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Drug Atlas · B35 Photochemotherapy / 光化学療法

メトキサレン

methoxsalen

分類
Psoralens / ソラレン系光増感薬
商品名(日本)
オクソラレン
科目
Dermatology
トピック
3-14: Cutaneous T-cell Lymphoma
承認適応
皮膚T細胞リンパ腫尋常性乾癬尋常性白斑
禁忌疾患
色素性乾皮症ポルフィリン症全身性エリテマトーデス悪性黒色腫皮膚有棘細胞癌
副作用
光線過敏悪心頭痛掻痒

🧠 全体像:メトキサレンは、光を当てなければただの分子という点が理解の出発点になる薬である。系の光薬そのものには目立ったがなく、長波長紫外線(、320〜400nm)を照射して初めてに共有結合し細胞増殖を止める。この「光依存性」ゆえに、同じ成分・同じ(Psoralen + )という原理でも、剤形と国によってがまったく違う——米国の経口カプセル(8-MOP)は乾癬専用、日本の経口錠(オク)は専用、米国の注射液(UVADEX)は(ECP)によるの専用であり、3剤形が3つの別の病気に使われる123。

位置づけ:ソラレン系の光増感薬

Ammi majus(アミミグサ)などの植物に含まれる天然由来のフロ化合物であるの一つ。単独ではを持たず、照射と組み合わせて初めてに働く「」薬の代表であり、この併用療法そのものがPUVA(Psoralen + )と呼ばれる。

機序:DNAへの共有結合とT細胞のアポトーシス

照射により光活性化されたメトキサレンは、の(主に)と共有結合し、単官能性(モノアダクト)を形成したのち、二本鎖間の架橋(クロスリンク)を作る二官能性へと進む。この光化学的な損傷が複製・転写を阻害し、細胞周期をG1/S期で停止させ、最終的にアポトーシスを誘導する1。

💡 で効くのは、悪性T細胞がこの損傷に弱いからである。 リンパ球・は、正常な表皮のよりもアポトーシスに対する感受性が高いとされ、これがや乾癬(活発に増殖する表皮細胞・浸潤リンパ球を標的とする)で治療域になる根拠である。

体外循環光化学療法(ECP)は経口PUVAと仕組みが違う

UVADEX(メトキサレン注射液)を用いるECPは、全身にを浴びせる経口とは手順が異なる。採血した血液をして赤血球とバフィーコート(白血球層)に分離し、赤血球は患者へ戻したうえで、バフィーコートにUVADEXを混合して照射し、再び体内へ戻す3。

⭐ ECPで曝露される悪性細胞は10%未満なのに、なぜ効くのか。 直接の細胞傷害だけでなく、照射で損傷したリンパ球がアポトーシスへ向かう過程で腫瘍クローンに対する免疫応答を惹起するという免疫調節的な機序が想定されている3。がの約200分の1にとどまることも、後述する発癌リスクの違いに関わる。

薬物動態

経口カプセル(軟カプセル剤、8-MOP)は投与後0.5〜4時間(平均1.8時間)で最大血中濃度に達する。のピーク自体はやや早く、軟カプセル剤で1.5〜2.1時間(硬カプセル剤の旧製剤は3.9〜4.25時間)とされ、は最大8時間持続しうる。投与量の約95%が代謝物として24時間以内にされる1。日本の添付文書は、内服後6〜8時間は紫外線感受性が持続するとし、2時間後に日光浴または人工紫外線の照射を行うという服用〜照射のタイミングを規定している2。

適応:剤形・国でまったく違う

⚠️ 「=・乾癬・すべてに適応」という理解は不正確。 一次資料で確認できた各国・各剤形の承認適応は次のとおりで、互いに重ならない。

剤形・国 備考
経口カプセル(米国、8-MOP) 他の治療に反応しない重症・難治性・機能障害性の乾癬のみ Boxed Warningでの訓練を受けたに限定1
経口錠(日本、オク) のみ 乾癬・への適応は無い2
注射液(米国、UVADEX) 抵抗性の皮膚病変への(ECP)による 経口ではなくECP専用の製剤3

つまり、の臨床で広く使われる経口(内服+照射)は、少なくとも確認できた米国・日本の添付文書上はを適応症として明記した経口製剤の承認を持たない——本症に対する承認されたメトキサレン製剤はECP用の注射液(UVADEX)である点を区別する。

禁忌・注意

副作用

頻度・種類 内容
高頻度 悪心(約10%)、掻痒(約10%)、投与24〜48時間後に予測される紅斑
注意 抑うつ、頭痛、、、、用量超過時の重度日光/熱傷1
長期・重大 ・悪性黒色腫のリスク上昇、(眼保護で回避可)、(日本、長期投与時は定期検査)12

