病理学

病理学 · C/16

ホジキンリンパ腫

Hodgkin lymphoma

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ホジキンリンパ腫ホジキンリンパ腫小児リンパ腫
疾患
ホジキンリンパ腫

🧠 全体像:は腫瘍細胞()そのものよりも、それを取り巻く非腫瘍性の炎症細胞の量と組成で組織亜型が決まる点がとの最大の違い。単一リンパ節から隣接部位へ連続的に進展するため病期(I〜IV)でを分けやすい。古典的HLの4亜型は好発年齢・部位・関連率・Rの密度で異なるが、分類第5版は現代の治療のもとでは亜型の予後的意義の大部分が失われたとしている1。

概要

  • 特異な病理的・臨床的病態をもつB細胞由来の腫瘍
  • 腫瘍細胞()と非腫瘍性の炎症細胞からなる
  • 単一のリンパ節・リンパ節群に生じ、隣接リンパ節へ段階的(連続的)に広がる

Reed-Sternberg(RS)細胞

  • 大型細胞、多核または二葉状
  • 明瞭な好酸性の核小体が明るい帯に囲まれる → 「」像
  • :(+)、CD15(+)、PAX5(+)、CD45(−)、CD20(−)——B細胞由来でありながらB細胞プログラムの大部分を失う23

分類

1. 古典的HL(4亜型)

(全体で最多)

  • 男女で同頻度、10代・若年成人にみられる
  • しばしば下部頸部、、縦隔のリンパ節
  • R+(単一の多葉核、複数の小体、淡い細胞質 → 固定で細胞質が消え、空の裂孔として見える)
  • コラーゲン帯がリンパ組織を境界明瞭な結節に分ける

(50歳超の高齢者で最多)

  • 男性優位
  • 不均一な反応性浸潤(、好酸球、形質細胞、マクロファージ)の中の古典的R

  • のびまん性浸潤に囲まれた少数のR

(かつては最も予後不良の亜型とされた)

  • Rのシート・集塊 →
  • が減少

⚠️ 亜型と予後の対応は歴史的なものとして読む。 分類第5版は4亜型のを前版から据え置いたうえで、現代の治療プロトコルのもとではこれらの亜型は予後的意義の大部分を失ったと明記している。それでも亜型を記載するのは、亜型ごとに臨床像や背景の生物学(関連など)が異なり、疫学・研究に役立つためである1。

2. リンパ球優位型HL(非古典的)

  • 全HLの5%
  • リンパ組織球(L&H)型R =「」:繊細で多葉の膨れた核
  • 多数の小型休止B細胞とマクロファージを伴う大きな結節内にみられる
  • 緩徐な臨床経過
  • :CD20(+)、CD15(−)、CD30(−)——古典的HLのR(+/CD15+/CD20-)とは逆の対応

⚠️ 分類第5版はこの病型を従来どおり「(NLPHL)」と呼ぶが、同じ2022年のICC()は病理学的・生物学的・臨床的な差異を理由に「B細胞リンパ腫(NLPBL)」へ改称した145。ICCはこの病型を病型一覧でもから外し、T細胞/豊富型と並ぶB細胞リンパ腫の側に置いた4。一方分類第5版は、進行中のに支障を来さないようの系統の下に置いたまま旧称を維持し、「B細胞リンパ腫」という呼称も許容するにとどめている1。旧称のNLPHLが誤りになったわけではなく、両分類の併存として位置づける。

発生機序

  • 由来——ただし腫瘍細胞(R)は病変の少数派にとどまり、大部分は反応性の炎症細胞(リンパ球・好酸球・・形質細胞)が占める6
  • HLの最大70%がEBVと関連 → Rにクローン性ウイルスゲノム。ただし陽性率は亜型・年齢・地域で大きく変動し、70%を固定値として覚えない(中国北部の157例ではEBER陽性39%で・男性・若年に偏り、オランダの515例コホートとは年齢分布・組織型が大きく異なった)7
  • 非腫瘍性の炎症浸潤はR分泌のサイトカインによる:IL-5、TGFβ、IL-13
  • RはPDリガンドを発現 → T細胞を抑制 →

病期分類

⭐ は2014年のでの修正版として更新され、集積性のリンパ腫ではで広がりを判定する8。講義の表(IV期=「臓器病変を伴う」)は簡略版で、では次のように定義される。

