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Microbe Atlas · 細菌

Mycobacterium avium-intracellulare complex / MAC

分類
抗酸菌 / Acid-fastMycobacterium
性状
抗酸菌 Acid-fast桿菌 Bacilli
科目
Medical Microbiology
トピック
2/34: Causative agents of human tuberculosis, Mycobacterium leprae2/33: Actinomyces and Nocardia genus, atypical and apathogenic mycobacteria
原因となる疾患
HIV感染症・AIDS過敏性肺炎・塵肺症非結核性抗酸菌症
作用する薬剤
アジスロマイシンアミカシンエタンブトールクラリスロマイシンリファブチン

🧠 全体像:はRunyon III群(緩徐発育・)に属すの中で最も臨床的に重要な複合体。同じ菌が全く異なる2つの顔を持つ点が理解の軸になる——進行した/ではCD4値に応じたとして、免疫正常の中高年女性では慢性の・として現れる。どちらも「宿主の免疫状態」という1本の軸で説明できる。

微生物学的な特徴

(発育速度・パターンによるの分類)ではIII群(緩徐発育・)に位置づけられる。

Runyon群 特徴 代表菌種
I群 緩徐発育・(光曝露で) M. kansasii
II群 緩徐発育・(暗所でも) M. scrofulaceum
III群 緩徐発育・ MAC、M. ulcerans
IV群 急速発育(7日未満) M. chelonae、M. fortuitum

Mycobacterium aviumとM. intracellulareは生化学的性状・臨床像が酷似し、実務上は区別せず「」として扱う。土壌・水・埃・動物(含む)に広く分布するで、ヒト-ヒト感染はしない。

病原性の仕組み

は主に細胞性免疫の破綻によって起こる。ではCD4陽性T細胞数が枯渇するとマクロファージによる菌の封じ込めが破綻し、を介して血流・骨髄・肝・脾へ播種する。免疫正常者での肺病変は、誤嚥や既存の気道()を背景に局所で緩徐に進行する。

⭐ CD4値がのリスクを直接決める。 CD4 <50/µLでのリスクがする。ただし現在は、ARTを直ちに開始できる患者にはCD4値にかかわらずを行わない。(アジスロマイシンなど)の適応は、CD4 <50/µLで、ARTを受けていない・ART下でもウイルス血症が続く・完全にウイルスを抑える薬の組合せが無い、のいずれかに当たる場合に限られる1。

💡 なぜ方針が変わったか。 播種性を防ぐ最も確実な手段は、ARTでCD4陽性T細胞を回復させて細胞性免疫を立て直すことだからである。ARTをすぐ始めて免疫が回復していくなら、予防薬をする意義は小さくなる。

起こす疾患

病型 好発患者 臨床像
進行/(CD4 <50/µL) 発熱・・体重減少・貧血、血液培養陽性。感染症・の代表的な日和見感染
肺症(結節・気管支拡張型) 免疫正常の中高年女性(非喫煙者に多い) 慢性の咳・喀痰、中葉・優位のと気管支拡張。緩徐進行
肺症() 基礎に・喫煙歴のある高齢男性 優位の。結核との鑑別を要する
様反応 曝露 化したへの免疫反応。・に類似した像を呈する

診断

喀痰・・血液()からの・培養で検出し、まで行う。1回の陽性だけで治療を開始しない——は環境中にいるため、一過性の混入・定着と真の感染を区別する必要がある。肺症は次の臨床基準と微生物学的基準をすべて満たしたときに診断する2。

区分 満たすべき条件
臨床(症状) 肺症状または全身症状がある
臨床(画像) 胸部X線で・空洞影、またはで多発を伴う気管支拡張があり、かつ他疾患を適切に除外している
微生物(いずれか1つ) ①別々に採った喀痰2検体以上で培養陽性
②または肺胞洗浄液1検体で培養陽性
③で抗酸菌の組織像(または抗酸菌)があり、の培養陽性、または喀痰・1検体以上で培養陽性

基準を満たせば、とくに喀痰の陽性や空洞病変がある場合は、経過観察より治療開始が提案される。ただしを満たすことは治療が必須であることを意味せず、菌の病原性・治療の利益と負担(1年以上の)・患者の意向を話し合って個別に決め、経過観察を選ぶこともある2。詳細はを参照。

治療と予防

⚠️ マクロライドは治療の要であり、単剤にしない。 マクロライドがレジメンから失われる(耐性化など)との陰転化率が大きく下がり死亡率が上がるため、を防ぐことがレジメン設計の最優先事項になる2。

