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Drug Atlas · B35 Targeted cancer therapy / 分子標的薬 · 必修

イマチニブ

imatinib

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
商品名(日本)
グリベック
商品名(EU)
Glivec
科目
Pharmacology
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)
副作用
末梢浮腫筋痙攣悪心
相互作用
ワルファリン
対象疾患
急性リンパ性白血病消化管間質腫瘍慢性骨髄性白血病

🧠 全体像分子標的薬という考え方そのものを臨床に持ち込んだ原型である。の細胞にほぼ普遍的に存在するBCR-ABL融合キナーゼという単一の分子異常を狙い撃ちにし、それだけで病気の経過を一変させた。CMLはかつて療法中心で5年が約30%、根治にはが必要な致死的疾患だったが、登場後は5年が90%を超え、多くの患者が寿命をほぼ損なわずに生きられる慢性疾患になった。「特定の遺伝子異常を持つがんに、その異常だけを狙う薬を作る」という発想が実際に効くと証明した最初の薬であり、以後のあらゆる-tinib系キナーゼ阻害薬はこの成功の延長線上にある。

薬効群の中での位置づけ

BCR-ABLを狙うTKIは、への対応として世代を重ねてきた。

世代 代表薬 特徴
第1世代 BCR-ABL・KIT・PDGFRを阻害する最初のTKI。は良好だが力価は後続より弱い
第2世代 より高力価・広域。・耐性例や、より深いを狙う初回治療で選択
第3世代 ポナチニブ T315I変異・第2世代いずれにも抵抗性を与える「」)にも効く。血栓症リスクが高く適応を絞る
別機序 (利用可能な地域で) でなくミリストイルポケットに結合するSTAMP阻害薬。既存TKI耐性例の選択肢

世代が新しいほど常に優れているわけではない。 心血管疾患・肺疾患・糖尿病の既往、薬物相互作用、妊娠希望、より深い分子学的寛解を目指すかなどを踏まえて個別に選ぶ。の良さから今も広く使われる。

機序

flowchart TD
    A["t(9;22)転座(Philadelphia染色体)"] --> B["BCR-ABL融合遺伝子"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='constitutive'>構成的</span>に活性化したチロシンキナーゼ"]
    C --> D["ATP結合ポケットが常に開いた活性型構造"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='imatinib'>イマチニブ</span>がATP結合ポケットへ結合<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inactive form'>不活性型</span>のDFG-out構造を安定化)"] --> F["キナーゼ活性を阻害"]
    D -.->|"阻害されないと"| G["RAS-MAPK/PI3K-AKT/STAT5経路が恒常的に活性化"]
    G --> H["白血球の異常な増殖・アポトーシス抑制"]
    F --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='downstream signal'>下流シグナル</span>遮断"]
    I --> J["Ph陽性細胞の増殖停止・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apoptosis induction'>アポトーシス誘導</span>"]

💡 なぜGISTにも効くのか。 はBCR-ABLだけでなく、構造の似たKIT(c-KIT、受容体)とPDGFR)も同じATPポケット機序で阻害する。の多くはKIT遺伝子変異を持ちが恒常的に入っているため、標的が違うだけで同じ薬・同じ機序が効く。

薬物動態

項目 値・特徴
約98%(非常に良好)
代謝 主にCYP3A4(N-desmethyl体)に変換。代謝物も同程度の活性を持つ
蛋白結合率 約95%(アルブミン・
半減期 約18時間、約40時間。1日1回投与が成立する理由
排泄 主に糞中(代謝物として)。はわずか

⚠️ CYP3A4を強く阻害・誘導する薬との相互作用に注意。 自体もCYP3A4・CYP2D6・CYP2C9を阻害するため、狭い治療域の薬(ワルファリンなど)の血中濃度を押し上げる。ワルファリン併用は避け、抗凝固が必要ならへ切り替えるのが定石。

適応

領域 使いどころ
血液 CML(Ph陽性、慢性期・移行期・のいずれも)第一選択の一つ
血液 Ph陽性(ALL):化学療法との併用で早期から組み込む
血液 のうちFIP1L1-PDGFRA陽性例
消化管 KIT陽性GIST:・転移例、高リスク例の
皮膚 PDGFB再構成陽性)

用法・用量

CML慢性期:1日1回400 mg、食後経口。移行期・:1日600 mg。Ph陽性ALL:化学療法併用下で1日600 mg。GIST:転移・例は1日400 mg(KIT exon 9変異では800 mgまで増量を検討)、高リスク切除後のは1日400 mgを3年間が標準的。腎機能・肝機能・に応じて減量する。実際の用量は病期・体重・で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 妊娠で催奇形性が示されており、妊娠可能な患者には避妊を指導する
  • ⚠️ :高齢者・心疾患の既往がある患者では、浮腫が胸水・腹水・肺水腫にまで進展することがある。心不全の既往は慎重投与
  • 小児での長期使用が報告されており、をフォローする
  • :主要な代謝経路であるため、肝障害時は・肝機能モニタリングが必要
  • CYP3A4を強く阻害・誘導する薬剤との併用は血中濃度を大きく変動させるため添付文書で確認する

副作用

頻度 内容
高頻度 (特にの浮腫が特徴的)、悪心、下痢、発疹
注意 、血球減少(好中球減少・血小板減少・貧血)
重篤・まれ 重度の(胸水・肺水腫・心タンポナーデ)、、重症皮膚障害、肝不全、消化管穿孔・出血(GIST病変部からの出血として)

まとめ

  • 分子標的薬という発想を実証した原型薬。BCR-ABL融合キナーゼをATP結合ポケットで直接阻害する。
  • CMLの予後を根本的に変えた:5年が約30%(時代)から90%超へ。慢性疾患として長期管理できる病気に変えた。
  • KIT・PDGFRとの構造的類似性により、GIST・にも有効。
  • CYP3A4で代謝され、自らもCYP3A4/2D6/2C9を阻害する。ワルファリンとの併用は避ける。
  • 浮腫(特に)とが高頻度。重症化すると胸水・肺水腫。
  • T315I変異などのが生じると第2・第3世代TKI(、ポナチニブ)やへ切り替える。
  • 妊娠可能な患者では催奇形性に、小児長期使用ではに注意する。