内科学

内科学 · S-38

ホジキンリンパ腫

Hodgkin Lymphoma

前提:病態
ホジキンリンパ腫
前提:正常
免疫・リンパ系:リンパ節
疾患
ホジキンリンパ腫
症状
掻痒
検査値
リンパ球減少
スコア
Ann Arbor分類

🧠 全体像:は、細胞の背景に少数の腫瘍性Hodgkin/Reed–Sternberg(HRS)細胞が存在するB細胞系リンパ腫である。にへ広がりやすく、病期・・早期反応を組み合わせて治癒と低減の両立を図る。

分類と病理

分類 特徴
古典的HL(classical HL:cHL) 約95%。HRは通常陽性、CD15陽性、弱いPAX5陽性
最多。若年者、縦隔・頸部病変が多い
や免疫不全との関連が比較的強く、腹腔内・もみられる
稀。反応性リンパ球が多い
稀。免疫不全や進行病期と関連しやすい
現在はcHLとは別個のB細胞リンパ腫として扱う。LP細胞はCD20・B細胞マーカー陽性

💡 現代の治療プロトコルのもとでは、古典的HLの4亜型の予後差はほとんど失われている。第5版は、それでも亜型を記載するのは疫学研究・トランスレーショナル研究のためであり、亜型ごとに臨床像が異なるからだとしている1。

⚠️ の病名は、2022年に出た2つの分類で割れている。 ICC(2022)は-HAEM5と並立する成熟リンパ系腫瘍の分類体系で2、との臨床的・生物学的な差を強調するためeponymの「Hodgkin」を病名から外し、(NLPHL)をB細胞リンパ腫(NLPBL)へ改称した34。一方-HAEM5は、進行中のの妨げにならないようNLPHLという既存の用語を維持した。ただし腫瘍細胞が機能するB細胞プログラムをもつ以上「B細胞リンパ腫」と呼ぶほうが正確であるとして、将来の正式採用に備えNLPBLという用語も許容している1。略号「NLP」は両分類で両方の名称を指す4。「が改称した」と単純化しない——改称したのはICCで、は併記を認めただけである。

💡 の格付けも同じ改訂で整理された。 元来Fanのパターンa〜fとして報告された違いを、ICCはパターンa・b・cをgrade 1(typical)、d・e・fをgrade 2(variant)にまとめ、T細胞・豊富型(THRLBCL)をvariantの連続体に位置づけた34。grade 2はではDLBCLに準じた治療を要する場合がある。

HRは大型で、二葉状核と明瞭な核小体から「」像を示す。HRそのものは少数であるため、だけでは不十分になりやすく、リンパ節構築を保つが重要である。

症状

  • 無痛性の頸部・・腫大
  • B症状:原因不明の発熱>38°C、寝具を替えるほどの、6か月で>10%の体重減少
  • 掻痒、肝脾腫、稀に飲酒後の病変部痛
  • による咳、呼吸困難、

Pel–Ebstein型のは古典的記述だが特異度が低く、診断根拠にはしない。

診断と病期

flowchart TD
    A["持続する無痛性リンパ節腫大/B症状"] --> B["リンパ節<span class='jp-term jp-term-diagram' title='excisional biopsy'>切除生検</span>"]
    B --> C["形態+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immunohistochemistry (IHC)'>免疫組織化学</span>で病型確定"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='FDG PET/CT'>FDG-PET/CT</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complete blood count'>CBC</span>・生化学・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythrocyte sedimentation rate'>ESR</span>など"]
    D --> E["Ann Arbor病期+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bulky disease'>巨大腫瘤</span>/リスク因子"]
    E --> F["病期別治療"]
    F --> G["中間<span class='jp-term jp-term-diagram' title='positron emission tomography'>PET</span>で反応適応化"]
Ann Arbor病期 範囲
I 1、または単一節外臓器(IE)
II 横隔膜の同側に2領域以上、または近接(IIE)
III 横隔膜の両側の
IV 骨髄・肝などへの播種性

A/BはB症状の有無、Eは連続する、Sはを表す。はと治療反応評価の中心で、でを十分評価できるためはルーチンではない。この運用は(2014年)が正式化したもので、A/Bの接尾辞を付けるのはだけ、治療上は病期I・II(非bulky)を限局期、III・IVをに分け、bulkyを伴う病期IIは組織型と予後因子でどちらに扱うかを決める。治療反応はの5段階尺度(Deauville)で評価し、症状のない患者へのルーチンの経過観察画像は推奨されない5。

の(IPS)にはアルブミン低値、Hb低値、男性、45歳以上、病期IV、、が含まれる。元来のの数値は旧治療時代のものなので、現在は個別予後をに示す値として使わない。

治療

  • 限局期cHL:短期のとを基本に、リスクと反応で照射省略を検討する6。
  • cHL:ABVD系、brentuximab vedotin併用、または患者・リスクに応じた強化療法を選ぶ。はを考慮し、中間陰性なら省略できる場合がある。

