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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

深在性エリテマトーデス

Lupus erythematosus profundus

別名
ループス脂肪織炎lupus erythematosus panniculitisLEP
臓器系
皮膚免疫・膠原病
科目
DermatologyInternal Medicine
トピック
皮膚科 3-04:皮膚エリテマトーデスと全身性エリテマトーデス皮膚科 3-14:皮膚T細胞リンパ腫内科学 R-01:SLEの臨床像
鑑別疾患
サルコイドーシス原発性皮膚γδT細胞リンパ腫皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫
関連疾患
円板状エリテマトーデス全身性エリテマトーデス
治療薬
ヒドロキシクロロキンプレドニゾロンミコフェノール酸モフェチルメトトレキサート
症状
局面皮下結節皮膚潰瘍
検査値
抗核抗体抗dsDNA抗体

🧠 全体像:エリテマトーデス(ループス、LEP)は、の一亜型で、真皮ではなくを主座とする慢性の炎症性疾患である1。⚠️ (SLE)を伴わないことのほうがむしろ多い——あるでは46.5%がLEP診断時にSLEもも伴っていなかった2。⭐ 臨床・組織像ともに、より侵襲性の高い(SPTCL)と酷似しうるため、両者の鑑別が本症を学ぶ核心になる。

疫学とSLEとの関連

女性優位(約5:1、平均年齢38.8歳)の疾患で、SLEの既往を伴うのは24.1%にとどまる(イラン54例の)1。米国の43例の検討でも、診断時にSLE 18.6%・16.3%・両者合併18.6%で、残り46.5%はいずれの全身型・他の皮膚型エリテマトーデスも伴わなかった2。

💡 「エリテマトーデス」という名前から、SLEに必ず先行して起こる皮膚病変だと思い込まない。 小児発症(27.9%)も一定数を占め、発症年齢中央値は23.5歳(範囲6〜61歳)である2。

臨床像

  • 好発部位:近位上肢・頭部・体幹・近位下肢に多い1。米国の検討でも上肢近位部・顔面・下肢近位部が多かった2。
  • 皮疹の性状:紅斑を伴う局面(61.1%)・結節(37.0%)が主体1。
  • ⭐ 深部の炎症が治まったあとに、脂肪組織が萎縮して陥凹する(20.4〜58.1%)12。⚠️ を伴う症例ほど診断までの期間が有意に長い(32.5か月対5.6か月、p<0.001)——の局面・結節が単なるとして見過ごされ、萎縮という不可逆的な変化が出て初めて本症が疑われる経過を反映していると考えられる1。
  • 潰瘍化も一部にみられる(11.0〜13.0%)12。
  • ⚠️ 診断の遅れが常態化している。 診断までの平均遅延は22〜28か月に及ぶ12。

組織像

flowchart TD
    A["皮下結節・局面の生検<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subcutaneous fat (subcutis)'>皮下脂肪織</span>まで届く十分量が必要)"] --> B["小葉性〜中隔性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='panniculitis'>脂肪織炎</span>"]
    B --> C{"リンパ球の性質は?"}
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pleomorphism'>多形性</span>に乏しい<br>CD4優位・CD123陽性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dendritic cell'>樹状細胞</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='germinal center'>胚中心</span>を伴う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphoid follicles'>リンパ濾胞</span>"| D["ループス<span class='jp-term jp-term-diagram' title='panniculitis'>脂肪織炎</span>を支持"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atypical lymphocyte'>異型リンパ球</span>がCD8優位で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='adipocyte'>脂肪細胞</span>を取り囲みレース状に配列<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Ki-67 proliferation index'>Ki-67</span>高値・単クローン性TCR再構成"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma'>皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫</span>を疑う"]

主としてパターンを示し、の小葉性・中隔性パターンもとりうる3。イランの54例では63.0%・中隔性51.9%・硝子様38.9%・を伴う形成11.1%がみられ、浸潤細胞は形質細胞(46.3%)が主体だった1。真皮側ではリンパ球性血管炎72.2%・50.0%・深部59.3%がみられ、に一致する組織所見が68.5%に併存していた1。ではにIgM・のがみられる3。

