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Disease Atlas · 血液 · 腫瘍

有毛細胞白血病バリアント

Hairy cell leukemia variant

別名
HCL-VHCLバリアント著明な核小体を伴う脾B細胞リンパ腫/白血病SBLPN著明な核小体を伴う脾リンパ腫SLPN
臓器系
血液腫瘍
科目
Pathology
トピック
病理学 C/11:慢性リンパ性白血病(CLL)/有毛細胞白血病
上位概念
白血病
鑑別疾患
B細胞前リンパ球性白血病有毛細胞白血病脾原発赤脾髄びまん性小型B細胞リンパ腫脾辺縁帯リンパ腫
治療薬
クラドリビンリツキシマブオビヌツズマブ
症状
脾腫倦怠感
検査値
血算血小板減少絶対単球数

🧠 全体像:(HCL-V)は、名前に反して古典的とは生物学的に別の疾患である。両者を分ける一本の軸はBRAF V600E変異の有無で、HCL-Vはこの変異を欠くために診断的免疫染色(CD25・陰性)も治療反応性(単剤に抵抗性、が無効)もと対照的になる。臨床像も、のに対してHCL-Vはを呈しも伴わないという、教科書的なHCL像を裏切る組み合わせで気づかれる。⚠️ 病名は分類体系によって違う——分類第5版(2022年)は「著明な核小体を伴う脾B細胞リンパ腫/白血病(SBLPN)」へ改称して独立した病型としたが、同じ2022年の(ICC)は「」の名を残している。どちらの体系に拠るかを添えて書く。

分類:WHO-HAEM5とICCが並立している

⚠️ 2022年に2つの分類が同時に出て、この疾患の扱いが割れた。 一方だけを「現行」として覚えない。

観点 分類第5版(-HAEM5、2022年) (ICC、2022年)
この疾患の名称 著明な核小体を伴う脾B細胞リンパ腫/白血病(SBLPN)1 (名称を維持)2
位置づけ 脾B細胞リンパ腫・白血病ファミリーの独立した病型1 「分類不能の脾B細胞リンパ腫/白血病」の(脾原発びまん性小型B細胞リンパ腫と並ぶ)2
B細胞前リンパ球性白血病(B-PLL) を理由に病型として削除。CD5陰性B-PLLは全例SBLPNへ吸収1 独立した病型として保持2

-HAEM5の脾B細胞リンパ腫・白血病ファミリーは、①(HCL)、②SBLPN、③脾原発びまん性小型B細胞リンパ腫(SDRPL)、④(SMZL)の4病型からなる。-HAEM4Rでは SBLPN にあたる病型と SDRPL が同じ枠に置かれていたが、第5版で別々に分類された1。

💡 なぜ改称したのか。 -HAEM5は、この増殖がHCLとは生物学的に異なると認識されたことを改称の理由として明記している。同時にSBLPNは、旧CD5陰性B-PLLの全例と、類似の形態を示すごくまれなSMZL症例も吸収した——つまりSBLPNは「HCL-Vの新しい名前」そのものではなく、HCL-Vを含むより広い受け皿である1。⚠️ HCL-VとB-PLLをまとめることの是非は今も議論されており、専門の総説はあえてSBLPNではなくHCL-Vの語を使うと断っている3。

⚠️ 標本が無いと各病型の区別が常にできるわけではない、と-HAEM5自身が注意している1。

疫学

SBLPNはまれで、慢性リンパ系腫瘍の約0.4%を占め、主に高齢者に生じる1。総説の著者らの登録(1996〜2020年に21,879例を診断し、うちは155例=全体の0.71%)では、HCL-Vは全体の5%未満を占めるにとどまる3。⚠️ 原著はこの登録が単施設のものか地域登録かを述べていない。初発症状として最も多いのは脾腫(85%)で、は3分の1未満、末梢リンパ節腫脹や他はまれである3。

⭐ より高齢に寄り、男性優位は弱い。 HCL-V 52例の年齢中央値は71歳(48〜92歳)で、の62歳(33〜97歳)より高い。男性優位もほど顕著ではない——はスウェーデンのリンパ腫登録で男女の罹患比5.95(95%信頼区間4.89〜7.24)と、リンパ系腫瘍の中でも際立って男性に偏る病型である3。⚠️ この総説が数値で示しているのはの側の偏りだけで、HCL-Vの男女比そのものは示していない。