💡 適応療法(interim )の根拠はRATHL試験である。 ABVD 2サイクル後の中間が陰性(Deauville 1〜3)なら以降を省略してAVDとしても、3年はABVD群85.4%対AVD群84.5%、3年全生存率は97.0%対97.5%で差がなく、だけが減った7。「効果を落とさずに毒性を削る」という、この病気の治療戦略そのものを体現した試験として覚える。

⚠️ の一次治療は「ABVD」から動いた。 ECHELON-1では、未治療の病期III・IV1,334例でA+AVD(+AVD)がABVDを上回り、追跡中央値73.0か月で6年全生存率93.9%対89.4%(0.59、p=0.009)、も23例対32例と少なかった(ただしA+AVDではが増えのが推奨され、末梢神経障害も多い)8。さらにSWOG S1826(994例、12歳以上)ではN+AVD(+AVD)がBV+AVDを上回り、2年92%対83%(0.45)、放射線治療を受けたのは全体で7例のみ、もまれだった9。とは、もはや再発時の切り札ではなく一次治療の構成要素である6。

  • 「ABVDを6 cycle行った後、全例にBEACOPPを追加する」治療ではない。BEACOPP系は毒性も大きく、初期リスクや早期反応に応じて選択する。
  • :で反応を得て(autologous )へつなぐ。brentuximab vedotin、PD-1阻害薬、その他の新規治療を病歴と移植適応に応じて用いる。+に失敗した場合は、brentuximab vedotin、PD-1阻害、骨髄非破壊的、参加を検討する6。

治癒後は二次がん、心血管疾患、、肺障害、不妊などのも長期追跡する。

まとめ

  • HLはHRを伴うB細胞系腫瘍で、確定には原則としてリンパ節を行う。
  • 病期はとで評価し、・リスク因子・中間をに加える。
  • 高い治癒率を保ちながら、、放射線、強化化学療法によるを最小化する。