まとめ

  • 系の光薬で、単独では作用せず照射と組み合わせて初めてに共有結合し(モノアダクト→クロスリンク)、G1/S停止とアポトーシスを誘導する(=)。
  • は剤形・国で別々:米国経口カプセル(8-MOP)=乾癬のみ、日本経口錠(オク)=のみ、米国注射液(UVADEX)=ECPによるののみ。3つとも重ならない。
  • の臨床で用いられる経口は、少なくとも確認できた添付文書上は本症を適応症として明記していない点に注意する。
  • ECPはではなく、採取した白血球層にUVADEXを混合して照射し戻す手技で、曝露される悪性細胞は10%未満でも免疫学的なが期待される。
  • 長期使用で・悪性黒色腫のリスクが明確に上昇する(日米とも)。・既往・は禁忌。眼保護を怠るとのリスクがある。

出典

  1. 1.8-MOP (methoxsalen) capsule, liquid filled — full prescribing information(米国FDA(DailyMed収載の添付文書)・2026)米国のメトキサレンカプセル(8-MOP)の効能・効果が「他の治療法に十分反応しない重症・難治性・機能障害性の乾癬の症状コントロール」のみであること、Boxed Warningで光線化学療法の経験・訓練を持つ医師のみが使用すべきこと、患者に眼障害・皮膚老化・皮膚癌/悪性黒色腫のリスクを開示すべきことを求めていること、禁忌が特異体質性ソラレン反応・光線過敏性疾患(ループス、ポルフィリン症、色素性乾皮症)の既往・悪性黒色腫の既往・浸潤性有棘細胞癌・無水晶体眼であること、作用機序として光活性化後にDNAと共有結合し単官能性・二官能性付加体を形成して細胞増殖を低下させること、経口投与後(軟カプセル剤)0.5〜4時間(平均1.8時間)で最大血中濃度に達し、光感受性のピークは軟カプセル剤で1.5〜2.1時間(硬カプセル剤の旧製剤は3.9〜4.25時間)とされ光線過敏が最大8時間持続しうること、投与量の約95%が代謝物として24時間以内に尿中排泄されること、長期使用で有棘細胞癌のリスクが高用量群で低用量群の約12.8倍、悪性黒色腫の相対危険度が2.3(250回超または15年超の治療でリスク上昇)であったこと、白内障のリスクは適切な遮光眼鏡の使用で回避できるがUVA曝露下でメトキサレンが水晶体蛋白に結合しうること、悪心(10%)・掻痒(約10%)・紅斑(24〜48時間後に予測される)・抑うつ・頭痛・色素脱失・水疱形成・単純ヘルペス再燃が副作用として挙がることを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.オクソラレン錠10mg 添付文書(2023年7月改訂・第1版)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)電子添文・2023)日本のオクソラレン錠10mg(メトキサレン)の効能・効果が「尋常性白斑」のみであること、用法・用量が成人1日2錠(メトキサレン20mg)・7〜12歳1日1〜2錠・6歳以下1日1錠を経口投与し「経口投与2時間後に日光浴あるいは人工紫外線の照射を行う」こと、禁忌が皮膚癌またはその既往歴のある患者・ポルフィリン症/紅斑性狼瘡/色素性乾皮症/多形性日光皮膚炎等の光線過敏症を伴う疾患のある患者・肝疾患のある患者であること、警告に「PUVA療法により皮膚癌が発生したとの報告がある」とあること、重要な基本的注意で内服後6〜8時間は紫外線感受性が持続すること・眼障害予防と正常皮膚保護が必須であること・長期にわたり漫然と治療しないよう求めていること、長期投与時は月1回程度の肝機能検査が推奨されていることを確認した閲覧 2026-09-05
  3. 3.UVADEX (methoxsalen) injection, solution — full prescribing information(米国FDA(DailyMed収載の添付文書)・2024)UVADEX(メトキサレン注射液)の効能・効果が「他の治療法に反応しない皮膚T細胞リンパ腫の皮膚病変に対する体外循環光化学療法(ECP)による緩和的治療」であること、ECPの手順として採血後に遠心分離で赤血球とバフィーコート(白血球層)を分離し赤血球は患者に戻したうえでバフィーコートにUVADEXを混合しUVA(320〜400nm)を照射してから再注入すること、悪性細胞の10%未満しか曝露されないにもかかわらず腫瘍細胞に対する免疫反応を惹起しうるとされること、禁忌がメトキサレン/ソラレン過敏症・光線過敏性疾患(ループス、ポルフィリン症、色素性乾皮症、白皮症)・無水晶体眼であること、経口メトキサレンとUVA曝露の組み合わせが発癌性を示す一方でUVADEXの曝露用量は経口の約200分の1でありリスクを低下させうるとされること、UVA曝露中は白内障リスクがあること、承認外使用で血栓塞栓事象の報告があることを確認した閲覧 2026-09-05