病期 リンパ節の広がり 節外病変(E)
I(限局期) 1つのリンパ節、または隣接するリンパ節の1群 リンパ節病変を伴わない単一の節外病変
II(限局期) 横隔膜の同側の2つ以上のリンパ節群 リンパ節の広がりはI・II期で、限局したのを伴う
II bulky 上記のII期にを伴う ―
III() 横隔膜の両側のリンパ節、または横隔膜より上のリンパ節+脾臓の病変 ―
IV() 性の節外(リンパ系以外)病変が加わる ―
  • 扁桃・・脾臓はリンパ節組織として数える。
  • 治療は限局期(I・II期で非bulky)と(III・IV期)に分けて決め、II期bulkyは組織型と予後因子でどちらに入れるかを決める。
  • 全身症状を表すA/Bの接尾辞はにだけ付ける。Bは38.3℃を超える発熱、、6か月で体重の10%を超える原因不明の減少のいずれかがある場合である。
  • でしたでは、はには不要になった8。

臨床像

  • 無痛性のリンパ節腫大として発症
  • I/II期:若年患者、良好な組織型、通常は全身症状なし
  • III/IV期:全身症状 — 発熱、、体重減少(B症状)を伴いやすい(B症状の有無は病期とは別にA/Bとして記載する)
  • 治療:放射線療法+化学療法+PD1抗体療法
  • 5年生存 約90%(治療への反応が極めて良好)
  • ⚠️ 治癒率が高くなった一方、が長期予後を左右する。 オランダのでは、HL治療後患者のHL以外の原因による死亡のは一般人口の6.8倍で、30年以上経過後も5.1倍にとどまり、二次の30年は29%であった6

HLとNHLの比較

B細胞由来 B細胞またはT細胞由来
あり なし
限局、単一リンパ節群 複数リンパ節が侵される
の進展 性の進展
頻度はNHLより低い 頻度はHLより高い

💡 ポイント: HL = R()、+/CD15+/CD45−/CD20−。最多亜型:(若年成人、縦隔)。LPHL = 、CD20+(ICCではNLPBLと改称)。最大70%で(亜型・年齢・地域で変動)。病期はのI〜IV(限局期/)、治療で5年生存約90%。

まとめ

  • はB細胞由来腫瘍で、(、+/CD15+/CD45-/CD20-)と非腫瘍性の炎症細胞からなり、単一リンパ節から隣接部位へ連続的に進展する。
  • 古典的HLは4亜型に分かれ、が最多(若年成人、縦隔)、は高齢男性、は少数R、はRがに増える。はかつて最も予後不良とされたが、分類第5版は現代の治療のもとでは亜型の予後的意義の大部分が失われたとする。
  • リンパ球優位型HL()は(CD20+、CD15-、-)が特徴で、緩徐な経過をとる。2022年のICCはB細胞リンパ腫へ改称し、分類第5版は旧称を維持しつつ新名称を許容する。
  • HLの最大70%がと関連し、Rが分泌するサイトカイン(IL-5、TGFβ、)が浸潤を、PDリガンド発現がを引き起こす。
  • 病期はを修正したのI〜IVで、I・II期(非bulky)を限局期、III・IV期をとして治療を分ける。III/IV期はB症状(発熱・・体重減少)を伴いやすく、A/Bの接尾辞はにだけ付ける。
  • 放射線療法+化学療法+PD1抗体療法により5年生存率は約90%と治療反応性が極めて良い。
  • HLはNHLと異なり単一リンパ節群に限局しに進展する点、の有無で鑑別する。