病態・分子的特徴

HCL-Vの病態を理解する軸は、の対極にある——BRAF V600E変異を欠くという一点である3。ではこの変異がを恒常的に活性化しを駆動するが、HCL-Vではこの経路が同じ形では病態の中心を担わない。

代わりに目立つのがMAP2K1(MEK1をコードする)ので、HCL-Vの約半数に検出される3。原著の内訳ではIGHV4-34陰性HCL-Vの15例中6例(40%)、IGHV4-34陽性HCL-Vの9例中4例(44%)で、変異の多くはMEK1の自己抑制ドメイン(エクソン2・3)にし、基礎酵素活性と細胞増殖を強く増加させる4。💡 BRAFの下流にあるMEK1が直接変異することで、BRAF非依存的に同じMAPK経路が活性化される——だから「BRAF野生型=MAPK経路が動いていない」ではない。

flowchart TD
    A["成熟B細胞の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transformation'>腫瘍化</span>"] --> B{"BRAF V600E変異があるか"}
    B -->|"あり"| C["古典的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hairy cell leukemia'>有毛細胞白血病</span>"]
    B -->|"なし(野生型)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hairy cell leukemia variant'>有毛細胞白血病バリアント</span>(HCL-V)<br>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='World Health Organization'>WHO</span>-HAEM5のSBLPN"]
    C --> E["CD25・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='annexin A1'>アネキシンA1</span>陽性<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='monocytopenia'>単球減少</span>を伴う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancytopenia'>汎血球減少</span>"]
    D --> F["CD25・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='annexin A1'>アネキシンA1</span>・TRAP陰性<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='monocytopenia'>単球減少</span>を伴わない<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leukocytosis'>白血球増加</span>"]
    D --> I["約半数にMAP2K1<span class='jp-term jp-term-diagram' title='activating variant (mutation)'>活性化変異</span><br>(BRAF非依存的にMAPK経路が活性化)"]
    C --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='purine analogue'>プリンアナログ</span>単剤に高感受性"]
    D --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='purine analogue'>プリンアナログ</span>単剤に抵抗性<br>リツキシマブ併用が必要"]

古典型との対比

⭐ HCL-Vの理解は、古典的との対比表そのものである。臨床像・・分子異常・治療反応性のすべてが逆方向を向く。

項目 古典的 (HCL-V)
BRAF V600E変異 陽性(ほぼ全例) 陰性(野生型)3
MAP2K1変異 まれ 約50%3
低下(の一部) 増加(著明なを呈することが多い)5
減少() 保たれる(実数・比率とも正常)53
貧血・血小板減少 の一部として高頻度 3分の1の症例で検出されうる3
CD25 陽性 陰性(診断時に全例で陰性)3
CD123 陽性 通常dimまたは陰性3
CD11c 陽性 陽性かつbright3
・TRAP 陽性 陰性13
核小体 目立たない 明瞭な核小体3
・ 著明(吸引不成功になりやすい) より軽度
単剤への反応 高い 抵抗性(・とも劣る)31
で有効 無効(BRAF野生型のため標的が存在しない)
主要な肢ではない 再発・難治かつMAP2K1変異ありなら用いてよいとFILO 2024が述べる一方、原著と2024年の総説は位置づけを保留している643

臨床像

典型像は、著明な脾腫と末梢血のである5。で必発するを伴わない点が、教科書的なHCL像との違いとして診断のきっかけになる53。貧血・血小板減少は約3分の1の症例で検出されうるが、のようなという組み合わせにはならない3。倦怠感、などはと共通する。

診断

末梢血・で、と同様のを持つリンパ球を認めるが、核小体が明瞭という形態学的な違いがある。は末梢血の20〜95%を占め、多くの症例で単核球の50%超に達する3。骨髄のはほど強くなく、吸引が可能なことが多い。

