組織病理学

組織病理学 · H2-030A

消化管間質腫瘍総論

GASTROENTEROLOGY 1 HISTOLOGY SLIDES

薬剤
アバプリチニブ
疾患
Carney三徴消化管間質腫瘍粘膜下腫瘍

🧠 全体像:は消化管で最も代表的なで、またはその前駆細胞に関連する。良性・悪性へ単純二分せず、すべてに転移可能性があるものとして部位、腫瘍径、核分裂数、破裂を評価する。

発生と分布

項目 要点
主な部位 胃が最多(約60%)、次いで空腸・回腸(約30%)、十二指腸4-5%、直腸4%、結腸・虫垂1-2%、食道1%未満1
主な形態 、、混合型
代表的異常 KITまたはPDGFRA
その他 SDH欠損、NF1関連、BRAF・NTRK異常など
起源 系への分化
flowchart TD
    A["KIT・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet-derived growth factor receptor alpha (PDGFRA)'>PDGFRA</span>などの分子異常"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='receptor tyrosine kinase (RTK)'>受容体チロシンキナーゼ</span>シグナル活性化"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mesenchymal tumor'>間葉系腫瘍</span>細胞の増殖"]
    C --> D["胃・小腸などの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intramural'>壁内</span>腫瘤"]
    D --> E["出血・疼痛・閉塞・腫瘤"]
    D --> F["部位・径・核分裂数・破裂で再発リスク評価"]

診断とリスク

HE形態に加え、DOG1とを中心にを評価し、必要に応じて分子検査を行う。この2本立てにする理由は感度の差にある。 447例の比較で、DOG1.1抗体は425例中370例(87%)が陽性だったのに対しは428例中317例(74%)、CD34は254/430例(59%)にとどまった。とくに変異ではDOG1.1が29例中23例(79%)陽性なのに、は32例中3例(9%)しか染まらない)2。粘膜が保たれた腫瘤でも、増大するとして消化管出血、腹痛、悪心・嘔吐、閉塞を起こしうる。

リスク因子 一般的な方向性
腫瘍径 大きいほど再発リスクが上がる
核分裂数 多いほど高リスク
発生部位 同じ径・核分裂数なら胃外は高リスクになりやすい1
高い腹膜再発リスク

⭐ 「同じ数字でも胃と小腸で答えが違う」を具体的に持っておく。 胃では50 HPFあたり5個を超えると5 cm超の径がそろって高リスクになるのに対し、小腸は核分裂数によらず5 cmを超えれば少なくとも、50 HPFあたり5個を超えるがあればそれだけで高リスクになる。5 cm以下かつ5個以下(50 HPF)の小腸が低リスクである)1。したがってリスク表を暗記するときは、径と核分裂数の前に必ず部位を確定させる。

治療安全性

可能例は被膜損傷・を避けた完全切除が基本である。進行・再発例や高リスク術後では遺伝子型に応じたを用いる。は多くのKIT変異に有効だが、 D842V変異には通常無効であり、進行例ではを第一選択として検討する。D842V変異を対象とした第1相試験NAVIGATORでは、のが56例中49例(88%、95%CI 76-95。9%、79%)で、推奨用量は300 mg/日だった)3。SDH欠損・NF1関連にもの十分な効果を期待できないため、一律に投与しない。

HE形態は のHE染色、の解釈は の染色 を参照する。

まとめ

  • は単純な良性・悪性二分ではなく再発リスクを層別化する。
  • 陽性だけで確定せず、DOG1、形態、分子所見を統合する。
  • 分子型により感受性が異なる。

出典

  1. 1.Gastrointestinal stromal tumors: pathology and prognosis at different sites(Seminars in Diagnostic Pathology・2006)GISTの発生部位は胃60%、空腸・回腸30%、十二指腸4-5%、直腸4%、結腸・虫垂1-2%、食道1%未満で、Cajal細胞またはその前駆細胞由来とされる。予後は部位で異なり、小腸GISTは核分裂数によらず5 cmを超えれば少なくとも中等度の転移リスクを持ち、50 HPFあたり5個を超える核分裂があればすべて高リスクとなる。5 cm以下かつ核分裂5個以下(50 HPF)の小腸GISTは低リスクである。胃GISTは紡錘形4種・類上皮型4種の組織亜型に分けられ、小腸GISTはより均一でskeinoid fiberという細胞外コラーゲン球を伴うことが多い。閲覧 2026-08-24
  2. 2.A novel monoclonal antibody against DOG1 is a sensitive and specific marker for gastrointestinal stromal tumors(The American Journal of Surgical Pathology・2008)GISTの約4-15%はKIT(CD117)発現を欠く。GIST 447例の検討でDOG1.1抗体は425例中370例(87%)陽性、CD117は428例中317例(74%)、CD34は430例中254例(59%)陽性だった。PDGFRA変異GISTではDOG1.1が29例中23例(79%)陽性なのに対しCD117は32例中3例(9%)、CD34は33例中9例(27%)にとどまった。軟部腫瘍935例中DOG1.1陽性は平滑筋肉腫326例中1例(0.3%)と滑膜肉腫39例中1例(2.5%)のみだった。閲覧 2026-08-24
  3. 3.Avapritinib in advanced PDGFRA D842V-mutant gastrointestinal stromal tumour (NAVIGATOR): a multicentre, open-label, phase 1 trial(The Lancet Oncology・2020)PDGFRA Asp842Val(D842V)変異GISTはチロシンキナーゼ阻害薬に高度に抵抗性である。アバプリチニブの第1相試験NAVIGATORでは、D842V変異GIST 56例のうち49例(88%、95%CI 76-95)が奏効し、完全奏効5例(9%)・部分奏効44例(79%)だった。最大耐用量は400 mg、推奨第2相用量は300 mg/日で、治療関連grade 3-4事象は82例中47例(57%、最多は貧血17%)、治療関連死はなかった。閲覧 2026-08-24