皮膚科学

皮膚科学 · 3-14

皮膚T細胞リンパ腫

Cutaneous T-cell Lymphoma

前提:病態
菌状息肉症/セザリー症候群/末梢T細胞リンパ腫
薬剤
メトキサレン
疾患
リンパ腫様丘疹症原発性皮膚γδT細胞リンパ腫深在性エリテマトーデス皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫皮膚T細胞リンパ腫
症状
ポイキロデルマ局面紅皮症皮膚結節
検査値
Pautrier微小膿瘍乳酸脱水素酵素

🧠 全体像:(cutaneous T-cell lymphoma:)は、皮膚へ親和性をもつT細胞がするリンパ腫の総称である。代表はと(Sézary syndrome:SS)で、湿疹や乾癬に似た紅斑から始まり得る。診断は皮疹の時間的変化、複数部位の皮膚生検、、、病期評価を統合し、治療と予後は病期ごとに考える。

分類と病態

病型 主な特徴
(MF) 最も多い。、、へ進展し得るが、は長く皮膚に限局することが多い
(SS) 、全身性リンパ節腫脹、末梢血中の腫瘍性T細胞を特徴とする白血病性
原発性皮膚陽性 、原発性皮膚などを含む
まれな病型 など。病型により臨床像と予後が大きく異なる

腫瘍細胞は多くがをもつ成熟CD4陽性である。病期が進むと、皮膚内の免疫環境、腫瘍細胞のクローン拡大、リンパ節・血液・内臓への進展が相互に関与する。

菌状息肉症の臨床像

段階 皮膚所見 学習上の要点
境界不明瞭な紅斑、鱗屑、、萎縮 衣服で隠れる体幹・・大腿近位に多く、湿疹や乾癬として長年経過することがある
浸潤を触れる隆起性紅斑・局面 病変内で形・色・厚さが不均一になりやすい
結節・腫瘤、 とのリスクが高まる
体表の大部分を占める・鱗屑 SS、進行MF、、湿疹、乾癬などを鑑別する

画像でみるべき所見は、同一患者に異なる段階の病変が混在すること、色素沈着・、、萎縮が混じる、、腫瘤のである。SSでは強い掻痒、、脱毛、を伴うことがある。

診断

病理と免疫学的検査

  • を示すを確認する
  • が表皮内にするは特徴的だが、常にみられるわけではない
  • 免疫染色ではCD3、CD4、CD8、などを評価し、CD7など汎T細胞マーカーの欠失を手掛かりにする
  • (T-cell receptor:TCR)でクローン性を調べるが、クローン性だけで悪性とは断定しない
  • 初回生検が非特異的でも臨床的疑いが強ければ、治療の影響が少ない複数病変からする

病期評価

TNMB分類で皮膚(T)、リンパ節(N)、内臓(M)、末梢血(B)を評価する。、リンパ節診察、血算・、、を基本とし、病期に応じて画像検査とリンパ節生検を追加する。

末梢血病変(B分類)はB0(軽微)・B1(中等度だがB2未満)・B2(高度)の3段階で評価する。

⚠️ 2007年版のB2は「腫瘍細胞の量」と「クローン」の両方を要求する。 絶対数1,000/μL以上(あるいは代替基準として10以上、CD4+CD7−細胞40%以上、CD4+CD26−細胞30%以上のいずれか)を満たし、かつT細胞クローンが陽性であることがB2の条件である1。クローンが陽性なだけではB2にならない——クローン性は良性の炎症性皮膚疾患でも検出されうるためで、「クローン性だけで悪性とは断定しない」という診断の原則と同じ理由による。逆に細胞数が1,000/μL以上あってもクローンが陰性ならB1である(原著本文はB1を「が5%超で、絶対数1,000/μL未満かクローン陰性か、その両方」と言い換えている)1。

💡 クローン性の添字そのものは2007年版から存在する。 原著のTNMB表はN1・N2・B0・B1に小文字の添字a(クローン陰性)/b(クローン陽性)を置いており、クローン性はこの版でも既に「区分に添える情報」として扱われていた。N3は clone positive or negative と明記して添字を置かず、B2はクローン陽性が定義に組み込まれているため添字を持たない1。

