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Disease Atlas · 神経 · 疾患

家族性アミロイドポリニューロパチー

Familial amyloid polyneuropathy

別名
hATTRATTRv遺伝性トランスサイレチン型アミロイドーシス
臓器系
神経循環器全身
科目
Pathology
トピック
病理学 A/13:アミロイドーシス
上位概念
アミロイドーシス
鑑別疾患
純粋自律神経不全症糖尿病性ニューロパチー慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー
合併症
拘束型心筋症
治療薬
ドロキシドパ
症状
錯感覚起立性低血圧便秘下痢
適応薬
ドロキシドパ

🧠 全体像:(hATTR)は、肝で作られる(TTR)という運搬蛋白の変異が、末梢神経と心臓に選択的に沈着するである。学習の幹は「下肢から始まる感覚優位のに、・などの自律神経症状が重なる→やとされやすい→の家族歴とTTRで確定する→この10年で治療がからTTR安定化薬・TTR遺伝子サイレンシング薬というへ移った**」。の「家族性」という語が示すとおりのATTR(遺伝性)型そのものであり、野生型ATTR(老人性全身性)とはTTR遺伝子変異の有無で区別される。

病態機序

flowchart TD
    A["TTR遺伝子の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pathogenic variant'>病的バリアント</span>(p.Val50Metなど)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mutant'>変異型</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='transthyretin'>トランスサイレチン</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tetramer'>四量体</span>の不安定化"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monomer'>単量体</span>への解離"]
    C --> D["異常フォールディングした<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monomer'>単量体</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='self-assembly'>自己会合</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amyloid fibril'>アミロイド線維</span>として細胞外に沈着"]
    E --> F["末梢神経・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autonomic nervous system (ANS)'>自律神経系</span>"]
    E --> G["心臓(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='restrictive cardiomyopathy, RCM'>拘束型心筋症</span>)"]
    E --> H["消化管・腎・眼"]
    F --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='length-dependent'>長さ依存性</span>の感覚運動性・自律神経性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuropathy'>ニューロパチー</span>"]

肝で合成されるは通常4量体として血中でと結合して運搬される。TTR遺伝子のはを不安定化させ、異常フォールディングしたが・へとし、・心臓・消化管・腎・眼など複数臓器の細胞外に沈着して障害する1。

遺伝と発症年齢

で、を持つ親の子はそれぞれ50%の確率で変異を受け継ぐ。世界でもっとも高頻度なはp.Val50Met(従来のではp.Val30Met)で、ポルトガル・スウェーデン・日本に()を持つ1。

⚠️ 同じp.Val50Metでも、発症年齢とは集団によって大きく異なる。 ポルトガルの平均発症年齢は33.5±9.4歳、日本の巣は40.1±12.8歳だが、日本の非巣では62.7±6.6歳と20年以上遅い1。

集団 70歳までの
ポルトガル 91%(50歳までに80%)
フランス 50%(50歳までに14%)
スウェーデン 36%(90歳までに69%)

1

💡 同じ変異でも表現型が均一でないのは、修飾遺伝子・環境要因に加え、このの地域差が反映されている。アフリカ系米国人に多いp.Val142Ile(3.0〜3.9%の頻度)は心臓優位の表現型と関連する、別のよく知られたバリアントである1。

臨床像

⭐ 神経症状は下肢の感覚障害から始まる、のパターンを取る。 (灼熱感・)やがまず足に現れ、が振動覚・より先に障害される。運動障害は数年の経過で・・手指の障害へ進み、最終的にの分布を呈する1。

⚠️ 自律神経症状が、しばしばもっとも大きなを生む。 、便秘と下痢の交代、発作、、、、(尿閉または失禁)が現れる1。日本の電子添文がの適応として「に伴う、失神、たちくらみの改善」を掲げているのは、この自律神経症状に対する対症療法である2。

心筋への沈着はとして現れ、が前面に出るPN型・心症状が前面に出るCM型・両者が混在する混合型に分けられる1。

診断

TTRのをで確認し、特徴的な・画像所見と組み合わせて診断を確立する。(腹壁、皮膚、胃・直腸粘膜、、心内膜)ではによる下のを確認する。消化管内視鏡生検の感度は約85%である1。

