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Disease Atlas · 血液 · 腫瘍

未分化大細胞型リンパ腫

Anaplastic large cell lymphoma

別名
ALCL未分化大細胞リンパ腫
臓器系
血液腫瘍
科目
PathologySurgery
トピック
病理学 C/15:菌状息肉症/セザリー症候群/末梢T細胞リンパ腫外科学 S-33:良性乳房疾患と乳房再建
上位概念
非ホジキンリンパ腫
鑑別疾患
リンパ腫様丘疹症非特定型末梢性T細胞リンパ腫
関連疾患
成人T細胞白血病リンパ腫
治療薬
シクロホスファミドドキソルビシンビンクリスチンプレドニゾロンブレンツキシマブ ベドチンクリゾチニブ
症状
リンパ節腫脹発熱寝汗体重減少皮膚結節
検査値
血算乳酸脱水素酵素
スコア
国際予後指標Ann Arbor分類

🧠 全体像:(ALCL)を学ぶ幹は「同じ陽性・未分化大細胞形態でも、ALKというたった一つのタンパクの有無が予後と治療戦略を分ける」という一点に尽きる。ALK陽性ALCLはに分類されながら化学療法によく反応して予後良好、ALK陰性ALCLは同じ形態でも予後が劣る。さらに周囲だけに生じる関連ALCL(BIA-ALCL)は、テクスチャード(表面加工)に関連するまったく別の臨床単位であり、乳癌とは病態もも異なる。

分類と病態

ALCLは大型でに富み、・腎形の核(“hallmark cell”)を持つ未分化なT/NK細胞由来リンパ腫の総称で、すべての亜型がを強発現する点が共通項である。

亜型 ALK融合遺伝子 患者背景 予後の位置づけ
ALK陽性ALCL t(2;5)などによるALK陽性 若年に多い だが5年無失敗(FFS)60%・70%と相対的に良好(全身性159例中の解析)1
ALK陰性ALCL ALK融合陰性 中高年に多い 5年FFS 36%・49%とALK陽性より不良、(PTCL, NOS)よりは良好という中間的位置づけ(同じく全身性159例中の解析)1
通常ALK陰性 皮膚限局 低悪性度、と連続するスペクトラムを成す
関連ALCL(BIA-ALCL) ALK陰性 植込み後 早期発見・被膜摘出で予後良好なことが多い

⭐ 「ALCL=だから予後不良」は誤り。 ALK陽性ALCLはむしろNHLの中でも治療反応性・治癒率が高い部類に入る。ALKの有無を確認せずに一律の説明をしないことが最大の注意点である。

臨床像

  • 無痛性の急速増大するリンパ節腫脹(頸部・腋窩・鼠径)
  • 高頻度のB症状(発熱、、体重減少)
  • 節外病変(皮膚・骨・軟部組織・肺)を伴うことがある
  • は孤立性または多発性の・潰瘍として単独で現れ、リンパ節・を欠く
  • BIA-ALCLは、植込みから平均して数年〜10年前後を経て、周囲の遅発性の(液体貯留)または被膜内腫瘤として気づかれることが多い

診断

で強陽性・大型細胞・核を確認し、ALK免疫染色またはでALK陽性/陰性を必ず判定する。BIA-ALCLを疑う所見(植込み後1年以上を経た遅発性、被膜内腫瘤)があれば、血清を穿刺して免疫染色・細胞診を行う。全身性ALCLはで病期を、で予後リスクを評価する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CD30'>CD30</span>陽性・大型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pleomorphism'>多形性</span>細胞<br>(hallmark cell)の腫瘍"] --> B["ALK免疫染色/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescence in situ hybridization'>FISH</span>"]
    B -->|"陽性"| C["ALK陽性ALCL"]
    B -->|"陰性"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='breast implants'>乳房インプラント</span>の<br>植込み歴があるか"}
    D -->|"あり・被膜内に限局"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='breast implants'>乳房インプラント</span>関連ALCL(BIA-ALCL)"]
    D -->|"なし、または全身病変"| F["ALK陰性ALCL"]

治療

全身性ALCL(sALCL)の標準的なは・・・(CHOP)を基盤とする。

⭐ sALCLは併用の恩恵が最も明確な病型である。 第III相ECHELON-2試験の5年追跡では、陽性sALCL(ALK陽性・陰性を含む)で+CHP(A+CHP)がCHOPに比べ5年PFSを60.6%対48.4%、5年OSを75.8%対68.7%へ改善しており、試験全体で観察された治療効果の主たる寄与元がこの部分集団であった2。ALK陽性例は化学療法単独でも比較的良好なため、再発リスクや治療強度は個別に判断する。

