小児科学

小児科学 · 2-02

小児腫瘍救急

Oncological Emergencies in Children

前提:病態
バーキットリンパ腫・DLBCLカリウム平衡の異常
前提:正常
赤血球酵素異常症(G6PD欠損など)
疾患
メトヘモグロビン血症血液・腫瘍救急(発熱性好中球減少症・腫瘍崩壊症候群・上大静脈症候群)好中球減少性腸炎
症状
吸気性喘鳴
スコア
MASCCスコア

🧠 全体像: 、、、/は数時間で致死的になりうる。腫瘍科・・関連専門科を直ちに招集し、診断と蘇生を並行する。

腫瘍崩壊症候群

では腫瘍細胞内容が放出され、高K血症、、低Ca血症、から不整脈、痙攣、を起こす。Burkittリンパ腫、急性白血病、・高・腎障害で高リスクで、治療前にも自然発症する。上のと、それに腎障害・不整脈・痙攣・死亡のいずれかを伴う臨床的TLS(clinical TLS)を区別するCairo-Bishop分類がに用いられる1。

flowchart TD
    A["TLS高リスクまたは発症"] --> B["心電図・尿量・K/P/Ca/尿酸/Crを頻回監視"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='isotonic fluid'>等張液</span>で水分管理・K/P負荷を避ける"]
    C --> D{"尿酸リスク"}
    D -->|"低〜中"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='allopurinol'>アロプリノール</span>"]
    D -->|"高リスク/発症"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rasburicase'>ラスブリカーゼ</span>"]
    F --> G{"難治性高K・乏尿・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluid overload (volume overload)'>体液過剰</span>か"}
    G -->|"はい"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='kidney replacement therapy, KRT'>腎代替療法</span>を早期検討"]

発熱性好中球減少症

単回38.3℃以上、または38.0℃以上が1時間持続し、 500/µL未満または低下予測を典型的定義とするが、施設プロトコルを優先する4。中心静脈カテーテル全腔から血液培養を採り、臨床的に高リスクなら抗緑膿菌βラクタム、第四世代、のいずれかを単剤で速やかに開始する。培養のため抗菌薬を遅らせない。⚠️ 抗菌薬開始までの目標時間は「から1時間以内」が広く用いられるが、根拠は見た目ほど強くない。 オーストラリアの小児976例・1685エピソードを対象にした解析では、から抗菌薬投与までの時間の中央値は53分で、60分以上(ただし2時間以内)を要しても有害転帰が増えるという明確な証拠は得られなかった5。

胸部X線は呼吸器症状がある場合に限る。追加の抗Gram陰性薬やグリコペプチドは循環不安定、耐性菌疑いなどに限定する。低リスク例の外来・経口治療は検証済み層別化と確実な追跡がある場合のみ行う。小児の16件を統合した系統的レビューでは、外来管理は入院管理よりが低く(15%対28%)、と非の失敗率に有意差はなく、外来・経口いずれの群でも感染関連死亡は報告されなかった6。

白血球うっ滞

の数値だけでなく、呼吸困難・低酸素、頭痛・意識障害・局在徴候、、など臓器症状を伴う(leukostasis)が救急である。TLS・を同時監視し、水分管理と白血病型に応じた迅速な細胞減量を行う。は粘稠度を増すため、重症貧血でも腫瘍科と調整して慎重に行う。白血球除去療法は標準的に一律使用せず、選択例に限る7。

縦隔腫瘤・上大静脈症候群

顔面・頸部・上肢浮腫、胸壁静脈怒張、咳、、喘鳴・、頭痛・意識変化を認める。小児ではリンパ腫などによるを閉塞と同時に考える。

⚠️ 仰臥位、鎮静、全身麻酔、で気道・循環が突然虚脱しうる。最も楽な体位を保ち、自発呼吸を維持し、麻酔・・腫瘍科と安全な画像・を計画する8。生命危機時を除き、診断前ステロイドはを不明瞭にしうる。

まとめ

  • TLSはK・P・Ca・尿酸・腎機能を頻回監視し、欠損にを使わない。
  • では培養後、を遅滞なく投与する。
  • では不用意な仰臥位・鎮静を避け、自発呼吸を保つ。

