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Disease Atlas · 血液 · 腫瘍

B細胞前リンパ球性白血病

B-cell prolymphocytic leukemia

別名
B-PLL
臓器系
血液腫瘍
科目
Pathology
トピック
病理学 C/11:慢性リンパ性白血病(CLL)/有毛細胞白血病
上位概念
白血病
鑑別疾患
マントル細胞リンパ腫慢性リンパ性白血病(CLL)有毛細胞白血病バリアント脾原発赤脾髄びまん性小型B細胞リンパ腫(SDRPL)
治療薬
リツキシマブアレムツズマブ
症状
脾腫
検査値
リンパ球増加

🧠 全体像:B細胞前リンパ球性白血病(B-PLL)は、分類そのものが病型の核心になっているまれな疾患である。分類第4版改訂版(-HAEM4R)までは独立病型だったが、-HAEM5(2022年)は「」を理由にこれを解体し、旧来「B-PLL」と呼ばれてきた症例を①(芽球様亜型)、②CLLの前リンパ球性進展、③著明な核小体を伴う脾B細胞リンパ腫/白血病(SBLPN、旧HCL-Vを置き換えた新設病型)という3つの帰属先に再分類した。同じ2022年のICCはB-PLLを独立病型として維持しているが、他のリンパ系腫瘍——特にCLLからの転化・・——を厳密に除外したうえでのみ診断すべきと釘を刺している。分子的にはMYC異常とTP53異常(17p欠失など)が高頻度に検出され、この2つが的の軸になる。

分類:WHO-HAEM5は解体、ICCは独立維持——ただし「厳密な除外」が条件

⚠️ SDRPLやHCL-Vと違い、B-PLLは-HAEM5で「新しい名前に置き換えられた」のではなく「病型そのものが解体された」。 旧来の「B-PLL」という単一の診断名の中に、生物学的に異なる3つの実体が混在していたと理解されたことが解体の理由である1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='World Health Organization'>WHO</span>-HAEM4RのB-PLL<br>(不均一な集団と認識)"] --> B["①IGH::CCND1陽性の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='mantle cell lymphoma'>マントル細胞リンパ腫</span>(芽球様亜型)"]
    A --> C["②CLL/SLLの前リンパ球性進展<br>(CD5陽性・末梢血/骨髄の前リンパ球15%以上)"]
    A --> D["③残余症例<br>→ SBLPN(旧HCL-V+CD5陰性B-PLLを吸収)"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='World Health Organization'>WHO</span>-HAEM4RのCLL/SLL<br>(前リンパ球15%未満)"] --> F["そのままCLL/SLLに留まる"]
観点 分類第5版(-HAEM5、2022年) (ICC、2022年)
B-PLLの扱い 病型として削除。3つの帰属先へ再分類1 独立病型として保持2
診断のハードル (病型自体が無いため該当なし) CLLからの転化・・を厳密に除外したうえでのみ診断2
CD5陰性例の扱い SBLPNへ吸収1 独立病型のまま

💡 -HAEM5とICCのは「診断名を残すか」ではなく「B-PLLという集団がそもそも一枚岩か」という理解の違いに根ざす。 -HAEM5は旧B-PLLの中に少なくとも3つの異なる病態(の亜型・CLLの進展形・SBLPN)が混在していたとみて病型自体を解体したのに対し、ICCはCLL・・を除外し尽くした残りをなお「B-PLL」という一つの実体として認めている12。

⭐ CLLとのは「末梢血・骨髄中の前リンパ球が15%を占めるか」で引かれる。 -HAEM4RでCLL/SLLとされていた症例のうち、前リンパ球が15%以上を占める症例は「CLLの前リンパ球性進展」として再分類され、15%未満の症例はそのままCLL/SLLに留まる1。⚠️ この15%という閾値は-HAEM5がCLLとの境界を引くための基準であり、古典的にB-PLLそのものの診断(・CLL転化を除外した後に残る症例)に用いられてきた「前リンパ球が優位を占める」という記述とは文脈が異なる——本ノートでは資料で確認できた15%という数値のみを明記する。

病態・分子遺伝学

⭐ MYC異常とTP53異常(17p欠失など)の2つが分子病態の軸である。 34例の的・分子遺伝学的解析では、核型は73%が(異常3つ以上)、45%が高度(異常5つ以上)という高度に不安定なゲノムを示した。最も頻度の高い染色体異常はMYC転座(62%)、17p欠失(38%)で、30%・13q欠失29%・3トリソミー24%・12トリソミー24%・8p欠失23%が続いた。全体では76%の症例が(な転座またはに由来する)何らかのMYC異常を有していた3。

ではTP53・MYD88・BCOR・MYC・SF3B1・SETD2・CHD2・CXCR4・BCLAF1に高頻度の変異が検出された。IGHV遺伝子は大多数がIGHV3またはIGHV4サブグループを使用し(89%)、79%が有意なを示した3。

flowchart TD
    A["B-PLLの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cytogenetics'>細胞遺伝学</span>的評価"] --> B{"MYC異常があるか"}
    B -->|"なし"| C["低リスク群"]
    B -->|"あり"| D{"17p欠失(TP53異常)も伴うか"}
    D -->|"伴わない"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intermediate risk (PE)'>中間リスク</span>群"]
    D -->|"伴う"| F["高リスク群"]
    C --> G["3群間で予後に有意差<br>(P=.0006)"]
    E --> G
    F --> G