肺症(マクロライド感性)の推奨レジメンは、病型で薬剤数と投与頻度が変わる2。

病型 薬剤 投与頻度
結節・気管支拡張型(空洞なし) アジスロマイシン(または)+リファンピシン(または)+の3剤 週3回
空洞型・進行した重症気管支拡張型 上記3剤+静注(または) 連日(静注・は週3回投与でもよい)
難治例(ガイドラインどおりの治療6か月後も陽性) 上記3剤+吸入(または静注) 連日(静注・は週3回投与でもよい)
  • 3剤が基本。 マクロライド+の2剤では耐性化のリスクを見積もるデータが不十分なため、3剤以上が提案されている。「2剤で始めて重症例だけを足す」という形は、現行の推奨と一致しない
  • マクロライドはアジスロマイシンを優先する(がよく、相互作用が少なく、1日1回で済む)。使えなければでよい
  • 💡 結節・気管支拡張型を週3回にするのは、連日投与と率が同等でがよく、しかもでが生じにくいことが示されているためである。空洞型・進行した重症例では連日投与が提案される(空洞型に週3回のを支持する根拠は無い)
  • 吸入は初期治療には使わない。 6か月以上の標準治療で陰転化しない難治例に追加する薬である
  • 治療期間はの陰転化後少なくとも12か月
  • ():またはアジスロマイシン+を基本とし、重症例などではを加える。並行してARTによる免疫の回復を図る
  • 患者の:ARTを直ちに開始できれば行わない。CD4 <50/µLでARTを開始できない・ウイルスを抑えられない場合に限りアジスロマイシンなどで予防する1

まとめ

  • Runyon III群(緩徐発育・)の。土壌・水・のでヒト-ヒト感染はない。
  • CD4 <50/µLの進行/では、免疫正常の中高年女性では結節・気管支拡張型の慢性肺感染という対照的な2つの臨床像を持つ。
  • 培養陽性のみで治療を開始せず、症状・画像・反復培養(喀痰2検体以上、または1検体)で臨床的意義を判断する。
  • 肺症の治療はマクロライド(アジスロマイシン優先)+リファンピシン+の3剤が基本。結節・気管支拡張型は週3回、空洞型・重症例は連日で注射を加え、難治例には吸入を追加する。後少なくとも12か月続ける。
  • 患者のは、ARTを直ちに開始できればCD4値にかかわらず行わない。

出典

  1. 1.Disseminated Mycobacterium avium Complex (Guidelines for the Prevention and Treatment of Opportunistic Infections in Adults and Adolescents with HIV)(NIH/CDC/HIVMA(Panel on Opportunistic Infections in Adults and Adolescents with HIV)・2026)本日は発行元サイト(clinicalinfo.hiv.gov)が403、NCBI Bookshelf がボット判定を返して本文を取得できなかったため、検索結果に表示された同節の抜粋の範囲で確認した。一次予防は、直ちに抗レトロウイルス療法を開始するHIV感染者にはCD4数にかかわらず推奨されないこと、適応はCD4数50/mm3未満で、抗レトロウイルス療法を受けていない・療法下でもウイルス血症が続く・完全に抑制できる療法の選択肢が無い、のいずれかに当たる場合に限られること。予防薬の用量はこの抜粋に含まれず、本ノートには書いていない。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Treatment of Nontuberculous Mycobacterial Pulmonary Disease: An Official ATS/ERS/ESCMID/IDSA Clinical Practice Guideline(American Thoracic Society / European Respiratory Society / European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases / Infectious Diseases Society of America・2020)PMC全文(PMC7768748)で確認した。マクロライド感性のMAC肺疾患には、マクロライドを含む3剤レジメンを強く推奨し(マクロライドを含まない3剤より)、マクロライド+エタンブトールの2剤より3剤以上を条件付きで提案していること。表4の推奨レジメンが、結節・気管支拡張型ではアジスロマイシン(またはクラリスロマイシン)+リファンピシン(またはリファブチン)+エタンブトールの週3回、空洞型ではこれにアミカシン静注(またはストレプトマイシン)を加えた連日投与、難治例(ガイドラインに沿った治療6か月後も喀痰培養陽性)ではさらにアミカシンリポソーム吸入懸濁液またはアミカシン静注を加えた4剤以上であること(空洞型・難治例とも連日投与で、表の注ではアミカシン・ストレプトマイシンは週3回投与でもよいとしている。空洞型への間欠投与は根拠が無く勧めないとしている)。アジスロマイシンをクラリスロマイシンより優先する提案(忍容性・相互作用・服薬回数)、空洞型・進行した重症気管支拡張型・マクロライド耐性例で初期レジメンにアミカシンまたはストレプトマイシン注射を含める提案、新規診断例の初期治療にはアミカシン吸入(リポソーム製剤を含む)を用いない提案、治療は培養陰転化後少なくとも12か月続ける提案であること。マクロライドがレジメンから失われると喀痰培養の陰転化率が著しく下がり死亡率が上がるとしていること、間欠投与ではマクロライド耐性が生じなかったことを重要な知見としていること。診断基準を満たす患者には、とくに喀痰塗抹陽性・空洞病変の場合に経過観察より治療開始を提案する一方、基準を満たすことが治療必須を意味せず経過観察が望ましい場合もあるとしていること。表2の診断基準(2007年ATS/IDSA声明から転載)が、症状と画像(胸部X線の結節・空洞影、または多発小結節を伴う気管支拡張のHRCT所見)と他疾患の適切な除外を臨床基準とし、微生物学的基準を「別々の喀痰2検体以上で培養陽性」「気管支洗浄液または肺胞洗浄液1検体で培養陽性」「肺生検で抗酸菌の組織像があり、組織または喀痰・気管支洗浄液1検体以上で培養陽性」のいずれかとしていること。閲覧 2026-09-27