出典

  1. 1.Tumour lysis syndrome: new therapeutic strategies and classification(British Journal of Haematology・2004)Cairo-Bishop分類は、治療前後の血清尿酸・カリウム・リン・カルシウムのうち2項目以上が基準を超えて変化した状態をlaboratory TLS(検査所見上のTLS)、それに腎機能障害・不整脈・痙攣・死亡のいずれかを伴う状態をclinical TLS(臨床的TLS)と定義すること、急性リンパ性白血病やBurkittリンパ腫など増殖速度・腫瘍量が高い腫瘍でTLSの発生率が高くこれをリスク層別化に用いること、予防・治療の基本が積極的輸液、アロプリノールによる高尿酸血症の予防、ラスブリカーゼによる治療、電解質の厳重な監視であることを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Clinical Pharmacogenetics Implementation Consortium (CPIC) guidelines for rasburicase therapy in the context of G6PD deficiency genotype(Clinical Pharmacology & Therapeutics・2014)ラスブリカーゼはグルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損患者で急性溶血性貧血、および場合によりメトヘモグロビン血症のリスクがあるため禁忌であること、遺伝子型による事前診断がなければ定量的酵素活性測定によるスクリーニングを投与前に行うべきことを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.A randomized comparison between rasburicase and allopurinol in children with lymphoma or leukemia at high risk for tumor lysis(Blood・2001)腫瘍崩壊症候群の高リスク小児白血病・リンパ腫患者52例(6施設)を対象にした多施設無作為化試験で、寛解導入化学療法中5〜7日間ラスブリカーゼまたはアロプリノールを投与し比較したところ、投与後96時間の血漿尿酸濃度曲線下面積がラスブリカーゼ群でアロプリノール群の2.6倍少なく(128±70対329±129 mg/dL・時、p<0.0001)、投与4時間後の尿酸値低下率もラスブリカーゼ群86%対アロプリノール群12%(p<0.0001)と優れたことを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Guideline for the Management of Fever and Neutropenia in Pediatric Patients With Cancer and Hematopoietic Cell Transplantation Recipients: 2023 Update(2023)小児がん患者・造血細胞移植患者における発熱性好中球減少症の国際ガイドライン改訂(既存69件のRCTに新規10件のRCTを追加した系統的レビューに基づく)で、臨床的に不安定な発熱性好中球減少症患者にはガイドラインに沿った経験的抗菌薬治療を可及的速やかに開始すべきというグッドプラクティス声明が新設されたこと、低リスク例では48時間時点で血液培養が陰性かつ臨床的に良好・解熱していれば骨髄回復の所見がなくても経験的抗菌薬を中止できるという条件付き推奨が追加されたことを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Impact of time to antibiotics on clinical outcome in paediatric febrile neutropenia: a target trial emulation of 1685 episodes(The Lancet Regional Health - Western Pacific・2024)オーストラリア8施設の前向きコホート(PICNICC研究)に登録された小児発熱性好中球減少症976例・1685エピソードを対象にした標的試験模擬(target trial emulation)解析で、トリアージから抗菌薬投与までの時間の中央値は53分(四分位範囲37-77分)であったこと、トリアージから60分以上(ただし2時間以内)を要した場合でも有害転帰や入院期間延長のリスクが増加するという明確な根拠は得られず、「1時間以内」という一律の目標時間の妥当性そのものに再検討が必要と結論したことを確認した。閲覧 2026-08-27
  6. 6.Outpatient and oral antibiotic management of low-risk febrile neutropenia are effective in children--a systematic review of prospective trials(Supportive Care in Cancer・2012)低リスク発熱性好中球減少症の小児を対象にした前向き試験16件(外来管理953エピソード・経口抗菌薬676エピソードを含む)の系統的レビューで、治療失敗率は外来管理群15%対入院管理群28%(p=0.04)と外来管理群で低く、経口抗菌薬群20%対非経口抗菌薬群22%(有意差なし)であったこと、外来管理・経口抗菌薬いずれの群でも感染関連死亡は0件であったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  7. 7.Management of hyperleukocytosis in pediatric acute myeloid leukemia using immediate chemotherapy without leukapheresis: results from the NOPHO-DBH AML 2012 protocol(Haematologica・2024)NOPHO-DBH AML 2012試験に登録された小児AML患者714例のうち高白血球血症を呈した122例(17.1%)のうち111例で、白血球除去療法や前処置化学療法を行わず直ちにエトポシド単剤(5日間)による寛解導入を開始したところ94%で診断当日または翌日に初回投与ができ、投与後2〜5日目の白血球数は投与前の69%・36%・17%・8%まで低下し3日目には81%の患者で白血球数10万/µL未満に達したこと、6週間以内の早期死亡率は高白血球血症全体で4.1%(エトポシド先行治療を受けた111例では2.7%)であったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  8. 8.Anesthetic management of children with an anterior mediastinal mass(Journal of Clinical Anesthesia・2010)前縦隔腫瘤を有する小児46例(1998〜2006年、単一小児病院)の後方視的検討で、症例の半数弱(21/46例)で自発呼吸を維持する麻酔管理を行い、重症の気道圧迫例では自発呼吸維持を優先したこと、上気道閉塞・酸素飽和度低下・喘鳴・部分的気道閉塞・生検後の気胸などの軽度合併症が5例にみられたが重篤な合併症や周術期死亡は生じなかったことを確認した。閲覧 2026-08-27