⭐ このに基づき3つの的リスク群が識別された——低リスク(MYC異常なし)・(MYC異常はあるが17p欠失なし)・高リスク(MYC異常+17p欠失)で、群間に有意差を認めた(P=.0006)3。💡 CLLではTP53異常(17p欠失・TP53変異)が予後不良因子として単独で扱われることが多いが、B-PLLではMYC異常との組み合わせでリスクが階層化される点が特徴的である。

診断

⚠️ ICCは「」であることを明言している。 B-PLLと診断する前に、CLLからの前リンパ球性転化、(特にIGH::CCND1陽性の芽球様亜型)、を厳密に除外することが求められる2。-HAEM5の枠組みで考えれば、この除外はそのまま旧B-PLLの3つの帰属先を鑑別する手順に対応する1。

flowchart TD
    A["末梢血に前リンパ球優位の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphocytosis'>リンパ球増加</span>+脾腫"] --> B{"IGH::CCND1(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclin D'>サイクリンD</span>1<span class='jp-term jp-term-diagram' title='overexpression'>過剰発現</span>)<br>があるか"}
    B -->|"あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mantle cell lymphoma'>マントル細胞リンパ腫</span>(芽球様亜型)"]
    B -->|"なし"| D{"CD5陽性でCLLの既往があるか<br>前リンパ球が末梢血・骨髄の15%以上か"}
    D -->|"あり"| E["CLLの前リンパ球性進展"]
    D -->|"なし"| F{"著明な核小体・CD25陰性など<br>SBLPNの特徴があるか"}
    F -->|"あり"| G["SBLPN"]
    F -->|"なし・他の脾B細胞リンパ腫を除外できた"| H["ICCの基準で<br>B-PLLと診断しうる"]

臨床像

脾腫と末梢血の(前リンパ球優位)を呈する点はCLLの前リンパ球性転化や他の脾B細胞リンパ腫と共通する。B-PLLはCLL・・SBLPNいずれとも臨床像が重なるため、臨床像だけで確定診断することはできない2。

鑑別

CLLの前リンパ球性転化との鑑別が最も重要で、-HAEM5では末梢血・骨髄中の前リンパ球15%を境界としている1。(芽球様亜型)とはIGH::CCND1(1)の有無で区別する1。(HCL-V、-HAEM5のSBLPN)とは、CD5陰性の旧B-PLL症例の多くがSBLPNへ吸収された経緯を踏まえ、著明な核小体・CD25陰性などSBLPNの特徴の有無で鑑別する1。ICCはB-PLLの診断にあたり、CLLからの転化・・(SMZL)を厳密に除外することを求めている2。SDRPLはICCの一覧でSMZLとは別に「分類不能の脾B細胞リンパ腫/白血病」のに位置づけられるが、B-PLLのとしてSDRPLを名指しした記述はICC原文には無い。

治療

⭐ TP53異常の有無がを左右する点はCLLと同様である。 全身状態の良い患者にはリツキシマブを基盤とした併用が有効とされる一方、TP53異常は高頻度に検出され、これらの患者は一般にを基盤とした治療で管理すべきとされる4。⚠️ B-PLLに治癒的な標準治療は無く、予後は不良で生存期間は短い4。💡 MYC異常を有する症例では、阻害薬またはBCL2阻害薬とMYC標的薬(ブロモドメイン阻害薬)の併用が細胞を有意に低下させることが実験的に示されており、MYCを標的とする治療が将来の選択肢として提示されている3。

まとめ

  • B-PLLは-HAEM5(2022年)で病型として削除され、(芽球様亜型)・CLLの前リンパ球性進展・SBLPNの3つに再分類された。一方ICC 2022はB-PLLを独立病型として保持しつつ、他疾患の厳密な除外を診断条件とする——両分類のは病名の有無ではなく、旧B-PLL集団が一枚岩かという理解の違いに根ざす。
  • CLLとの境界は-HAEM5では末梢血・骨髄中の前リンパ球15%を基準に引かれる。
  • 分子病態の軸はMYC異常(62%に転座)とTP53異常(17p欠失38%)で、この組み合わせで低・中間・高リスクの3群に層別化できる(P=.0006)。
  • 診断はであり、(IGH::CCND1)・CLL前リンパ球性転化・SDRPL・SBLPNとの鑑別を経て残った症例にのみ用いられる。
  • 治療はCLLと同様にTP53異常の有無で方針が変わり、リツキシマブ併用(例)と基盤治療(TP53異常例)が軸になるが、標準治療は確立せず予後は不良である。

