病理学

病理学 · C/17

Disorders that causes splenomegaly

疾患
Gaucher病有毛細胞白血病脾機能亢進脾辺縁帯リンパ腫
症状
脾腫

🧠 全体像:脾腫はへの二次的な反応であり、腫大の程度(著明・中等度・軽度)が原因疾患のカテゴリー(・うっ血・急性感染など)をおおまかに反映する。は脾腫そのものとは別概念で「血球成分の除去増加」を指す点、はによる・の被膜裂傷が典型という点を区別して覚える。

脾腫

  • 脾臓はでしばしば二次的に侵され、腫大して反応する
著明(>1000 g) 中等度(500〜1000 g) 軽度(<500 g)
(Myeloproliferative neoplasms; CML、MF)、リンパ腫、CLL・、マラリア、、原発性脾腫瘍(稀) 慢性うっ血性脾腫(門脈圧亢進・)、急性白血病、、、、(がろう様)、(とくにに伴うもの)、結核・・、/肉腫 急性脾炎(菌血症に伴うことが多く、から液状の実質が容易に削り取れる)、急性脾うっ血、、その他の急性疾患(敗血症、SLE、)

⭐⭐ 上表の「著明・中等度・軽度」という重量による分類とは別に、原因を機序で捉える枠組みもある——うっ血性、感染性、非悪性浸潤性、性、血液腫瘍性、血球クリアランスに関わる非腫瘍性良性、非血液腫瘍性の7カテゴリーに整理できる1。

⭐ をきたす疾患は限られる。 上表の「著明」列(・などの、リンパ腫、CLL・、マラリア、)が講義の挙げる原因である。は大多数の患者に肝脾腫がみられ、巨脾をきたしうる数少ない疾患の一つで、平均で約2,200%の脾腫大を報告した研究もある。マラリアやでも巨脾を呈しうる1。

💡 触知できる脾臓が必ずしも腫大とは限らず、腫大した脾臓が必ずしも触知できるとは限らない。 内科・血液内科入院患者130例の前向き研究で、画像的に脾腫が確認されたのは38.5%にとどまり、Point-of-care超音波()は感度70.9%・特異度72.0%と従来の理学的診察手技(Castell法・Traube法・Nixon法・触診)より高い診断精度を示した。最も特異的な手技(Nixon法、特異度90.8%)でも感度は限定的で、触診の有無だけで脾腫の有無を判定できない2。

慢性脾腫の結果

  • 過剰な血球成分を除去 → 貧血、、血小板減少(=)
  • 血小板はに隔離されやすい → 血小板減少の悪化
  • のリスク

脾機能亢進

脾破裂

  • — 生命を脅かす内出血
  • 通常は腹部への、稀に急性脾腫(急性脾炎など)による
  • やの小さな被膜裂傷
  • 症状:の痛み・圧痛、めまい、

⭐ の管理は近年、非治療(NOM)を重視する方向へ大きく変化している。脾臓の免疫学的機能と患者における易感染性の高さを踏まえ、少なくとも部分的な脾温存が可能な限り試みられる3。

⚠️ は莢膜を持つ細菌(肺炎球菌・・髄膜炎菌)を血中から濾し取る機構が失われ、(OPSI)のリスクが生涯続く。現在の頻度は0.1〜8.5%と幅をもって報告されている4。OPSIは主にによる稀だが重篤な感染症で、リスクは最初の2年間に高い5。致死率はおよそ50〜70%と紹介されることが多い(症例報告のが総説を引いて示す値)。ワクチンについては、ほぼ全てのガイドラインが手術の前後14日以内の接種を避けるよう示しているが、周術期の接種でも有効でありうるとするデータが多く、至適な接種時期と追加接種の要否はまだ確立していない4。開腹はを入念に探索できる利点があり、を摘出せず残すと(溶血性貧血など)による血球減少のを来しうる6。