⭐ 免疫スコアで一気に絞れる。 CD11c・CD25・CD103・CD123の4つに、発現していれば各1点を与えるスコアが提案されている。は98%が3〜4点であるのに対し、HCL-Vは0点26%・1点45%・2点26%と低い3。HCL-VではCD11cが陽性かつbrightである一方、CD25は診断時に全例陰性、CD103とCD123は通常dimまたは陰性で、も全例陰性である。-HAEM5はこれにTRAP陰性も加えて「HCLのマーカーが陰性」とまとめている1。そのうえでBRAF V600E変異が陰性(野生型)であることをまたはで確認する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leukocytosis'>白血球増加</span>+脾腫(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monocytopenia'>単球減少</span>を伴わない)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral smear'>末梢血塗抹</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flow cytometry'>フローサイトメトリー</span>"]
    B --> C{"免疫スコア(CD11c・CD25・CD103・CD123)が0〜2点か<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='annexin A1'>アネキシンA1</span>・TRAPも陰性か"}
    C -->|"はい"| D["BRAF V600E変異を確認"]
    D --> E{"BRAF野生型か"}
    E -->|"はい"| F["HCL-V(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='World Health Organization'>WHO</span>-HAEM5ではSBLPN)と診断"]
    E -->|"いいえ(変異陽性)"| G["古典的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hairy cell leukemia'>有毛細胞白血病</span>を再検討"]
    F --> H["MAP2K1・TP53変異を評価<br>(予後と将来の治療標的)"]

鑑別

古典的が最も重要な鑑別対象で、上記の対比表がそのまま鑑別の実務になる。も脾腫優位でリンパ節腫脹に乏しいB細胞腫瘍として鑑別に挙がるが、いずれもBRAF野生型・CD25陰性という点でからは同じ方向に外れるため、両者の鑑別にはの細部(CD103・CD11cの発現パターンなど)とパターンの評価を要する。脾原発びまん性小型B細胞リンパ腫(SDRPL)も同じ枠にあり、核小体が目立たず絨毛が極性を持って不均一に分布する点で区別する3。⚠️ 標本が無いと区別しきれない症例がある1。

予後

⚠️ HCL-Vの経過はより明らかに悪い。 の生存が一般人口に近づくのに対し、HCL-Vの生存期間中央値は9年で、17年を超えて生存するのは15%である3。-HAEM5もSBLPNをHCLより「臨床的に侵襲性が高い」と記載している1。

⭐ 予後不良因子は3つ。 35例の集団で、貧血(ヘモグロビン10 g/dL未満)・70歳超・TP53変異が予後不良因子として抽出された。1つ以上を持つ高リスク群の5年生存は33%、いずれも持たない低リスク群は100%である。TP53変異例のは11%で、非変異例の73%と対照的である3。💡 TP53変異はCDAR療法を受けた集団でも無増悪生存・の短縮と関連しており7、治療法をまたいで一貫した不良因子である。

治療

⚠️ といえる治療法も、この疾患だけを対象とした診療指針も無い——2024年の総説はそう明記している3。💡 ただし「HCL-V専用の指針が無い」ことは「推奨が無い」ことではない。 同じ2024年のFILO推奨は、の指針の中に「HCL類縁疾患」の節を置き、HCL-Vについて治療開始基準・一次治療・再発難治時の選択肢を明示している6。以下はその推奨と、個々の試験・症例報告を並べたものである。

⭐ 治療開始基準はと同一で、どれも満たさなければ経過観察(watch and wait)でよい6。すなわちと同じく、①Hb 11 g/dL未満かつ/または血小板10万/µL未満かつ/または好中球1,000/µL未満、②症候性の、③全身症状、④のいずれか1つ以上である。💡 予後がより悪いことは「見つけたらすぐ治療する」を意味しない。 開始の判断軸は病型ではなく困りごとのままである。

flowchart TD
    A["HCL-Vと診断"] --> B{"治療開始基準(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='classic form'>古典型</span>と同一)を<br>1つ以上満たすか"}
    B -->|"いいえ"| C["無治療で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='watch and wait'>経過観察</span>"]
    B -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='purine analogue'>プリンアナログ</span>単剤・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='splenectomy'>脾摘</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interferon (IFN)'>インターフェロン</span>は<br>抵抗性とみなす"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cladribine'>クラドリビン</span>+リツキシマブ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='concurrent administration'>同時併用</span>(CDAR)"]
    E --> F{"6か月時点で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='measurable residual disease, MRD'>微小残存病変</span>が陰性か"}
    F -->|"はい"| G["無増悪生存・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='overall survival (OS)'>全生存</span>とも良好"]
    F -->|"いいえ・再発"| H["MAP2K1変異があれば<span class='jp-term jp-term-diagram' title='MEK inhibitor'>MEK阻害薬</span>、<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ibrutinib'>イブルチニブ</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bendamustine'>ベンダムスチン</span>+リツキシマブ、<br>遅延リツキシマブなどを検討"]