出典

  1. 1.The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Lymphoid Neoplasms(World Health Organization Classification of Tumours Editorial Board・2022)WHO-HAEM5(2022年)の全文で、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫(NLPHL)を進行中の臨床試験に支障を来さないようホジキンリンパ腫の系統の下に置いたまま名称を維持し、腫瘍細胞が機能的なB細胞プログラムをもつことから「結節性リンパ球優位型B細胞リンパ腫」という呼称も将来の正式採用に備えて許容していることを確認した。古典的ホジキンリンパ腫については、HRS細胞の免疫表現型と結節硬化型・混合細胞型・リンパ球豊富型・リンパ球減少型の4亜型の基準はWHO-HAEM4Rから変わらないこと、現代の治療プロトコルではこれら亜型は予後的意義の大部分を失ったが、臨床像や生物学の違いと結びつくため疫学・橋渡し研究のために記載する価値はあるとしていることも確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Monoclonal antibodies in the diagnosis of Hodgkin's disease. The search for a rational panel(The American Journal of Surgical Pathology・1988)ホジキン病69例のリンパ節生検の検討で、結節硬化型・混合細胞型のリード・シュテルンベルグ細胞・ホジキン細胞はほぼ全例がCD15(Leu-M1)とCD30(Ber-H2)の両方に陽性であったのに対し、結節性リンパ球優位型のlymphocytic and histiocytic細胞はCD15・CD30が陰性でLN-1・EMAに陽性という逆の表現型を示し、両者が免疫染色で明確に区別されることを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.The B-cell transcription factors BSAP, Oct-2, and BOB.1 and the pan-B-cell markers CD20, CD22, and CD79a are useful in the differential diagnosis of classic Hodgkin lymphoma(American Journal of Clinical Pathology・2003)古典的ホジキンリンパ腫57例・結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫5例・非ホジキンリンパ腫33例の検討で、古典的ホジキンリンパ腫の腫瘍細胞はPAX5(BSAP)陽性かつOct-2・BOB.1のいずれかが陰性という組み合わせを示し、pan-B細胞マーカー(CD20・CD22・CD79a)がそろって陽性になったのは結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫とDLBCLに限られたことを確認した。古典的ホジキンリンパ腫の腫瘍細胞はB細胞由来でありながらB細胞プログラムの大部分を失っていることを免疫組織化学的に示した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.The International Consensus Classification of Mature Lymphoid Neoplasms: a report from the Clinical Advisory Committee(Blood / Clinical Advisory Committee・2022)ICC(2022年)がWHO-HAEM5と同じ2022年に発表された成熟リンパ系腫瘍のもう一つの分類体系であることを全文で確認した。ICCは「結節性リンパ球優位型B細胞リンパ腫(NLPBL)」を古典的ホジキンリンパ腫との大きな生物学的・臨床的な違いとT細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫との近縁性を理由に、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫に代わる名称としてコンセンサスで採用し、病型一覧ではB細胞リンパ腫の側(T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫の隣)に置いている。古典的ホジキンリンパ腫の下には結節硬化型・リンパ球豊富型・混合細胞型・リンパ球減少型の4亜型が残っている。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Evolution in the definition and diagnosis of the Hodgkin lymphomas and related entities(Virchows Archiv・2023)2022年のICCでは、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫(NLPHL)が病理学的・生物学的・臨床的な差異を理由に結節性リンパ球優位型B細胞リンパ腫(NLPBL)へ改称された一方、古典的ホジキンリンパ腫という病型自体は実質的な変更を受けなかったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  6. 6.Hodgkin lymphoma: A review and update on recent progress(CA: A Cancer Journal for Clinicians・2018)古典的ホジキンリンパ腫の腫瘍細胞(リード・シュテルンベルグ細胞)は病変の少数派を占め、多数派はリンパ球・好酸球・好中球・組織球・形質細胞からなる反応性の炎症浸潤であることを確認した。オランダのコホート研究では、ホジキンリンパ腫治療後患者のHL以外の原因による死亡の相対リスクは一般人口の6.8倍であり、30年以上経過後も5.1倍にとどまっていた。二次固形癌の30年累積発生率は29%であった。閲覧 2026-08-27
  7. 7.Epidemiology of classical Hodgkin lymphoma and its association with Epstein Barr virus in Northern China(PLoS ONE・2011)中国北部の古典的ホジキンリンパ腫157例でEBER陽性率は39%であり、陽性は混合細胞型・男性・若年に偏る一方、若年成人にはEBV陰性結節硬化型という別のピークがあった。同じ検査法によるオランダの515例コホートとは年齢分布・組織型・EBV状態が大きく異なり、EBV陽性率は年齢・性・地域で大きく変動することを確認した。閲覧 2026-08-27
  8. 8.Recommendations for initial evaluation, staging, and response assessment of Hodgkin and non-Hodgkin lymphoma: the Lugano classification(International Conference on Malignant Lymphoma Imaging Working Group・2014)全文(PMC4979083)で、FDG-PET/CTをFDG集積性のリンパ腫の病期診断に正式に組み込み、解剖学的な広がりをAnn Arbor記述法の修正版で表すLugano分類(2014年)を確認した。Table 2の逐語は、I期=1つのリンパ節または隣接するリンパ節の1群(節外はリンパ節病変を伴わない単一の節外病変)、II期=横隔膜の同側の2つ以上のリンパ節群(節外はリンパ節の広がりでI・II期に相当し、限局した連続性の節外進展を伴うもの)、II期bulky、III期=横隔膜の両側のリンパ節、または横隔膜より上のリンパ節と脾臓の病変、IV期=非連続性の節外(リンパ系以外)病変の追加であり、扁桃・Waldeyer輪・脾臓はリンパ節組織とみなす。治療は限局期(I・II期で非bulky)と進行期(III・IV期)に分けて決め、II期bulkyは組織型と予後因子で振り分ける。症状を示すA/Bの接尾辞はホジキンリンパ腫にのみ付け、病歴では38.3℃(101°F)超の発熱、寝汗(drenching night sweats)、6か月で体重の10%を超える原因不明の減少を確認する。PET-CTで病期診断したホジキンリンパ腫では骨髄生検はもはや定型的には要らない。閲覧 2026-08-27