疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 血液 · 腫瘍

有毛細胞白血病

Hairy cell leukemia

別名
HCLヘアリー細胞白血病
臓器系
血液腫瘍
科目
PathologyInternal MedicinePharmacology
トピック
病理学 C/11:CLL/有毛細胞白血病内科学 H-21:非ホジキンリンパ腫病理学 C/17:脾腫を来す疾患薬理学 B31:抗がん薬I(代謝拮抗薬)
上位概念
白血病
鑑別疾患
慢性リンパ性白血病有毛細胞白血病バリアント脾原発赤脾髄びまん性小型B細胞リンパ腫脾辺縁帯リンパ腫
治療薬
クラドリビンリツキシマブベムラフェニブダブラフェニブ+トラメチニブモキセツモマブ パスドトクスペントスタチン
症状
脾腫倦怠感出血
検査値
血算好中球減少血小板減少絶対単球数
適応薬
クラドリビンダブラフェニブ+トラメチニブペントスタチンモキセツモマブ パスドトクス

🧠 全体像:は「成熟B細胞にBRAF V600E変異が生じる→細胞質に毛髪様の突起を持つ腫瘍細胞が骨髄と脾臓のへ緩徐に浸潤する→と著明な脾腫を来すがリンパ節腫大は目立たない→BRAF V600Eという単一の分子異常が診断(免疫染色)と治療(、)の双方を貫く」という一本の流れで理解する。かつての亜型として教えられてきたが、現在は分子的にも臨床経過的にも独立した疾患単位として扱われ、多くのの中でも治療反応性と予後がひときわ良好な点が際立つ。

概要

は成熟B細胞に由来するの腫瘍で、白血病・リンパ腫全体の中では稀な疾患である。中高年男性に多く、名称は腫瘍細胞の細胞質にみられる細い毛髪様の突起に由来する。かつてはの一亜型として位置づけられてきたが、後述するBRAF V600E変異という共通の分子基盤が同定されて以降は独立した疾患単位として扱われる。白血病の中でも慢性・リンパ系に属するの一員だが、リンパ節腫大が目立たず脾腫が前面に出る点で他のと一線を画す。

病態・分子的特徴

の病態を理解する軸はただ一つ、BRAF V600E変異である。ほぼ全例でこの変異が腫瘍細胞に存在し、下流のを恒常的に活性化することで腫瘍性の増殖・を維持する。この変異は他のにはまれにしかみられないため疾患特異性が高く、診断のための免疫染色と、治療標的としてのの両方に直結する軸になっている。

flowchart TD
    A["成熟B細胞にBRAF V600E変異が生じる"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='MAP kinase pathway'>MAPKキナーゼ経路</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='constitutive activation'>恒常的活性化</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hair-like projections'>毛髪様突起</span>を持つ腫瘍性B細胞の緩徐な増殖"]
    C --> D["骨髄への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interstitial infiltration'>間質性浸潤</span>と脾臓<span class='jp-term jp-term-diagram' title='red pulp'>赤脾髄</span>への浸潤"]
    D --> E["正常造血の圧迫→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancytopenia'>汎血球減少</span>"]
    D --> F["著明な脾腫"]
    C --> G["単球への選択的な圧迫→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monocytopenia'>単球減少</span>"]
    G --> H["日和見感染への易感染性"]

⭐ BRAF V600E変異は、を診断するだけでなくそのものを規定する。この一点を軸に、免疫染色による診断との両方を理解する。

病理形態

末梢血・標本では、細い毛髪様の細胞質突起を持つ小〜中型のリンパ球が特徴的である。骨髄はびまん性のを示し、の増生を伴うことが多い。

⭐ こののため、では多くの症例で吸引液がほとんど得られず、確定診断にはが必須になる。生検では腫瘍細胞の核どうしが均等な間隔で離れて配置される特徴的な構築()がみられる。

脾臓では、正常なら濾胞を形成するが萎縮する一方、に腫瘍細胞がびまん性に浸潤する。この「優位の浸潤」は、()に浸潤するCLLやリンパ腫との対比軸として重要である。腫瘍細胞の浸潤により正常なの構築が壊れ、赤血球が貯留する偽洞様の血液湖が形成される。