SPTCLとの鑑別

⚠️ 臨床像だけでは区別できず、が鑑別の柱になる。

所見 ループス(LEP) SPTCL
T細胞表現型 CD4陽性、CD8は陰性〜弱陽性4 CD4陰性・CD8陽性の細胞傷害性αβ表現型4
リンパ球の 陰性〜弱陽性4 陽性で異型分裂像も目立つ4
散在性4 高値(症例報告ではおよそ75%)4
CD123() 陽性を形成4 陰性〜弱陽性4
を伴う 陽性〜弱陽性4 陰性〜弱陽性4
の配列パターン 特徴的なリム状配列を欠く ・がを取り囲みレース状・状のパターンを作る3
TCR 単クローン性1

⭐ 両疾患が同一患者に併存した症例も報告されており、判定に迷うときは複数回の生検・・検査を重ねる。 ある症例報告では、1人の患者から採取した検体の一部がLEPの所見、別の部分がSPTCLの所見を示した4。

その他、の皮下病変(皮下)も鑑別に挙がる。

血清学的検査

陽性は24.1%(うち大半がSLE既往例)、抗dsDNA抗体陽性は16.7%(うち大半がSLE既往例)にとどまり、血清学的検査が陰性でもLEPは否定できない1。

治療

経過

⚠️ 治療反応は完全ではない。 イランの検討では改善85.2%・不変11.1%・悪化3.7%1、米国の検討では83.7%・はわずか2.7%にとどまった2。⭐ による陥凹は不可逆的なとして残りやすく、これがを「炎症の鎮静化」に置き「陥凹の消失」には置かない理由になる。

まとめ

  • エリテマトーデス(LEP)は、の一亜型でを主座とする。SLEを伴わない例のほうが多い(診断時にSLE・DLEいずれも伴わないのが46.5%)。
  • 好発部位は近位上肢・頭部・体幹。局面・結節として始まり、⭐ 炎症が治まったあとにによる陥凹が残る——この陥凹の有無が診断の遅れと相関する。
  • 組織は小葉性〜中隔性で、を伴う・CD4優位のT細胞・CD123陽性がLEPを支持する。
  • ⚠️ (SPTCL)との鑑別が最重要——SPTCLはCD8優位・・高い・単クローン性TCR再構成で、を取り囲むレース状配列を示す。同一患者に併存しうる。
  • 治療はを軸に、ステロイド・・メトトレキサートを組み合わせるが実地では標準的。は少なく、診断・治療とも遅れがちである。