⚠️ 単剤をと同じ第一選択にしない。 HCL-Vは単剤への・がより劣り、・・のいずれにも抵抗性とみなされている3。-HAEM5も「単剤に抵抗性」と明記する1。

⭐ 軸になるのは+リツキシマブの(CDAR)である。 HCL-V 20例(うち8例は未治療)を対象とした第2相試験の最終報告では、0.15 mg/kgを1〜5日目、リツキシマブ375 mg/m²を1日目から週1回8回投与し、95%(95%信頼区間75〜100)、6か月時点で骨髄のが陰性となったのは20例中16例(80%)だった。陰性のの持続は70.1か月、5年無増悪生存63.3%・73.9%である7。FILO 2024も、HCL-Vは「単剤に抵抗性であることが多いので一次治療にはリツキシマブ+を推奨する」とし、と同じこのスケジュールを採用している6。💡 「」が要点——リツキシマブを1か月後に追加する逐次投与ではなく、と同じ日から始めるレジメンである。

⚠️ があるときだけは、リツキシマブの開始を遅らせる。 FILO 2024は、がある症例ではの発生を減らすため、投与後にが正常範囲へ戻ってからリツキシマブを始めるよう述べている6。💡 HCL-Vはが典型像なので、この但し書きに当たる症例がより多い——「1日目から」を機械的に当てはめない。

💡 6か月時点のが転帰を分ける。 6か月時点で陰性のに到達した患者は、そうでない患者より無増悪生存・が有意に長かった(無増悪生存は未到達対17.4か月)。増悪してしまった後の中央値は29.7か月と短い7。寛解の深さを測ることが、そのまま次の一手の判断材料になる。

⚠️ は適応にならない。 HCL-VはBRAF野生型であるため、ので用いるなどの位置づけをそのまま当てはめられない。

は「使ってよい場面が限定的に示された段階」である。 HCL-Vの約半数にMAP2K1のが同定されており、この経路がBRAF非依存的にMAPKシグナルを活性化しうる4。⚠️ 同じ2024年の2つの資料が違う書き方をしているので、両方を押さえる。 FILO 2024は再発・難治のHCL-Vに限って「MAP2K1変異があればなどのを用いてよい(may be used)」と述べる6。一方、原著は「現行のレパートリーが全患者に臨床的有益性をもたらすとは限らない」と留保しており4、2024年の総説ものHCL・HCL-V治療における位置づけは今後明確にされるべき課題であるとしてを保留している3。💡 「変異があれば一次治療から使える」ではない——限定は〈再発・難治〉かつ〈MAP2K1変異あり〉の2つで、しかも助動詞は “may” である。⚠️ の日本の効能・効果に含まれるのは「BRAF遺伝子変異を有する再発又は難治性の」=であって、BRAF野生型のHCL-Vではない。 電子添文は同じ効能に対する注意として、病理医または検査施設の検査でBRAF遺伝子変異が確認された患者に投与するよう求めている8。名前が似ているために取り違えやすい。

の選択肢。 +リツキシマブ、リツキシマブ単剤、については症例報告レベルの有効性が報告されている3。-HAEM5も、への感受性がリツキシマブまたはとの併用で改善することに触れている1。は、再発したまたはバリアント型を対象とした多施設第2相試験(37例)で32週24%・48週36%・最良54%、36か月無増悪生存73%・85%であった。当初のは達成されなかったが、著者らは前治療の多い患者でのと良好な無増悪生存から有益でありうると述べている9。総説はこの試験について、がとHCL-Vで統計学的な差が無かったと報告している3。FILO 2024も再発・難治のHCL-Vに()を選択肢として挙げ、「有効性はHCLとHCL-Vで同程度に見える」ことを理由にしている。また上に挙げた分子標的薬が入手できない国では、リツキシマブ+を考慮してよいとしている6。

⚠️ はHCL-Vには推奨されない。 FILO 2024は、この抗CD22の主要な承認試験に組み入れられたHCL-V症例が3例のみで、そのいずれもに至らなかったため「現時点のデータでは推奨できない」と述べている6。💡 で有効な薬が、この病型では検証されていないという型の代表例である(そもそも本剤はでは2021年に販売承認が撤回されている——のノートを参照)。