免疫表現型

では、CD19・CD20を強陽性とする成熟B細胞の表現型に加え、CD11c・CD25・CD103・CD123の4マーカーが陽性になる点が診断的価値を持つ。はに対する特異性が高いマーカーとして、1は弱陽性として検出される。

マーカー CLL(対比)
CD19・CD20 強陽性 陽性(CD20は弱いことが多い)
CD5・CD23 陰性 いずれも陽性
CD11c・CD25・CD103・CD123 陽性 陰性〜弱陽性
陽性(特異性が高い) 陰性

⚠️ 染色は歴史的に用いられてきた検査だが、現在の診断はによると、後述するBRAF V600E変異の確認が中心であり、この染色を第一に頼ることはない。

臨床像

典型像は、著明な脾腫を伴うである。血算では貧血・好中球減少・血小板減少がそろって進行し、脾腫による・を伴う。CLLなど他の慢性リンパ系腫瘍と異なり、リンパ節腫大は目立たない点が重要な鑑別点になる。

⚠️ は「見えないこと」がある。 FILO 2024は、はHCL類縁疾患と違ってHCLでしばしば認められるとしたうえで、が有毛細胞を単球として数えてしまうためにマスクされうると注意している。同じ項はがHCLでは稀であることも述べている1。💡 装置の数値だけで「単球は正常だからHCLらしくない」と外さず、塗抹の目視で確かめる。

⭐ はに特徴的な所見で、(Mycobacterium avium complexなど)を含む日和見感染への易感染性の一因になる。血小板減少による出血傾向、易感染性、倦怠感も高頻度にみられる。

診断

診断は末梢血・骨髄所見とによる、そしてBRAF V600E変異の確認を統合して行う。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancytopenia'>汎血球減少</span>+著明な脾腫を疑う"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral smear'>末梢血塗抹</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flow cytometry'>フローサイトメトリー</span>"]
    B --> C{"CD11c・CD25・CD103・CD123陽性か"}
    C -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow biopsy'>骨髄生検</span>(吸引不成功のことが多い)"]
    D --> E["BRAF V600E変異を確認(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polymerase chain reaction'>PCR</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='VE1 immunostaining'>VE1免疫染色</span>)"]
    E --> F["腹部画像で脾腫の程度を評価"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hairy cell leukemia'>有毛細胞白血病</span>と確定"]

はのために吸引が不成功に終わることが多く、生検による評価が診断の要になる。BRAF V600E変異は、(など)に加え、変異特異的抗体(VE1)を用いた免疫染色でも高い感度・特異度で検出でき、処理を経た検体にも適用しやすいという実務的な利点がある。

鑑別

疾患 鑑別のポイント
CD5・CD23陽性、著明なリンパ節腫大を伴う、BRAF V600E陰性
軽度の突起を持つリンパ球で、BRAF V600E陰性、CD103陰性のことが多い
を欠き、CD25・が陰性、BRAF V600E変異を欠く

⚠️ は、かつての亜型として扱われてきたが、BRAF V600E変異を欠き、への反応性も乏しいなど生物学的に異なる疾患であることが明らかになった。の分類第5版(-HAEM5、2022年)は、この病型を 著明な核小体を伴う脾B細胞リンパ腫/白血病(SBLPN) と改称した。SBLPNという名称は「」と「CD5陰性」の2つを置き換えるもので、改称の理由として-HAEM5自身が「この増殖はHCLとは生物学的に異なると認識されたため」と述べている。さらに、類似の形態を示すごくまれなの症例も同じ病型に吸収された2。古典的なと同一疾患として扱わない。

💡 改称の射程を広げすぎない。 -HAEM5が吸収したのはCD5陰性のであって、全体ではない。CD5陽性でマントル細胞系でない症例のうち末梢血・骨髄の前リンパ球が15%を超えるものは「CLL/SLLの前リンパ球性進展」という別の枠へ移された2。⚠️ また、この再編は-HAEM5の体系での話であり、同じ2022年の(ICC)は、を独立した病型として残し、「分類不能の脾B細胞リンパ腫/白血病」のにを維持している3。病型名を書くときはどちらの体系に拠るかを添える。