出典

  1. 1.Clinicopathological Features of Lupus Erythematosus Panniculitis (LEP): A Retrospective Analysis of 54 Cases(Health Science Reports・2026)イラン・テヘランの単一施設で生検確診されたループス脂肪織炎(LEP)54例の後方視的研究で、女性45例(83.3%)・男性9例(16.7%)と女性優位(比率約5:1)で平均年齢38.8±14.7歳であること、全身性エリテマトーデス(SLE)の既往があったのは13例(24.1%)で性別との有意な関連は無かったこと(p=0.428)、皮疹の形態は局面が61.1%・結節が37.0%で最多であったこと、好発部位が近位上肢40.7%・頭部29.6%・体幹29.6%・近位下肢22.2%であったこと、紅斑79.6%・皮下結節または板状硬化72.2%・脂肪萎縮20.4%・潰瘍13.0%がみられ、脂肪萎縮を伴う群は伴わない群より診断までの期間が有意に長かったこと(32.5か月対5.6か月、p<0.001)、組織所見で小葉性脂肪織炎63.0%・中隔性脂肪織炎51.9%・硝子様脂肪壊死38.9%・胚中心を伴うリンパ濾胞形成11.1%がみられ細胞浸潤は形質細胞46.3%・組織球25.9%・好酸球11.1%・好中球1.9%からなること、真皮では深部リンパ球浸潤59.3%・ムチン沈着50.0%・線維化31.5%・リンパ球性血管炎72.2%がみられたこと、円板状エリテマトーデス(DLE)に一致する組織所見が全体で68.5%(SLE合併例61.5%・非合併例70.7%)にみられたこと、抗核抗体陽性24.1%(うち11例がSLE既往)・抗dsDNA抗体陽性16.7%(うち8例がSLE既往)・直接免疫蛍光陽性72.2%であったこと、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫(SPTCL)との鑑別についてSPTCL特有所見が脂肪細胞周囲の異型リンパ球・T細胞受容体遺伝子再構成の単クローン性・異型細胞の存在であり、LEPを支持する所見が空胞性界面皮膚炎・胚中心を伴うリンパ濾胞であるとしていること、治療はヒドロキシクロロキン96.2%・経口副腎皮質ステロイド61.1%・ミコフェノール酸モフェチル46.2%に用いられ改善85.2%・不変11.1%・悪化3.7%で、ヒドロキシクロロキン+ステロイド+ミコフェノール酸の3剤併用群で改善率90.4%と最良の傾向を示したが有意差はなかったこと(p>0.05)、診断までの平均遅延が22.1±33.3か月であったことを、PMC13401681の本文(HTML)で確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Disease course, comorbidities, and treatment outcomes of lupus erythematosus panniculitis in adults and children: A retrospective review(JAAD International・2026)米国の単一施設でLEPと診断された43例(生検確診34例79.1%・臨床診断のみ7例16.3%)の後方視的検討で、女性38例(88.4%)・男性5例(11.6%)、発症年齢中央値23.5歳(範囲6〜61歳)、小児発症12例(27.9%)・成人発症31例(72.1%)であったこと、LEP診断時にSLEを合併していたのが18.6%、円板状エリテマトーデスを合併していたのが16.3%、両者を合併していたのが18.6%で、**46.5%はいずれの他病型のエリテマトーデスも伴っていなかった**こと、主な病変部位が上肢近位部48.8%・顔面34.9%・下肢近位部23.3%であったこと、脂肪萎縮58.1%・色素沈着51.2%・潰瘍11.6%を合併症として認めたこと、治療は副腎皮質ステロイド48.8%・ヒドロキシクロロキン97.7%・ミコフェノール酸モフェチル27.9%・メトトレキサート23.3%に用いられ全患者平均2.58±2.07剤を要したこと、診断までの平均遅延が27.8か月であったこと、治療反応が部分奏効83.7%・完全奏効2.7%にとどまったことを、PMC13099514の本文(HTML)で確認した。閲覧 2026-09-07
  3. 3.Dermatopathology Evaluation of Panniculitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)ループス脂肪織炎の組織像が主として小葉性脂肪織炎パターンを示すが混合性の小葉性・中隔性パターンもみられること、特徴的所見として脂肪壊死を伴わない胚中心を有するリンパ濾胞があること、蛍光抗体法で表皮真皮境界部にIgMと補体C3の線状沈着がみられること、一方SPTCLの組織像は小葉性脂肪織炎パターンを示すが多形性・腫瘍性のリンパ球と組織球が脂肪細胞を取り囲みレース状・網目状のパターンを形成する点で異なることを、Europe PMCのbookXML(NBK606121)で確認した。閲覧 2026-09-07
  4. 4.The coexistence of lupus erythematosus panniculitis and subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma in the same patient(JAAD Case Reports・2018)LEPとSPTCLが同一患者に併存した症例報告で、免疫組織化学的な鑑別点として、LEPはCD4陽性・CD8陰性〜弱陽性である一方SPTCLはCD4陰性・CD8陽性の細胞構成であること、異型リンパ球はLEPで陰性〜弱陽性なのに対しSPTCLでは陽性で異型分裂像も容易に認められたこと、Ki-67標識率がLEPでは散在性の陽性にとどまるのに対し本症例のSPTCL部分ではおよそ75%と高かったこと、形質細胞様樹状細胞のマーカーであるCD123はLEPで陽性クラスターを形成するのに対しSPTCLでは陰性〜弱陽性であったこと、リンパ濾胞形成はLEPで陽性〜弱陽性、SPTCLで陰性〜弱陽性であったこと、本症例のT細胞受容体遺伝子再構成検査ではT細胞のモノクローナリティは同定されなかったことを、PMC5993551の本文(HTML)で確認した。閲覧 2026-09-07