は、HCL-Vが抵抗性とみなされる治療の一つに挙げられており3、薬物治療に反応しない症候性脾腫など限られた場面での選択肢にとどまる。

支持療法は古典型と同じ枠で行う

⚠️ 感染予防を治療計画に組み込む。 FILO 2024の支持療法の項は「または類縁疾患の治療を受けた患者」を対象に書かれており、HCL-Vもその対象に入る6。

  • ST合剤によるPneumocystis jiroveciiの予防と、またはアシクロビルによるの予防を行う。⚠️ を使う場合は、皮膚有害事象が起こりうるため予防投与の開始を開始の2週間後にする。 予防は少なくとも6か月間、かつCD4陽性T細胞数が0.2 G/Lを超えるまで続ける6。
  • ではとともにG-CSFを用いる。を受けた患者への輸血ではの放射線照射を検討してよい(原文は “could be discussed” で必須要件としては書かれていない)6。
  • インフルエンザ・SARS-CoV-2・肺炎球菌のワクチンは、可能なら治療開始前に済ませることが望ましい(とくに併存症のある高齢者)6。💡 HCL-Vは年齢中央値71歳とより高齢に寄るので、この但し書きが当たる患者の割合も大きい。
  • 、とくにの予防を行い、少なくとも年1回は医による全身の診察を受ける。FILO 2024は、受けた治療の種類によらずのリスクが高いことを理由に挙げている6。⚠️ この項目だけは原文の対象の書き方が違う。 節の冒頭は「または類縁疾患(HCL or HCL-like disorder)の治療を受けた患者」だが、この一文の逐語は because of the high risk of second cancers in HCL patients, regardless of the treatment received で、対象が in HCL patients と書かれており、根拠として挙げられているのはの集団である。HCL-Vへ無条件に広げず、「で示されたリスクを踏まえた勧め」として扱う6。

まとめ

  • HCL-Vは名称に反し古典的とは別疾患で、分類第5版では「著明な核小体を伴う脾B細胞リンパ腫/白血病(SBLPN)」へ改称され、CD5陰性B-PLLも吸収した独立病型になった。一方ICC 2022はB-PLLもHCL-Vの名称も維持しており、2つの体系が並立している。
  • BRAF V600E変異を欠くことが病態・診断・治療反応性を規定する軸で、CD25・・TRAP陰性、CD123 dim〜陰性、CD11cはbright、核小体明瞭という免疫染色・形態がと対照的である。免疫スコア0〜2点(は98%が3〜4点)が実務的な目印になる。
  • 臨床像はの「+」に対し「を伴わない」という逆方向の血算パターンで気づかれる。貧血・血小板減少は約3分の1で認める。
  • 予後はより不良で生存期間中央値9年。貧血・70歳超・TP53変異が予後不良因子で、1つ以上あると5年生存33%まで落ちる。
  • の治療法もHCL-V専用の指針も無いが、FILO 2024がの指針の中で推奨を示している——治療開始基準はと同一で、満たさなければ経過観察。
  • 単剤・・には抵抗性で、+リツキシマブ(CDAR)が軸(95%、5年無増悪生存63.3%)。⚠️ があるときは、反応を避けるためリツキシマブをが正常化してから始める。
  • は無効。は再発・難治かつMAP2K1変異ありなら用いてよいとFILO 2024が述べるが、原著と総説は位置づけを保留している。は第2相のを達成していない。はHCL-Vでは3例中0例で推奨されない。
  • 支持療法はFILO 2024がと類縁疾患をまとめて規定している——ST合剤(Pneumocystis jirovecii予防)と/アシクロビル(帯状疱疹の予防。⚠️ 原文は zona and herpes zoster viruses でには触れていない)の予防投与(使用時は2週間後から開始し、6か月間かつCD4陽性T細胞数0.2 G/L超まで継続)、での、可能なら治療開始前のワクチン接種、そして(とくに)の予防と少なくとも年1回の医による全身診察。⚠️ 最後の項目だけは原文が対象を「HCL患者」と書いており、節冒頭の「HCLまたは類縁疾患」とスコープの語が違う。年齢中央値71歳という集団像とあわせて押さえる。