治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hairy cell leukemia'>有毛細胞白血病</span>と診断"] --> B{"治療開始基準を1つ以上満たすか"}
    B -->|"いいえ"| C["無治療で経過観察"]
    B -->|"はい"| D{"全身状態は良好か"}
    D -->|"はい"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cladribine'>クラドリビン</span>+リツキシマブ(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='concurrent administration'>同時併用</span>)"]
    D -->|"いいえ"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='purine analogue'>プリンアナログ</span>単剤<br>(超高齢者は投与日数を短縮)"]
    E --> G{"再発・難治か"}
    F --> G
    G -->|"いいえ"| H["長期の無病生存を期待して経過観察を継続"]
    G -->|"はい・BRAF V600E陽性"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vemurafenib'>ベムラフェニブ</span>+リツキシマブ"]
    I --> J["3次治療以降:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='BRAF inhibitor'>BRAF阻害薬</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='MEK inhibitor'>MEK阻害薬</span>、<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='BTK inhibitor'>BTK阻害薬</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venetoclax'>ベネトクラクス</span>など"]

無症候の症例に早期治療の利益はなく、治療開始基準を満たすまで経過観察する。⭐ 他のインドレントB細胞と同じく、開始基準は「病期」ではなく「困りごと」で決まる。 FILO(フランス語圏)の2024年推奨は、①Hb 11 g/dL未満かつ/または血小板10万/µL未満かつ/または好中球1,000/µL未満、②症候性の、③全身症状(発熱・体重減少・)、④、のいずれか1つ以上を挙げ、どれも無ければ経過観察としている1。

⚠️ 一次治療の標準は「単剤」から「+リツキシマブ」へ移っている。 FILO 2024は、全身状態の良い未治療例には+リツキシマブ(CDAR)を推奨し、の節で「+リツキシマブのが一次治療のである」と述べている。リツキシマブは開始日から週1回8回投与するが、6か月後に開始する逐次投与より優れるという根拠に基づく1。💡 単剤は「効かないから捨てられた」のではなく、検出感度以下の(uMRD)に届く割合が併用で上がるというのが置き換えの理由である。単剤でも持続的なは得られるため、CDARに耐えられない全身状態の患者では今もよい選択肢とされる。

⚠️ ただし「全例でCDAR」ではない。 コンソーシアムの2025年の高齢者向け合意は、75歳以上で診断される症例について「単剤が一次治療として引き続き好まれる」とし、を高めるための減量が広く行われていると述べている4。年齢・併存症で一次治療の形が変わる。なおリツキシマブ単剤は、が部分的で短いためFILO 2024で推奨されていない1。

にはのほかペントスタチンがあり、いずれも単回に近い短期間ないし限られた期間の投与で高いと長期にわたる無病生存が得られる点が、他の多くのと際立って異なる。

では、BRAF V600E陽性であればであるとリツキシマブの併用が推奨される。⚠️ ・の単剤はもも併用より劣りuMRDに至らないため、併用を優先する1。3次治療以降ではの再使用は推奨されず(免疫抑制による感染症との毒性、およびごとの反応性低下のため)、や±リツキシマブが選択肢になる1。

⚠️ CD22を標的としたについて、FILO 2024は「大半の国でもはや入手できない」と述べ、入手できる国ではのよい代替選択肢であるとしている1。効かないから消えたのではない——では2021年7月23日に、自身の申請により欧州委員会が販売承認を撤回している。理由は安全性ではなく商業上の判断で、では結局一度も販売されなかった5。💡 の承認(2021年2月8日)は「治療歴が2ライン以上あるの成人」に対するもので、承認からわずか5か月で撤回された5。⚠️ この記述はについてのものである。国ごとに供給状況は違うので、使える国かどうかはその国ので確かめる。なお(SBLPN)については、主要な承認試験に組み入れられたのが3例のみでが0例だったため、現時点のデータでは推奨できないとされる1。

⭐ 日本では、BRAF遺伝子変異を有するに対して併用が承認されている。 メキニスト()の電子添文は効能・効果として「BRAF遺伝子変異を有する再発又は難治性の」を掲げる6。💡 単剤()に下流のを足す構図で、悪性黒色腫で確立した併用の考え方——BRAF阻害だけではMAPK経路が再活性化しうるので2点で止める——を同じ経路の疾患へ広げたものである。⚠️ この適応は国によって異なるので、承認状況は処方する国の添付文書で確かめる。

