病理学

病理学 · C/15

菌状息肉症/セザリー症候群/末梢T細胞リンパ腫

Mycosis fungoides, Sezary syndrome, Peripheral T-cell lymphoma

タグ
High-yield / ポイント
応用トピック
皮膚T細胞リンパ腫非ホジキンリンパ腫非ホジキンリンパ腫
疾患
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫成人T細胞白血病リンパ腫皮膚T細胞リンパ腫非特定型末梢性T細胞リンパ腫未分化大細胞型リンパ腫
検査値
Pautrier微小膿瘍

🧠 全体像:(・)は緩徐に進行する腫瘍性CD4+ T細胞の疾患で、は皮膚に限局した病期(斑→局面→腫瘤)として進むのに対し、は同じ状T細胞が皮膚と血液の両方に出現する点が対比の軸。末梢T細胞リンパ腫・は化学療法反応性やALK発現の有無で予後が大きく分かれる。

A)末梢T細胞リンパ腫

概要

  • 末梢T細胞リンパ腫はT細胞・NK細胞表現型をもつ異質で進行性の腫瘍群
  • 多くの患者は成人
  • 講義では「通常は節外病変だが、リンパ節浸潤も起こる」とされる。ただし病型によって違い、は主にリンパ節性のリンパ腫で、他の病型を除外して診断する1。節外が主体なのは腸症関連T細胞リンパ腫・NK/T細胞リンパ腫などの病型である
  • :HTLV-1が原因で、日本南・カリブ海地域などが2。腫瘍細胞はを示す
  • 腸症関連T細胞リンパ腫:セリアック病に伴って生じうるまれな病型。旧分類で1型・2型をまとめて扱った国際共同研究(62例)では約3割(32.2%)にセリアック病の臨床診断があり、の中央値は10か月だった3
    • 💡 現在の分類(第5版・ICC 2022)は腸管原発のT細胞リンパ腫を腸症関連T細胞リンパ腫と上皮向性腸管T細胞リンパ腫(MEITL)の別々の病型に分けている(上の研究の「2型」はおおむねMEITLにあたるとされる)。第5版のはセリアック病との関連を腸症関連T細胞リンパ腫で「あり」、MEITLで「なし」としている4。ICC 2022 はⅡ型を腸症関連T細胞リンパ腫のとして分類に加えた1

臨床像

  • B症状(一部の患者でみられる):
  • 化学療法への反応不良
  • 5年生存:約30%(〈PTCL, NOS〉を対象にした国際共同研究の32%に対応)5

B)未分化大細胞型リンパ腫

概要

ALCLの型

  • ALK陽性ALCL:異常T細胞がALK(未分化リンパ腫キナーゼ)タンパクを産生、、予後良好(国際共同研究で5年無失敗生存60%・70%)5
  • ALK陰性ALCL:ALKタンパク欠如、同じく、ALK陽性より予後不良(5年無失敗生存36%・49%——それでもPTCL, NOSの20%・32%よりは良好)5。ICC 2022 はこのうちDUSP22再構成をもつ例を遺伝学的亜型として定義している1
  • 関連ALCL:稀、周囲の乳房組織に発生、乳癌ではない(主にと関連、は10万人あたり1.0〜397.9人と報告に幅がある)6。第5版・ICC 2022 のいずれも独立した病型として扱う41
  • :低悪性度のT細胞リンパ腫、皮膚に発生(同じ国際共同研究では90%だが、5年無失敗生存は55%で再発しやすい)5

臨床

C)菌状息肉症とセザリー症候群

概要

いずれも皮膚にみられる腫瘍性CD4+ T細胞からなる。

  • 進行の遅い緩徐なリンパ腫

⚠️ とは、のとしてではなく、由来するT細胞サブセットが異なる別個の疾患単位として位置づけられる7。

菌状息肉症

皮膚上で3段階を経て進行:

  1. → 境界不明瞭、は最小限
  2. 局面 → に濃密な
  3. 腫瘤 → の消失、隆起した結節
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Patches'>斑</span><br>境界不明瞭、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphocytic infiltration'>リンパ球浸潤</span>は最小限"] --> B["局面<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper dermis'>上部真皮</span>に濃密な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphocytic infiltration'>リンパ球浸潤</span>"]
    B --> C["腫瘤<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidermotropism'>表皮向性</span>の消失、隆起した結節"]

組織像:

  • 腫瘍性T細胞による表皮・の浸潤
  • 細胞:をもつ小〜中型リンパ球
  • 進行に伴い:リンパ節・内臓への播種
  • (表皮内のリンパ球)は診断の手がかりだが、ではまれ7