出典

  1. 1.The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Lymphoid Neoplasms(World Health Organization Classification of Tumours Editorial Board・2022)PMC9214472 の全文で、B細胞前リンパ球性白血病(B-PLL)に関する記載を確認した。WHO-HAEM4RのB-PLLは、その不均一性を理由にWHO-HAEM5では独立病型として認められなくなった。従来B-PLLと呼ばれてきた症例は3つの帰属先に再分類される:①IGH::CCND1を有するマントル細胞リンパ腫(芽球様亜型)の一種、②CLL/SLLの前リンパ球性進展(prolymphocytic progression)——CD5陽性でマントル細胞リンパ腫でない腫瘍が末梢血および/または骨髄中の前リンパ球15%以上を占める場合と定義される、③その他の残余症例で、これらは新設病型「著明な核小体を伴う脾B細胞リンパ腫/白血病(SBLPN)」に分類される。WHO-HAEM4RでCLL/SLLとされた症例のうち前リンパ球が15%以上を占める症例は「CLLの前リンパ球性進展」に、15%未満の症例はそのままCLL/SLLに留まる。SBLPNは有毛細胞白血病バリアント(HCL-V)と、CD5陰性B前リンパ球性白血病のすべてを吸収した新設病型で、慢性リンパ系腫瘍の約0.4%を占めるまれな病型であり、HCLのマーカーであるCD25・アネキシンA1・TRAP・CD123が陰性である。閲覧 2026-09-08
  2. 2.The International Consensus Classification of Mature Lymphoid Neoplasms: a report from the Clinical Advisory Committee(Blood / Clinical Advisory Committee・2022)PMC9479027 の全文で、B細胞前リンパ球性白血病(B-PLL)の診断基準に関する記述を確認した。ICC 2022はB-PLLの診断基準を見直し、この病型は他のリンパ系腫瘍——特にCLLからの転化、マントル細胞リンパ腫(MCL)、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)——を厳密に除外したうえでのみ認められるべきだとした。ICCの成熟B細胞腫瘍一覧はB-PLLを独立した病型として保持しており、脾辺縁帯リンパ腫・有毛細胞白血病と並べて「分類不能の脾B細胞リンパ腫/白血病」を置き、その下位に脾原発赤脾髄びまん性小型B細胞リンパ腫と有毛細胞白血病バリアントを維持している——B-PLLはこの「分類不能」カテゴリーとは別に、独立病型として一覧に残されている。文書はB-PLLの末梢血前リンパ球割合の具体的な閾値・TP53異常の頻度・MYC再構成・予後については記述していない。閲覧 2026-09-08
  3. 3.Genetic characterization of B-cell prolymphocytic leukemia: a prognostic model involving MYC and TP53(Blood(Chapiro E, et al.; Groupe Francophone de Cytogénétique Hématologique / French Innovative Leukemia Organization)・2019)抄録のみを閲覧しており全文は未取得。B-PLL 34例の細胞遺伝学的・分子遺伝学的解析で、核型は73%が複雑核型(異常3つ以上)、45%が高度複雑核型(異常5つ以上)であったこと。最も頻度の高い染色体異常はMYC転座62%、17p欠失38%、18トリソミー30%、13q欠失29%、3トリソミー24%、12トリソミー24%、8p欠失23%であったこと。34例中26例(76%)が相互排他的な転座またはゲイン由来のMYC異常を有していたこと。全エクソーム解析でTP53・MYD88・BCOR・MYC・SF3B1・SETD2・CHD2・CXCR4・BCLAF1に高頻度の変異を認めたこと。大多数がIGHV3またはIGHV4サブグループを使用し(89%)、IGHV遺伝子に有意な変異を認めた(79%)こと。細胞遺伝学的リスクを3群に分類できた:低リスク(MYC異常なし)・中間リスク(MYC異常はあるが17p欠失なし)・高リスク(MYC異常+17p欠失)で、この3群間に有意差があったこと(P=.0006)。B細胞受容体阻害薬またはBCL2阻害薬とOTX015(MYCを標的とするブロモドメイン阻害薬)の併用が、MYC転座を持つB-PLL細胞の生存率を有意に低下させたこと。著者らは細胞遺伝学的解析がB-PLLの診断・予後予測に有用なツールであり、MYCを標的とすることが有望な治療選択肢になりうると結論していることを確認した。閲覧 2026-09-08
  4. 4.B- and T-cell prolymphocytic leukemia: antibody approaches(Hematology / American Society of Hematology Education Program(Dearden C)・2012)抄録のみを閲覧しており全文は未取得。B細胞・T細胞前リンパ球性白血病(PLL)はまれで侵襲性の高いリンパ系腫瘍で、特徴的な形態学的・免疫表現型的・細胞遺伝学的・分子的特徴を持つこと、予後は不良で生存期間が短く治癒的治療が存在しないこと、モノクローナル抗体の登場により治療選択肢が改善したこと、B-PLLでは全身状態の良い患者にリツキシマブを基盤とした化学免疫療法併用が有効であること、TP53異常が高頻度でCLLと同様にこれらの患者は一般にアレムツズマブを基盤とした治療で管理すべきであることを確認した。閲覧 2026-09-08