治療関連・疾患関連の血球減少がある期間は、日和見感染への対策が要る。FILO 2024は、およびその類縁疾患の治療を受けた全例に、ST合剤によるPneumocystis jiroveciiの予防と、またはアシクロビルによる帯状疱疹の予防を推奨している(⚠️ 原文は zona and herpes zoster viruses でには触れていない)1。💡 を使うときは、この予防投与の開始を2週間ずらす(皮膚有害事象が起こりうるため)。予防投与は少なくとも6か月、かつCD4陽性T細胞数が200/µLを超えるまで続ける。インフルエンザ・SARS-CoV-2・肺炎球菌のワクチンは、可能であれば治療開始前に済ませておくことが望ましい1。

支持療法として、FILO 2024はほかに次を挙げている1。

  • にはとともにG-CSFを用いる。⚠️ これは一般のの扱いとは向きが違う。一般のがん救急の指針では、発症後のをルーチンに全例へ投与することは推奨されず、重症化リスク因子がある例で個別に検討する位置づけである。💡 ではを含む血球減少が疾患そのものに由来し、で遷延するため、FILO 2024はな推奨としてを併用する側に振っている。
  • を受けた患者に輸血をするときは、の放射線照射を検討してよい(原文は「could be discussed」で、必須の要件としては書かれていない)。💡 によるT細胞の枯渇が長く続くため、輸血後を避ける発想である(予防の要はへの放射線照射である)。
  • ⚠️ 、とくにの予防。 では受けた治療の種類にかかわらずのリスクが高いため、少なくとも年1回、医による全身の診察を受けることが推奨される。💡 「の副作用だから、使わなければ気にしなくてよい」ではない——リスクは疾患そのものに伴う。

⚠️ 妊娠中にが見つかった場合、FILO 2024は出産後まで治療を遅らせることを推奨する。 遅らせられない場合はが望ましいとされる。の妊娠中の使用についてはデータが無い(悪性黒色腫での症例報告があるのみ)1。

は、が普及する以前はの標準治療であった。しかし循環血液中の腫瘍細胞やそのものには無効であるため、現在は第一選択とされず、薬物治療に抵抗性の症例や血小板減少に伴う出血を来す例など、限られた場面での選択肢にとどまる。

予後

は、による治療後、多くのと比べて極めて良好な予後を示し、生命予後が一般人口に近づく症例も少なくない。⚠️ ただし「治れば終わり」ではない。 (とくに)のリスクが高く、しかもそれは受けた治療の種類によらないため、長期の経過観察では年1回以上の診察を含むの監視が要る1。また3次治療以降でを繰り返さない理由の一つが、免疫抑制に伴う感染症との毒性である1。一方、はへの反応性に乏しく、経過もほど良好ではないため、両者を混同しないことが臨床的に重要である。

まとめ

  • はほぼ全例にBRAF V600E変異を伴うで、この変異が診断と治療の両方を貫く軸になる。
  • 骨髄はのため吸引が不成功に終わることが多く生検が必要で、脾臓はでなくに浸潤する点がCLLとの対比軸である。
  • CD11c・CD25・CD103・CD123陽性、陽性というが特徴で、染色は歴史的検査に位置づけられる。
  • 著明な脾腫を伴うとリンパ節腫大の乏しさ、による日和見感染への易感染性が臨床像の中心である。
  • 治療開始基準は血球減少(Hb 11 g/dL未満・血小板10万/µL未満・好中球1,000/µL未満のいずれか)・症候性の・全身症状・のいずれか1つ以上で、どれも無ければ経過観察とする。
  • 全身状態の良い未治療例の一次治療は+リツキシマブの(CDAR)で、単剤は例や75歳以上の高齢者で今も好まれる。再発・難治のBRAF V600E陽性例では+リツキシマブを用いる。
  • 治療を受けた全例にST合剤と/アシクロビルの予防投与を行い、治療の種類によらず(とくに)のリスクが高いため年1回以上の診察を続ける。
  • はBRAF V600E変異を欠く生物学的に異なる疾患で、-HAEM5では著明な核小体を伴う脾B細胞リンパ腫/白血病(SBLPN)へ改称された(ICCは旧名を維持)。への反応性・予後が劣る。