治療

⭐ この10年で、治療の中心はからへ移った。 現在の第一選択は、TTR遺伝子の発現量そのものを減らす遺伝子サイレンシング薬(パチシラン、イノテルセン、ブトリシラン、エプロンテルセンなど)と、変異の解離を防ぐTTR安定化薬(、ジフルニサルなど)である1。

第3相APOLLO試験(225例、パチシランをと2:1で比較)では、18か月時点のmNIS+7(神経障害の重症度スコア、0〜304点)の変化がパチシラン群−6.0点に対しプラセボ群+28.0点(群間差−34.0点、P<0.001)と、パチシラン群で神経障害の進行そのものが止まった一方プラセボ群では進行し続けた。効果は9か月という早期から認められている3。

⚠️ は現在、限られた例にのみ検討される。 適応となるのはp.Val50Metバリアント・60歳未満・5年未満で、下肢限局のまたは単独にとどまり心・腎機能に高度障害が無い例である。神経障害の進行は止められるが、・病変・には無効という限界がある1。

予後

感覚運動性・自律神経性は10〜20年の経過で進行し、死因は心不全・腎不全・感染症である。病期後期にはがしばしばみられる1。

鑑別

疾患 見分け方
の脱髄性神経障害で治療反応性があるがされやすい。家族歴・自律神経症状の併存・TTRで鑑別する
糖尿病の存在だけでは説明できない急速進行や高度の自律神経症状があればhATTRを疑う
自律神経症状(など)が前面に出る点で似るが、末梢神経の感覚運動障害・家族歴・の証明で区別する

まとめ

  • (hATTR)はTTR遺伝子のによるのATTR(遺伝性)型で、変異TTRがに解離しとして末梢神経・心臓などに沈着する。
  • ⭐ 最多のp.Val50Met(旧Val30Met)はポルトガル・スウェーデン・日本にを持つが、発症年齢・は集団により大きく異なる(日本の巣は平均40歳、非巣は平均63歳)。
  • 神経症状は下肢の感覚障害から始まるのパターンを取り、などの自律神経症状がしばしば最大のを生む。心臓へのはとして現れる。
  • ⚠️ 治療はこの10年でからへ移った。 TTR遺伝子サイレンシング薬(パチシランなど)とTTR安定化薬(など)が第一選択で、APOLLO試験ではパチシランが神経障害の進行を止めた(mNIS+7の群間差−34.0点、P<0.001)。は限られた早期例にのみ検討され、心・には無効である。
  • 日本ではが本症に伴う・失神・たちくらみに対する対症療法として承認されている。