出典

  1. 1.The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Lymphoid Neoplasms(World Health Organization Classification of Tumours Editorial Board・2022)PMC9214472 の全文で確認した。WHO-HAEM5 の脾B細胞リンパ腫・白血病ファミリーは有毛細胞白血病(HCL)・著明な核小体を伴う脾B細胞リンパ腫/白血病(SBLPN)・脾原発赤脾髄びまん性小型B細胞リンパ腫(SDRPL)・脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)の4病型からなり、WHO-HAEM4R と異なり SBLPN と SDRPL が別々に分類された。新病型 SBLPN は「有毛細胞白血病バリアント」という旧称を置き換えるもので、その理由はこの増殖がHCLとは生物学的に異なると認識されたことにある。SBLPN はさらに WHO-HAEM4R の CD5陰性B前リンパ球性白血病の全例と、類似の形態を示すごくまれな脾辺縁帯リンパ腫の症例を吸収した。B前リンパ球性白血病そのものは不均一性を理由に WHO-HAEM5 では独立した病型として認められない。SBLPN はまれで慢性リンパ系腫瘍の約0.4%を占め、主に高齢者に生じる。腫瘍細胞は著明な核小体を持ち、HCLのマーカーであるCD25・アネキシンA1・TRAP・CD123が陰性である。SBLPN はHCLより臨床的に侵襲性が高くクラドリビン単剤に抵抗性で、より近年ではリツキシマブまたはベンダムスチンとの併用でクラドリビンへの感受性が改善することが示されている。なお脾摘標本が無いと各病型の区別が常にできるとは限らないとも注意している。閲覧 2026-09-08
  2. 2.The International Consensus Classification of Mature Lymphoid Neoplasms: a report from the Clinical Advisory Committee(Blood / Clinical Advisory Committee・2022)PMC9479027 のHTML全文で Table 1 を確認した。ICC 2022 の成熟B細胞腫瘍の一覧はB細胞前リンパ球性白血病を独立した病型として保持し、脾辺縁帯リンパ腫・有毛細胞白血病と並べて「分類不能の脾B細胞リンパ腫/白血病(splenic B-cell lymphoma/leukemia, unclassifiable)」を置き、その下位に脾原発赤脾髄びまん性小型B細胞リンパ腫と有毛細胞白血病バリアント(hairy cell leukemia-variant)を維持している。すなわちWHO-HAEM5がSBLPNへ統合した2つの病名を、ICCは別々の名称のまま残している。閲覧 2026-09-08
  3. 3.Untangling hairy cell leukaemia (HCL) variant and other HCL-like disorders: Diagnosis and treatment(Journal of Cellular and Molecular Medicine・2024)Europe PMC の fullTextXML で全文を確認した。WHO第5版(WHO-HAEM5、2022年)が脾リンパ腫・白血病を①有毛細胞白血病②脾辺縁帯リンパ腫③著明な核小体を伴う脾リンパ腫(本総説の表記はSLPN/SBLPN、HCL-VとCD5陰性B前リンパ球性白血病を置き換えたもの)④脾原発赤脾髄びまん性リンパ腫の4病型に再編した一方、国際コンセンサス分類(ICC)ではB-PLLとHCL-Vが維持されたこと。本総説はHCL-VとB-PLLをまとめることの是非が議論中であるため、あえてSBLPNではなくHCL-Vの語を用いると明記する。初発症状は脾腫85%、肝腫大は3分の1未満、リンパ節腫脹や他臓器浸潤はまれ。白血球数は増加し単球の実数・比率は正常で、貧血と血小板減少は3分の1の症例で検出されうる。異型リンパ球は20〜95%を占め多くの症例で単核球の50%超。CD11cは陽性かつbright、CD25は診断時に全例陰性、CD103とCD123は通常dimまたは陰性、アネキシンA1は全例陰性。CD11c・CD25・CD103・CD123に各1点を与える免疫スコアは、HCL-Vでは0点26%・1点45%・2点26%であるのに対しHCLでは98%が3〜4点である。MAP2K1変異はHCL-Vの50%で検出される。2.1 Epidemiology の逐語は「In our register, we diagnosed 21.879 patients with malignant hematologic disorders between 1996 and 2020: HCL diagnosis was retained in 155 patients, representing 0.71% of all hematologic disorders. HCL-V represented less than 5% of all HCL cases.」であり、⚠️ **この登録が単施設のものか地域登録かは述べていない**。経過はHCLより不良で生存期間中央値9年、15%が17年を超えて生存する。35例の集団で貧血(10 g/dL未満)・70歳超・TP53変異の3つが予後不良因子で、1つ以上を持つ高リスク群の5年生存が33%、いずれも持たない低リスク群は100%、TP53変異例の5年全生存は11%で非変異例の73%と対照的である。治療については標準治療も専用の診療指針も存在せず、HCL-Vは脾摘・インターフェロン・プリンアナログに抵抗性とみなされ、リツキシマブ単剤・オビヌツズマブ・ベンダムスチン+リツキシマブの有効性は症例報告にとどまる。イブルチニブの第2相試験(37例中HCL-Vは9例)では奏効率が古典型とHCL-Vで統計学的な差が無かったと述べる。BTK阻害薬やMEK阻害薬のHCL・HCL-V治療における位置づけは今後明確にされるべき課題であるとして留保している。閲覧 2026-09-08