出典

  1. 1.Recommendations for the Management of Patients with Hairy-Cell Leukemia and Hairy-Cell Leukemia-like Disorders: A Work by French-Speaking Experts and French Innovative Leukemia Organization (FILO) Group(French Innovative Leukemia Organization (FILO) / Cancers (Basel)・2024)Europe PMC の fullTextXML(PMC11201647)で全文を確認した。治療開始基準は、①Hb 11 g/dL未満かつ/または血小板10万/µL未満かつ/または好中球1,000/µL未満、②症候性の臓器腫大、③全身症状(発熱・体重減少・盗汗)、④反復感染、のいずれか1つ以上で、どれも無ければ経過観察(watch and wait)を推奨すること。支持療法として、治療を受けた全例にST合剤とバラシクロビル/アシクロビルの予防投与を推奨し、プリンアナログを使う場合は皮膚有害事象を避けるため開始を2週間遅らせること、予防は最低6か月かつCD4陽性T細胞数が0.2 G/L(200/µL)を超えるまで続けること、インフルエンザ・SARS-CoV-2・肺炎球菌のワクチンは可能なら治療開始前に済ませることが望ましいとしていること。全身状態の良い未治療例の一次治療として本専門家委員会はクラドリビン+リツキシマブ(CDAR)を推奨し、リツキシマブはクラドリビン開始日から週1回8回投与する同時併用が、6か月後に開始する逐次投与より優れることを根拠に挙げていること。結論の節では「CDA+Rの免疫化学療法が一次治療のゴールドスタンダードである(is now the gold standard)」と述べていること。プリンアナログ単剤は、検出感度以下の微小残存病変には届かなくても持続的な奏効が得られうるため選択肢として残り、CDAR に耐えられない全身状態の患者ではよい選択肢であること。リツキシマブ単剤は奏効が部分的で短いため推奨されないこと。再発・難治例では、BRAF V600E陽性ならベムラフェニブ+リツキシマブを推奨し、BRAF阻害薬・MEK阻害薬単剤は奏効が低く短いため併用を優先すべきであること。ダブラフェニブ+トラメチニブも選択肢だが第2相試験でGrade 3-4の有害事象が63.6%であったこと。モキセツモマブ パスドトクスは「大半の国でもはや入手できない(no longer available in most countries)」が、入手できる国では再発・難治例のよい代替選択肢であり、HCLバリアントについては第3相試験の組入れが3例で完全奏効が0例のため現時点のデータでは推奨できないこと。3次治療以降ではプリンアナログの再使用を推奨しないこと。HCLバリアント(SBLPN)はプリンアナログ単剤に抵抗性であることが多いため一次治療からリツキシマブ+クラドリビンを推奨すること。治療を受けた全例に ST合剤による Pneumocystis jirovecii 予防と、バラシクロビル/アシクロビルによる帯状疱疹の予防を推奨すること(逐語は `a prophylaxis against zona and herpes zoster viruses with valaciclovir or aciclovir` で、単純ヘルペスには触れていない)。支持療法の節はさらに、発熱性好中球減少症には広域抗菌薬とあわせてG-CSFを用いること、プリンアナログを受けた患者への輸血では血液製剤の放射線照射を検討してよいこと(原文は could be discussed)、受けた治療によらず二次癌のリスクが高いため二次発癌(とくに皮膚癌)の予防が推奨され、少なくとも年1回の皮膚科医による全身診察を勧めることを述べる。妊娠中に発症した場合は出産後まで治療を遅らせることを推奨し、遅らせられない場合はインターフェロンαが望ましく、BRAF阻害薬の妊娠中の使用にはデータが無いとすること。血球計数の項は逐語で「Unlike HCL-like disorders, monocytopenia is often present in HCL: it can be masked by automated hematology analyzers, which frequently identify HCs as monocytes」と述べ、同じ項でリンパ球増加はHCLでは稀であるとしていること。閲覧 2026-09-08
  2. 2.The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Lymphoid Neoplasms(World Health Organization Classification of Tumours Editorial Board・2022)Europe PMC の fullTextXML(PMC9214472)で全文を確認した。WHO-HAEM5 の脾B細胞リンパ腫・白血病ファミリーは有毛細胞白血病(HCL)・splenic B-cell lymphoma/leukaemia with prominent nucleoli(SBLPN)・脾原発赤脾髄びまん性小型B細胞リンパ腫(SDRPL)・脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)の4病型からなること。SBLPN という語は「hairy cell leukaemia variant」と「CD5-negative B-cell prolymphocytic leukaemia」の2つを置き換えるもので、この増殖がHCLとは生物学的に異なると認識されたことがその理由であると明記していること。SBLPN はさらに、類似の形態を示すごくまれな脾辺縁帯リンパ腫の症例も吸収したこと。腫瘍細胞は著明な核小体を持ち、HCLのマーカーであるCD25・アネキシンA1・TRAP・CD123が陰性であること。⚠️ 略号は全文を通じて SBLPN の1通りだけで、SLPN は0回である。旧称の略記は本文中では HCLv(大文字Vではない)と書かれている。閲覧 2026-09-08