💡 早期の斑期は湿疹・乾癬など良性皮膚疾患と臨床的・組織学的に酷似し、確定診断まで時間を要することが多い。 国際レジストリでは診断までの遅延期間の中央値は3年(範囲1〜7.5年)と報告されている8。

セザリー症候群

  • 頻度は低い、皮膚と血液の両方を侵す
  • 特徴:腫脹したリンパ節+強く赤く痒い皮疹(・末梢血・リンパ節腫脹の三徴)
  • :皮膚と末梢血の両方にみられる状のT細胞
  • 診断の目安:はの80%以上。血液所見は、末梢血の絶対数1,000/µL超、CD4陽性T細胞集団の増加、10以上、CD4+CD7−細胞40%以上、CD4+CD26−細胞30%以上のうち少なくとも1つを満たすこと7

⚠️ ここでいう「」は、をCD8陽性細胞数で割った比である。 CD4とCD8の細胞(などにみられる別概念)のことではない。原文が CD4+/CD8+ ratio と書くために取り違えやすいが、同じ論文の検査一覧は FACS, CD4/CD8 ratio と書いており、大本のISCL/USCLC/EORTCの表も CD4/CD8 ≥ 10 である7。

⚠️ 不等号は資料で割れている。 の絶対数を、この総説は「1,000/µL 超」、ISCL/USCLC/EORTCの表は「1,000/µL 以上」と書く。境界ちょうどの値で判定が分かれるので、どの資料に基づく記載かを確かめる。

💡 ポイント: PTCL = 進行性のT/NK腫瘍(非特定型は主にリンパ節性)、化学療法反応不良、5年生存約30%、一部でB症状。ALCL = 大型の未分化T細胞、ALK陽性 = 予後良好。 = 皮膚のCD4+ T細胞、段階:斑 → 局面 → 腫瘤、。 = 皮膚+血液の病変。

まとめ

  • 末梢T細胞リンパ腫はT/NK細胞表現型の異質な進行性腫瘍群で、化学療法反応不良、5年生存約30%、一部でB症状を伴う。非特定型は主にリンパ節性である。
  • はALK陽性で予後良好、ALK陰性で予後不良という対比があり、関連ALCLは乳癌とは別の稀な病型。
  • ・はいずれも腫瘍性CD4+ T細胞による緩徐な。
  • は斑→局面→腫瘤の3段階で進行し、をもつ小〜中型リンパ球が表皮・に浸潤する。
  • はが皮膚と末梢血の両方にみられ、強く赤く痒い皮疹とリンパ節腫脹を呈する。
  • 血液の基準に出てくる「10以上」はCD4陽性細胞とCD8陽性細胞の比であって細胞ではない。絶対数の不等号(超/以上)は資料で割れるので、どの資料の記載かを添えて覚える。