💡 ポイント: 著明な脾腫 → MPN、リンパ腫、CLL、マラリア、。 = 血球成分の除去増加(脾腫とは別)。 = 緊急、、・の被膜裂傷。

まとめ

  • 脾腫はに対する二次的な反応で、著明(>1000g、・リンパ腫・CLL・マラリア・など)、中等度(500〜1000g、慢性うっ血・など)、軽度(<500g、急性脾炎・など)に分類される。
  • 慢性脾腫は過剰な血球成分の除去により貧血・・血小板減少()を招き、のリスクも高める。
  • は脾腫とは別の概念で、血球成分の除去増加そのものを指す。
  • はで、通常は腹部へのによりやの被膜裂傷から生命を脅かす内出血を来す。

出典

  1. 1.Radiological Approach to Splenomegaly: Etiologies, Pathophysiologies, and Diagnostic Strategies(Korean Journal of Radiology・2026)脾腫はうっ血性・感染性・非悪性浸潤性・膠原病性・血液腫瘍性・血球クリアランスに関わる非腫瘍性良性血液疾患・非血液腫瘍性という病態生理学的機序に基づき分類できることを確認した。全文(PMC12865113)で、脾機能亢進(hypersplenism)は脾腫と末梢血球減少を伴う症候群群であること、脾機能亢進の最多の型はウイルス性肝炎後の肝硬変による門脈圧亢進に続発するものであることも確認した。Gaucher病は大多数の患者に肝脾腫がみられ、巨脾(massive splenomegaly)をきたしうる数少ない疾患の一つで、平均約2,200%の脾腫大を報告した研究があると本総説が引用していること、マラリア・リーシュマニア症でも巨脾を呈しうることを確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.Performance of Point-of-Care Ultrasound Versus Traditional Physical Examination for the Bedside Evaluation of Splenomegaly(Ultrasound Quarterly・2026)内科・血液内科入院患者130例の前向き研究で、画像(腹部超音波・CT・MRI、脾長径>12cmを陽性基準)で脾腫が確認されたのは38.5%(55例)にとどまり、Point-of-care超音波(POCUS)は感度70.9%・特異度72.0%と従来の理学的診察手技(Castell法・Traube法・Nixon法・触診)より高い診断精度を示した。理学的診察のうちNixon法は特異度90.8%と最も特異的だったがTraube's space打診の感度は52.7%にとどまり、触診できることと画像上の腫大は必ずしも一致しないことを確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.Splenic trauma: WSES classification and guidelines for adult and pediatric patients(World Society of Emergency Surgery / World Journal of Emergency Surgery・2017)脾外傷の管理はここ数十年で非手術的治療(NOM)を重視する方向へ大きく変化しており、脾臓の免疫学的機能と脾摘患者における免疫障害の高リスクを踏まえ、少なくとも部分的な脾温存を可能な限り試みるべきである(推奨度2B)としたことを確認した閲覧 2026-08-27
  4. 4.Perioperative Immunization for Splenectomy and the Surgeon's Responsibility: A Review(JAMA Surgery・2020)抄録で、脾摘後はOPSIのリスクが生涯続くこと、OPSIの現在の疫学的頻度は0.1〜8.5%の幅で報告されること、ほぼ全てのガイドラインが手術の前後14日以内にはワクチンを接種しないよう示している一方、多くのデータは周術期の直前・直後の接種でも有効でありうることを示唆していること、至適な接種時期と追加接種の要否はまだ確立していないことを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.The sword of Damocles for the splenectomised: death by OPSI(German Medical Science (GMS)・2016)全文(PMC5004600)で、脾摘後重症感染症(OPSI)が主に莢膜を持つ細菌による稀だが重篤な感染症であることを抄録で、脾摘後最初の2年間にリスクが高いことを考察で確認した。致死率「およそ50〜70%」は本報告(65歳女性の症例報告)自身のデータではなく、序論がDi Sabatino 2011(Lancet の総説、抄録に数値なし)を引いて紹介している値である。閲覧 2026-08-27
  6. 6.Recommendations regarding splenectomy in hereditary hemolytic anemias(Haematologica・2017)遺伝性溶血性貧血に対する脾摘の欧州血液学会ワーキンググループの推奨で、開腹脾摘は副脾を入念に探索できる利点があり、副脾を摘出せず残すと貧血の再燃(recurrence)を来しうることを確認した閲覧 2026-08-27