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Drug Atlas · B36 Targeted cancer therapy / 分子標的薬

ダラツムマブ

daratumumab

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
商品名(日本)
ダラザレックス
商品名(EU)
Darzalex
科目
PharmacologyInternal Medicine
トピック
B36: Drugs used in cancer treatment VI (Large molecule signal transduction inhibitors. Immunostimulant anticancer drugs)L-61: Multiple myelomaS-43: Amyloidosis
承認適応
多発性骨髄腫アミロイドーシス
副作用
悪寒発熱倦怠感便秘インフュージョンリアクション
監視検査値
絶対好中球数血小板数
影響検査値
好中球減少血小板減少M蛋白間接クームス試験

🧠 全体像は形質細胞表面のCD38に結合するヒト型抗CD38モノクローナル抗体(IgG1κ)。CD20を狙うリツキシマブと同じだが、標的がCD38に変わることでという形質細胞疾患へ移る。機序は①CDC②ADCC③ADCP④直接に加え、⑤CD38酵素活性の阻害⑥の除去という免疫調節も持つ。もう一つの核心は、赤血球にも微量発現するCD38のせいで輸血検査を偽陽性にする落とし穴である。

薬効群の中での位置づけ

標的抗原 代表薬 主な適応 輸血検査への干渉
CD20(B細胞) リツキシマブ 、関節リウマチなど なし(赤血球にCD20は発現しない)
CD38(形質細胞) あり(赤血球のCD38に結合し偽陽性化)

同じCD38を標的としながら別のエピトープに結合するも存在し、直接の強さや細胞傷害機序の主従が異なる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='daratumumab'>ダラツムマブ</span>が形質細胞表面のCD38に結合"] --> B["CDC"]
    A --> C["ADCC"]
    A --> D["ADCP"]
    A --> E["直接<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apoptosis induction'>アポトーシス誘導</span>"]
    A --> F["CD38酵素活性<br>(NAD+グリコ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydrolase'>ヒドロラーゼ</span>等)を阻害"]
    B --> G["骨髄腫・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amyloid'>アミロイド</span>産生形質細胞の減少"]
    C --> G
    D --> G
    E --> G
    F --> H["制御性T/B細胞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myeloid-derived suppressor cell (MDSC)'>骨髄由来抑制細胞</span>(MDSC)を除去"]
    H --> I["腫瘍免疫の活性化"]

💡 ①〜④は「細胞を直接殺す」経路、⑤〜⑥は「免疫のブレーキ役を取り除く」経路という構造で捉える。CD38は膜上でNAD+をADPへ分解する酵素でもあり、この酵素活性阻害が免疫抑制環境を変える点がCDC・ADCCのみの抗体との違いになる。

薬物動態

項目 値・特徴
構造 IgG1κモノクローナル抗体
剤形 (体重16 mg/kg)、または遺伝子組換え配合の皮下注(1,800 mg/30,000単位固定量、投与時間3〜5分)
消失・代謝 標的介在性の(CD38陽性細胞が減るほど緩やか)。抗体としてを受け、CYP代謝は受けない

適応

疾患 位置づけ
移植適応:D-VRd。非適応:D-VRdまたはDRdが現行の標準1
同・再発難治 へのが有効(APOLLO試験)2
新規診断例の第一選択:D-VCd(ANDROMEDA試験)3

用法・用量

静注は体重16 mg/kgを併用薬のサイクルに合わせて投与する。皮下注は1,800 mg/30,000単位の固定量を3〜5分で投与でき、数時間かかる静注より短時間で優先される4。初回投与時は全身投与関連反応が起きやすく、(副腎皮質ステロイド・・抗ヒスタミン薬)が必須

禁忌・注意

  • ⚠️ 輸血検査への干渉が最重要の落とし穴。 赤血球にも微量のCD38が発現するためが偽陽性となりを妨げる。投与開始前に血液型判定・を済ませ、輸血部に投与歴を申告してDTT処理を依頼する4
  • ⚠️ への干渉。 IgGκ抗体自体がM蛋白として検出され、判定を妨げうる4
  • 骨髄抑制を併用レジメンの添付文書に従い定期モニタリングする。減量は推奨されず、回復までで対応する4
  • B型肝炎:投与前にHBs抗原・HBc抗体でスクリーニングし、既感染者は投与中・後も肝機能を確認する
  • 帯状疱疹再活性化の予防を検討する

副作用

頻度 内容
高頻度 ⚠️ 全身投与関連反応悪寒発熱、初回に多い)、好中球減少血小板減少便秘
重篤・まれ 重症、帯状疱疹再活性化

まとめ

  • CD38を標的とするヒト型モノクローナル抗体で、CDC・ADCC・ADCPに加え、酵素活性阻害と除去という免疫調節作用も持つ。
  • 移植適応例でD-VRd、非適応例でD-VRdまたはDRd、でDPd(APOLLO試験)が中心。の第一選択はD-VCd(ANDROMEDA試験、併用)である。
  • ⚠️ 赤血球のCD38への結合による輸血検査の偽陽性化と、IgGκ抗体によるM蛋白電気泳動への干渉が最大の落とし穴。骨髄抑制時は減量せずで対応する。
  • を含む現行のが普及する前のコホート由来で、リスクを過小評価しうる点に注意する。

出典

  1. 1.EHA-EMN Evidence-Based Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up of patients with multiple myeloma(European Hematology Association / European Myeloma Network・2025)移植適応の新規診断多発性骨髄腫では抗CD38抗体+ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(D-VRd)が、移植非適応例ではD-VRdまたはD-Rd(DRd)を含む抗CD38抗体ベースの多剤併用が現行の標準治療として推奨されていることを確認した閲覧 2026-08-02
  2. 2.Daratumumab-Based Treatment for Immunoglobulin Light-Chain Amyloidosis(New England Journal of Medicine・2021)新規診断ALアミロイドーシス388例で、ボルテゾミブ・シクロホスファミド・デキサメタゾン(VCd)へのダラツムマブ追加(D-VCd)がVCd単独より血液学的完全奏効率を有意に改善し(53.3% vs 18.1%)、FDA承認の根拠となったANDROMEDA試験閲覧 2026-08-02
  3. 3.Daratumumab plus pomalidomide and dexamethasone versus pomalidomide and dexamethasone alone in previously treated multiple myeloma (APOLLO): an open-label, randomised, phase 3 trial(The Lancet Oncology・2021)レナリドミド・プロテアソーム阻害薬既治療の再発・難治性多発性骨髄腫で、ポマリドミド+デキサメタゾンへの皮下ダラツムマブ追加(DPd)がPd単独より無増悪生存期間を有意に延長した(12.4か月 vs 6.9か月)APOLLO試験閲覧 2026-08-02
  4. 4.DARZALEX FASPRO (daratumumab and hyaluronidase-fihj) injection, for subcutaneous use — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration・2026)皮下注1,800mg/30,000単位を3〜5分で投与する用法、投与開始前に型・不規則抗体スクリーニングを済ませ輸血部へ投与歴を申告する必要性(CD38陽性赤血球への結合による間接抗グロブリン試験の偽陽性化)、IgGκ抗体自体が血清蛋白電気泳動・免疫固定法で検出され完全奏効判定に影響しうること、全身投与関連反応(7%、前投薬が必須)・好中球減少・血小板減少・上気道感染症が高頻度の副作用であることを確認した閲覧 2026-08-02