  4. 4.High prevalence of MAP2K1 mutations in variant and IGHV4-34 expressing hairy-cell leukemia(Nature Genetics(Waterfall JJ, et al.)・2014)MAP2K1(MEK1をコードする)の活性化変異がHCL-Vの3亜群すべてに認められること(IGHV4-34陰性HCL-Vで15例中6例=40%、IGHV4-34陽性HCL-Vで9例中4例=44%、IGHV4-34陽性古典型HCLで7例中5例)でありこれらの頻度に有意差がないこと、同定された変異の多くがMEK1の自己抑制ドメイン(エクソン2・3)に集簇し基礎酵素活性と細胞増殖を強く増加させる活性化変異であること、Results欄で「現行のMEK阻害薬レパートリーが全患者に臨床的有益性をもたらすとは限らないが、MEK1とそのエフェクターERKはこの白血病における治療標的として非常に魅力的である」と述べ、MEK阻害薬の臨床的位置づけを留保しつつ治療標的としての可能性を提示していることを確認した閲覧 2026-08-11
  5. 5.Hairy Cell Leukemia(StatPearls (NCBI Bookshelf)(Naing PT, Acharya U, Kumar A)・2023)HCLバリアントが古典型でみられる好中球減少・単球減少・貧血・血小板減少を伴わない著明な白血球増加を呈することが多いこと、古典型では逆に汎血球減少・単球減少が特徴的であること、HCLバリアントはCD25・CD123が陰性であること、形態学的に核小体が明瞭で骨髄浸潤が古典型より軽いこと、プリンアナログへの反応が古典型に比べて不良であることを確認した閲覧 2026-08-11
  6. 6.Recommendations for the Management of Patients with Hairy-Cell Leukemia and Hairy-Cell Leukemia-like Disorders: A Work by French-Speaking Experts and French Innovative Leukemia Organization (FILO) Group(French Innovative Leukemia Organization (FILO) / Cancers (Basel)・2024)Europe PMC の fullTextXML(PMC11201647)で全文を確認した。本推奨は「HCL-like disorders」の節を設けてHCL-Vを個別に扱い、次のように述べる。治療開始基準はHCLと同一であり、どれも満たさなければ経過観察(watch and wait)とすること。「Patients are often refractory to PNA monotherapy, which is why we recommend the combination of R + CDA in first line」=プリンアナログ単剤に抵抗性であることが多いため一次治療にリツキシマブ+クラドリビンを推奨し、古典型と同じくChihara らの同時併用スケジュール(クラドリビンの1日目からリツキシマブを開始し週1回8回)を用いること。⚠️ リンパ球増加がある場合は、リツキシマブの点滴反応を減らすためクラドリビン後にリンパ球数が正常範囲へ戻ってから開始すること。再発・難治のHCL-Vでは、MAP2K1変異があればトラメチニブなどのMEK阻害薬を用いてよく、BTK阻害薬(イブルチニブ)も選択肢で、有効性はHCLとHCL-Vで同程度に見えるとすること。上記の分子標的薬が入手できない国ではリツキシマブ+ベンダムスチンを考慮してよいこと。モキセツモマブ パスドトクスについては「in the pivotal trial, only three HCL-V patients were included and none achieved CR」であり、現時点のデータではHCL-Vに推奨できないとすること。⚠️ 本推奨がChihara 試験から引く数値は「CR率90%・uMRD率80%」であり、同試験の最終報告が主要評価項目として示すCR率95%とは別の数え方である(本ノートは最終報告の数値を採っている)。支持療法の節は対象を「有毛細胞白血病または類縁疾患(HCL or HCL-like disorder)の治療を受けた患者」と書いており、HCL-Vもここに含まれる。