  3. 3.The International Consensus Classification of Mature Lymphoid Neoplasms: a report from the Clinical Advisory Committee(Blood / Clinical Advisory Committee・2022)PMC9479027 のHTML全文で成熟B細胞腫瘍の一覧(Table 1)を確認した。ICC 2022 は「B-cell prolymphocytic leukemia」を独立した病型として保持し、脾辺縁帯リンパ腫・有毛細胞白血病と並べて「Splenic B-cell lymphoma/leukemia, unclassifiable」を置き、その下位に「Splenic diffuse red pulp small B-cell lymphoma」と「Hairy cell leukemia-variant」を維持している。すなわち WHO-HAEM5 が SBLPN へ統合した2つの病名を、ICC は別々の名称のまま残している。閲覧 2026-09-08
  4. 4.Expert consensus opinion on the management of hairy cell leukemia in elderly patients(Leukemia & Lymphoma(Hairy Cell Leukemia Consortium)・2025)Europe PMC で抄録のみを閲覧しており全文は未取得(inEPMC・isOpenAccess とも N)。高齢(75歳以上)で診断される有毛細胞白血病が増えていることを背景に、国際的な専門家への調査に基づく本合意では、この年齢層でも「クラドリビン単剤が一次治療として引き続き好まれる(Cladribine monotherapy remains the preferred first-line treatment)」が、忍容性を高めるための減量が広く行われていること、再発例ではBRAF阻害薬と抗CD20抗体を含む分子標的治療が好まれること、高齢者に限ったエビデンスが不足していることを確認した。閲覧 2026-09-08
  5. 5.Lumoxiti (moxetumomab pasudotox) - European public assessment report (EPAR)(European Medicines Agency・2021)EPAR ページを取得して確認した。ページ上部の状態表示は「Withdrawn / This medicine's authorisation has been withdrawn」であり、概要は逐語で「On 23 July 2021 the European Commission withdrew the marketing authorisation for Lumoxiti (moxetumomab pasudotox) in the European Union (EU). The withdrawal was at the request of the marketing authorisation holder, AstraZeneca AB, which notified the European Commission of its decision to permanently discontinue the marketing of the product for commercial reasons.」と述べる。同ページはEUでの販売承認が2021年2月8日に「治療歴が2ライン以上ある再発又は難治性の有毛細胞白血病の成人」に対して与えられたこと、および「The product had not been marketed in the EU.」=EUでは実際には販売されなかったことも明記する。希少疾病用医薬品の指定も2021年7月に登録簿から抹消された。⚠️ 撤回の理由は安全性ではなく商業上の判断である。⚠️ このページはEUについての記述であり、米国の販売状況については何も述べていない閲覧 2026-09-13
  6. 6.メキニスト錠0.5mg/メキニスト錠2mg/メキニスト小児用ドライシロップ4.7mg 電子添文(ノバルティスファーマ株式会社(PMDA 医療用医薬品情報。2026年2月改訂・第8版、効能変更・用法及び用量変更)・2026)効能・効果に「BRAF遺伝子変異を有する再発又は難治性の有毛細胞白血病」が掲げられ、日本ではダブラフェニブとの併用でこの適応が承認されていることを確認した。⚠️ 甲状腺癌の適応は日本の電子添文には無く、米国(未分化癌)・EU(分化癌)とも対象が異なるため、承認適応は国ごとに確かめる必要がある閲覧 2026-09-08