出典

  1. 1.The International Consensus Classification of Mature Lymphoid Neoplasms: a report from the Clinical Advisory Committee(Blood / Clinical Advisory Committee・2022)PMC9479027 のHTML全文で確認した。ICC 2022 は非特定型末梢性T細胞リンパ腫(PTCL, NOS)を「主にリンパ節性のリンパ腫で、除外診断である」と記述していること。腸症関連T細胞リンパ腫と単形性上皮向性腸管T細胞リンパ腫を別の病型として挙げ、Ⅱ型難治性セリアック病を腸症関連T細胞リンパ腫の前駆病変として分類に加えたこと。乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫を暫定病型から確定した病型へ格上げしたこと。DUSP22再構成をもつ未分化大細胞型リンパ腫を全身性ALK陰性ALCLの遺伝学的亜型と定義したこと閲覧 2026-09-24
  2. 2.Epidemiology and Clinical Outcomes of HTLV-1: A Comprehensive Narrative Review of Endemic and Nonendemic Regions(Canadian Journal of Infectious Diseases & Medical Microbiology・2026)PMC12927918 のHTML全文で確認した。HTLV-1の流行地域と非流行地域を比較した叙述的総説(narrative review)で、日本南西部(2020年時点でキャリア約534,000人。表では初回献血者の陽性率からの全国推計として示される)とカリブ海地域(ジャマイカで一般人口の血清陽性率約6.1%)、サハラ以南アフリカ、ブラジルが成人T細胞白血病/リンパ腫の原因ウイルスであるHTLV-1の主要な高浸淫地域として挙げられていることを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Enteropathy-associated T-cell lymphoma: clinical and histological findings from the International Peripheral T-Cell Lymphoma Project(Blood・2011)抄録で確認した。22施設・末梢性T細胞またはNK細胞リンパ腫1,153例を対象にした国際共同研究(当時のWHO分類で診断)で、腸症関連T細胞リンパ腫(EATL)は62例(5.4%)を占め、1型が66%・2型が34%であった。32.2%にセリアック病(celiac sprue)の臨床診断があり、この関連はEATL1型・2型いずれにもみられた。EATL全体の全生存期間中央値はわずか10か月であったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Lymphoid Neoplasms(World Health Organization Classification of Tumours Editorial Board・2022)PMC9214472 のHTML全文で確認した。消化管のT細胞・NK細胞リンパ増殖性疾患を比べた表で、腸症関連T細胞リンパ腫(EATL)と単形性上皮向性腸管T細胞リンパ腫(MEITL)を別の病型として並べ、セリアック病との関連をEATLでは「+」、MEITLでは「−」としていること。乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫を独立した病型として挙げていること閲覧 2026-09-24
  5. 5.ALK- anaplastic large-cell lymphoma is clinically and immunophenotypically different from both ALK+ ALCL and peripheral T-cell lymphoma, not otherwise specified: report from the International Peripheral T-Cell Lymphoma Project(Blood・2008)抄録で確認した。22施設が参加したInternational Peripheral T-Cell Lymphoma Projectで、適格1,314例のうち未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)は181例(全身性159例・原発性皮膚22例)であった。全身性のALK陽性ALCLの5年無失敗生存率(failure-free survival, FFS)は60%・全生存率70%であったのに対し、ALK陰性ALCLは36%・49%にとどまった。さらにALK陰性ALCLは非特定型末梢性T細胞リンパ腫(PTCL, NOS)より良好で、PTCL, NOSの5年FFSは20%・全生存率は32%であった。原発性皮膚ALCLは5年全生存率90%と非常に良好だが、5年FFSは55%で再発しやすかったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  6. 6.Epidemiology of Breast Implant-Associated Anaplastic Large Cell Lymphoma - A systematic review of literature(Journal of Plastic, Reconstructive & Aesthetic Surgery・2026)2024年11月までの23件の疫学研究を対象とした系統的レビューで、乳房インプラント関連未分化大細胞リンパ腫(BIA-ALCL)は主にテクスチャード(表面加工)インプラントと関連し、有病率は10万人あたり1.0〜397.9人、生涯リスクは1対250〜1対99,992と報告により幅が大きいまれな疾患であり、乳癌とは異なる病態であることを確認した。閲覧 2026-08-27
  7. 7.Mycosis fungoides and Sézary syndrome(Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft (JDDG)・2021)PMC9293091の全文を取得して確認した。菌状息肉症(MF)とセザリー症候群(SS)は由来するT細胞サブセットが異なる別個の疾患単位として概念づけられており、SSはMFの白血化ではない。SSの臨床像は逐語で「the triad of erythroderma (≥ 80 % of the body surface area affected), lymphadenopathy, and Sézary cells」であり、診断基準は逐語で「at least one of the following criteria must be fulfilled to diagnose SS an absolute Sézary cell count of > 1000/μl or an increased CD4+ T-cell population, a CD4+/CD8+ ratio ≥ 10, CD4+/CD7– cells ≥ 40 % or CD4+/CD26– cells ≥ 30 %」。Pautrier微小膿瘍は診断の手がかりとなる所見だが早期MFではまれである。⚠️ 原文の「CD4+/CD8+ ratio」はCD4陽性細胞とCD8陽性細胞の比のことで、CD4とCD8の二重陽性細胞ではない——同じ論文の検査一覧は「FACS, CD4/CD8 ratio, assessment of CD4+/CD7– cells and/or CD4+/CD26– cells」と書いており、大本のISCL/USCLC/EORTC合意声明(Olsen 2011, PMC3422534)の表も「CD4/CD8 ≥ 10」である。⚠️ セザリー細胞の絶対数について本論文は「> 1000/μl」(超)を採るが、Olsen 2011 の表は「≥ 1,000/μL」(以上)で、資料間で不等号が割れている閲覧 2026-08-27
  8. 8.Real-Life Barriers to Diagnosis of Early Mycosis Fungoides: An International Expert Panel Discussion(American Journal of Clinical Dermatology・2023)国際的な患者レジストリでは登録された菌状息肉症患者の86%に診断遅延がみられ、遅延期間の中央値は3年(範囲1〜7.5年)であったこと。早期病変が多様な良性炎症性皮膚疾患に類似し、組織像も一定でなく確定的な診断マーカーを欠くことが臨床診断を難しくしていることを確認した。閲覧 2026-08-27