⚠️ この百分率は、2007年版では「表の基準」ではなく本文の提案である。 原著の表の脚注は代替基準を「10以上を伴うCD4陽性またはCD3陽性細胞の増加」「CD7またはCD26の欠失を含む異常なを示すCD4陽性細胞の増加」と数値なしで書き、百分率は本文側に「≥ 40% CD4+/CD7− または ≥ 30% CD4+/CD26− が提案されている(has been suggested)」という形で現れる1。

⚠️ CD7が40%、CD26が30%という対応を取り違えない。 2つの数字とマーカーの組み合わせは資料によって入れ替えて転記されていることがあるが、原著本文と2011年のISCL/USCLC/EORTCの表は同じ対応(CD7→40%、CD26→30%)である。なお不等号の書き方は資料で割れており、原著との表は「≥」、NCI PDQ の病期表は「超」と書いている。

は、体表の80%以上を占めるに加えてこのB2基準を満たす病型として診断し、の期(B0/B1にとどまる例)と区別する。

💡 2022年にISCL・USCLC・EORTCがこのの更新を提案している。 B分類は「リンパ球に占める割合」ではなく、で数えたCD4+CD26−細胞またはCD4+CD7−細胞の絶対数で定義し直され、B0は250/μL未満、B2は1,000/μL以上(または他の異常リンパ球集団)、B1はそのいずれにも当てはまらないものとされた2。

⚠️ この改訂で、B2の定義からクローン陽性という要件そのものが外れた。 添字による併記は2007年版にも既にあったが(N1・N2・B0・B1の小文字a/b)、2022年版はこれをN3とB2まで広げ、大文字A(クローン陰性または)/B(皮膚と同一のクローンが陽性)で統一した。その結果、病期表にはB2A(だが、クローンが陰性または)という区分が独立して載っている21。同文書は「(B2)の患者では皮膚と同一のクローンが血液にあることが期待される」と述べるにとどめ、高齢になるほど皮膚と一致しないT細胞クローンが末梢血に検出されやすく臨床的意義が不明であることを理由に挙げている。同じA/Bの添字はリンパ節(N)にも付き、はM1a(骨髄のみ)とM1b(骨髄以外)に分けられた。

⚠️ 2022年版は測り方そのものも変えている。 では絶対数でB分類を決めるべきであり、も異常リンパ球分画の百分率も、それ単独ではB分類の定義に用いてはならない2。リンパ節の「異常」もに合わせ、画像で確認した長径(LDi)1.5 cm超と定義し直された。2007年版の代替基準(10以上など)をそのまま2022年版の枠で使わない。

⚠️ 2007年版が誤りになったわけではない。 2022年版は各種のLugano基準と足並みを揃え、の設計・評価を標準化する目的で提案された更新である。資料によって2007年版と2022年版のどちらに基づくかが異なるので、B分類の数値を比較する前に、どの版の記載かを確かめる。

flowchart TD
    A["慢性・治療抵抗性で形態が不均一な皮疹"] --> B["複数部位の皮膚生検"]
    B --> C["組織像・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Immunophenotype'>免疫表現型</span>・TCRクローン性を統合"]
    C --> D["全身皮膚・リンパ節・末梢血を評価"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='TNMB stage'>TNMB病期</span>を決定"]
    E --> F["早期は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='skin-directed therapy'>皮膚指向性治療</span>"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='progressive stage'>進行期</span>は全身治療を組み合わせる"]

治療

状況 主な選択肢
早期・皮膚限局 、外用化学療法、、併用()、限局性放射線療法
広範な皮膚病変 、全身皮膚照射などを病型・施設経験に応じて選択
進行・再発 、、、、陽性例のなどを病型と既治療に応じて選択
SS・血液病変 を含む全身治療を組み合わせる
高リスク若年例など 選択例ではを検討

に伴う黄色ブドウ球菌感染、掻痒、睡眠障害にも介入する。治療名を一律の順番で覚えるのではなく、病型、、症状、などの標的、併存症を基に専門チームで個別化する。

予後

「平均生存期間5年」のような一括した説明は不正確である。に限局する早期MFは緩徐で、一般人口に近い生存が期待できる例も多い。一方、腫瘤、、リンパ節・内臓・高度血液病変、形質転換は予後不良因子となる。

