急性腎不全から致死的経過をとりうること、増殖速度と腫瘍量の大きい腫瘍(急性リンパ性白血病・バーキットリンパ腫)でTLSの発生率が高いことを確認した閲覧 2026-08-27