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Drug Atlas · B35 Targeted cancer therapy / 分子標的薬

アバプリチニブ

avapritinib

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
商品名(EU)
Ayvakyt
科目
PharmacologyHistopathology
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)H2-030A: GASTROENTEROLOGY 1 HISTOLOGY SLIDES
承認適応
消化管間質腫瘍(GIST)
副作用
頭蓋内出血錯乱末梢浮腫眼瞼浮腫悪心下痢倦怠感
監視検査値
血小板数
影響検査値
ヘモグロビン
相互作用
イトラコナゾールリファンピシン

🧠 全体像は、が束になっても崩せない一点——PDGFRA D842V変異——だけを狙って崩す薬である。ふつうのTKIはのキナーゼに“くさびを打つ”だが、D842V変異はキナーゼを最初から活性型に固定してしまい、そのくさびの刺さる隙間ごと消えている。は逆に活性型構造そのものに結合する型Ⅰ阻害薬として設計され、同じ理屈でKIT D816V変異を持つ進行にも効く。ただし「D842Vにだけ鋭く効く薬」であって、GIST全般ので強いわけではない。

薬効群の中での位置づけ

GISTでの 一次 二次 四次 D842V変異例では一次。それ以外は未確立
結合様式 構造=型Ⅱ 構造=型Ⅱ 構造を安定化=型Ⅱ 活性型構造=型Ⅰ
D842V変異GISTへの効果 乏しい 乏しい 著効・唯一の標準治療

D842V変異への感受性は「新しい薬ほど強い」という世代交代の話ではない。 既存のGIST治療薬はどれもに結合するという共通点を持ち、活性型に固定された変異キナーゼには最初から歯が立たない。だけがこの縛りの外にいる。

機序

flowchart TD
    A["PDGFRA D842V変異<br>(または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='KIT D816V mutation'>KIT D816V変異</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='activation loop'>活性化ループ</span>が活性型のDFG-in構造に固定"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='type II inhibitor'>型Ⅱ阻害薬</span>が結合する<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='inactive form'>不活性型</span>のDFG-out構造の隙間が消失"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='imatinib'>イマチニブ</span>など<span class='jp-term jp-term-diagram' title='type II inhibitor'>型Ⅱ阻害薬</span>に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary resistance'>一次耐性</span>"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='avapritinib'>アバプリチニブ</span>=活性型のDFG-in構造に<br>選択的に結合する型Ⅰ阻害薬"] --> F["活性型に固定された変異キナーゼにも結合可能"]
    F --> G["恒常的なキナーゼ活性を直接阻害"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='downstream signal'>下流シグナル</span>遮断・腫瘍細胞の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apoptosis induction'>アポトーシス誘導</span>"]

💡 「型Ⅰ」「型Ⅱ」の違いがそのまま臨床的な使い分けを決める。 など)はキナーゼをに固定するように結合するため、活性型に“固まって”いるD842V・D816V変異には近づけない。は活性型のポケットだけで結合が完結するよう設計されており、この一点が「に効かない変異にだけ効く」という性質を説明する1

薬物動態

項目 値・特徴
代謝 主にCYP3A4で代謝される
半減期 約15〜18時間。1日1回投与が成立する
排泄 主に糞中

⚠️ 強いCYP3A阻害薬・との併用は避ける。 のような阻害薬は血中濃度を押し上げてなどのを高め、リファンピシンのようなは血中濃度を下げて効果不足を招く。中等度阻害薬の併用がやむを得ない場合はGISTで1日100 mg、進行で1日50 mgへの減量が必要になる。

適応

疾患 位置づけ
PDGFRAエクソン18変異(D842Vを含む)を有する・転移性 第一選択かつ唯一確立した標準治療88%2
進行(侵攻型・を伴う型・ KIT D816V陽性例が対象。1日200 mgから開始3
難治性の 症状コントロールが目的。1日25 mgと低用量で用いる3

⚠️ D842V以外(KIT)のGISTの治療以降では、へのを示せなかった4.2か月 vs 5.6か月)4。「GIST全般の薬」ではなく、D842V変異という特定の分子型に対する薬という位置づけを外さない。

用法・用量

GIST:1日1回300 mg、空腹時経口。進行:1日1回200 mgから開始。:1日1回25 mgとGISTの1/12程度に抑える。この用量差は効果の強さではなく認知毒性を許容範囲に収めるためである。実際の用量・は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ として現れ致死例もある。動脈瘤・の既往、抗凝固薬併用、低下などを危険因子として確認し、頭痛・・意識変容が出たら直ちに評価、確認されればグレードを問わず永続中止する。血小板5万/µL未満で投与非推奨という明確な閾値が定められているのは進行で、GISTの用法用量にこの閾値規定はなく、血小板減少はあくまで危険因子の一つとして注意する3
  • ⚠️ 認知への影響:記憶障害・に出る。GIST用量(300 mg)で頻度が高く、で25 mgに抑えるのはこの毒性ゆえである
  • :妊娠可能な患者には避妊を指導する

副作用

頻度 内容
高頻度 (GISTで7割超)、悪心下痢ヘモグロビン低下(貧血)、毛髪の
注意 低下
重篤・まれ 、重度の・脳症

まとめ

  • 活性型のDFG-in構造に結合する型Ⅰ阻害薬で、に結合する)とは結合様式が根本的に異なり、活性型に固定されたPDGFRA D842V・KIT D816V変異にのみ選択的に著効する。
  • 適応はPDGFRAエクソン18変異GIST(第一選択)、進行、難治性のの3系統。
  • ⚠️ D842V以外のKITGISTのではへのを示せず、「GIST全般の薬」ではない。
  • ⚠️ が最重要の安全性上の懸念で、5万/µL未満では使わない。もあり、GISTの300 mgとの25 mgという用量差はこの毒性の許容範囲で決まる。
  • CYP3A4で代謝されるため、強い阻害薬・との併用は避ける。

出典

  1. 1.A precision therapy against cancers driven by KIT/PDGFRA mutations(Science Translational Medicine・2017)アバプリチニブ(BLU-285)が活性型(DFG-in)構造を選択的に標的とする型Ⅰ阻害薬として設計され、活性化ループ変異KIT D816V・PDGFRA D842Vを既存薬とは異なる結合様式で阻害することを示した基礎研究閲覧 2026-08-01
  2. 2.Avapritinib in advanced PDGFRA D842V-mutant gastrointestinal stromal tumour (NAVIGATOR): a multicentre, open-label, phase 1 trial(The Lancet Oncology・2020)PDGFRA D842V変異GISTに対しアバプリチニブが奏効率88%を示し、この分子型に対する承認の根拠となった第Ⅰ相試験閲覧 2026-08-01
  3. 3.Avapritinib Versus Regorafenib in Locally Advanced Unresectable or Metastatic GI Stromal Tumor: A Randomized, Open-Label Phase III Study(Journal of Clinical Oncology・2021)分子型を問わない後方治療GISTでは、アバプリチニブはレゴラフェニブに対し無増悪生存期間の優越性を示せなかった(4.2か月 vs 5.6か月、HR 1.25、P=.055)第Ⅲ相試験閲覧 2026-08-01
  4. 4.AYVAKIT (avapritinib) tablets, for oral use — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration・2024)頭蓋内出血の管理基準(血小板5万/µL未満で非推奨、発現時は永続中止)、GIST・進行系統性肥満細胞症・惰性型系統性肥満細胞症それぞれの用法用量、および強いCYP3A阻害薬・誘導薬との併用回避を規定している閲覧 2026-08-01