出典

  1. 1.The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Lymphoid Neoplasms(World Health Organization Classification of Tumours Editorial Board・2022)WHO-HAEM5は結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫(NLPHL)をホジキンリンパ腫のファミリーの下に置き続けており、進行中の臨床試験の妨げにならないようNLPHL(ホジキンリンパ腫)という既存の用語を維持した。ただし腫瘍細胞は機能するB細胞プログラムをもつため「結節性リンパ球優位型B細胞リンパ腫(nodular lymphocyte predominant B-cell lymphoma)」と呼ぶほうが正確であり、将来この新名称を正式採用する準備として、この用語も現時点で許容されるとしている。また古典的ホジキンリンパ腫については、免疫不全・免疫調節異常に伴うリンパ増殖性疾患やT濾胞ヘルパー細胞リンパ腫がEBV陽性のHRS様細胞を含みうるため、これらの状況での診断には注意を要するとした。さらに古典的ホジキンリンパ腫の4亜型は現代の治療プロトコルのもとで予後的意義の大部分を失ったとしている閲覧 2026-08-25
  2. 2.The International Consensus Classification of Mature Lymphoid Neoplasms: a report from the Clinical Advisory Committee(Blood / Clinical Advisory Committee・2022)ICC 2022がWHO-HAEM5と並立する成熟リンパ系腫瘍の分類体系であり、多くの病型で定義・推奨検査・診断基準を改訂し、一部の暫定病型を独立病型へ格上げしたことを確認した閲覧 2026-08-25
  3. 3.Evolution in the definition and diagnosis of the Hodgkin lymphomas and related entities(Virchows Archiv・2023)2022年のInternational Consensus Classification(ICC)では古典的ホジキンリンパ腫(CHL)は実質的に変更のない病型として残った一方、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫(NLPHL)が病理学的・生物学的・臨床的な差異を理由に結節性リンパ球優位型B細胞リンパ腫(NLPBL)へ改称されたこと。Fanのパターンa・b・cを「typical」(grade 1)、パターンd・e・fを「variant」(grade 2)にまとめ、T細胞・組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫をvariant NLPHLの連続体に位置づけたこと。旧「B細胞リンパ腫・分類不能でDLBCLとCHLの中間的特徴をもつもの(BCLU)」が縦隔グレーゾーンリンパ腫(MGZL)へ改称され、高い腫瘍細胞密度と強く保たれたB細胞プログラムの両方を要件とするよう診断基準が絞られたこと閲覧 2026-08-25
  4. 4.Histopathologic Features and Differential Diagnosis in Challenging Cases of Nodular Lymphocyte Predominant B-cell Lymphoma/Nodular Lymphocyte Predominant Hodgkin Lymphoma(Journal of Clinical and Translational Pathology・2024)結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫は、古典的ホジキンリンパ腫との臨床的・生物学的な差異を強調するため、International Consensus Classification(ICC)で「結節性リンパ球優位型B細胞リンパ腫」と呼ばれるようになった。略号「NLP」はICCとWHO分類の双方でこの両方の名称を表す。国際リンパ腫研究グループが1994年にCHLからの正式な分離を初めて提案し、ICCはさらに一歩進めてeponymである「Hodgkin」を病名から外すことを勧告した。一方、WHO分類第5版では「結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫」という名称が変更されずに残っている。元来Fanのパターンa〜fとして報告された増殖パターンの違いは、ICCではパターンa・b・cをgrade 1、パターンd・e・fをgrade 2として格付けする閲覧 2026-08-25
  5. 5.Recommendations for initial evaluation, staging, and response assessment of Hodgkin and non-Hodgkin lymphoma: the Lugano classification(International Conference on Malignant Lymphoma Imaging Working Group・2014)FDG集積性リンパ腫の病期評価にFDG-PET/CTを正式に組み込み、解剖学的な広がりはAnn Arbor記述法の修正版で表すこと。症状を示すA/Bの接尾辞はホジキンリンパ腫にのみ付けること。骨髄生検はホジキンリンパ腫と大半のDLBCLではルーチンの病期診断に不要となったこと。治療上は病期I・II(非bulky)の限局期と病期III・IVの進行期に分け、bulkyを伴う病期IIは組織型と予後因子により限局期・進行期のいずれかとして扱うこと。治療反応はPET-CTの5段階尺度で評価し、ルーチンの経過観察目的の画像検査は推奨されないこと閲覧 2026-08-25
  6. 6.Hodgkin lymphoma: 2025 update on diagnosis, risk-stratification, and management(American Journal of Hematology・2024)ホジキンリンパ腫は米国で年間8,570例が新規に診断され、全リンパ腫の約10%を占める。古典的ホジキンリンパ腫と結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫(結節性リンパ球優位型B細胞リンパ腫とも呼ばれる)という2つの別個の病型からなり、結節硬化型・混合細胞型・リンパ球減少型・リンパ球豊富型は古典的ホジキンリンパ腫の亜型である。限局期は短縮した多剤併用化学療法に病変部放射線治療を組み合わせ、進行期は放射線を用いずより長い化学療法を行うのが典型だが、ブレンツキシマブ ベドチンと抗PD-1抗体は現在では一次治療に標準的に組み込まれている。再発例では大量化学療法+自家造血幹細胞移植が標準治療で、これに失敗した場合はブレンツキシマブ ベドチン、PD-1阻害、骨髄非破壊的同種移植、臨床試験参加を検討する閲覧 2026-08-25
  7. 7.Adapted Treatment Guided by Interim PET-CT Scan in Advanced Hodgkin's Lymphoma (RATHL)(New England Journal of Medicine・2016)ABVD 2サイクル後の中間PETが陰性(Deauville 1〜3)であれば、以降ブレオマイシンを省略してAVDとしても3年無増悪生存率(PFS)はABVD群85.4%対AVD群84.5%、3年全生存率(OS)は97.0%対97.5%で差がなく、肺毒性のみが減少したこと、NCCNガイドラインもこの中間PET反応適応化の運用を採用していることを確認した。閲覧 2026-08-25
  8. 8.Overall Survival with Brentuximab Vedotin in Stage III or IV Hodgkin's Lymphoma(The New England Journal of Medicine・2022)未治療の病期III・IV古典的ホジキンリンパ腫1,334例をブレンツキシマブ ベドチン+ドキソルビシン・ビンブラスチン・ダカルバジン(A+AVD、664例)とABVD(670例)へ1対1に無作為化したECHELON-1試験の全生存解析。追跡中央値73.0か月で死亡はA+AVD群39例・ABVD群64例(ハザード比0.59、95%CI 0.40〜0.88、p=0.009)、6年全生存率はA+AVD群93.9%(95%CI 91.6〜95.5)対ABVD群89.4%(95%CI 86.6〜91.7)。無増悪生存もA+AVDで良好(ハザード比0.68、95%CI 0.53〜0.86)で、後続治療(移植を含む)を受けた患者も二次癌(23例対32例)も少なかった。一方でA+AVDでは発熱性好中球減少症が増えたためG-CSFの一次予防が推奨され、末梢神経障害も多かったが大半は最終追跡までに消失または軽減した閲覧 2026-08-25
  9. 9.Nivolumab+AVD in Advanced-Stage Classic Hodgkin's Lymphoma(The New England Journal of Medicine・2024)12歳以上の未治療の病期III・IV古典的ホジキンリンパ腫994例をブレンツキシマブ ベドチン+AVD(BV+AVD)とニボルマブ+AVD(N+AVD)へ無作為化した第3相試験(SWOG S1826)。第2回中間解析(追跡中央値12.1か月)で有効性の閾値を越え、N+AVDは無増悪生存を有意に延長した(ハザード比0.48、99%CI 0.27〜0.87、両側p=0.001)。追跡中央値2.1年での2年無増悪生存率はN+AVD 92%(95%CI 89〜94)対BV+AVD 83%(95%CI 79〜86)(ハザード比0.45、95%CI 0.30〜0.65)。放射線治療を受けたのは全体で7例のみ。ニボルマブでは免疫関連有害事象がまれで、ブレンツキシマブ ベドチンのほうが治療中止が多かった閲覧 2026-08-25