まとめ

  • 長引くで、分布・形態が不均一、萎縮や浸潤を伴うときはMFを考える
  • 診断は一度の生検だけでなく、臨床経過、反復生検、、クローン性を統合する
  • MFは、、へ進展し得るが、予後は病期依存である
  • SSでは、リンパ節腫脹、末梢血病変を確認する
  • ⚠️ B2に腫瘍細胞の数とクローン陽性の両方を要求するのは2007年版であり、2022年版はB2を絶対数だけで定義してクローン性は添字A/Bで併記する(クローン陰性のB2Aが成り立つ)。どちらの版の話かを言わずに「B2」と書かない
  • 早期は、は全身治療を組み合わせる

出典

  1. 1.Revisions to the staging and classification of mycosis fungoides and Sézary syndrome: a proposal of the International Society for Cutaneous Lymphomas (ISCL) and the cutaneous lymphoma task force of the European Organization of Research and Treatment of Cancer (EORTC)(International Society for Cutaneous Lymphomas / EORTC Cutaneous Lymphoma Task Force・2007)2026-09-17にWayback Machine経由で原著全文(bloodjournal.orgの .long 保存版と、表を含む ashpublications.org の保存ページ)を取得して確認した。Table 4の逐語で、B0は Absence of significant blood involvement, ≤ 5% of peripheral blood lymphocytes are atypical (Sézary) cells、B1は Low blood tumor burden, > 5% ... but does not meet the criteria of B2、B2は High blood tumor burden, ≥ 1000/μL Sézary cells with positive clone。B2はクローン陽性を定義そのものに含むため添字を持たないが、N1・N2・B0・B1には既にクローン陰性(a)/陽性(b)の小文字添字が置かれており、N3は clone positive or negative と明記される。代替基準について表の脚注は百分率を示さず、(1) expanded CD4+ or CD3+ cells with CD4/CD8 ratio of 10 or more、(2) expanded CD4+ cells with abnormal immunophenotype including loss of CD7 or CD26 と書くだけで、百分率は本文側に (≥ 40% CD4+/CD7− or ≥ 30% CD4+/CD26− has been suggested) と提案形で現れる。本文はB1を more than 5% Sézary cells but either less than 1.0 K/μL absolute Sézary cells or absence of a clonal rearrangement of the TCR or both と言い換えている。なおNCI PDQが同じ対応づけを再掲する表では不等号が「超」になっている。閲覧 2026-09-17
  2. 2.Primary cutaneous lymphoma: recommendations for clinical trial design and staging update from the ISCL, USCLC, and EORTC(International Society for Cutaneous Lymphomas / United States Cutaneous Lymphoma Consortium / EORTC Cutaneous Lymphoma Task Force・2022)PMC9353153の全文を取得して確認した。2022年の病期分類更新では、菌状息肉症/セザリー症候群のB分類がリンパ球に占める割合ではなくフローサイトメトリーで数えたCD4+CD26-細胞またはCD4+CD7-細胞の絶対数で定義し直され、逐語で「B2 = ≥1000/μL of CD4+/CD26− or CD4+/CD7− cells or other aberrant population of lymphocytes identified by flow cytometry」、B0は250/μL未満、B1はそのいずれにも当てはまらないものとされた。病期表のB2行は「B2A = Clone negative or equivocal / High blood tumor burden」「B2B = Clone positive and identical to skin」であり、B2の定義からクローン陽性という要件そのものが外れて、クローン性はB・Nの各区分に添字A(クローン陰性または判定保留)/B(皮膚と同一のクローンが陽性)を付けて併記する形になった。同文書は「It is expected that patients with high blood tumor burden (B2) will have a clone in the blood that is identical to that in the skin」と述べるにとどめ、高齢になるほど皮膚と一致しないT細胞クローンが検出されやすく臨床的意義が不明であることを理由に挙げる。測り方については逐語で「Neither CD4/CD8 ratio or the percentage of abnormal lymphocyte subsets should be used alone to define B classification」、リンパ節については「Abnormal LNs are those now > 1.5 cm LDi according to the Lugano classification and confirmed by imaging」。内臓病変はM1a(骨髄のみ)とM1b(骨髄以外)に分けられた。2007年版を無効にする改訂ではなく、臨床試験の設計・評価を標準化するための更新提案である閲覧 2026-09-05