再発・難治性の小児・若年成人のALK陽性ALCLには、が新たな選択肢である。COGの第I/II相試験では単剤のが165 mg/m²群で83%、280 mg/m²群で90%に達し、この成績が2021年の(1歳以上の再発・難治性ALK陽性ALCL)の根拠になった3。

は低悪性度のため、には手術切除や放射線療法を第一に検討し、は多発・進行例に限る。

BIA-ALCLは大半が被膜に限局した早期病期で発見され、その場合はと周囲被膜を一括で摘出する完全なのみで治療が完結し、多くは追加の全身治療を要しない。 被膜を越える浸潤や遠隔病変を伴う進行例に限り、化学療法・放射線療法を追加する。との関連が特に強く、のみの既往での報告はまれである4。

まとめ

  • ALCLはを共通して強発現するの総称で、ALKの有無が最大の予後因子である。ALK陽性はでも予後良好、ALK陰性はそれより不良でPTCL, NOSより良好という中間に位置する。
  • 全身性ALCLの治療効果は+CHP(A+CHP)で明確に改善し、ECHELON-2試験で観察された治療効果の中心を担う病型である。
  • 再発・難治性の小児・若年成人ALK陽性ALCLにはが高いを示す。
  • 関連ALCL(BIA-ALCL)はに関連するまれな独立疾患で、早期例はのみで治療が完結することが多く、乳癌とは扱いが異なる。
  • は低悪性度で、全身性ALCLと同じ強度の治療を要しない。

出典

  1. 1.ALK- anaplastic large-cell lymphoma is clinically and immunophenotypically different from both ALK+ ALCL and peripheral T-cell lymphoma, not otherwise specified: report from the International Peripheral T-Cell Lymphoma Project(Blood・2008)22施設が参加したInternational Peripheral T-Cell Lymphoma Projectで、未分化大細胞型リンパ腫181例(全身性159例+原発性皮膚22例)のうち、全身性159例内でのALK陽性/陰性比較ではALK陽性ALCLの5年無失敗生存率(FFS)は60%・全生存率70%であったのに対し、ALK陰性ALCLは36%・49%にとどまり、ALK陰性ALCLは非特定型末梢性T細胞リンパ腫(5年FFS 20%・全生存32%)よりは良好だが両者の中間に位置することを確認した。閲覧 2026-09-02
  2. 2.The ECHELON-2 Trial: 5-year results of a randomized, phase III study of brentuximab vedotin with chemotherapy for CD30-positive peripheral T-cell lymphoma(Annals of Oncology・2021)CD30陽性末梢性T細胞リンパ腫452例の第III相試験の5年追跡で、全身性未分化大細胞リンパ腫(ALK陽性・陰性を含むsALCL)の部分集団ではブレンツキシマブ ベドチン+CHP(A+CHP)がCHOPに比べ5年PFSを60.6%対48.4%、5年OSを75.8%対68.7%へ改善し、CD30陽性PTCL全体で観察された治療効果の主たる寄与元であることを確認した。閲覧 2026-09-02
  3. 3.Targeting ALK With Crizotinib in Pediatric Anaplastic Large Cell Lymphoma and Inflammatory Myofibroblastic Tumor: A Children's Oncology Group Study(Journal of Clinical Oncology・2017)再発・難治性ALK陽性未分化大細胞型リンパ腫の小児・若年成人26例を対象にしたCOG第I/II相試験で、クリゾチニブ単剤の奏効率は165 mg/m2群で83%、280 mg/m2群で90%であったことを確認した。この結果が2021年のFDA適応拡大(1歳以上の小児・若年成人の再発・難治性ALK陽性ALCL)の根拠になった。閲覧 2026-09-02
  4. 4.Epidemiology of Breast Implant-Associated Anaplastic Large Cell Lymphoma - A systematic review of literature(Journal of Plastic, Reconstructive & Aesthetic Surgery・2026)2024年11月までの23件の疫学研究を対象とした系統的レビューで、乳房インプラント関連未分化大細胞リンパ腫(BIA-ALCL)はほぼ全例がテクスチャード(表面加工)インプラントに関連し、**テクスチャードインプラント植込み患者を分母**とした有病率は10万人あたり1.0〜397.9人、生涯リスクは1対250〜1対99,992と報告により幅が大きいまれな疾患であり、乳癌とは異なる病態であることを確認した。閲覧 2026-09-02