内容はST合剤によるPneumocystis jirovecii予防とバラシクロビル/アシクロビルによる帯状疱疹の予防(プリンアナログを使う場合は皮膚有害事象のため開始の2週間後から始め、少なくとも6か月間かつCD4陽性T細胞数が0.2 G/Lを超えるまで継続)、発熱性好中球減少症への広域抗菌薬とG-CSF、プリンアナログ後の輸血における血液製剤の放射線照射の検討(原文は could be discussed)、インフルエンザ・SARS-CoV-2・肺炎球菌ワクチンを可能なら治療開始前に接種すること、である。⚠️ 抗ウイルス予防の逐語は `a prophylaxis against zona and herpes zoster viruses with valaciclovir or aciclovir` で、**全文に `herpes simplex` も `HSV` も0件**であり、単純ヘルペスの予防は述べていない。⚠️ 支持療法の節の最後の項目は逐語 `Prevention of second primary malignancies, especially cutaneous cancers, is recommended because of the high risk of second cancers in HCL patients, regardless of the treatment received … We recommend a regular (at least once a year) complete physical examination with a dermatologist.` で、この項目だけは対象を節冒頭の `HCL or HCL-like disorder` ではなく `in HCL patients` と書いている。閲覧 2026-09-13
  7. 7.Long term follow-up of a phase II study of cladribine with concurrent rituximab with hairy cell leukemia variant(Blood Advances・2021)抄録で確認した(全文は取得していない)。HCL-V 20例(クラドリビンおよび/またはリツキシマブの前治療が0〜1コース、うち8例は未治療)に、クラドリビン0.15 mg/kgを1〜5日目、リツキシマブ375 mg/m²を1日目から週1回8回、同時併用(CDAR)した第2相試験の最終報告である。完全寛解率は95%(95%信頼区間75〜100)、6か月時点で骨髄の微小残存病変が陰性となったのは20例中16例(80%、95%信頼区間56〜94)。微小残存病変陰性の完全寛解の持続期間中央値は70.1か月で、16例中7例は120か月まで陰性が続いている。追跡期間中央値69.7か月で11例が遅延リツキシマブを受け、5年無増悪生存は63.3%、5年全生存は73.9%であった。TP53変異を持つ5例は無増悪生存(中央値36.4か月対未到達、p=0.0024)と全生存(中央値52.4か月対未到達、p=0.032)が短かった。6か月時点の微小残存病変陰性の完全寛解は無増悪生存・全生存の延長と有意に関連した。CDAR後に増悪した場合の全生存期間中央値は29.7か月である。⚠️ 本試験(20例、最終報告)の主要評価項目である完全寛解率は95%である。文献に現れる「90%」は2通りあり、①先行する10例コホートの主要評価項目としての完全寛解率90%と、②本試験で6か月時点に完全寛解かつ免疫染色で微小残存病変陰性であった18/20例(90%)——どちらも95%とは別の数字なので取り違えない。閲覧 2026-09-08
  8. 8.メキニスト錠0.5mg/メキニスト錠2mg/メキニスト小児用ドライシロップ4.7mg 電子添文(ノバルティスファーマ株式会社(PMDA 医療用医薬品情報。2026年2月改訂・第8版、効能変更・用法及び用量変更)・2026)電子添文本文を取得して確認した。作成又は改訂年月の表示は2026年2月改訂(第8版、効能変更、用法及び用量変更)である。「4. 効能又は効果」の錠の6項目のうち血液腫瘍にあたるのは「BRAF遺伝子変異を有する再発又は難治性の有毛細胞白血病」のみで、有毛細胞白血病バリアントやBRAF野生型の記載は無い。「5. 効能又は効果に関連する注意」の〈有毛細胞白血病〉5.11は、十分な経験を有する病理医または検査施設の検査でBRAF遺伝子変異が確認された患者に投与することを求めている。閲覧 2026-09-08
  9. 9.Phase 2 study of ibrutinib in classic and variant hairy cell leukemia(Blood・2021)抄録で確認した(全文は取得できていない)。再発した古典的またはバリアント型の有毛細胞白血病を対象とした多施設第2相試験で、37例が2用量(420 mg 24例、840 mg 13例)に登録された。追跡期間中央値3.5年。主要評価項目である32週時点の奏効率は24%、48週時点で36%、治療中の最良奏効率は54%であった。36か月無増悪生存の推定値は73%、全生存は85%。頻度の高い有害事象は下痢59%・倦怠感54%・筋痛54%・悪心51%で、血液毒性も多く貧血43%・血小板減少41%・好中球減少35%であった。著者らは、当初の主要評価項目は達成されなかったものの、前治療の多い患者での客観的奏効と良好な無増悪生存はイブルチニブがこれらの患者に有益でありうることを示唆すると述べる。⚠️ 抄録は古典型とバリアント型の内訳や病型別の奏効率を示していない。閲覧 2026-09-08