出典

  1. 1.Hereditary Transthyretin Amyloidosis(GeneReviews (NCBI Bookshelf、Sekijima Y, Nakamura K)・2024)2024年5月30日改訂版の全文を自分で取得して確認した。遺伝性トランスサイレチン型アミロイドーシス(hATTR)が*TTR*遺伝子(染色体18q12.1)の病的バリアントによる常染色体顕性疾患で、末梢神経優位(PN-hATTR)・心筋優位(CM-hATTR)・混合型の表現型をとり自律神経障害・若年性眼病変・腎病変を伴いうることを確認した。神経障害の中核症状が緩徐進行性の感覚運動性・自律神経性ニューロパチーであること、感覚症状はまず下肢に始まり足の錯感覚(灼熱感・電撃痛)や感覚鈍麻として現れ温痛覚が振動覚・位置覚より先に障害されること、運動障害は数年の経過で下垂足・下垂手・手指の障害へ進み最終的に手袋靴下型分布を呈すること、自律神経症状として起立性低血圧・便秘と下痢の交代・悪心嘔吐発作・胃排出遅延・インポテンス・無汗症・排尿障害(尿閉または失禁)があり「しばしばもっとも大きな罹病率を生む」と記されていること、発症年齢が集団ごとに大きく異なり創始者バリアントp.Val50Met(旧命名Val30Met)でポルトガルの平均発症年齢33.5±9.4歳・日本の風土病巣40.1±12.8歳・日本の非風土病巣62.7±6.6歳・スウェーデン/フランス/英国系はより高齢であること、世界でもっとも高頻度な病的バリアントがp.Val50Metでポルトガル・スウェーデン・日本にクラスターがあること、p.Val142Ileはアフリカ系米国人で3.0〜3.9%の頻度をもち心臓優位の表現型と関連すること、浸透率が地域で大きく異なりポルトガルでは50歳までに80%・70歳までに91%、フランスでは50歳までに14%・70歳までに50%、スウェーデンでは30歳までに1.7%・40歳までに5%・70歳までに36%・90歳までに69%であること、診断は*TTR*のヘテロ接合病的バリアントの分子遺伝学的検査と特徴的な臨床所見・画像所見の組み合わせで確立すること、生検組織(腹壁皮下脂肪・皮膚・胃/直腸粘膜・腓腹神経・心内膜)でコンゴーレッド染色による偏光下黄緑色複屈折を確認しうること、消化管内視鏡生検の感度が約85%であること、治療の第一選択がTTR遺伝子サイレンシング薬(パチシラン:3週毎点滴、末梢神経障害の進行を停止/イノテルセン:週1回皮下注、末梢神経障害の進行を遅延/ブトリシラン:3か月毎皮下注、進行を停止/エプロンテルセン:月1回皮下注、進行を停止)とTTR四量体安定化薬(タファミジス:1日1回経口、進行を遅延/ジフルニサル:1日2回経口、進行を遅延)であること、肝移植はp.Val50Metバリアント・60歳未満・罹病期間5年未満・下肢限局の多発神経障害または単独の自律神経障害で心・腎機能に高度障害が無い例に検討され神経障害の進行を止めるが心アミロイドーシス・軟膜病変・眼病変には無効であること、感覚運動性・自律神経性ニューロパチーは10〜20年の経過で進行し死因は心不全・腎不全・感染症であること、病期後期には悪液質がしばしば見られることを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.ドプスOD錠100mg/ドプスOD錠200mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(住友ファーマ)・2026)2026年5月改訂(第3版)の電子添文で、効能又は効果が3つの見出しに書き分けられ、「パーキンソン病(Yahr重症度ステージIII)におけるすくみ足、たちくらみの改善」「下記疾患における起立性低血圧、失神、たちくらみの改善:シャイドレーガー症候群、家族性アミロイドポリニューロパチー」「起立性低血圧を伴う血液透析患者における下記症状の改善:めまい・ふらつき・たちくらみ、倦怠感、脱力感」であること、シャイドレーガー症候群・家族性アミロイドポリニューロパチーの区分では用法・用量が1日200〜300mgを2〜3回に分けて開始し数日から1週間毎に1日100mgずつ増量し標準維持量1日300〜600mg(3回分割、1日900mgを超えない)であること、製造販売元が住友ファーマ株式会社であることを確認した。閲覧 2026-09-05
  3. 3.Patisiran, an RNAi Therapeutic, for Hereditary Transthyretin Amyloidosis(The New England Journal of Medicine(Adams D, Gonzalez-Duarte A, O'Riordan WD, et al.)・2018)第3相APOLLO試験(遺伝性トランスサイレチン型アミロイドーシスに伴う多発神経障害を有する225例を2:1でパチシラン148例・プラセボ77例に無作為割付、パチシラン0.3 mg/kgを3週毎に点滴静注)の結果、主要評価項目のmNIS+7(0〜304点、点数が高いほど障害が重い)は18か月時点でベースラインからの最小二乗平均変化がパチシラン群−6.0±1.7・プラセボ群+28.0±2.6(群間差−34.0点、P<0.001)であったこと、ベースラインのmNIS+7はパチシラン群80.9±41.5・プラセボ群74.6±37.0であったこと、効果は9か月という早期から認められたこと、18か月時点でmNIS+7の増悪が10点未満にとどまった患者の割合はパチシラン群74%・プラセボ群14%であったこと、副次評価項目のNorfolk QOL-DNアンケートでも有意な改善を認めたことを確認した。閲覧 2026-09-07